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第六話 願望充足小説
しおりを挟むその夜——
ぼくはパソコンの検索窓に
「ナイハンチャー烈」
と打ち込みサーチした。
たちまちヒットした。小説投稿サイトの『ヨミカキ』に連続投稿されている。
作者名は、
『玄葉由自』とある。間違いなく師匠のペンネームだ。
いつもの稽古場所である玄葉台公園の自由広場からつけたのだろう。
第一話から順を追って読んでみた。
………まったく面白くない。
師匠の創作ノートを盗み見たときから感じた予感だが、展開がありきたりで予定調和とご都合主義のオンパレードだ。
しかも視点の統一がなされてないから、だれがだれのことをいっているのかわかりづらく読みにくい。
あと、似たような言い回しやくどいセリフのやりとり。話が詰まってきたら新キャラを投入してあさっての方向に話を広げるまとまりの悪さも際立っている。
けっこうな長さの長編連載だが、ぼくは途中で読む気をなくしブラウザバックした。
「ふう……」
と、ため息をつく。
師匠はどんな気持ちでこの小説を書いているのだろう。PV数は作者本人しかわからない仕組みになっているから計れないが、そんなに読者は多くないと思う。
ましてや『ヨミカキ』は出版社がつくったサイトなので、読み手よりも書き手が多くいるサイトだという噂だ。少ないPV数を日々眺めながらスマホに文字を打ち込んでいるのだろうか?
ぼくは師匠の人物像がおぼろげながらつかめてきた。
おそらく独身。そして恋人もいない。いればもう少しきれいな身なりでいるはず。擦り切れたジャージの上下や、そこから発する臭いにも敏感になってしかるべきだ。
そして職業は……これはわからない。
WEBライターとかいっていたが多分ちがう。
時間の自由がきく派遣かバイトのどちらかかもしれない。
そんなことをつらつら考えていると、ぼくはなんだか哀しくなってきた。
師匠の書く小説は一種の願望充足小説だ。
主人公・ナイハンチャー烈は師匠がこうありたいと夢想した姿だ。
満たされない現実を埋め合わせるために書かれたものだ。
書いてる作者だけが気持ちよい作品の典型だ。
そこでぼくは考えた。
師匠と闘う「敵」とはなんだろう?
「敵」なんて本当にいるのか?
だけど、この月末にその「敵」と闘うと師匠ははっきりいった。
場所はいつもの玄葉台公園の自由広場だ。
いったいどのような闘いが繰り広げられるのか?
しっかり、この目で見届けたい。
それがぼくの義務のような気がする。
第七話につづく
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