逍遙の殺人鬼

こあら

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2人で自分の顔面に風を扇いでいると、シスターエリが様子を見に来た
流石にヘトヘトだろうと思っていたのに、ちゃっかり洗濯を終えていたことに虫の居所が悪くなったのか「まだ仕事はあるんだから」と手を引っ張られる

私は後ろにいるギュウ君に手を振って、と口パクで言った
向こうもそれを読み取れたみたいで、と返してくれた

逆に良かったのかもしれない
あの空気のまま、2人で居たら気まずいままだったかも
ナイスタイミング、シスターエリ









「次の行事に向けて、蝋燭ろうそくを作ってください。」

「シスターエリ、どれくらい作ればいいのでしょうか?」

夕餉ゆうげまで作り続けてください。時間になったら呼びに来ますので。」

「分かりました…。あのっ……」

そんなに私を嫌っているのか、シスターエリはそそくさと作業部屋から出て行ってしまう
仲良くしたくても、これじゃなぁ………

元々コミュニケーションを取るのは苦手だ
相手を気にしてしまう私は、無意識に苛つかせてしまっているに違いない
会話相手の目すら合わせるのに時間がかかる

じっと見ていたら、相手に失礼な気がして思わず下を向いてしまう
話すときは相手の目を見る
これが常識だろう

だけど、対等ではない私がどの面下げて相手の目を見れようか?
今では黒く隠されたこの不快な色の髪だけで十分気分を害しているだろうに、それに加えてこの変な色の目…
目を合わせただけで気味悪がられた

「やめやめ。早く作らないと、シスターに怒られちゃう」

ろうを溶かして型に入れて、蝋燭ろうそくを作る
それだけでの作業を繰り返す

溶かすのに熱いし、作業のおかけで体温も上がっている
額には小さな結露みたいな汗が作り出されていて、首にも無数の水滴が浮き上がってきている
おにぎりを食べていなければ倒れていただろう…

家事代行をしていた頃に戻りたいとすら思ってしまう
でも、自分で選んだことだ
いつまでもあの家に、あの2人に依存してはいけないと思った
それに、あいつに見つかってしまったんだ
きっと探してるに違いない

__________戻りたくない……

戻りたくない、戻りたくない、戻りたくない…
いっそ死んでしまえば楽なのかもしれない

だけど、自殺する勇気も、死への道のりに進むことすらできない
自分では何も決められない
ただ流れに抵抗しないで、流れるだけ
でも、あの施設内には居たくなかった

たった1週間…
10年以上の孤児院の生活よりも、あの2人との生活のほうが何倍も、何千倍も素晴らしいものに思えた

「きっと……もう会えないんだろうな……っ」

考えないようにと思っても、結局それは考えていて私の意志とは関係なく涙が溢れ出た
拭っても拭っても止まらず、ただ修道服を濡らすだけ
首元で揺れる十字架を握ってみても、それは変わらなかった

いったい、何本蝋燭ろうそくを作っただろう
洗濯した腕で、洗濯物を運んだこの脚で、蝋燭ろうそくを作っては移動させ、作っては移動させを繰り返す機械と化していた

私の赤みがかった髪は罪の色
この変な目は、大罪を犯した証拠
両親が亡くなったのは、私の罪を償うための代償なのか…

主よ、願わくば私の罪をお許しになってください
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