炎と消える_僕を消したアイツ 戻レナイ

石川 直生

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現実2 卒業式

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そっと触れた柔らかいものは、すぐに離れて瞬は、どう反応するのが正解なのかとボンヤリ考える。
功星「瞬」
「ハイ」
「中学は離れ離れだけど、また高校で会おう」
「高校?」
「うん」
「__大分先じゃね?」軽口を叩く。本当は、心臓がバクバクと音をたてている。何故か功星にバレたくない。とにかくいたたまれない。涙を拭く。自分だけが、こんなに余裕がないなんてカッチョ悪イ。落ち着け、鎮まれ、鼓動!
功星の友達が、呼びにくる。それに、大声であとで行くーと答える功星。
瞬「あいも変わらず人気だねー」
功星が、瞬を壁に追い込む。
功星「今の、初チュー?」
「え。……ええ?? そーいやそうかも……ええ??ってかお前は??」言いながら、変な妄想が過ぎる。
瞬「__まさか、たむやんと……??」
「アホなの? たむやんとは、ナンでもナイ!!__も1回しとく?」
「ん……うん」なにこれ。何コレ。なんだこれ……。涙拭きたい。少女マンガだと、ここで最終回なのでは? なんてワケの分からない考えが過ぎる。功星は、瞬の涙とほっぺに優しく口付ける。なのに、雪が溶けるみたいにすぐになくなった。コレはなに? いっつんは__どういう気持ちでこんなこと、するんだろう__もしかして、サッカークラブでは、これってフツーのことなの? 友情とか、慰めてくれたり__とか? わからないワかんない

瞬「どーしよ。もっとしたいんだけど__」
「ええーー? 河本ちゃん……男のコもイケんの?」
「ワかんない。未知すぎて……」
「ね。春休み、2人でどっか行く?」
「……イイの?」
「え?そーじゃなくて! フツーに遊びに行くってこと!」
「あ。そーゆうこと。いくいく!」
「携帯買ってもらう。連絡先教えて」
「ん。__な。たむやんにバレたら、俺、シメられんじゃね?」
「まさか。中学では、樹と離れられそ?」
「うーん。ムリっぽいな。俺、パシリ決定な。あーヤダやだ。部活入って塾行くわ。アイツらといると、ろくなことになんねーし」そろそろ戻ろっか、と2人で体育館に戻る。
小6瞬 アレ??コイツ初チュー誰だよ? なんか話そらされた? 遊ばれてんなー俺。結局、からかわれただけか。……あー。心臓ヤバかった……
功星 あーあ。何やってんだろ俺……。だって大スキとか泣きながら言うから__つい。
 もー、樹、樹って__あんなヤツ放っときゃいーのに。河本ちゃんてば、ホントお人好しつーか、バカっつーか。なんでアイツに従順なのって、イラーっとくるよね。あんなヤツ見捨てりゃいーのに。切れない瞬の優しさ__好きなの?ってこっちこそイライラすんだけど??
 あのバカには、絶対渡さねーから!!

体育館で、解散になる。
樹「今から、なんちゃらん家集まってゲームなー。瞬、お前も来いよ?」
瞬「悪イ!俺、今日、用事あって帰んなきゃ。ごめんな!」
樹「あっそ。じゃ行こーぜ」4人が体育館を出ていく。1人が、瞬のところにくる。
彼方「瞬。用事って何?」
「ばあちゃんの家に行くの。年だからさ」
「フーン。瞬いないと、ツマんないな……」
「ごめんな。あ、俺、公立中行くわ。国立落っこちた」
「そっか!一緒だね?樹が、喜ぶよ」
「不合格喜ばれても、微妙。……なー、彼方、中学になったら、このグループ一緒に抜けね?」
「え」
「俺、普通に勉強して部活に入りたい。どーせ樹は、そーゆうのバカにしてんだろ?」
「その話は、また2人でしよ」
「ん。オケ」彼方が呼ばれる。
「呼んでるから行くね」
「おー」

 その夜、祖母の家で寝ている瞬。母が携帯で何か深刻に話している声で目が覚める。自宅アパートが火事になったと、母がバイクで様子を見に行く。瞬も、祖母の電動自転車で見に行った。遠くから燃えさかる炎を見た。熱くて近寄れない。どうしよう。言い知れない不安が湧き上がってくる。何か新品のものがあったっけ__お年玉、全部燃えちゃったな……。そうだ、買ったまま、読もうと思って封を切っていないマンガ雑誌があったっけ__もう読めないな。録画した歌番組ももうダメだ__そんなことをボンヤリと考えていた。それから、あのヘンな声が聞こえなくなったことに気がついたのは2日も経ってからのことだった。瞬と母親は祖母の家に行った。瞬は、アパートとは学区の異なる中学に入学した。

©️石川 直生 2023.

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