逍遙の殺人鬼

こあら

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何か、分からない何かが喉のところまで上がってこようとしている
それを抑えるのに必死な私は、進むことも戻ることも、逃げることも出来ない

匂いの記憶とは酷く生々しくて、明瞭的で脳内の平穏を乱すみたいに荒らす
それに触発され、視界で捉えた情報がより記憶を身近なところまで引き上げる
(最悪だ……)

「どうしたの?こっちに来て。」

「ん?貴女…。」

「如月さん、紹介するよ。彼女は、」

「知ってるわ。レイモンドの助手でしょ。このパーティーに来てたのね。」

「"助手"?」

そう、この女性は…私のことをレイモンドジャンさんの助手だと思ってる
(助手というのは嘘だけど…)

私はその和の中に近づいた
足元が震える
呼吸もうまく出来てる気がしない…
女性の顔を見るだけで、何だか物凄くこの場から去りたいと思ってしまう









潤さんは、私の手を取り優しく引いた
「レディ?」と私の顔を少し覗き込んで、和の中に入れようとする

(そうだ、潤さんは…知らないんだ……)

潤さんは、しか知らない
こんな、助手と偽って人を騙したりしてるなんて、思ったりもしてないだろうな…

私は、今更ながらに思った
今………こんな状況下で、潤さんが助手について何かを話してしまったら…
大変なことになってしまうと
その思考が生まれた瞬間、私はグッと手に力が入った
今彼が変なことを言ってしまったら、間違いなく私はあの人に場所を奪われてしまう
このパーティーから出ていけと言われるかもしれない

それだけは、嫌だった
これ以上、2人しか知らない何かを作ってほしくないと、心の奥底で小さく囁いていた

「驚いたわ。鳩屋さんは助手の方と知り合いだったのね。」

「…ふむ。」

「まさかとは思うけど、ついに助手にまで手を出し始めた…なんてことはないでしょうね?」

「まさか。そんな風に言われては、まるで私が日常的に不純行為をしているみたいではないですか。彼女とはそんな仲ではないよ。」

潤さんはそれ以上細かくは話さなかった
私はその事に一時の安堵を覚える
しかし、それもつかの間で、如月さんと呼ばれたあの人が私に鋭い視線を向けた

「貴女助手でしょ。どこで油を売っていたのよ。」

「っ、すみません…」

考えてもいなかった質問には、すぐには答えられなかった
そりゃ、ウェイターを騙して本来入れない部屋に無理矢理入っていただなんて…言えるわけない

気に食わない回答に、如月さんは眉をひそめた
背筋が凍るかと思った

「私が言ったんですよ。あなたと2人っきりにしろと。」

「あら、そうなの?何だか悪いわね。」

(そんなこと言われてない…)
パーティーここに来てから、ジャンさんとはあまり顔を合わせていない

ずっといないと思ったら……ずっと如月さんとい居たんだ…
2人で……なにしていたんだろうか…
知りたい………でも、知りたくない…と矛盾極まりない感情に私は振り回されている

「もう終ったのか?」

「っえ…」

だよ」

(…もしかして、春さんに頼まれたやつの事…?)「…、はい。終わりました」

「そうか」

私が春さんに頼まれた時…ジャンさん、居なかったよね?
どうして知ってるの?

不思議な心境下で、思わずジャンさんと口に出してしまいそうになった
だけど、「貴方でしたか、さんと言う人は。」と言う声に少し開いた口が反射的に閉じた
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