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第6話 美しさは罪! 業火に焼かれる大罪!!
しおりを挟む火の海につつまれた地平線をみつめていると、業火のなかに蠢くものがみえます。
それが火を噴き、街並みを破壊しているのです。
わたしはテレビのスイッチを入れました。
テレビ画面では、局アナがひきつった表情でニュース原稿を読みあげています。
『臨時ニュースを申し上げます。
本日17:45分。震度8の巨大地震とともに地中から巨大な不明生物が出現しました。
この巨大不明生物は全身が岩のような硬い物質で覆われており——』
ザザーーッ。
そこで音声も映像も途切れ、テレビは砂嵐を映し出します。
「巨大不明生物って、なんですの?」
わたしは思わず声にだして呟きました。
すると——
『それはヅゴラだ』
なんと、受信しなくなったテレビから返事が返ってきました。
この声は間違いなく——
「”おにいさま”!!」
わたしは叫びました。”おにいさま”がテレビの受像機を通してわたしに直接語りかけています。
信じられません。こんなことってありえるのでしょうか?
『久しぶりだね、麻鈴。
そうだ、ぼくだ。シグマだ。
テレビの信号波をハッキングして直接、きみに語りかけることにした。
いいかい。よく聞いてほしい。
地底にはゲリンガという独特の文明を築いた世界があって、そこの王子ヨモヅナムは地上の姫との結婚を望んでいたんだ』
ゲリンガ。
まあ、なんて汚らしい響きの世界なんでしょう。
いえいえ、そんなことは問題ではありません。そのヨモヅナムとかいう王子が望んだ相手というのはもしかして……
『そう、きみだ。麻鈴。王子が視察のため地上にでた際、きみを見染めてしまった。きみの美しさにまいってしまったんだ』
そうでしたか。無理もないことといえば、いえるかもしれません。
『ぼくは政府から交渉をまかされた。でも、可愛い妹を地底の奈落の底に送ることはできない。そこで、ぼくはヨモヅナム側にこういった。
妹には将来を誓いあった婚約者がいる。
どうか、妹・麻鈴との結婚はあきらめてほしい。
だけど、彼らはあきらめなかった。
婚約を破談にさせよ。
そうでなければ、ヅゴラを地上に送るぞ……と。
ぼくは粘った。できるだけ時間稼ぎを図ったんだ。そのあいだにトギくんがきみを連れてヨモヅナムの手の届かないところへゆくのを願ったのだが……」
「トギさま? もしかして純白のスーツを着た、あのトンチキさんのことですの?」
『そうか、きみはトギくんに会ったのか? それでどうした?』
「撃ち殺して差し上げましたわ。わけのわからないことばかり、おっしゃるんですもの」
砂嵐を映し出しているテレビ受像機から「あちゃー」という声が漏れました。
それは”おにいさま”の悲嘆の声に違いありません。
『麻鈴、きみはもしかして……』
「もしかして、なんですの?」
『いや、いまはそのことはどうでもいい。とにかく、引き延ばし作戦は失敗した。
いつまでも進展しない交渉に怒ったヨモヅナム側は、とうとうヅゴラを地上に送り出し、このような強硬手段に訴えたんだ。
この事態を収拾するにはひとつしかない』
ああ、なにか嫌な予感がします。
ひとつ呼吸を挟んで”おにいさま”がおっしゃいました。
『麻鈴。ウェディングドレスを着てゲリンガにいってくれ』
第7話につづく
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