逍遙の殺人鬼

こあら

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「だからね、"ツナ"と"シーチキン"は違うのよ。ツナは一般にビンナガマグロやキハダマグロ、カツオなんかで油漬けや水煮の缶詰を言うの」

「……。」

「それでシーチキンは、ツナ缶の商品名なの!tunaツナ=マグロって訳されることが多いのよ」

「分かった、分かった。つまりこれはマグロじゃないって事だな?それでいい?」

「分かったならいいよ。じゃあ、これは?」

「ツナ!」

「シーチキンだよ…」

見た目はほとんど変わらないから、仕方ないと言えば仕方ない…
食べると少し味が違うし、油の感じも違う
料理されればそれはあやふやになるけど…

そんな変なやり取りをしていると、春さんが目に映る









手にシャンパンを持っている春さんは「楽しそうね。」と微笑んでやって来た
主催者は見つかったものの、欲しかった情報は得られなかった様子だった
どうやら本人は情報を持っていなかったようだ

「どうやら明日来るもうひとりの主催者が情報を持っているみたいだわ。今日のは名前を出してるだけで計算もろくにできないようなアンポンタンだったわ。」

「"アンポンタン"…ですか…。それじゃ、今日は収穫なしですね。残念です…」

「そんな悲しい顔しなくて良いのよ。元々3日連チャンって聞いてそんな様な予感はしてたし、それはジャンも同じよ。」

「そういえば、…ジャンさんは?どこに行ったんでしょうか?」

屋敷に入るまでは一緒だったのに、いつの間にか居なくなっていった
ギュウ君も同じくらいの時に一瞬姿を消してさっと戻って来た

トイレにしては長すぎるし…
情報を持っていると疑っていた主催者は、春さんが突撃した
そもそも、どんな情報を求めてやって来たんだろうか?
一緒に行くのよと言われて細かい説明を受けないままやって来てしまった、アウェイな私は何も出来ずにここに居るだけだ

「ジャンならさっき女と一緒に居るの見たわよ。」

「"女"…ですか?誰ですかね?」

「政治家のおばはんよ。きっつい香水とベッタリ塗った真っ赤な口紅が特徴の。アタシ嫌いなのよね。汚染された気分になるから。」

("政治家"…)「それってもしかして…」

私に敵意剥き出しにしてきた、…かな…?
胸の奥ら辺が、ザワッとした
もし当たっているのなら、私は会いたくない

(あの人と…一緒に、居るのかな…?)

腕を組んで
体を密着させて
つけた香水の匂いを移して
作り声と偽物の笑顔に酔いしれているのかな…

「ちさ?」

「ごめん…ちょっと、この人波に酔ったかも。風に当たってくるね」

気持ち悪かった…
勝利の笑みを浮かべるあの人の微笑む顔と、手にしたわと言わんばかりに見せ付ける態度を想像するだけで吐きそうになった

こういう大きな屋敷の良いところは、広い通路のようなベランダと腰掛けられる椅子があることだ
立ってなどいられないくらい気分が悪い
そんな私の背を優しく擦る手に驚いて隣を見る

「大丈夫か?」

「ギュウ君……」

「無理に話さなくていい、これ水。急に…どうしたんだ?さっきまでなんとも無かったのに。」

「…何でもない。ちょっと、疲れただけだよ。ありがとう、心配してくれて」

心配させないようにと少し無理をした
顔に力を入れて、仮面を被るみたいに笑顔作った
それなのにギュウ君は「泣くほど辛いのか?」って痛い所を突っついてくる

泣いた覚えなんて無いのにって思ったのに、頬を伝ったひと粒の涙に動きが停止した
何で泣いてるんだろう?って言ってみても、答えなんて出なくって、もちろんギュウ君も答えは言ってくれない
ただ静かに抱き締めてくれた
顔を隠すように、泣き顔を出さないように

何も言わずにしてくれたその行為に、溜まりかけた涙はまぶたに押しやられて出て行ってしまう
バルコニーに光指す所から一歩遠くに居る私達は誰にも悟られることはなく、私は静かに涙を流した
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