逍遙の殺人鬼

こあら

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自室に戻った私は、荒ぶる髪を三つ編みにまとめる
着替えを選ぼうと、チェストに手を伸ばすと扉をノックする音が聞こえる
それは臼田うすたさんで「起きたの?」と部屋の中に入って来た

「すいません…朝食作らなくて…」

「っえ、今何時?」

「…もう、2時近くですが…」

「まだ8時ぐらいだと思ってたー。どうりでお腹が空く訳だ。」

臼田うすたさんは丸眼鏡を外すと、疲れた様子で目元を擦った
ジャンさん、彼には何も作らなかったんだ…

急いで何か作ります、と言うと「いいよ。もうすぐ来る頃だし、適当に食べておく。」と頭を優しく撫でてくる
”来る”とは?誰が来るんだろうか?









「今から着替え?」

「はい、今日起きるの遅くて…」

「じゃ、僕が選んであげる。今日のちさちゃんの服はー、これ。」

そう言ってひらひらと軽く揺れ動くワンピースを取り出した
ウエスト部分に黒いベルトのような切り替えに繋がれた露草色つゆくさいろのスカート部分が印象的で、トップス部分はオフホワイトで清潔感がある
こんなワンピースいつ買ったんだろう…
てか、ワンピース買ったっけ?

そう思っていると「着てみて」と私に渡すと、部屋を出た
クローゼットの鏡で確認してみた
自分にワンピースを当ててみるが、その洗礼された服は私の身の丈にはあっていないように感じる

「でも臼田うすたさんは着て欲しいみたいだし…」

仕方ないか…と一応着てみる
軽い感じの裾は動く度に大きく存在を主張してくる
ヒラヒラしすぎでは?と思うが、せっかく買ってもらったんだし…と部屋を出る

「やっぱり可愛い。女の子だね」

「なんか恥ずかしいです…。私にはお洒落すぎませんか?」

「全然‼︎あ、でも可愛すぎて他の男に狙われちゃうかも」

またオーバーな…
こんな潰れた梅干しみたいな女が狙われる訳ない
それこそ、その人の眼球を心配する

そんなことを思っていると、ピンポーンッと呼び鈴が鳴った
この家に来て初めての音に内心ビックリした

「来たかな」

そう言うと玄関へと向かい、ドアを開けて中に招待した
「やあ」と軽く挨拶をするとサングラスをかけた男は中へと進む
ザングラスを外し「ジャンは?」と聞く彼は、今をときめく大人気アイドルグループのメンバーである瑞貴さんだった
イントネーションが若干違うから、時々MIZIKIと呼べばいいのか瑞貴と呼べばいいのか分からなくなるが、今の彼はオフなので瑞貴さんと呼ばせていただこう

「USB確認した?」

「はい。デートスポットを狙っているのは確実だと思います。」

「流石、ちゃんと分析したんだね。ちょっと、ジャンと話してくるよ。」

今の会話だけでは何のことか全く分からない私は、とりあえずお客人にお茶でもと台所に移動した
コップを取ろうと食器棚の上の段に手を伸ばそうとするが、その段には無かった
手の届く段に移動してあって、簡単に取ることができた

臼田うすたさんが変えてくれたのかな?)
そんなことを思っていると、話し声がした
私はまたその声に耳を済ませて聞いてしまう

「どうしたんだよジャンらしくもない、簡単だろ。」

「この段取りじゃなきゃダメなのか?」

「何を今更、お前は化物だ。化物は化物らしく動けばいい。考える必要ないだろ。」

”化物”!?ジャンさんを化物と呼んだ?

(どうしてジャンさんは言い返さないの?)
瑞貴さんの言葉に反論なんかせずに居るジャンさん
彼にひどい言いぐさの瑞貴さんに、何故だか腹が立つ
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