逍遙の殺人鬼

こあら

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「いいですか、この年頃の女の子は複雑です。周りには敏感だし、知ってほしくない事なんて山程あるんですよ」(周りの子たちがこんな感じだった…。)

「でも話してもらわないと、物語が進まないだろ。」

「だから女子高生が主人公に話す前段階の所に、もうひと手間加えるんですよ。」

朔夜さんは難しそうな顔をした
それは、そうだろう
だって朔夜さんは女子高生になどなったことはないし、男性だ

しかし、物語の違和感を取り除かない限り出来の悪い小説へと変貌してしまう
特に自分の辛い過去を話すシーンは重要だ
主人公がどうやって打ち解けようとするのか、その後の事件との関わりを知る大切な場面

「だからもっと歩み寄らないと駄目なんです!!」









「女なら話さないのか?」

「この流れでは…話す気にはならないかと…」

「どうやったら話すんだ。」

「朔夜さんすいません、私ちょっと臼田うすたさん様子を見に行かないと」

私はまだ起きない彼の事が気がかりだった
朔夜さんの原稿を読んでいても、パソコンに向かってタイプしていても、それを忘れることはなかった

その旨を伝えたら朔夜さんは「誰だそいつ?」って、また覚えていない様子を見せた
どうしてこう…人の顔と名前を一致させられないのか……

毎回毎回誰だそいつと聞くなんて…忘却魔法の呪いでもかけられているのでは…

臼田うすたさんですよ。春さんよりも身長が高くって、ジャンさんよりは低くて、目がパッチリしてる、」

「あぁ、あの犬顔のことか。何だ女、夜這いには時間はまだ早いぞ。」

「アハハ、なにを仰る…朔夜さん…。滅多なこと言わないでください」

「女が好いていたのはあの犬顔だったのか。」

顎に手を添えて少し考える朔夜さんは、何を思ったか「よし。」と勝手に自己納得なさっては、応援してやるなどと何故か上から目線のセリフを言い放つ

(応援って…)

結構ですと断る私に、役に立てるぞと豪語する
怪しいもんだ…
急にそんなこと言い出すのも、何故相手が臼田うすたさんだと知ると喜んだ様子を浮かべるのか

「女、あの犬顔を見てるとどんな気持ちになる。」

「"気持ち"…ですか?臼田うすたさんを見ていると、何だろ…鼓動が速くなるような、熱くなるような感じがします」(何真面目に答えちゃってるんだろう…。)

「不整脈か?」

「そんなわけないじゃないですか!本当になんですか………?」

好きな人を見てドキドキとかしますでしょ!?
相手を思うと熱くなったりするでしょ!?
それを不整脈と言われちゃ話にならないのでは…
(セカンドオピニオンをご所望したい…。)

「よし、俺も行こう。」

「どこへですか?」

「女、鳥頭か?様子を見に行くと自分で言っただろ。」

「え…………、何するつもりですか……」

「だから様子を見に行くんだ。女……大丈夫か?」

「(朔夜さんが何かしないか)心配で…」

私は朔夜さんを警戒しながらも一緒に行くことを了承した
書く事と食にしか興味を示さない朔夜さんが、重い腰を上げた事には驚いたが、流石に眠っている人に危害は加えないと思った

だけど…私はこの時感じたものを無碍にしてはならなかった
思えば少し楽しそうにしていたし、手には飲みかけのペットボトル
おかしいと分かっていたけど、臼田うすたさんにばかり気を取られていた私は、それに反応すら出来なかった
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