異世界転生 「転生したらスマホがスキルメニューだった件」

２章 異世界の真実

2節 新たな仲間たち

「おーい、見えてきたぞ！あれがリュミナスの町だ！」

悠真とエリオは森を抜け、小高い丘の上に立っていた。そこから見えるのは、木造の家々が立ち並び、石壁で囲まれた中規模の町。門の前には武装した衛兵が見張りに立っている。

「おお、これぞファンタジー世界の町って感じだな。」
「ファンタジー？何だそれ。」
「あ、いや、何でもない。ただの癖みたいなもんだ。」

悠真は慌ててごまかしながら、リュミナスの町へ向けて足を進めた。門の前では、衛兵が旅行者や商人の入場を確認しているようだった。

「身分証を見せてもらおうか。」
「……えっ？」

不意に言われて悠真は固まる。身分証なんて持っているはずがない。

「どうした、持ってないのか？」と衛兵が警戒心を露わにする。

「えっと、その……」

困った悠真を見て、エリオがすかさず口を挟んだ。

「大丈夫だよ。この人、旅の途中で荷物を盗賊に全部奪われたんだ。代わりに俺が保証するよ。」

「エリオ、ありがたいけど……そんな適当な言い訳で大丈夫なのか？」と小声で聞く悠真。

「まあまあ、大丈夫だって。俺、ここの冒険者ギルドの常連だから。」

その言葉通り、エリオの顔を見た衛兵は「お前なら信じよう」と言って悠真を通してくれた。

「助かった……お前、意外と世渡り上手なんだな。」
「ハハ、何だそれ。」

二人は町に入り、まずはエリオの案内で冒険者ギルドへ向かうことになった。

ギルドの建物は、石造りの頑丈そうな外観に大きな看板が掲げられている。中に入ると、酒場のような賑やかな雰囲気が広がっていた。冒険者たちが飲み物を片手に笑い合い、掲示板にはクエストがびっしりと貼られている。

「これが冒険者ギルドか……ゲームでしか見たことない景色だ。」

悠真がキョロキョロと辺りを見回していると、受付カウンターに立つ女性が声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。新規登録ですか？」

目の前に立っているのは、落ち着いた雰囲気の美人な受付嬢だった。栗色の髪をポニーテールにまとめ、知的な眼鏡が印象的だ。

「えっと、まあ、登録するのがいいのかな？」と戸惑う悠真に、エリオが背中を押す。
「初心者ならギルドに登録しておいた方が便利だぞ。何かあってもギルドが保証してくれるしな。」

受付嬢は優しく微笑みながら、手続きの書類を渡してくれる。
「それではお名前をどうぞ。」

「佐藤悠真……あ、いや、ちょっとこの世界っぽくない名前の方がいいか？」
「どうしたんだい？」
「えーっと、そうだな……『ユウ』でいいや。」

悠真――いや、ユウは名前を適当に決め、その他必要事項を記入する。すると、受付嬢が「これで登録完了です」と言いながら小さな銀色のプレートを渡してきた。

「これが冒険者カードです。あなたのギルドランクや報酬の受け取りに使えますので、大切にしてくださいね。」
「おお、これが……！」

悠真がカードをじっくり見つめていると、エリオが彼の肩を叩いた。
「さっそくだが、クエストを受けてみるか？金も稼がなきゃだろ。」

「そうだな……でも俺、まだ全然装備とか整ってないんだけど。」

その言葉を聞いて、受付嬢が軽く笑った。
「装備が必要なら、ギルドの周辺には武具屋もございますし、初心者向けのクエストで少しずつ資金を貯めるのも手です。」

悠真は掲示板を眺めながら、どれが良さそうか考えた。

掲示板のクエスト一覧

小型モンスター・ゴブリンの討伐（報酬：3銀貨）
王都近くの森の採取（報酬：2銀貨＋素材提供ボーナス）
消えた飼い犬の捜索（報酬：5銀貨）
「ゴブリン討伐か、採取か、犬探しか……最初だし、簡単そうな採取で行くか？」
「いやいや、ゴブリン討伐の方が戦闘訓練になるぞ。」とエリオが提案する。

「いや、待て。犬探しってなんか不穏な香りしないか？めっちゃ難易度高そうなんだが。」

受付嬢は微笑を浮かべながら説明する。
「どれも初心者向けですが、ご自身のペースで選んでくださいね。」

悩む悠真の横で、エリオはニヤリと笑った。
「よし、ゴブリン討伐にしようぜ！俺も一緒に行ってやるからさ。」

「マジかよ……じゃあ、頼むぞ！」

こうしてユウはエリオと共に、初めての冒険者としてのクエスト――ゴブリン討伐に向かうこととなったのだった。