187 / 333
188
しおりを挟む
私を後ろから抱き締める臼田さんは「…ちさちゃん」と小さく耳打ちした
なんですか?と聞き返せば、腕の力を強めて更に後ろへと下がらせ、互いの距離を狭めた
(どうしたんだろう…)
どうすればいいですか?と、春さんを見て助けを求めた
でも、春さんは両手を少し上げてお手上げとジェスチャーした
そして、何かを察したのか「車で待ってる」とだけ言って、春さんは背を向けて歩いた
2人っきりになった私は、臼田さん?と首元にある腕に触れた
その瞬間、首元にあった腕は下に移動して身動き取れないように抱き締め直してくる
凄く驚いた
私の顔のすぐ横に臼田さんの顔があって、彼の息遣いが耳に伝わってきたから、凄く驚いた…
心臓の鼓動が早くなった
それが彼にも伝わってしまうのでは無いかと、余計に焦らせてくる
両手をグッと握り締めて、目を強く閉じた
余計な情報が入って来ないように、視界が暗くなれば幾らかマシだと思った
「僕は、今でも君のことが好きだよ。…ちさちゃんは、僕のこと好き?」
「……私は…、臼田さんのこと好きです。でも、臼田さんが想ってる好きかは…分からないです……」
「そうか…分かったよ。でも、僕そんなに長く待てないよ」
「1週間で…私のどこが好きになったんですか?……」
「"1週間"じゃない。もっと前からだよ」
「え?……」
もっと前って…どういうこと?
私、以前に臼田さんに会ったこと…あったかな?…
だとしたら、いつ?どこで?
私はそんな前から臼田さんに出会っていたのに、今まで思い出せずにいたの?
記憶力が良いと思ってたのに、全然覚えてないなんて…
覚えてないですと言ったら、臼田さんは悲しむかな?…
臼田 亀という人物は、私の物語に2度出ていたとは思わなかった
それとも、私は記憶を消去したの?
本当に、全く思い出せない
この顔や声や仕草なんかは忘れるはずないのに、どう脳内検索をかけてもヒットしてはくれない
「以前、君に助けてもらったんだ。その時の僕は凄い悲惨な格好で、見るに耐えなかったと思う」
「ごめんなさい…、私身に覚えがなくって」
「ずっと前のこと、8年くらい前の話。あの時のちさちゃんは傘を差して走ってた」
「8年前で傘を差してたって……もしかして、」
あの時の傷だらけの男の子!?
腕に酷い切り傷があった、あの…男の子?
私が傘をあげて、傷の手当をした……あの男の子…
臼田さんだったなんて、分からなかった
あれからずっと…私のことを覚えていたの?……
私はその後のことで精一杯で、あの人はどうなったかな?ってたまに思い出すぐらいなのに
ドクドクと流れ出ていた血が雨によってシャツを染め広げていたのを思い出す
当時の傷の具合は鮮明には覚えていない
傷が深かったのか浅かったのか、分からない
今更だけどその傷が気になった
「腕の傷…」
「思い出した?あの時、手当してくれたおかげで大事には至らずに済んだよ。たまに言う事を聞いてくれない時もあるけどね」
「それって…。っ前に何回か上手くものを掴めなかったり、溢していたのって…後遺症なんですか?」
「うん。でも、それがあったからずっと覚えていられた。僕を助けてくれた小さな女の子を」
忘れたことはないと静かに言うと、臼田さんは抱きしめるのをやめて私と向き合う形に移動させた
上から見下ろすその表情は、当時私が見た愁いに満ちたものとは少し違っていた
でも、この少し垂れさせた眉や目元の感じは確かに似ているように思える
色褪せた記憶は、意識してみた事によって昭然としていった
そんな前に会っていたなんて…と、不思議な気持ちで一杯だ
彼の顔を見つめる私の両頬を温かい手で包み込んでくる臼田さんは、「寒いね」と言って少し笑った
首を少し傾げた拍子に前髪が揺れる
そんな小さな事でさえ魅了されてしまいそうだ
なんですか?と聞き返せば、腕の力を強めて更に後ろへと下がらせ、互いの距離を狭めた
(どうしたんだろう…)
どうすればいいですか?と、春さんを見て助けを求めた
でも、春さんは両手を少し上げてお手上げとジェスチャーした
そして、何かを察したのか「車で待ってる」とだけ言って、春さんは背を向けて歩いた
2人っきりになった私は、臼田さん?と首元にある腕に触れた
その瞬間、首元にあった腕は下に移動して身動き取れないように抱き締め直してくる
凄く驚いた
私の顔のすぐ横に臼田さんの顔があって、彼の息遣いが耳に伝わってきたから、凄く驚いた…
心臓の鼓動が早くなった
それが彼にも伝わってしまうのでは無いかと、余計に焦らせてくる
両手をグッと握り締めて、目を強く閉じた
余計な情報が入って来ないように、視界が暗くなれば幾らかマシだと思った
「僕は、今でも君のことが好きだよ。…ちさちゃんは、僕のこと好き?」
「……私は…、臼田さんのこと好きです。でも、臼田さんが想ってる好きかは…分からないです……」
「そうか…分かったよ。でも、僕そんなに長く待てないよ」
「1週間で…私のどこが好きになったんですか?……」
「"1週間"じゃない。もっと前からだよ」
「え?……」
もっと前って…どういうこと?
私、以前に臼田さんに会ったこと…あったかな?…
だとしたら、いつ?どこで?
私はそんな前から臼田さんに出会っていたのに、今まで思い出せずにいたの?
記憶力が良いと思ってたのに、全然覚えてないなんて…
覚えてないですと言ったら、臼田さんは悲しむかな?…
臼田 亀という人物は、私の物語に2度出ていたとは思わなかった
それとも、私は記憶を消去したの?
本当に、全く思い出せない
この顔や声や仕草なんかは忘れるはずないのに、どう脳内検索をかけてもヒットしてはくれない
「以前、君に助けてもらったんだ。その時の僕は凄い悲惨な格好で、見るに耐えなかったと思う」
「ごめんなさい…、私身に覚えがなくって」
「ずっと前のこと、8年くらい前の話。あの時のちさちゃんは傘を差して走ってた」
「8年前で傘を差してたって……もしかして、」
あの時の傷だらけの男の子!?
腕に酷い切り傷があった、あの…男の子?
私が傘をあげて、傷の手当をした……あの男の子…
臼田さんだったなんて、分からなかった
あれからずっと…私のことを覚えていたの?……
私はその後のことで精一杯で、あの人はどうなったかな?ってたまに思い出すぐらいなのに
ドクドクと流れ出ていた血が雨によってシャツを染め広げていたのを思い出す
当時の傷の具合は鮮明には覚えていない
傷が深かったのか浅かったのか、分からない
今更だけどその傷が気になった
「腕の傷…」
「思い出した?あの時、手当してくれたおかげで大事には至らずに済んだよ。たまに言う事を聞いてくれない時もあるけどね」
「それって…。っ前に何回か上手くものを掴めなかったり、溢していたのって…後遺症なんですか?」
「うん。でも、それがあったからずっと覚えていられた。僕を助けてくれた小さな女の子を」
忘れたことはないと静かに言うと、臼田さんは抱きしめるのをやめて私と向き合う形に移動させた
上から見下ろすその表情は、当時私が見た愁いに満ちたものとは少し違っていた
でも、この少し垂れさせた眉や目元の感じは確かに似ているように思える
色褪せた記憶は、意識してみた事によって昭然としていった
そんな前に会っていたなんて…と、不思議な気持ちで一杯だ
彼の顔を見つめる私の両頬を温かい手で包み込んでくる臼田さんは、「寒いね」と言って少し笑った
首を少し傾げた拍子に前髪が揺れる
そんな小さな事でさえ魅了されてしまいそうだ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
