決戦の朝。

自由言論社

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第4奮

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 第二の波がきた。

 今度の波は第一の波より大きい。
 前かがみとなり、このチャンスを逃すまじと思いっきりイキむ。


 んむっ!

 ぐ……むむっ!

 んん……むおっ!

 がが…ぎっ……ぐぐ……!!

 げげっ……ご……おおおっ!!!

 おれはなにも行数や文字数稼ぎでこんな擬音を連ねているのではない。
 それだけ必死なのだ。
 ウミガメの出産のように目に涙をためている。

 みしっ!

 音がした。
 ヤバげな音だ。
 肛門に石と化した糞がつかえている。
 やはり、おれの糞は石化していたのだ。

 だが、こうなっては仕方ない。
 肛門が傷つくのを恐れてはいけない。
 多少の犠牲は許容しなくては……。
 ここで出さなかったら、この糞石はますますおれの腸内で硬化し、いっそう出づらくなるだろう。

 いまならトイレットペーパーにうっすらにじむだけで済む。プリザクールジェルでも塗っておけばそのうち修復されるに違いない。

 がが……!

 ああ、波が押し寄せてくる。

 いいぞっ、今度は完ぺきな尻応えだ。
 もう一息だ。

 ふんっ!!
 ぐふっ!!
 んぐぐ……!!

 みしっ!
 みしっ!
 みしみしっ!!

 出……
 出るぞっ!
 糞石が肛門を押し広げ、外界に出ようとしている。

 ついにこのときがきたのだ!
 もうひと気張りだっ!


 ピンポーン!

 だれだ、この大事なときにドアベル押したのは?!

 あっ……
 あああ……!
 な、なんてことだ!
 糞が驚いてひっこんでゆく。

 ピンポーン!

 まただ。
 どこのバカだ。朝日新聞の拡張員だったら許さねえぞ!
 ……ん?
 いや待てよ。
 おれは思い出した。
 コミックレンタルを頼んでいたのだ。
 ア〇ゾンと違ってコミックレンタルは置き配には対応してない。
 必ず本人がでていって配達員の差し出す紙に受領サインをしなければならない。

 おれは慌ててスウェットの下とパンツを穿きなおし、いったんトイレから出て玄関ドアを開けた。





 受領サインをしてコミック本が詰まった段ボールを受け取る。
 電子書籍ならこんな手間はしなくて済むんだが、おれは小説も漫画も紙で読まないと読んだ気がしないのだ。

 ……やれやれ。
 また仕切り直しか。
 おれは再びトイレに入った。

 チクショウ……。
 今度こそ出せると思ったのに……。
 おれは泣いた。
 それはウミガメよりも苦しく辛い大粒の涙であった。


   第5奮につづく
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