逍遙の殺人鬼

こあら

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走って、走って、走って


私は走り出してからどれくらいたったのだろうか

夢中に走って、両脚を交互に前に出す


こんなに走ったのいつぶりだっただろ

行く宛がないまま、私はどこへ向かっているのだろう



体は熱を持ち、汗ばんだ
汗の一粒一粒が下へと体を伝って流れ落ちる


呼吸も正しくはできていない
息も絶え絶えで、口の中はほのかに血の味がしているような気がしていた

はぁはぁ、と荒く呼吸をするも心臓はバクバクだ











走り続けて流石に体の限界を感じ脚の動きを緩めて人気の多い所から少し離れた場所で休憩する


呼吸は穏やかにはならず、肩を使って息を一生懸命吸う

おでこや首元に流れた汗を拭き、すぐそこの交差点へと目を向ける


同じ人や服装の人は誰一人としていない
高いビルにうるさい程賑わっているお店
歩いている人たちは皆それぞれの個性を活かした服装で、信号を待っている人たちも止まっていてもキラキラと輝いて見えた


小さな子どもと手を繋いで信号を渡る家族
友達と制服を着てクレープを食べる女子学生
スマホを片手に電話をしながらメモを取るスーツ姿のサラリーマン
高級感の溢れるレストランから出てきたカップルと思われる男女
八百屋さんで今夜の食材の品定めをしている主婦


ここに居る皆が平和で、を過ごしている
こんな穏やかな世界を最後に見たのは遠い昔のように思える


そんなことを考えていると、ようやく落ち着いたのか安定した呼吸に心臓も一定の脈を打っていて汗も引いていた


少し残った体の熱を冷ますように風が私の肌をくすぐる




「私は…、どうすればいいんだろう…。」



本当にどうすればいいのか分からない


逃げていた


卑怯な世の中と、目を背けたくなる現実から

一緒に逃げたはずの子はいつの間にか逸れてしまっていて、探しても見つからなかった


(もしあいつらに見つかったら…)

そうなってはいけない

でも、探し出すにはこの世界は広すぎる





私には帰る家はない

親も兄弟もいない

助けてくれる親戚や知り合いもいない

だからって警察には頼れない



どうすればいいんだろう…
どうすれば最善の選択になるのだろうか?それが簡単に分かるなら、この地球にの文字はなかったのかもしれない


誰もが悩んで、1番良い結果を望む
でも、選択したものが最悪の結果を招くことだって多いにある
自分のためなのか、それとも他の誰かのためなか…
今ははぐれた子よりも自分の事を考えるべきなのか…



さっきまで明るかったはずなのに、空はオレンジ色を通り越して紺色へと移動していた


今日寝る所は、どうしよう

お金だってない

食べ物も買えないし、ホテルに泊まることすらできない




「住み込みの仕事があれば…」

そんな都合よくあるはずがないのは分かっていた

でも、例え99%無理だとしても、1%の可能性があるなら、その可能性にしがみつきたい
わらにもすがる思いだった


掲示板に貼られた求人募集を見てもどれもアルバイト募集ばかり
バイト先で寝泊まりは流石に怒られるだろ…



コンビニでお手洗いがてら求人本を手に取りパラパラと手際よく仕事内容一つ一つ確認する

やはり住み込みの仕事はなかった


他の求人本やチラシを見てもない


今日明日ぐらいなら大丈夫だろう
だけどその後は?
空腹だって襲ってくるだろうし、お風呂に入れない、安心して眠ることもできない
公園やその辺で寝てしまったらやつらに見つかってしまう


視線をチラシから外し、最善策を必死に考える

集中過ぎたのか近づいてくる人に全く気づかず、後ろから声をかけられびっくりしてしまう



「あの~、違ってたらすいません。もしかして、仕事を探してますか?」



ボサボサ頭に丸眼鏡
臭い匂いはしないものの、着ている服には醤油のシミやお煎餅の食べカスなんかがくっついていた
サンダルに靴下を履いていて親指には穴が空いていた



「…は、い…。」


「もしよかったら、うちで仕事してもらえませんか?住み込みなんですけど、お給料はちゃんと払いますよ」


甘えているわけじゃない
運命だとも思っていない
見るからに怪しい人だって分かってた
だからすぐに答えた


「はい、雇ってください!」
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