彼は死神

こあら

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34 『お兄ちゃんは神様なの?』

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セツさんセツさん。」


「んぁ?…何度聞かれても言わねぇぞ」





耳元に近寄り彼以外に聞こえない大きさで話す









「私も、愛してる。」





「っんな!何で…っ」




「えへへ」



何で知ってんだ?っと顔を真っ赤にしてうろたえる



私はそんなセツさんをにやにやしながら見ていた



「っだ、あれは、わかるわけっ…」


明らかに動揺している



「そんなに想ってくれて嬉し。」


「っ…。」


「2人だけの秘密ってことね。」


「…。」


「っ⁉」



顔を横に向け、ちゅっとキスをする


「っな、いきなり…卑怯…」


「んな可愛顔するから」




イタズラにキスをされ立場が逆転しする




「ほ、微笑ましいですね。」

「あれ?ヒロくん仕事は?」




「…。ばつ…?」



「乳くりあっていところ申し訳ないのですが、花穂カホさんにお話があります。」


「乳…、言い方考えろ」


「?」













「実はあまり良いお話ではないのですが、裁判でお嬢さんの過去が明らかになりました。」



「私の過去ですか?」


表情1つ変えずに話し始める眼鏡さんは落ち着いて話を続ける


だけど


内容は悲惨なものだった








5歳の時に両親と車で出かけ、自動車事故に遭い3人とも瀕死状態になってしまった


車からはガソリンが垂れ流れ、引火し、黒煙を出しながらジリジリと暑さを増していた

人通りは少なく誰も事故が起きていたとは思っていない


幼かった私は体を動かすことが出来ず声を出すこともできなかった

煙が喉を通って肺を燃やすように熱くする
動くことのない体とむせ、咳が出る音が残されていた


心の中で両親の名前を呼んでも当然返事は返ってはこない


このまま死んでしまうのか…、小さいながらにもう自分の命が短いことを悟っていた





そんな風に強く心の中で叫ぶと、神々しい見た目の人物がどこからか現れ、手を差し出し微笑む

優しげな雰囲気で近付き、燃えはじめた車の中から私を連れ出し少しはなれた場所に寝かせ不思議な力で傷を治した


痛みが消え、動く体に驚きながら自分を助けてくれた人に目を向ける


柔らかな白い髪に透き通った肌

垂れぎみな目でこちらを見ていた








『お兄ちゃんは神様なの?』


『ううん。僕は守護神。君を護る者だよ。』


『天使?』


『そうだね。天使みたいな感じかな。』


『凄い!!っあ、じゃぁパパとママのことも助けてくれる?まだ車の中で寝てるの。』


『助けたら、君は僕に何をくれるのかな?』


『うーん。そうだな~。…あっ!じゃぁ、天使さんのお嫁さんになる!』


『お嫁さん?』


『うん!本当はパパのお嫁さんになるつもりだったんだけど、天使さんのお嫁さんになってあげる。』


『…。っふ、わかったよ。君は今から僕のものだ。君の名前は?』


『かほだよ!』


『かほ。約束だ。僕のかほ。』















一気に眠気に教われそのまま眠りについてしまう



目が覚めた場所は今は見慣れた孤児の施設だった



施設の人に説明されたのは、両親は車の中で燃えて亡くなってしまったこと

私はたまたま近くに居た人に見つけてもらい保護されていたこと



自分が居るこの場所は両親が居ない子供がいる場所


大人になるまでここで暮らすこと




そして、私は事件の日から1ヶ月も眠り続けていたことだった…










「また、お嬢さんが居た施設の背後にいたのが例の守護神でした。彼は、自分の目の届くところにお嬢さんを起き監視していたようです。」



「そんな…。両親を助けてくれるって約束したのに…、見殺しにしたんですか?」



「まだ調査中ですが、恐らくそうかと。」



(事故の記憶は残ってないけど…、シュンさんがそんな人だったなんて…)


残酷な真実に私は顔を青ざめる



そんな様子を見たセツさんは大丈夫か?と寄り添う



「それから、もう1つ重要な話をします。お嬢さんの処分が決まりました。」






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