オムニバス

musimaru

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オムニバス

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「爪」

「行くか?」
と、会社を出て飲むふりをしながら声を掛けてきたのは同僚の山嵜だった。俺は一杯やって帰ろうと思っていたところだ。

 今や、医学の進歩は目覚しく、平均寿命は百二十歳を超えている。難題は精神の病である。肉体の病気による死者を自殺者が追い抜いたのも記憶に新しい。俺たちは駅近くのバーに行くことにした。
「お前ンとこのヴァーチャルルームは大盛況だな」
 久しぶりのテキーラのロックを舐めながら俺は言った。山嵜は三次元映像を場所を選ばず映し出す技術を開発し、商品化した。中でも人気なのがヴァーチャルルームだった。三坪から十坪の漆黒の壁に囲まれた部屋に客は入る。予めコースを決める訳だが、それが好評だった。
 牧歌的な風景から戦場、はたまた未知の空間まで、客がカスタマイズできる。風雨や振動はリアルだった。人物も登場させられる。これが個人ユーザーを爆発的に増加させた。
 幼くして亡くした我が子のデータをインプットし、成長のシミュレーションを自然言語を使い、会話をしながら楽しむ。自身の過去のデータを入力し、人生をやり直してみる者もいれば、将来の予測に役立てる者もいる。個人所有も相当数に上る。
 コンピュータの発達がこれらを可能にした。
「まあね。これだけ寿命が延びた上に休暇が増えるとさ、やりたいこともなくなるしね。ただ……」
と、山嵜は言い、アーモンドを一つ放り込んだ。
「ただ?」
俺は山嵜の横顔を見て言った。山嵜はグラスの中で琥珀色に光る氷を見つめながら言った。
「うん、ヴァーチャルな世界に浸り過ぎてさ、現実に戻れない者が出始めたんだ。この間、ひとり死んだ」
俺は、当然だというように頷いた。
「だが、それは前もって分かってたんだろ。そのためのリミッターじゃないのか」
「いや、あれは精神作用による肉体の変調を感知するだけで、心を制御する装置じゃないんだ。今のところ、過失による事故死として対応できそうなんだが、対応プログラムか何らかの装置は開発しなきゃならないな。ところでお前、試してみたか? 一度やってみるといい。作った俺が言うのもなんだが、なかなかだぜ」
 俺たちはワンショットを追加し、それからとりとめのない話をして別れた。

 マンションの部屋のドアに立ち、パネルに触れた。全身スキャンがなされドアが静かにスライドした。
「お帰りなさい、早かったのね」
と、妻が微笑んだ。俺は一杯引っ掛けてきたことと、山嵜の言ったヴァーチャルルームの事故について話した。
「ふーん、新しい麻薬ができたみたい。依存症って怖いわね」
と、眉間にしわを寄せた妻が言う。
 確かにその通りだ。中毒になるまでそうなったことに気づかないが、なったときには自分が病気だと認めなくなってしまう。厄介なものだ。
「ね、次の連休、海に行かない? 久しぶりにヨットに乗りたいわ」
と、目を輝かせながら妻が言った。
 連休と聞いて山嵜の言葉を思い出した。天皇の容体が危ないということだが、なるべくなら重なって欲しいものだ。今や二日以上の連続休暇は年間で八十回を超えている。出勤するのが十日なんて月もあるほどだ。
 AIの進歩のおかげだが、これ以上我々のやることがなくなると、何のために生きているのか分からなくなる。シャワーの後、ハワイを約束し、ベッドに潜り込んだ。

 翌日、山嵜と昼食を共にしていた。昨日のことが気になっていたためだ。食後のコーヒーを飲みながら山嵜が声を潜めた。
「今朝、また一人」「死んだのか」
「ああ。参ったよ。TV局やら出版社やらからの問い合わせで午前中は仕事にならなかった。この分じゃあさってからの連休はなしだな」
 今朝の被害者は二十歳の男性だった。山嵜によれば、その青年は自宅に購入したヴァーチャルルームに、三日居続けたそうだ。彼がインプットしたデータはカスタマイズした美女で、どうやら食事も採らず戯れていたらしい。リミッターをオフにしていたのだ。
 ヴァーチャルルームでは映像を実体化させることはしないが、たとえば、ヒト型の場合、全身真っ白な精密なアンドロイドを映像とシンクロさせられる。だから表情の豊かさはお手のものだ。髪の毛も肌の質感も人並である。小型の内蔵ポンプの働きで呼吸までする。汗もかく。つまり、日常的な活動では人間と見分けがつかない。
 彼にとって理想の女性だったのだろう。幸せに生を全うしたに違いないと俺は言った。そうかもしれないと頷く山嵜は何を思ってこれを開発したのだろう。なぜリミッターにオンオフ機能を取り付けたのだろう。
 山嵜はコーヒーをカップに半分ほど残したまま、忙しげに戻っていった。
 帰宅途中、エアバスに乗り合わせた高校生の声が耳に入った。
「なかなか進まねぇんだよ」と、髪の毛のない方が言った。
「オレもだよ。だいたいそうなんじゃね、親がさ」と、やはり髪の毛のない子が応える。
「そうそう、リミッターにロックかけてんの。アツくなってきてさ、ここってときに消えちゃうんだよな」
「無理だよ。敵をやっつけたとき興奮すんじゃん」
 いつの時代も子どもには手を焼くものだ。ヴァーチャルルームは自分自身も画像を纏うことができる。毛髪のない者は年齢や病気によりそうなった者以外、間違いなくヴァーチャルルームを使っている。流行りなのだ。

 いつものように、ただいまと部屋に入る。
「お帰りなさい、早かったのね」
 妻はいつも同じことを言う。だが、俺はそれがいいのだ。食事を終え、ソファに腰掛け野球中継を見ていた。立体映像で見る試合は臨場感に溢れている。九回裏二死満塁、フルカウントでピッチャーが投げたとき俺の前に妻の顔があった。
 あっ試合が、と言うのを遮ったのは妻の柔らかい唇だった。試合は見逃しか空振りで終了したらしい。俺は手探りでリモコンを探し当て、テレビを消した。これから妻との対戦に没頭しなければならない。

 翌朝、山嵜が深刻な顔で近づいてきた。
「昨日、あれから五人死んだ。このままじゃ販売中止どころか製造禁止になるかもしれない」
「七人か……。だが、それは特殊な事情によるものだろ」
 と、俺はこともなげに言った。
「それがそうとも言えない。PTAが告発の準備をしているようなんだ。使用者がみな命を落とすことになるってね」
「それを覆すことはできないのか」
「今のところ……、ない」
 俺たちの会社は小さなゲーム制作会社だった。五年前、山嵜が大手から転職してきたことがきっかけで、VRの開発が加速した。
 二年前に販売を開始したヴァーチャルルームは、瞬く間に世界に広がった。今後は精神疾患に応用しようと、医療分野への進出を目論んでいた矢先だった。
 勿論、この技術を後押しする者も多数いる。だが、死亡者の増加はそれらを一蹴してしまう。このままでは損害賠償問題に発展しかねない。そうなれば次世代へ向けての開発どころではなくなる。銀行も融資はしないだろう。
 そんなことより、俺は妻との平穏な毎日を邪魔されたくなかった。
「なぁ、精神疾患の臨床データはないのか」
「いくつかあるけど、それをどうする」
 山嵜はウィスキーのロックをダブルでとオーダーしたのに、シングルのグラスが二つ置かれたときのような顔で言った。
 人の造ったものの多くは諸刃の剣である。幼子が虫眼鏡で一旦火を熾してしまえば、山一つ燃やし尽くすのは簡単だ。
 俺は山嵜に、改めてヴァーチャルルームの効用をアピールしてはどうかと勧めた。
「そうか、相殺させる訳か」
 雲間から陽が射したような顔で山嵜は言った。彼は根っからの技術屋だから、ことシステムについては直球しか投げられない。俺は広告畑が永い。情報操作による世論形成は何度かやったことがある。
 この問題も、そろそろ開発部門だけに押し付けてはおけない状況になってきた。俺は山嵜と別れた後アドルームに向かった。
 コンソールを前に、企画書を小一時間で書き上げ、推敲すらしないままルームリーダーに送った。山嵜にメールすることも忘れなかった。
 山嵜からの返信は、それから一時間ほど後だった。開発部のリーダーも俺と同じような企画を上げたらしい。とすれば、あとは必要経費を何とか捻り出すだけだが、それは難しいことじゃない。

「ただいま」
「お帰りなさい、早かったのね。あら、どうしたの」
 俺は浮かない顔をしていたらしい。大したことじゃないと昼間のことを話した。
「でも、このシステムがなくなったら……」
 心配しなくても俺が何とかすると肩を抱き口づける。俺の肩に四千グラムの頭がもたれかかる。

 ヴァーチャルルーム使用中での死者は日に日に増えていった。会社は休日出勤を決め、社員は総出で被害者やマスコミの対応に追われた。
 俺の提出した企画はすぐに実行に移された。あらゆるメディアを通じ、ヴァーチャルルームをアピールした。政治家や経済団体の力も借りた。もっともそれは表立ったものではないが。いや、むしろアイドルの起用が効果的だった。だが、情勢は押し相撲のように一進一退を繰り返していた。
 山嵜が青白い顔をしてやって来た。目がうつろのまま俺の向かい側に腰掛けた。そして、独り言のように話し始めた。
「今さっき爆破予告があった。畜生、何なんだ一体。俺、そんなに悪いマシンを作ったのか……」と、頭を抱え込む。
 俺は驚きを抑えながら山嵜の顔を覗き込んで言った。
「その出処は判ったのか。悪戯だろ、どうせ」
「……どうもそうでもないらしい。例の国際的なテロ組織の名があった」
と、山嵜は切れ切れの声で言った。それは、近年世界のあちこちで爆破テロを起こしているカルト集団だった。本当なら安穏としてはいられない。
「警察へは」
「ああ、連絡した。だが、どこまで本気なのか。なにしろ鈍感だからな、この手の類にはさ」と、山嵜はかぶりを振りながら言う。
「で、いつなんだ」
「明日の正午」
 と、それに合わせたように呼び出しがあった。タブレットを見ると、大会議室へ来いという緊急連絡だった。俺は精気のない山嵜を促しながら会議室に向かった。
 そこには警視庁から幹部らしいのが三人と、社員は全員が集まっていた。幹部の一人は、悪戯の可能性もあるが、テロ組織の名前があるということを考慮し犯行予告時間まで警戒態勢を敷くことを告げた。
 それを受けた社長が、今日から三日間の業務停止と自宅待機を命じた。

「ただいま」
「お帰りなさい。早かったのね」
 妻は爆破予告のことを知っていた。警察が本気になったということか、メディアが競うように情報を流していた。
「わたし、怖いわ」
 ここが爆破される訳ではないから大丈夫だと、震える妻を抱き寄せる。だが、妻の震えはなかなか治まらなかった。
「予感がするの」
「予感?」
「そう。全部消えちゃうんじゃないかって」
「はは、仮に予告通りに爆破されたとしてもさ、ビル一つだよ」
「でも、そこにホストコンピュータがあるんでしょ」
 その刹那、俺は何かを思い出さなければならないことに気づいた。それはとてつもなく恐ろしいもののように思え、俺は思わず妻を抱きしめた。
 妻が言うように、本社ビルの地階、駐車フロアのさらに下に、全てのヴァーチャルルームを管理するホストコンピュータがある。ここを爆破されたら世界にあるヴァーチャルルームはシャットダウンしてしまう。
 仮想世界が消えてしまうだけだ。大したことはないだろう。俺はそう思い込もうとした。だが、すぐにそれを打ち消す俺が現れた。
 本当にそう言えるのか。そもそもお前にとっての現実とは何だ。世界を動かしているのは人工知能だ。意思決定のほとんどをコンピュータがやっている。お前の体は本当にお前の体なのか? そう思い込まされているのかもしれないぞ。脳科学の発達は目覚しい。思考をコントロールするのは難しいことじゃない。
 何を馬鹿な。俺はかぶりを振ってそれを打ち消した。
「どうしたの、急に黙って」
と、体を離し訝しむ妻を、何でもないさと再び抱き寄せる。事故に備え沖縄にバックアップデータを随時送っているし、そもそも俺も妻もリアルな存在なのだ。
 俺は妻をベッドに誘い、まるで点検でもするように妻を愛撫し体を重ねた。
 
 いつの間に眠ったのだろう。目覚めると妻がテーブルに食器を並べていた。
「おはよう。十一時過ぎよ」
 俺は反射的にベッドから起き上がったが、すぐに大の字になった。
「あと一時間か……」
 天井を眺めても白以外何も見えない。何も考えられない。
「さあ、起きて。仕度ができたわ」
 俺はああと小さく呟いてベッドから出た。
 マンデリンのカフェオレは旨い。妻の焼いたマドレーヌとの相性が最も良い。毎日これでいいと言うが、栄養が偏るからと、テーブルに貝が顔を出すのは月に二度ほど。甘やかな味と香りが口中に広がる。
「あと少しね」
と、妻は言いながらテレビのスイッチを入れた。
 すぐに空からの映像が映し出された。そこには俺の会社があった。警備車両や警察官がものものしい。俺は画像を二次元モードにした。マルチタスク画面の一方ではキャスターが何かの評論家らしい男としたり顔で話している。
 何かを思い出さなければならなかった。
 俺は妻の横顔を見た。妻は食い入るように画面を見ている。そのうちに昔のことが蘇ってきた。
 妻は、山嵜が入社した年と同じ五年前、新入社員として開発部に配属された。キャリアは山崎の方が永いけど、同期なの、と妻は山嵜に会うたびに確かめるように言う。
 三人でよく飲みに行った。遊びもした。そのうち山嵜が結婚。自然に二人で会うことが多くなった。むしろ妻はそれを望んでいたかのようだった。奢りが狙いだったのかもしれないがよく誘われた。
 ある日、いつもの店で飲んだあと、
「ねえ、私たちも結婚してみない」
と、妻が言った。電車のドアが閉まる寸前だった。妻の瞳には俺の顔だけがあった。
 時折すれ違う電車の、幾筋もの過ぎ行く光と間を埋める闇、その両方を背景に、動かないさっきの妻の顔を、俺は呆として眺めていた。
 俺と妻が結婚したのは、それから半年後だった。そこに妻がいるとなにか不自然な、食器棚に新しいグラスを並べたときのような、だがそれは心地よい違和感の連続だった。
 半年が経ち一年が過ぎる頃には、いつの間にか俺の方が妻にぞっこんになっていた。何時でも何処でも一緒にいたかった。
 休日はよく出かけた。朝日が見たいと妻が言えば海へ行き、雲海が見たいといえば山頂を目指した。それらを見ながら妻は深呼吸をする。広げた腕が全てを受け容れようとしているかのように。
 俺は妻を見ていた。
 ヴァーチャルルームが売り出された頃、妻に冒険がしたいと言われたことがあった。俺は思案の挙句、急流下りを選んだ。冒険には程遠いが、スポーツに縁のない妻には丁度良いと思った。
 川の上流は蝉の声が暑苦しかったが、十人乗りのボートが動き始めると、涼やかな風が心地よく、行く手に急な流れが待ち受けているとは思えない。穏やかな流れを暫く進む。
 俺と妻は岸に突き出した巨岩に驚き、遠くで跳ねる魚を喜んだ。いよいよですよと言うガイドの声に前方を見た。それまでの安穏とした空気を一息で吹き飛ばすような大蛇の、のたうつ白い筋が続いている。
 と、ボートの速度が増したことに気づいた。頬を撫でていた風が冷たく感じられるようにもなった。みるみるうちに大蛇の口が近づく。船体が傾いたかと思う間もなく、左に緩くカーブしている泡立つ流れに突入した。ボートの取っ手を強く握り締め一つ目をやり過ごす。水しぶきが顔と言わず降りかかっている。
 拭き取る間もなく二つ目が近づいた。さっきとは違い、力の入れどころは心得ていた。右カーブ。他の客たちの歓声が聞こえる。三つ四つと下るうち、妻が楽しいわと言った。
 陽の光に輝く顔や髪の毛の雫が、俺に妻を美しいと思わせる。
「次が最大の難所です。しっかりつかまって」
と、ガイドが少し大げさに言った。そこは傾斜三十度ほどの左に緩くカーブした場所だった。ただ、落差が五メートル近い。
 突入してすぐ加速度を感じた。ガイドがあっと言った。

 次に見たのは病院の柔らかな照明のある白い天井だった。ゆっくりと顔を巡らしてみた。いくつかのベッドが同じ方向に並んでいる。看護師がいたりいなかったりしている。微かに計器の音がする。ICUらしい。
 俺はガイドの叫びともつかない声を思い出していた。事故に遭ったことは容易に想像がついた。だが、何が起きたのだろう。そう思った途端、俺は起き上がり、脇に並ぶベッドを一つ一つ確かめた。だが、妻はいなかった。
 俺は息を吐き、再び横になった。その時になって漸く頭のネットと左眼の眼帯に気づいた。痛みはない。けれども、混濁した意識に戸惑っていた。
「気がついたか」
と、俺の顔を覗き込む男がいた。山嵜はそのままベッド脇の椅子に腰掛ける。俺はぼんやりと頷いた。
「驚いたぞ。実はな……」
 山嵜は俺の表情を窺いながら、ゆっくりと話し始めた。俺たちの乗ったボートが最大の難所に差し掛かったとき、ガイドが見たのは、流れを遮るように横たわる三メートルほどの潅木だった。それはボートが乗りかかってもびくともせず、むしろボートを転覆させる役を演じた。
 ボートは、ちょうど銃弾がライフルに沿って回転を得るように、スムーズに逆さまになった。投げ出された俺は硬いものに頭部を強打したらしい。そこまで聞いた俺は、
「妻は? 大丈夫なのか」
と、まだぼんやりする意識のまま言った。
「ああ、彼女は元気だ」
と、山嵜はやや目を逸らしながら言った。
「なぜ来ないんだ」
と、俺は訝しんで山嵜を見た。
「しばらくは動かせないんだよ。腰を強打したんだ」
と、山嵜は予め用意していたように言った。
「生きてるんだな」
「ああ、勿論だ。もう、あと二三日で会えるらしい。医者の話だ」
 俺は、と聞くと、
「検査結果によるらしい。やはり数日はこのままだ」
と、諦めろとでも言うように笑う。
 それから四日後に俺は妻と再会した。互いの無事を喜びながら、俺は妻を改めて美しいと思った。

 テレビの片隅にはタイマーが表示されていた。カウントダウンが続けられている。あと残り一分を切った。ビルの周囲に人影は見られなくなっていた。
 妻はものも言わずに凝視を続けている。その横顔を俺はやはり美しいと思った。どこか人工的な匂いの漂う顎のラインが好きだった。
「あと五秒よ」
と、妻が乾いた声で言った。俺は視野の隅で時間を確かめながら、それでも妻を見ていた。ああ、と言ったとき妻が白くなった。
「ぎゃっ」
と、俺は俺らしくない声を張り上げて椅子から立ち上がった。
 髪の毛と顔を構成するパーツはそのままだが、肌の色だけが新雪のように真っ白なのだ。
 妻はテレビの画よりもむしろ俺の声に驚いている。俺は、どうしたのと言う妻の声を聞き流しながら、山嵜に連絡すると言い別室に入りドアを閉めた。
「俺も今連絡しようと思ってたんだ。地下のシステムがお釈迦になった」
「ああ、中継を見た。それより、どういうことだ? 妻がアンドロイドになったぞ」と、俺は声を押し殺しながら言った。
 山嵜の溜息が聞こえた。
「今何時だ」
「何を寝ぼけたことを言ってる。それどころじゃないだろ。俺の妻が」
 それを遮って山嵜が言った。
「錯覚だよ、錯視だよ。確かめてみろよ」
 俺はすぐにセキュリティシステムにアクセスした。映し出された映像には、コーヒーを片手にテレビに顔を向ける妻がいた。だが、俺の疑念は消えなかった。
「……という訳なんだ」
 俺は山嵜との通話を思い出し意識を耳元のタブレットに向けた。
「おい、聞いてんのか」
「あ、ああ。すまない、妻を、確かめてた」
「で? どうだった」
「ああ、確かに妻に戻っていた」
「いや、だからな」
「うん、そうかもしれない。だが、あのとき……」
「まあ、今晩ベッドでためしてみろよ」
「ばか、何言ってんだ。まったく」
 山嵜は忘れてしまえというように、タブレットの向こうで笑っている。
 俺は気を取り直して言った。
「システムが破壊されたって言ったが、バックアップがあるだろ」
「ああ、沖縄にあるサブシステムが既に稼動している」
「これからどうする」
 俺たちは会社に出向くことにした。
 支度をして、さて出かけようかというときに、テレビドアフォンが来客を告げた。ビュワーには見知らぬ男が二人、立っている。誰何すると、俺の会社のメンテナンス係だと言う。山嵜の指示だと、無表情に言う。
 訝しみながらも、俺はドアを開けた。二人は黒い眼鏡をかけていたが、これほど大きいとは思わなかった。背丈が二メートルを超えている。
 行ってくるよと声をかけたが、妻は通話中だった。そのままドアが閉まってからすぐ、意識が遠のいた。

 沈黙の闇に浮遊し、何億年か数秒か。時間と空間が逆転したまま、永さに縛られない感覚は初めてのことだった。
 このままでいい、永遠という時があるのなら今がそうなのだ。待つ必要もなければ追いかけることもない。
 闇の彼方、彼方? 否、それは目の前かもしれない。そこから、微かな、ほんの小さな、だが、たしかにそれは体積を持っていた。それが、表現する言葉を思いつくより速く通り過ぎていった。
 それを合図に、今度はあらゆる方向から夥しいそれらが、次々に俺に向かって来た。眩しいと思う間もなく目の前が真っ白になった。と、山嵜の顔があった。
「大丈夫か」
 この心配な顔は、前にも見たような気がした。ベッドに横たわったまま俺は言った。
「ああ」
 山嵜は俺が置かれた状況を説明し始めた。妻と川下りに行った際に事故に遭ったらしい。だが、その記憶、つまり山嵜が俺に話した内容を俺は既に知っていた。
「ちょっと待ってくれ。俺、お前の言うことを知ってるぞ」
 そのときの山嵜の、一瞬だが驚いた目を俺は見逃さなかった。山嵜は俺の視線に気付くや、照れを隠すようにやや浮かれて、
「ホントか。お前、頭を打って超能力でも身に付いたんじゃないのか」
と言いながら両手で俺の頭を覆った。
 気が遠くなった……。
 ……奈落の底にいる自分に、天上から強烈な光が一筋突き刺さってきた。
 山嵜の不安そうな目が二つあった。
「気がついたか」
「ああ、ここは?」
 会社の仮眠室だった。山嵜によると、俺は地下にある資料室に近い、階段の途中で気を失っていたそうだ。それを聞いて、資料を取りに行く途中で何かに足を取られたことを思い出した。
 俺はベッドから起き上がった。首を二三度左右に傾け、頭を軽く振ってみた。
「大丈夫か……。後頭部をしたたか打ったらしいが」
「ああ、なんとかな。もう痛みがないから」
「今日は帰ったほうがいい。念のために病院に行ってみたらどうだ」
「……ああ、そうだな。そうしてみるよ」
 少しふらつきながら会社を出た。午後の診療には間に合う時間だった。
 それにしても、なぜ転んだのだろう。そう思いながら後頭部に手をやってみたがどうもおかしい。強打による皮下血腫らしいものが見当たらないのだ。
 山嵜の話通りなら、ない訳がない。それに、階段で転んだのなら他にも打撲の跡がありそうなものだ。肘やら膝やらも痛めているはずだが、疼きすら感じないのだから跡も残っていないに違いない。
 不思議な気分のまま、俺は空を見た。頭上遥か上空を、飛行機雲を曳きながら進む、航空自衛隊の戦闘機だろう、それが見えた。
 推進器付近では凄まじい勢いで反応が起こり、雲を形成しているのだろうが、地上からは澄明な、しかし深い青の世界に穏やかに着実に裂け目を入れていく。
 このまま空が裂けて言ったら、そこから何が出てくるのだろう。形而上的な考えが頭を過ぎった。
 異変はその時起きた。
 空は依然として青一色そのままだが、飛行機雲の一部が直線ではなくなっていた。飛行機雲はその性質上、時間とともに拡散し離れるほど幅が広くなる。だが、今俺の見ているそれはそうではなかった。いくつもの小さな長方形が重なり合っていた。
 こんな端正なモザイクが自然にできる訳はない。俺は目を瞬かせ再び空を見た。やはり一部にモザイクがかかっている。しかも、さっきよりやや広がっている気さえした。
 目をこすってもそれは消えなかった。側頭部を掌底で叩いてみた。叩くたびにモザイクの場所が変化した。俺は慌ててパンツのポケットからタブレットを取り出し、急いで自分の顔を映した。
 瞳を見た。光の加減で虹彩が微細な動きを見せている。動きは滑らかだ。俺はあることに気づいた。僅かに震える指で、おもむろに瞼をめくってみた。
 毛細血管で埋め尽くされているはずだった。だが、俺のは違っていた。皮膚と同じ色で、むしろ艶めいている。
「そんな馬鹿な」
と低く呟いた。落ち着け落ち着け目の手術の結果だともう一人の俺が繰り返す。ふと俺の目が、左手を顔の前に誘った。爪が親指から小指にかけて切り揃えられている。
(切り揃う?)
 俺は、できる限りの記憶を、些細な日常のそれを思い出そうとした。だが、これまで自分の爪を切った情景は蘇ってこなかった。髪の毛は行きつけの店があるし、髭はホルモンの影響により生えない体質だと医者に言われていた。だが爪は、手も足も手入れをしたことがない。
 その刹那、俺を恐ろしい思いが貫いた。俺は母親の乳房も父親の腕も覚えている。幼い頃からのその時々の記憶もある。だが、爪は。やにわに俺は、全速力で駆け出した。
(妻に、妻に聞いてみよう。俺は爪を切ったか)
 モザイクの範囲はさらに広がっていた。左眼の左の視野がすべてモザイクになっている。そこだけが、右眼の左の視野に映る景色と重なって見えるのだ。
 走りながら妻に電話をかけた。だが、聞こえるのは妻の明るい声ではない。留守録を告げる機械的な女性の声が遣る瀬無く響いた。
 数分後、俺は一人部屋にいた。テーブルやソファはあった。テレビも食器棚もあった。だが、フローリングにしたはずの床が黒かった。妻の好みに合わせて張り替えた天井と壁も真っ黒だった。
 俺はさらに慌てた。恐ろしさがそれをかき混ぜる。思考の手順を忘れてしまっていた。部屋を歩き回る。ソファに腰掛けたり立ったりを繰り返す。窓を開けベランダを見る。
 山嵜から電話があったのはそんな時だった。
「医者はどうだった。異常なかっただろ」
俺が話し出す前に出し抜けに山嵜は言った。俺は、行かなかったと、ポツリといった。
「何、行かなかったって! そいつはまずいな」
舌打ちが聞こえたが俺は構わず、視界にモザイクが見えたことから部屋がヴァーチャルルームだったこと、妻と連絡が取れないことをまくし立てた。そして「なあ、俺、爪切ったことあるよな」と言った。
 話し終えて暫く、山嵜は溜息をついたり低く唸ったりしていたが、何かを決意したかのように、ゆっくりと話し出した。
「どうも、失敗は、決定的なようだ」
「何が失敗だって……あっ、やはり妻はアンドロイドだったのか」
 山嵜は俺の質問には答えず、
「爪の制御が抜けていたとはね」
と言った。
「制御?」
「ああ。はは、まるで耳なし芳一だな」
「嘘だろ」
「いや。VA1、これがお前の本名だ」
 俺は声にならない叫び声を上げた。左の視野全体がモザイクになった。体の芯がなくなったような気がし、ソファにストンと尻が落ちた。
 俺はもう一度覚えているだけの記憶を引っ張り出してみた。山嵜は何か言い続けていたが構わなかった。だが、やはり爪を切った記憶がなかった。遠くから山嵜の声が戻ってきた。
「……からな、リセットするしかないな。あぁ、この三年、楽しかったよVA1。君も一言どうだい」
 代わったのは妻だった。
「VA1……。あなた、ごめんなさい……。でも、いい思い出ばかりよ。……さよなら」
 妻の声は、寂しげだった。だが優しかった。
 俺は何も言えなかった。ただ俯いて聞いていた。ソファに腰掛けたままの腿の上に水滴が落ちてくる。涙? 子どもの頃に泣いたことはあった。泣いている姿が映像と共に蘇ってくる。
「VA1、お別れだ。……君も夢を見るのかな」
通話が切れた。
「夢?」
と呟くとすぐに、俺の意識が永遠の時の流れに合流していった。

「山嵜さん」
「うん、すぐに回収に向かうぞ。自立成長型アンドロイドの完成まであと一息なんだ」

「あなた、コーヒーお飲みになる」
と、心地の良い朝に相応しい妻の声がした。ソファに腰掛けていた俺は妻に微笑みかけながら言った。
「ああ、爪を切り終えたらね」
                                                 了




「ツイート的自己満足」

むしまる@LGM1510
 初タグします。むしまるといいます。みなさんよろしくお願いしますm(_ _)m。いい歳こいたオヤジですが、くだらないことやまんざらでもないことをつぶやきます。まあ、聞いてくださいw。

むしまる@LGM1510
 ターブル・ドートより好きなものを選んで食べる方が気に入って、いつもア・ラ・カルトにしてる。なんて、知ったかぶりをして中華料理屋に行って、レバニラ炒め定食ではなく醤油ベースの焼きそばに餃子を一枚注文して、あ・ら・かるとだとほくそ笑んだりする(*^o^*)*→                     *次のタグに続く
 
 プリインストールされているパソコンよりも、パーツを一つ一つ吟味してカスタマイズするのが好きで、できるなら家も自分で設計して建材を揃え、建てたいと思うほどで、予め設えてあるものは好きではないんだよねww。

むしまる@LGM1510
 錯覚に陥ったぞ。娶った妻は何人かの候補の中から、俺好みの女を選びました。……はずでした。否、今でもいい女です。で、あって欲しい。否、これはア・ラ・カルトではないです。気づいたら怪しい宗教に加入していたような、あら、カルト? www。

(おっ、フォロワーが一人。やったー。すぐ*フォロバしよう) *フォローバックの略

むしまる@LGM1510
 ちょっと面白いと思うことがあります。漢字の部首には微笑ましいものがあると思う。雨冠がそのひとつ。点の上の方を短い線にして角度をつける。すると、ほら、表情ができるでしょ。俺は「雪」のヴァリエーションが好きですね。門構もそこそこイケると思うんだけど、どうよw。→

 以外にこういう人は多いかもしれないな。五十音図には行と段がある。母音の変化に従ってア段からオ段まであるけど、中学の頃までオ段が言えなかったw。「おこそとのほもよろを」がこうなってしまう。→

「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ い・き・し・ち・に・ひ・み・い・り・い う・く・す・つ・ぬ・ふ・む・ゆ・る・う え・け・せ・て・ね・へ・め・え・れ・え お・こ・そ・と・の・ホモ野郎」ww。

むしまる@LGM1510
 これはありがちな話です。小学校の頃、友人の好きな人形劇で「ドレミファソラシド」の音階に別な歌詞を当てはめた場面があった。友人は音楽の時間、これは全くの偶然だけど、当てられて「ドレミファソラシド、ドシラソファミレド」を歌えと言われた。→

先生にこっぴどく叱られた。何度も繰り返すけど意に反して口から出るのは例の歌詞だった。友人はついに泣き出してしまった。先生はそれでも許さなかった。その日の音楽の時間は先生と友人の時間になった。
「どらねこきたんべ、どしたらよかんべ」www。

むしまる@LGM1510
 思い込みは誰にでもあると思った。これも小学校の頃の話。通学路の電信柱の一本に金属板が貼ってあった。そこには七つの文字とひとつの記号が書かれていた。二行に分かれていた。始めの行に「きけんの」とあり次の行に「ぼるな!」と書いてある。全てひらがなで。→

 俺は「ぼるな」の意味が分からなかった。辞書にも載っていなければ、先生も知らないと言う。それっきり忘れていた。
 ある日、凧揚げをしようと、少し糸を延ばし、走ってその電柱を横切った。そのとき、横風が吹いて、例の金属板の上、上るときに足をかける短い棒に糸が絡まってしまった。→
 
 そこは、それほど高くない場所で上るために張り出した幾本かの棒は背伸びをすれば届いた。でも、足を引っ掛けるのは無理だった。俺は電柱脇の塀によじ登り、そこから電柱に移った。まんまと糸を取り外し降りているとき、間近にあの文字を見た。→

 あんなにすっきりした気分になった記憶はあまりないですね。その金属板には「ん」と「の」の間に小さく読点が書かれていたのです。
「きけん、のぼるな!」ww。長文失礼しました<(_ _)> 。

むしまる@LGM1510
 珍しい経験をしました。中学の頃、その日俺は友人の家へ遊びに行っていた。暫くすると、雷の音が聞こえてきた。見ると、西側が真っ黒だった。俺はすぐに友人宅を出て自転車をこいだ。道は、南北に五百メートルほどの直線で突き当りが丁字路になっている。そこを左折しなければならない。→

 両脇は水田。俺は、西を気にしながら全力でペダルを踏んだ。あと数十メートルという辺りで、急に雨の音が大きくなった。アスファルトの路面を叩く音だった。俺はそのとき、雨と晴れの境目を初めて目撃した。みなさんはありますか?w。→

 あと数メートル、あとひとこぎ、よし、左折! その瞬間俺の右半身はずぶ濡れになった。驚いたけど、俺はそのまままっしぐらに東に向かった。
 玄関の姿見に映る俺は「ジキルとハイド」のようだった。追いかけて来た雷鳴と豪雨は俺にハイドになれと言っている気がしたよww。最近長文が多いなあw。

むしまる@LGM1510
 ターブル・ドートのような人生はつまらない。色とりどりの人生が周りに用意されていると思うと選ぶのが楽しくなる。こうと決めた途端、新たに色づいた人生が見えるような気がする。どんなにorz絶望的なときでさえ、人生は開けている。時の流れと共に。→

 なにしろ光は秒速三十万キロメートルで前へ前へと進んでいるのだ。俺たちも無条件にそれに乗っている。だから転んでも後ろに戻ることはない。
 そんなことを思い出したり考えたりしながら、俺は街を歩いていた。すれ違う人の顔をちらちら見ながら、ターブル・ドートかア・ラ・カルトかを想像する。→

 今曲がった道を反対に曲がったらどうだろう。何かの奇跡に遭遇したかもしれないと時々思う。俺、変かな?(笑。

(あれ? *リムられてるぞ。せっかく百件超えたのになあ。それにしても頭が痛いな) *フォローを外すこと

むしまる@LGM1510
 ふと電線を見ると、少し先にカラスが一羽止まっていた。俺はそいつと目があった。このまま進めばカラスの下を通ることになる。カラスは賢い。人をコケにした話は多い。もしかすると、と思い、俺はカラスの下にかかる寸前、右に一歩体をずらした。そのまま進んだところで、案の定、→

左肩の脇をフンが落下していった(゚д゚lll)。すぐに見上げた。再びカラスと目が合った。カラスはそうするしかないのだが、小首をかしげている。そして、一声鳴いて飛んでいってしまった。その声はいかにも悔しそうだった。最近、動物にも感情があることが解ってきたらしい。→

 あのカラス、いくつの頭や肩を汚したのだろう。俺があのまま進み、まんまと奴の策略に引っかかっていたら、いかにも嬉しそうな声で鳴いたに違いないぞwww。

むしまる@LGM1510
 明日は医者に行きます。検査だ。MRIで撮るらしい。痛くないとはいっても嫌ですねW。

むしまる@LGM1510
 久しぶりのファイブカラーズのコンサートに行ってきました。行くたびにレベルが上がってるんだよな。ピッチは当然だけど、表現力の進化が凄いな。説得力が格段に増していた。オヤジもたくさんいて、一緒にタオル回してきたよWWW。

(来週から入院だ。脳に異常はないと言っていたくせに。忘れっぽくなったなんて言わなきゃよかったな)

むしまる@LGM1510
 空はなぜ青い? と小五の教え子たちに発問してみた。すると、いつも落ち着きなく俺に叱られてばかりいる男の子が言った。
「透明が重なってるんだと思います」「どうしてそう思う?」「だって、海だって青く見えるのに近いと透明だから」
ええ、褒めましたともWW。

むしまる@LGM1510
 突然の報告ですみません。今日から入院することになりました。

むしまる@LGM1510
 ご心配くださってありがとうございます。がんばりますWW。でも、どこも悪くないんですけどね~。

(SNSか。訳のわからん輩も多いけど、そうでない人たちも多い。見ず知らずの他人なのに、否、だからこそ素直になれるんだろうな。しがらみがないからな。)

むしまる@LGM1510
 ラムさん、へばさん、お見舞いに来てくださって感謝ですm(._.)m。退院したらオフ会しましょうWWW。

むしまる@LGM1510
 お久しぶりです。みなさん元気そうでなによりですW。もう大丈夫だからと医者に言っても、もう少しかかるからと言われて、三ヶ月も経ってしまいました。
 病室の窓から見える景色は、近くに桜の木があるおかげで光と風を感じることができます。

むしまる@LGM1510
 前回のツイートから一ヶ月。さっき確認して気がついた次第。つい昨日のように思っていたのに、時の経つのが早いってことですかねW。

むしまる@LGM1510
 ここのところ物忘れがひどいんですよ。言葉が出てこない、漢字を思い出せない、人の顔も。歳? そうかなあ。まだ老人というほどじゃないんだけどなあ。
 子どもの頃のことがよく蘇ってくるんですよねWW。

(あれ? たしか窓の外に桜の木があったはずだが。気のせいか。まあ、あってもなくても関係ないしな。それにしても……、なぜ、俺はここにいるんだ?)

むしまる@LGM1510
 今日は決めたことを行動に移すことにしました。何かって? じゃあ、みなさんにだけ教えてあげましょう。これから、私はここを抜け出そうと思うんですよね。

むしまる@LGM1510
 いえいえ、大丈夫ですって。いい大人ですよ。ただここから外に出るだけですから。出たらまた連絡しますo(^o^)o
(やけに白衣が目立つな。病院かここは。なぜ俺が病院にいるんだ? ん? 誰だ? やけにニヤニヤして近づいてくる)

(仕方がなかったんだ。そいつときたら、いきなり俺の腕を掴んで何処かへ引っ張って行こうとするんだからな。若い頃やってた柔道が役立ったよ)

(外に出たはいいが、ここはどこだ? おっ、向こうに標識が見える。……なになに、新宿と書いてあるぞ。都内か。なら、地下鉄でも探すか)

(ああそうだった)

むしまる@LGM1510
 みなさん、世の中には変な人がいるものです。笑いながら近づいて来たと思ったら、いきなり腕を掴んでどこかに連れて行こうとするんですよ。そこは正当防衛、昔取った杵柄、投げ飛ばしてやりました。で、今、帰宅中ですW。

むしまる@LGM1510
 頭がどうかしてるって? 何を言ってるんですか、いたってまともですよ。病院ですか? それはどういうことですか? こんなにぴんぴんしてるのに。失礼だな~W。

むしまる@LGM1510
 ラムさん、へばさんまで。早く戻った方がいいって、どこに?

むしまる@LGM1510
 さよならって。そんなこと言う必要ある?

(いいさ、去る者は追わずだ。勝手にすればいい。どいつもこいつも。あっ、肩に。カラスまで!)

むしまる@LGM1510
 リムったみなさん、ありがとう。なんか俺、自由になったよ。



 ふと、暗闇の向こうからやってくるのだろうか、彼女は生暖かい温度と産毛のような萌黄色の光を感じた。それまでの彼女は、闇というものがどんなものかを知らないまま、また、温度というものがあることすらわからないままに、そこにじっとしていた。じっとしていた、というよりもそうせざるを得なかったのである。

 今、彼女の皮膚から伝わってくるそれらの柔らか味は、彼女を驚かせるとともに戸惑うことを教えた。それが何処から来るもので、何をもたらすものか彼女は知らない。
 彼女は頭から順に温まっていく心地よさを味わいながら、頭上に感じる和らいだ輝きと足元に広がる闇を区別できた。彼女は快さに身を任せることにした。どれほどの時間が過ぎたのかはわからないが、頭上の明るさが消え全身を闇が包んだ。彼女が光を感じる前の状態に戻ったらしい。ただ違っているのは、温かみが残っていることだった。温かみというものが感覚の一つであることに気づくまでに何度同じようなことを経験してきたのだろう。光や闇もまた。無意識の中に芽生える意識は万物に当てはまるのだろうか。

 覚醒という言葉はもちろん、彼女の中には表現に値するなにものもないのだが、光と闇や湿り気や乾きを何度か繰り返した後のある日のことだった。
 彼女は体に起こる大きな変化に気づいた。それは思い切ったように起こった。始め、彼女はその変化が彼女の外側で起こっているものなのか、内側でのものなのか区別がつかなかった。しかしそのうち、彼女の、そう、まさに体の中心から同心円状に広がる波動を彼女は感じた。止めることのできないものだった。だから彼女自身は「動」を取った。それまでの「静」を捨てたのだ。
光のやってくる方向とその正反対の方向へと体を伸ばしていく。絶え間なくやってくる波動を感じながら、しかもその両端は周りを探りながら伸びていくのだ。
 そのうち、彼女の中心は両端に移っていった。光と闇を同時に感じながら、しかもその両方からやってくる大きなエネルギーを感じていた。そうして、さらに先へ進もうという「気」が生まれた。今や彼女の伸びていく方向に障害はなく、したがって伸びるということの他に広がることもできるようになった。彼女はそれをすることによって、し続けることによって「生」を感じるようになっていた。そしてそれと同時に彼女の中心が体全体に広がるのがわかった。

 ある時、広がっていく光の方向と正反対の先端の一部に、それまでとは異なるものの触れるのを感じた。動きを感じたのだ。彼女の中に「緊張」が生まれた。彼女は触れた一点に彼女に広がった中心を集中させた。なにをどうすればよいのかわからないままに。と、次の瞬間、複数の先端に同じような感触を覚えた。彼女の中に「混乱」が生まれ、それと共に彼女は「判断」しなければならないことに気づいた。しかし、そのための材料が見つからない。彼女はしばらく待ちたかったが、伸び広がる動きに停滞はなかった。異なるものも同じように伸び続けているようだった。そうして彼女は触れたものを避け、また触れるもののないように伸びる術を身につけていった。
 光の方向に伸び広がった部分は温かみ以外のもっと多くの経験を強いられることになった。たとえば、常に、体が強く弱く見えないものに押されたりねじられたりするのだった。抗うことのできないものだったが、「危険」を伴うものではなかった。あるいは、光を感じなくなる部分が時折できることがあり、その度に彼女は伸びる方向を変えなければならなかった。

 今や、彼女の伸び広がる部分は無数に増え、増え続けており、彼女の中心は彼女とひとつになっていた。多くの経験を積み、変化に適応できるようになっていた。
 最も光に近い部分に変化が起こったのはその頃のことだった。彼女のどこからかが彼女に呼びかけるのだった。随分前に感じたあの波動のようなものだった。大きく形を変える必要があったのだ。有無を言わさぬ大きな力が彼女を包み込んだ。彼女はあの快さを思い出していた。身を任せていればいいこともわかっていた。そして唐突に彼女の前に、いや彼女と重なるように彼が現れた。
 彼はあらかじめわかっていたらしく、一つのことに集中していた。彼女の存在も全く気にならないようだった。先端に起きた変化を彼はうまくコントロールするのだった。そのうち先端に、今までないような重みを感じるようになった。そして、時折彼女の中に入ってこようとするような衝撃を感じるようになった。彼はそれを喜んでいるようだったが、彼女にとっても不快なわけではなかった。

 彼の存在が当たり前になった頃、彼女の中に妙なものが生まれた。彼女と同じものを持つ多くのものが彼女の中にできたのだ。それは動くこともなければ何かを発することもなかった。ひたすらそこにあり続けているのだった。
 彼の存在が極めて薄くなっていくのが感じられる頃、ありつづけていた多くの彼女と同じものをもつものも次第になくなっていくのを感じた。しかしそれは空虚を伴うものではなく、むしろ充実したものだった。

 全てのものがなくなった今、彼女の伸びも広がりももはや進むことをせず、停滞というよりもむしろ衰退ということばが当てはまるようになっていた。
彼女が初めて感じた光と温度は今も感じられるが、彼女にとってのそれはもはやエネルギーを生み出すものではなく、安らぎに向かうための労りのようなものだった。
 光の弱まったある日、彼女はなんとも言い難い幸福感の中で、ほんの少しの意識を広大無辺な無意識の世界に戻していくのだった。そして彼女は初めて無意識を感じることができた。
                                                了




「講義 地球人史(第十二回)」

 さて、三ヶ月続いたこの講義も今日で終了じゃの。テストもみなよくできておったぞ。これが終わったらあとは体験して確かめるのじゃ。では始めようかの。

 最近と言ってもいいが、五百年前からの科学の大進歩は生命進化に起きたカンブリア大爆発になぞらえ、科学のスーパーノヴァと言われているな。ん? どこが最近なのかって? 過去の出来事は起きてしまえば一瞬に感じるものなのじゃよ。まあ聞きなさい。それは人類が火星に移住を始めた頃から起き始めたのじゃ。物理学や医学、情報科学に宇宙工学と数え上げればきりがない。
 たとえば、ヒッグス粒子の発見から暫く物理学者はダークマターと重力子の発見に躍起になっていた。四百八十年前、月に建設したハイパーハドロン衝突型加速器(HHC)により、まず重力子が発見され四百五十年前についにダークマターと重力子が同じものだということが分かったのじゃ。これにはコンピュータの発達の寄与するところが大きかったな。

 これが発見されてから、まさにエネルギー革命が人類を席巻したのじゃ。ん? 何がってか。確かに諸君の生きている今では全てが当たり前だと思うのは当然じゃ。騒音が全くないのは昔はありえないことじゃった。人類は重力子を発見して以来一世紀以上を費やし、重力を制御する方法を見つけたのじゃ。
 さあ、それからは滝壺に向かって落ちていく水のように変化が加速した。まず、エンジンが消滅したな。次いでモーターの仕組みが変わったのじゃ。名前こそ重力子エンジンというが、吸入-圧縮-燃焼・膨張-排気というサイクルを繰り返すわけではない。地上を車輪で進む必要がなくなった。そう、乗り物は全て浮遊しながら移動できるようになったというわけじゃ。推進力は車体の周囲の重力バランスを崩すことで得られるから音も出なければ移動もスムーズじゃな。ほら、このあいだ講義した空飛ぶ円盤の話があったじゃろ。不思議な飛び方をするというあれじゃが、恐らくそれも似たようなメカニズムなんじゃろうの。

 ついでに宇宙開発の話をしようかの。重力子エンジンの発明はロケットや宇宙エレベーターを不要の物にした。宇宙船の速度は現在最も速いもので光速の九十パーセントまでじゃな。限りなく高速に近づけることもできるようじゃが、そうするとそのうち様々な原子が衝突してくるからの。それを防ぐ方法はまだ出来ておらんのじゃよ。とは言え、太陽系全体を探査することは可能になった。船も重力子エンジンのおかげで巨大なものが航行できるようになったぞ。トラディショナルパークに聳えておる赤い塔があるじゃろ。近年手入れが大変になったそうじゃが、あれは東京タワーと言っての、電波塔じゃったな。ちょうどあれくらいの長さの船が今ではスタンダードじゃな。

 火星も移住後ずいぶん人口が増えたな。当初はそうするつもりはなかったのじゃが、今は太陽-地球ラグランジュポイント5の位置にスペースコロニーが三棟浮かんでおる。そう、太陽と地球を結んだ線から六十度の地球の公転軌道と交わる位置じゃな。地球の後を追うように自転しながら公転しておるよ。直径十キロメートル、長さ二十キロメートルの円筒の形のものじゃな。一棟につき十万の人が住んでおる。電力は宇宙空間に広げた太陽光発電パネルから得ている。クリーンじゃろ。水は月から運び込んだ。植物はコケ類から始め広葉樹まで全面積の五十パーセントを覆うようにしている。水草も豊富じゃぞ。光合成をし酸素を作り出しておる。ここ百年の話じゃ。

 そういえば、重力子エンジンの発明による変化がまだあった。人は歩く必要がなくなったな。超小型のジャイロスコープを内蔵したブーツを履くのじゃ。それで姿勢を制御しながら重力子エンジンで空中を歩くわけじゃな。浮くと言っても数センチメートルほどじゃがな。ん? そうじゃよもちろん、歩きたければそうすればよい、あまりおらんがな。毎日二時間必ずトレーニングするよう義務付けられておるからそれで十分なのじゃろ。

 医学の進歩もめまぐるしいものがあったな。再生医療の進歩と肉体の人造化が相まって老化をかなり遅らせたのは周知の通りじゃ。もちろんさっき言ったトレーニングは鍛錬に近いものじゃから、みなずいぶん歳が寄るまで医者の力は借りずに済むようになっておる。
 薬の発達も無視できないものがあるな。現存するウイルスはほぼ撃退されておるし、癌も人間が誕生して間もなく遺伝子の解析により発症を抑制できるようになった。たとえ発症しても医療用ナノマシンが癌幹細胞を破壊するからの。厄介なのは水虫じゃな。ん? 水虫を知らない? そうじゃろの。いまだにこれに悩んどるのは学者ぐらいのものじゃからな。完治させる薬は作れなくはないが誰も開発しようとせんのじゃよ。どうしてかって? そりゃそうじゃ、恥ずかしいに決まっておる。

 まあ、そんな訳でな、今や平均寿命は百二十歳になったのじゃ。諸君は大学一年だから十八歳か。それならなおさらじゃ。美しい女性を見ても油断してはならんぞ。皮膚の再生は最も早く完成したからの。デートに誘ってみたら八十過ぎじゃったなんてことはざらにある。まあお互い様じゃの。
 さてスーパーコンピュータについてじゃが、二百年前量子コンピュータの進化により、その演算速度は一ピコ秒に何京回かというレベルに到達した。それは人間の能力を地平の遥か彼方に追いやってしまったのじゃ。様々な事象に対する判断は的確じゃった。迷いのない断固たるものじゃったし、誤る可能性はあるにせよ、結果は全て正解じゃったからな、今では意志決定の多くをさらに進化したコンピュータに委ねるようになっておる。その方が楽じゃからの。

 歴史上最大の変化をもたらしたのは四百三十五年前じゃったな。高性能人型ロボットが発表されたのじゃ。人間のすることを完璧にこなせるようになったのじゃ。首の後ろに刻印されているシリアルナンバーを除けば見た目も動きも人間そのものじゃったな。今はその刻印さえないが。じゃができないこともあったぞ。母親のぬくもりと優しさに父親の慈悲のこもった厳しさはプログラムできなかったんじゃ。じゃから、今でも少なくとも五歳までは子育てを人間がやっているという訳じゃ。この期間が人間の父親や母親らしさを後世に残すことのできる境界線かもしれんな。
 なにしろ家事も子育ても教育もロボットがやるからな、親に対するコンプレックスも経験することがなくなっておるし、思春期も理想的だな。仕事を決めるにしても遺伝子の分析とカウンセリングにより最適な職を選んでもらえるのじゃから親の出る幕はないのじゃ。

 仕事? 遥か以前に定義された第三次産業までのほとんどすべてを今やロボットが行っているからな。将来の職業は学問を志すか様々な分野のエンジニア、または芸術やスポーツあるいは芸能関係に就くことになるじゃろう。中でも特に論理を超えた分野はいかに優れたコンピュータでも手に負えんのじゃな。ずっと昔からじゃが、今この時も人間の脳の研究は続けられておる。うむ、そうじゃのう。たとえば、優れた芸術家が完成させた作品と同じものを作らせれば本物を超えるほどの表現をする。じゃが、この前頭前野の閃きや発想のメカニズムがわからんのじゃ。つまり創造ができないのじゃ。人工細胞を生み出し自在にDNAを設計することができるようになってすらそうなのじゃから、いやはや人間は奥が深い。そうそう感情のメカニズムも全くわかっていないのじゃ。これらが解明されたら神秘という言葉がついに死語になるな。

 そうなればいよいよコンピュータも意志を持つようになるじゃろの。なに、怖い? 何故じゃ。ふん、ふんふんなるほどな。確かに過去の歴史を振り返ってみれば両雄並び立たず、霊長類ヒト科が生物界の頂点に立ってからは他の種は進化しておらんからな。人間がコンピュータに凌駕されるということは支配されるということと等しいとも考えられるな。じゃがな、人間と異なるのは出発点が違うということじゃな。
 生物の元は一つで、それが環境に合わせ形態変化を繰り返してきたのは例の系統図を用いて話した通りじゃ。それは自然が作り上げた有機物を組み合わせた作品じゃ。その最高傑作が人間というわけじゃな。一方コンピュータやロボットには有機物は全くない。人間がこしらえた道具なのじゃ。無機物を有機的に結合させた物じゃな。物が初めて主体性を手に入れるわけじゃ。系統図はどう書こうかの。
 それから後は自己増殖を開始するじゃろう。そうなればまさに生物じゃな。他の生き物を捕食することなく増え続ける新しい種の誕生となるわけじゃが、果たして人間を支配することを選ぶじゃろうか。諸君も複眼的に考えてみなさい。つまりな、人間原理的な考えを捨ててみるのじゃよ。

 人間は生物のみならず自然に対してまで傲慢に振舞ってきたわけじゃが、コンピュータも同じようになると考えるところに、やはり傲慢さが現れている、そうじゃろ。人間を超えた存在のことは人間には分からんのじゃよ。優越感とか劣等感ほど人間らしさを表す言葉はないが、結局、得をするか損をするか、損はしたくないから努力もすれば悪くもなるのじゃ。そうやって進化してきたのじゃな。
 すでに国というバカバカしい仕組みも貨幣という煩わしいものもなくなったがの。諸君は文化により分化されているのが当たり前だと思っているじゃろうが、昔はそうではなかったのじゃ。永い時間をかけ築いてきた高い壁は一枚岩ではないのじゃ。そこには結局、互いに信じ合えないという、やはり損得の感情があったのじゃな。それが形を変えながら複雑に絡み合いできあがった壁なのじゃ。

 その壁を取り除いたのが三百年前に登場したスーパーコンピュータじゃったの。当時の最高レベルの知能を備えたそれはガイマスターと名付けられた。演算速度が一ナノ秒に一垓を超えるモンスターマシンじゃったのがその名の由来じゃ。ガイと呼ばれとったの。
 ガイは、この先、国だの貨幣だのがある限り人類の未来はないと結論付けたのじゃ。以降、世界をひとつにするために一世紀に渡り相当数の会議が行われたのじゃ。何? テロや戦争はなかったのかとな。それがなかったのじゃよ。なにしろ相手はガイじゃからの。もちろん人間が組み上げたプログラムに従って動いておるよ。だが、ガイの学習能力は人間の予測を超えていたのじゃよ。
 今ではあらゆるコンピュータがネットワークで結ばれ、電源制御までマスターコンピュータが管理しておるが、始まったのがその時だったのじゃ。ガイは過去に起こった戦争・紛争・暴動・犯罪を全て分析しパターン化したのじゃな。だから暴力や武力に対しては徹底的に抑え込めた。情報力の勝利じゃの。

 しかし、だからと言って人間の心は素直に従うわけがない。富裕層や指導者たちの大部分が根強い抵抗を続けたな。最も欲の皮の突っ張った連中だな。誰が指揮したのかと? そうじゃの、そんな中にも人類の行く末を真剣に考える者たちが数多くいたのじゃ。彼らがガイと歩みを共にしていたのじゃ。
 いわゆる支配層の抵抗が会議を徒らに増やしたのはやむをえんな。反対者の中にも天才的なプログラマーやエンジニアがおり、ガイの中枢を乗っ取ろうとしたことが一度ならずあったの。独自にコンピュータを開発したのじゃ。うむ、そうじゃ、処理速度の差は如何ともし難かったな。ガイにはそのプログラムの侵入が止まっているように見えたろう。人間にとっては一瞬より短い時間だから区別もつかんがの。

 反対派の抵抗は六世紀近く前にあったゲリラのように見え隠れしておった。そんなある日のことじゃった。ガイが世界に向け、地球に脅威の迫っていることを発信したのじゃ。何かって? そうじゃのう、何というかのう。発見した場所は地球から四十五億キロメートル離れた、そう海王星よりやや遠いところじゃったな。宇宙望遠鏡でも丸い点にしか見えなかった。だが、光度はシリウス並みだった。初めは隕石に違いないと人々は思っておった。急に現れたのも不思議じゃった。
 ガイは探査機を送ると同時に地球を周回している宇宙望遠鏡や地上にあるそれら、また火星にあるものをフル稼働させ分析を急いだ。分析の結果は予想を裏切るものじゃった。それは隕石の類ではなかった。何者かが作ったに違いない、つまり人工的な建造物だったのじゃ。直径三百キロメートルの球状の物体の外側は、蜂の巣を思わせるハニカム柄じゃった。その表面は鏡のようじゃった。光も熱もほぼ百パーセント反射することが分かったのじゃ。だが、内部を探ることはできなかったな。発見から一か月後、到着した探査機から送られてくる画像や調査データも解明の役には立たなかったのじゃ。

 物体から何かを発することはなかったし、自力で移動しているのでもなかった。が、これが問題だったのじゃ。ん? 何かって。それがの、物体の進路だったのじゃ。三年後に地球に衝突するというのがガイの計算結果じゃった。直径三百キロメートルの得体のしれないものが地球に突っ込むという事実は人々を戸惑わせた。恐竜の絶滅と同じことが起きようとしているにもかかわらず、ほとんどの人々の反応は鈍かった。いきなり自分に向かって恐ろしい速さでボールが飛んできたときのような感じじゃな。
 最も反応の早かったのはガイの結論に賛同する者たちじゃったが、案に相違し反対派も早かった。彼らはここにきてやっと人類の存続を重く受け止めることができたのじゃ。それまで拘泥していたことはどこへやら、賛成派に協力を申し入れたのじゃ。ミラーと名付けられた物体は、このとき人類共通の脅威になったのじゃ。それからの対応は早かったぞ。ガイの全能力と人間ができることを全てミラー対策に注いだのじゃ。

 結局二年をかけ、ミラーの軌道を一度ずらすことに成功したのじゃ。そう、今も月を周回しているあれじゃな。いまだに正体は分からん。まあ、そのおかげでガイの結論が現実になったのじゃな。この先何事もなければ記念碑的なものとして、また地球の孫衛星として周回を続けるじゃろうの。今ではすでにガイは引退し、量子コンピュータ-ムゲンに引き継いでおる。
 さっきも言ったように人間は文化、主に言語じゃが、それによって生活圏を分けとる。諸君も人間じゃがの、火星生まれの火星育ちじゃ。地球の歴史を全く背負っていない訳じゃから、地球を故郷とは思わんのじゃろうの。じゃが、間違いなく血は繋がっておる。諸君の記憶のどこかに必ずあるはずじゃ。どうじゃここからの眺めは。スペースステーションEPOは人類が火星に移住を始めたときに中継場所として建造されたものじゃ。地球から三万六千キロメートルの静止軌道上にある。

 科学が進歩しコンピュータやロボットが発達しても地球人は地べたに立っておる。ここから見えるのは海と陸地と白い雲だけじゃがの。未来は今以上に宇宙へ目が向くじゃろう。深宇宙にまで足を伸ばすじゃろうの。じゃがな、地球発祥のDNAは人を地球に導くはずじゃ。今でもサケは生まれ故郷に戻っておるぞ。
 さて、諸君はこれから地球に留学するわけじゃが、今話したことを心に留めておくのじゃぞ。諸君は火星人ではないぞ。火星に住む地球人なのじゃ。地球に暮らす者と火星に住む者は場所こそ違えルーツは同じなのじゃ。胸を張って行ってきなさい。では講義は以上で終了じゃ。いや、ありがとう。帰りにまた会おう。一年後じゃな。楽しみにしておるぞ。
 
 暫くして控室に戻ったところで話しかける者がいた。
「お疲れ様。初めの頑なな顔つきがずいぶん柔らかくなってたな。やはり必要な三ヶ月だな」
「ああ、そうじゃな。地球人の歴史を語らんとな、その上で彼らも同胞であることに気づかせなけりゃならん。地球の学生たちへの火星史教育は大丈夫じゃろうの」
「ああ、学生たちも積極的だよ。それにしても大したもんだよ。人類を救い、引退してからも精力的に我々に尽くしてくれるんだからな。明日からまた新しいグループを頼むよ。月の子達だから女性がいいと思うよ。古すぎるか? ま、いいか。じゃ、また明日な、ガイ」
 老教授に扮したガイは軽く手を上げ微笑んだ。間もなく「ナーイスガーイ、明日からはクラシックビューティってか」という声が聞こえてきた。ガイは苦笑いをしムゲンに講義終了を伝えた。
                                                了


 
「Y2K」
 
 人類誕生後、漠とした時が流れ
 いつしか灰色の中枢神経の暗黒に
 意識の光が射し
 自らをプログラミングするようになった
 
 ヒトは、それまでの何万倍もの速さで
 周りのものを喰らい続け
 増殖を続け
 ついに生物の頂点に立った
 
 この世界で適わないものはない
 と、それは錯覚に過ぎぬことを
 雨や風、土と火が教えた
 そして人間は神を畏れるようになった
 
 科学が誕生して久しく
 現在(いま)も歩み続けている
 自然のからくりを神秘と呼んだ
 それを解き明かそうと
 
 宇宙の年齢は一三八億歳とか
 気の遠くなるようなその事実に比べ
 なんと儚いこの真実
 一体何ができるというのか
 
 知らぬ
 我々の来し方行く末を
 解き明かせ
 我々の精神と科学の力で
 
 この先、永遠(とこしえ)に科学が進歩し
 すべての神秘が必然に変わるなら
 実は、神というのは我々のことだと
 気づく時が来るかもしれない。

 西暦二千年を控え、人類は必死になっていた。世界中のコンピュータの対応に追われていたのだ。というのも、二千年が来ることはわかっていたはずなのに、西暦年を表す部分を下二けたでプログラムしてしまったからだ。従って、二千年を迎えた瞬間、コンピュータは00年を表示する。つまり、リセットされてしまう。
 今やあらゆるものにコンピュータが内蔵されている。中には、いつ誰が設計し、プログラミングしたのかすら判らない物も含まれている。悪用目的のものもあるだろう。そんなわけで、世界中が予期せぬ出来事に不安を募らせていた。

 航空会社は、年末から年始にかけてのフライトを中止した。鉄道も二千年一月一日零時にかけての運転はせず、最寄りの駅で、その時刻の過ぎるのを待つことにした。コンピュータ関連の各会社は、年末から年始にかけて泊まり込みの態勢をとることにした。銀行も証券会社も郵便局も気象庁も同様である。警察は全員態勢で、万一に備えることになった。西暦二千年の幕開けは、今までになく騒々しいものになりそうだ。

  テレビ局は、人の集まるところにリポーターを配し、カメラを回すことにした。しかし、そもそも、そのカメラ自体がうまく作動するとは限らないのだが。とにかく報道関係者としては、この歴史的瞬間にのんびり正月を過ごすことなど、考えられるわけがない。何かを期待せずにはいられないのだ。
 東京のある放送局では、特別番組制作の最終段階に入っていた。「西暦二千年元旦零時、何かが起こる!」と銘打って、例年であれば除夜の鐘を全国ネットで中継するのだが、今年はY2K特番を企画したのだ。
  都内各地にロケ隊を配置し、その瞬間をライブで届ける。一時間前からカウントダウンを、各地の状況を織り交ぜながら、あるいは、タレントや識者の声を届けながら盛り上げていく。
 局側は、ここまで世の中が神経質に対応してきたのだから、大したことは起こらないだろうと思っている。しかし、視聴率を上げるためには手段を選ばないのが民放である。とにかく、馬鹿な視聴者が釣れればいいのだ。
 大げさなコマーシャルで、根拠のない不安をあおり立て、挙げ句に、何が起こるか予想させ、当てた人には豪華賞品が贈られるという、世の中をなめきった企画にまで膨らんでいった。もちろん、何も起こらなければ、西暦二千年を祝う番組に即座に切り替えていくのだ。

 ところで、心の時代と呼ばれる現代、必要不可欠な存在となったものの一つに、カウンセラーがある。年末が近づくにつれて相談する人が増え、しかも内容が一つに絞られるようになってきた。
 相談者は、Y2K問題を過大にとらえすぎてしまい、世界が破滅してしまうのではないかとおびえているのだった。たしかに、たとえば核兵器のコントロールがどうなっているのかは、実際のところわからない。それだけに、その不安は根拠のないものとは言い難い。しかし、カウンセラーは一様に笑顔を浮かべこう言うのだった。
「絶対に大丈夫ですよ。コンピュータを作ったのは人間です。自分で作ったものを直せないわけはないのです。安心して下さい」と。相談に来た人は皆、その言葉を待っていたように、安心して帰っていった。

 ある精神科医がいた。彼の仕事の一つに犯罪者の精神鑑定があったが、彼は数年前から気にかかっていることがあった。それは、殺人の内容についてであった。様々な要因があるにせよ、一言で言うなら、想像の域を超えてしまったとでも言えばよいのだろうか。
  たとえば、少年がバラバラ殺人を犯したり、新興宗教の信徒が、毒ガスを使って大量殺人を試みたり、保険金欲しさに毒を盛ったり、精神的に追い込まれた大人が、その矛先を子どもに向けたり、親が遊びたいために子どもを放っておいたり、数え上げればきりがない。本心は誰にも分からないが、ほとんどの容疑者は実に冷静に行動している。自分の行動が正当であるかのように。
 彼の知人に脳外科医がいた。彼は気になっていることを打ち明け、犯罪者達の脳を分析してもらうことにした。

 分析結果は意外に早く精神科医の元へ届けられた。様々なデータに基づいたレポートの末尾にはこう書かれていた。
「標本数が少ないために、はっきりしたことは言えないが、対象者の脳の密度、特に大脳の前頭葉部分の密度が、加速度的に小さくなっていくのがわかった。このままの状態が続けば、この被験者達は、遠からずサル並の知能になってしまう。非常に特異な例だと思うが、もしそうでないとしたら……。いや、そんなことはないだろう」
 精神科医は、このレポートを読んで、しばらく何事かを考えていたが、突然、かぶりを振りながら立ち上がり、それから、絞り出すように、
「そんなばかな。そんなことが起こるとしたら、誰が一体。神は存在するのか。お、恐ろしい」
と言った。

 世界は、西暦二千年に向かって、不安と期待を膨らませている。今や一九九九年もあと五分で終わりを告げようとしていた。テレビでは例の企画物を中心に、放送が続いているようだったが、意図したような盛り上がりはなかった。むしろ、これから起こる何かに怯えているようにすら感じられた。町もひっそり閑とし、お祭り騒ぎなどただの一ケ所もなかった。

 残り一分。テレビに異変が起きた。出演者やスタッフが、めいめい勝手なことをし始めたのだ。カメラに近づき、怪訝そうな顔をする者、スタジオを走り回る者、とっくみあいを始める者など、全く収拾がつかない状態である。それは、スタジオばかりではなかった。日本中がすべて同じような様子になっていたのである。

 テレビからは西暦二千年までのカウントダウンが、コンピュータの合成音によって流され続けていた。

「5・4・3・2・1」

西暦二千年午前零時。

 人類は先祖返りをしてしまった。地球の自転に従って、東側の国や地域から順に、ヒトはサル並の知能になっていった。

 ここに、人類をその誕生からずっと見続けていたある存在がいた。彼がこの変化に気付いたのは、西暦二千年最初の自転が終わろうとしているときだった。あっと叫んだすぐあとに、身をよじりながら本当に悔しそうに、
「しまった! またやってしまった……。初めからやり直しだ」
そう言って、彼は真っ暗な中に浮かぶ青い星を手に取り、こね始めた。                     
                                                 了

「汚れ」

 ワニ園には数十頭のワニが八月の日差しを受け、物憂げに佇んでいた。動きのないその姿は、一見すると細長い岩の点在と見えた。 

 その男は今年四歳になる男の子を連れてここを訪れていた。男はキャラクターの絵が描かれている子ども用の水筒を肩からぶら下げている。
 爬虫類の好きな男の子は、前々からワニ園に連れていって欲しいとねだっていた。男も爬虫類が好きだった。中でもワニのような大型のものが好きだった。獲物をひとのみするところがたまらなく気に入っていた。実は、男は自宅に密かにアナコンダを飼っていた。強化ガラスで覆われた檻は三畳ほど。

 男は売店で男の子にソフトクリームを買ってやった。男の子は食べながら、父親と手をつないでワニを見ていた。しかし、夏の日差しは強く、ソフトクリームは男の子の食べるスピードを待てない。どんどん溶けていく。のんびりとワニを見ているどころではなくなった。

 男はそろそろ次のワニを見ようと男の子の手を引いた。その時である。ソフトクリームにばかり気を取られていた男の子の足下が危うくなり、少しよろめいた。そして、表面がどろどろに溶けたソフトクリームが、男のズボンのもものあたりに付着した。男の子は「あっ……」と言ったまま立ち尽くす。男はそれを見つめ、暫く動くことをやめた。
 太陽は、ワニにも男にも男の子にも、平等に熱い視線を注いでいる。風はない。ワニ園には文字通りワニしかおらず、従って、物音といえば、風のそよぎか、時折聞こえてくる人声ぐらいで、動物園の類としては非常に静かである。

 男は突然、男の子を抱え上げ、ワニのいる中へ放り込んだ。その日のワニ園は、夏の強い日差しも手伝って、閑散としていたため目撃者はいなかった。男の子は、何が起こったのか判らないまま、抵抗する間もなく、ワニ共のいる中へ落ちていった。
 見物する場所と、ワニのいる地面との落差は二メートルほどで、落ちたといっても怪我をするほどではない。男の子はしりもちを突く格好で地面に落ちた。そして、大声で泣き始めた。落ちたときは呆気にとられていたが、痛さよりも自分の置かれている状況が致命的であることに気づいたためだった。
 顔色は見る見るうちに青ざめていく。しかし、声を限りに泣いているせいか、耳だけは真っ赤だった。「パパごめんなさい。ごめんなさいパパ」と男を見上げながら泣き叫ぶ。だが、男は無言で見下ろすどころか唇の両端を上げている。
 走って逃げる手もあったはずである。しかし、男の表情を見るや、男の子は諦めと恐怖のあまり地面に突っ伏してしまった。そのまま泣き続ける。

 他の客たちで気づいた者もいたが、まさか子どもが落とされたとは考えられず、集まってきた者同士で辺りを見回しながら、何があったのかと話すばかりだった。そのうち、少し離れたところにいた客の一人が気づき、子どもが落ちてる、早く早くと騒ぎ始めた。
 集まってきた客たちは驚きの声を上げながら男のそばに近寄り下を見て再び驚いた。そして、男の顔を見た途端、後退りをするのだった。男は僅かに体を上下に揺らしながら、目を見開き口角を上げていたのだ。

 近くにいたのは三頭の大人のワニである。体長は三メートルほど。男の子の泣き声で命が宿ったとでもいうように、岩のように動かなかったワニ共の、まず冷徹な目が開いた。それから、ゆっくりと体を蛇行させながら、男の子に近づき始めた。
 三頭のうち、誰が手に入れられるかを競うように、彼らは獲物から目を離そうとしない。決して速くはない。むしろ確実性を高めるように、一歩ずつ、三頭は獲物を囲んでいく。その目に映るのは、かわいい四才の坊やではない。柔らかな肉を持つ餌なのだ。
 男の子は、もはや助からないと感じたのだろうか、ワニに背を向けて、体を丸めて、ひたすら泣き叫んでいる。
 最も早く男の子に近づいたワニがその口を大きく開いたとき、男以外の客は皆、叫び声ともつかない声をもらしながらその場所から逃げるように離れていった。

 誰かが呼んだのだろう。ワニ園の係員がこちらに向かって走って来る。だが、すでに泣き声はなかった。男から離れた客たちは、おぞましいものを見るように男を遠巻きにしている。嫌悪と恐怖が辺り一帯を包み込んでいた。
 やって来た係員の呼ぶ声と、同時に遠くから救急車やパトカーの音が聞こえてきた。だが、男は係員に目を向けることも動くこともしなかった。そこにいて、男の子の落ちた場所を、顔色も変えずに見下ろしていた。そして、係員が男の腕を掴んだとき、初めて気づいたとでもいうようにそちらに顔を向けた。そして、にっこりと微笑んで係員が聞き取れるかどうかわからないほどの声で呟いた。
「だからいつも言ってるんですよ。パパは汚されるのが一番嫌いなんだってね。こないだだって、妻が僕を汚したから、食べられちゃったんですよ」
 それから、口のあたりを生々しく光らせながら、食事の興奮が冷めた三頭のワニに目を移しながら続けて囁いた。
「知ってたくせにパパを汚すんだから」と。

 一週間後、男は自宅にいた。証拠不十分のため、警察は男の言うことを信じるしかなかった。手すりに立つと駄々をこねた子どもが、誤ってソフトクリームを中に落とし、追いかけるように落ちていったと。
 男は帰宅するとすぐにアナコンダの檻に行った。爬虫類の多くは何日も餌がなくても簡単に死ぬことはない。だが、この一週間はアナコンダの食欲を旺盛にするのに十分な時間だった。
「腹、空いたろ。待ってろ」
 男はするすると服を脱ぎ、素っ裸になった。そして、檻に入り、内側から鍵をかけた。アナコンダに向かって手招きをする。それに応えるように、アナコンダは音もなく男に近づいていく。
「いいぞ」
 男は足元のアナコンダを見下ろして言った。口の端からは涎が垂れている。
 鎌首をもたげたアナコンダは、ゆっくりと男の脛から上半身に向かって巻きついていった。
                                                了




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感想 1

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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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2021.09.02 musimaru

ありがとうございます。
もしよろしければ、どの作品が気に入られたかをお知らせください。

解除

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