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第1章

第四十一話 「ネルさんのなやみ」

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カチッ、カチッ。

「う、う~!」

ん?そろそろ時間だな。

「ガオーン、もう時間だから、遊ぶのやめよっか。」

「だ、だ!」

ガオン、もうおしまい。また明日。

「だ、だーあー!」

あぁ、足をじたばたさせてるよぉ。

「ガオン、わがまま言わないの。」

「うぇーん、うぇーん!」

あぁ、泣き始めたよぉ。

「……わかった。じゃあ、あと1時間なっ。」

「う、う~!」

「……。」


                                 ☆


夜。

「なぁ、ネル。」

ん?なに?ウルフ一郎。

「お前、ガオンにあまやかしすぎじゃねぇか?」

はぁ?なに言ってんだよ。
ちゃんと、だめなものはだめって、言ってるよ。

「いや、俺様にはそう見える。今日だって、あまやかしたじゃないか。遊びの時間が終わる時に。」

あ……うん。
あたしはこくりとうなずいた。

「だろ?だからちゃんと、母親らしく怒らなくちゃ。」

うん、わかった。


                              ☆


「だ、だ!」

あー、ガオン!ティッシュをたくさん出したらだめ!

「う、う~!」

もう、片付けるのが大変だぜぇ。

「ガオン、いたずらをしたらだめ!わかった?」

「ゔ!」

こら!口をとんがらして、横を向かない!

「ガオン、ごめんなさいは?」

ガブッ!
痛っ!
血は出てないけど、手は真っ赤になってる。

「べー!」

く~、ムカツくぅ~!

「ガオン!」

ウルフ一郎が、ガオンを怒鳴ると、ガオンはびくっとして、ウルフ一郎の方を振り向いた。

「お母しゃんの手をかんだらだめ!わかった?お母しゃんにごめんなさいは!」

「う、う。」

う、うわぁ~、神レベルにこえー。

「いいよ、ガオン。」

あたしは笑顔になった。

「ところでネル、けが、してねぇか?」

う、うん。してないよ。

「よかったぁ。もししてたら、病院行きだったぜぇ。」

あぁ。
………なぜ、ウルフ一郎には伝わっているのに、あたしには伝わってないのか。
このままだと、母親失格だぜ……。


                             ☆


「あい、あい!」

あー、ガオン!そんなにDVDを散らかさないの!

「う、う~!」

どうしたの?

「だ、だ!」

あー、『オムライスマン』のDVDを探してるんだな。

「だ、だ!」

痛っ!
いっつぅ~。人が一緒に探そーとしているのに、たたくなんて、なんたる行為!

「ガオン!なにもしてないのにたたいたらだめ!」

「ゔ!」

まあた、口をとんがらして、横を向いて!

「ガオン、ごめんなさいは?」

「だ、だーあー!」

ガオン……!
お願いだから、あたしの言う事を聞いて……。

「ほい。」

ウルフ一郎が、あたしとガオンの間に、『オムライスマン』のDVDを出した。

「う、う~!」

ガオンはそれを、ぱっと取った。

「あい、あい!う、う!」

「ベッドの下にあったんだ。どら、お父さんが付けてやるから。」

「あう、あう!」

「あ、ネル、散らかしたDVD、先に直せ。」

……。

「どーした?」

い、いやっ、なんでもないっ。
あたしはDVDを片付け始めた。


                               ☆
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