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現実2 小学6年生 1月2月3月

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 伊月 功星は、国立の中学校に合格した。瞬の番号は無かった。
瞬……。だよな。そりゃそーだ。
卒業式になる。樹たちの輪に入る気も起きず、瞬は一人ポツンと立ち尽くす。サッカークラブの輪の中から、功星が瞬のところへ来てくれる。
功星「河本ちゃん!どこ中に行くの?」
瞬「地元の公立中。お前は?」
「地元の国立」
「……すげーな。いーなァ。……いっつんと一緒の中学に行きたかったなー」
「塾続ける?」
「んー。一旦やめる。うち、母子家庭だし。また高校受験だわ」瞬は、笑おうとしてみたがうまく笑えたかどうか自信は無かった。
「そっか。国立って高校上がんの厳しいみたい。また中3に塾で一緒になるかもね」
「……。けど、塾でお前と話してると、たむやんに睨まれんじゃん。アイツなんなの? お前の彼氏かなんか?__あーゆう独占欲って、俺全然分かんナイ。友達だろ?だったら、いっつんは、皆のもんだろ!?」
「……へー」
「へーって何よ」

「俺、河本ちゃんに嫌われてると思ってた」
「は? なんでっ?」
「……だって、学校でも塾でも全然話しかけてくれナイし。俺が、見ててもプイッて無視してたし」そんなつもりはなかった。ただクラスもグループも違うから、いっつん達に気軽に話しかけることができなかっただけだ。目があっても、どうしていいかわからなかった。目を逸らすしかなかった。
「そっ。そんなことしてねーし!だって学校では、樹が、お前にちょっかいかけねぇように、知らんふりするしかねぇし。塾では、いっつもたむやんがガードしてて、睨んでんじゃん。__もー、なんなの?嫌われてると思ってたのこっちじゃん。俺は、いっつんにとっての悪い虫かなんかかよ?って」

「フーーン」
「いっつんのこと、大スキだよ!!」
「えっ?」瞬が泣き出す。
「__離れたくない」瞬が、功星をぎゅと抱きしめる。
瞬「いままでは、話せなくても、まだ姿を見ることができた。けどもう、それもできなくなる」功星が、瞬を引っ張って体育館の外に連れ出す。
功星「ちょっと来て!」
瞬「えっ」
功星があたりを見回して、誰もいないことを確認する。功星は、瞬のほっぺを指でぷにゅと弄ぶ。
瞬は、涙なんか見せて気まずいと思った。カッコ悪イ。功星にこんなダサい自分を見られた。瞬は、功星の腕を振り解こうとする。一瞬目が合い、功星を傷つけたんじゃないかと心配になる。だけど、とにかくこの場から消えてなくなりたい。
__なのに。見られたくないのに、功星が、瞬の瞳を覗き込む。キレイな涙がポタポタッと2粒頬を伝ってこぼれた。功星が、瞬に口付ける。
「何すん…つっ……」

©️石川 直生 2023.
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