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第1章

第三十七話 「ネルさん、ウルフ三郎さんと留守番をする」

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今日はウルフ一郎が、ジュンブライト様のお城に泊まる日。

「じゃあな、ネル。」

「じゃあな、ウルフ一郎。」

「三日間、おりこうさんにしとけよ。」

あぁ。
そして、ウルフ一郎は、ガオンの手をぎゅっと握った。

「ガオ~ン、ちゃんとお母さんの言うことを、聞くんだぞぉ。ウルフ三郎おじさんも、来るからねぇ。」

あ、そうだった。
あいつと三日間、一緒にいるんだった。
いやだなぁ~。
どうせ、『ネル様ぁ~♡』とか、うるさい三日間になるだろ。

「う、う~!」

「じゃあな、ネル。」

「じゃあな、ウルフ一郎。」

あたしは、ウルフ一郎に手を振ると、ウルフ一郎は、あたしの方に向かって手を振って、キャリーバックを持って、バタンとドアを閉めて、出て行った。

「う~、う~!」

はいはい。おっぱいねぇ~。
あたしはソファーに座って、服をめくり、ガオンにおっぱいをやった。

「んく、んく、んく、んく……。」

うふふ。
おいしそうに飲んでる。
あたしが、おいしそうに飲んでいるガオンを見て、ほほえんだ、その時!

「じー。」

ん?誰か、気配を感じるぞぉ~。
辺りをきょろきょろ、見渡すと……。
ん!?誰か窓の外から見てる!
黒いオオカミ……だけど、ウルフ一郎はもう行ったしぃ。
誰だろ……あ!
あいつしかいねぇ。
あたしは、窓のところへ行き、窓をがばっと開けた。

「あ、ネル様ぁ~♡おはようございま~す♡」

こんっのぉ~!変態ヤローがぁ!

「あ~れ~!」

ふっ、もう行ったぜ。


                                 ☆

「いやぁ~、ネル様のおっぱいが見れて、よかったぁ~。」

だまれ、変態ヤロー。
あたしに蹴飛ばされたのか、やつの顔には、すんげえバンソーコウが付いている。
おまけに、右目には丸いあざが。

「しかも、今日から三日間、ネル様と一緒に留守番だなんて、俺様、うれしー♡この時間をくれた、兄貴に感謝しますっ。」

あたしはうれしくねぇよ。

「う、う~!」

「ガオーン、おじちゃまと、一緒に遊ぼ~う♡」

「ゔ!」

「え~!?」

「お前のことが、どーやら苦手らしいな。」

「ちっくしょ~!絶対に好かれてやる、絶対に好かれてやる、絶対に好かれてやる、絶対に好かれてや……。」

はいはい。わかりましたよぉ。

「ところでお前、ご飯は食べたのか?」

「それがそのぉ、ネル様に会いたくて会いたくて、ご飯、食べていません。」

バカか。

「じゃあ、あたしの手料理、食べさせてやるよ。」

そしたら、あいつは、顔を、ぱっと上げて。

「ネ、ネル様の手料理ですとぉ!?ぜひ、食べてみたい!」

ちょっとまっててねぇ。
あ、ガオン、よろしく~。

「アイアイサー!さぁ、ガオーン、おじちゃまと、ママの料理を待ちまちょうねぇ~。」

「ブー!」

「え~!?」

トントントン。
ジュー、ジュー。
カシャカシャカシャカシャ!
パカッ。

「ん~!いいにおいがするなぁ~。ねー、ガオンー。」

「う、う~!」

「さぁ、できたよぉ。どうぞ、召し上がれっ。」

「うわぁ~、おいしそ~♡いっただっきま~す!」

ウルフ三郎は、玉子焼きを、ぱくっと食べた。

「ん?んん!?これ、おいしー!ネル様の料理、サイコー♡」

アハハ。ありがとう。

「う、うー!」

ガオンは食べれないから、だめだよー。

「う、う!」

だから、だめって言ってるだろ?

「だー!だー!」

あー、痛い、痛い!お母さんの顔をたたくなって。

「ネル様、1個、あげましょうか?」

あ、いいよ。ガオン、生まれたばかりだし、あたし達が食べるものは、まだ食べれないから。

「うぇーん、うぇーん!」

あーあ、泣いちまった。

「よーしよし、ガオン、いないなーい、ばあ!」

「う、う~う~!」

だから、お母さんの顔をたたくなって!

「アハハ。ガオン、すっごくご機嫌ななめっスね~。ごちそう様でしたっと。」

ウルフ三郎は、立ち上がって、皿を洗い場に持って行った。
ジャー。

「それにしても、ネル様、子育て、大変ですねぇ。」
 
うん。
最近、ハイハイができるようになって、あっちこっち、動き回って、もう、大変だぜぇ。

「そんなネル様のお役に立とうと、ウルフ三郎、はるばるおとぎの国から、海を渡って、やって来ました!」

はいはい。わかったから、皿を洗って、かわかせ。

「アイアイサー♡」

「う、う~!」

うふふ。機嫌、よくなったか。

「だ、だ!」

ん?ケータイ?
ふっ、お父さんに電話したいんだね。
わかった。あとでしようねー。

「うー!」

うふふふふ。かわいい。

「ネル様~。コーヒー、いりますぅ?」

あ、ちょっともらおうか。

「わかりましたぁ~♡」

(それにしても、さっきから思ってたんだけど、ネル様のエプロン姿、かっわい~♡)

「へい、おまち!」

ありがとう、ウルフ三郎。

「うっひょー!また名前を呼んでくれて、サンキューです!」

もう二度と、名前を呼ばないようにしよう。

「ネル様~、俺様とコーヒーを飲んで、お話でもしましょう♡」

うぇ、こいつの顔、ニタァってしすぎて、気持ち悪い……。
よかろう。相手にしてやる。

「やったぁ~!じゃあ、ネル様から、いいですよ~♡」

「なんであたしのことを好きになったんだ。」

「えっ、早速その話ッスカ。じゃあ、話してやりましょーう♡」

ウルフ三郎は、ゴホンとせきばらいをして、口をうごかした。

「それは去ること5年前。俺様がまだ、大学生だったころ……。」

こいつ、大学に通ってたんだな。

「『ねぇ、ねぇ!この子、すっごくかわいいよ!』」

「『あぁ!この子、18歳にして、最年少剣士になったんだってなっ。』」

「『今、話題になっている人だよっ!』」

「『かわいいよねー。』」

「『おい、なに見てるんだ?』」

「『あ、成績トップのウルフ三郎くん。』」

「『この子、すっごくかわいいんだよぉ!ま、成績トップのウルフ三郎くんはそんなのには興味ないよねー。』」

「『!?な、なんだこの子!すっごくかわいい!』」

「『え~!?』」

それが、俺様の初恋だった。
それから、俺様は、あなたのファンクラブに入って、グッズを買っては飾りの毎日だった!
そしていつしか、ウルフ一郎兄貴が貯めてた貯金で、グッズを買ってしまうほどの、ファンになってしまってな。

おいおい、それ、犯罪だろ。

そしていつしか、あなたに会いたいと、365日、想った。

「そして5年後!今、あなたが私の目の前にいる!私の義理の妹になってる!これは、夢みてぇだぁぁぁぁぁぁぁ!」

ガオン、お父しゃんに電話、しよっかぁ。

「う、う~!」

「って、聞いてる!?人の話!」


                            ☆
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