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第1章

第六十一話 「ウルフ三郎さんの夢の世界」

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「う、う~!」  

うふふ。ガオーン、今日も一日、頑張ろうねぇ。

「あい、あい!」

「ふっ。」

トゥゥゥル、トゥゥゥル。

「ん?誰だろ。」

ガチャッ。

「もしもし、ウルフ一郎ですけどー。あ、母ちゃん?久しぶりー!元気にしてた?うん、うん。えーっ!?うん、わかった!すぐそっちに向かうよ!じゃ!」

ガシャッ。

「ん?どーしたウルフ一郎。なにかあったのか?」

「ちょっと、おとぎの国に行ってくる!」

「えっ!?ちょっ、あたしを置いていくなよぉ!」

バタン。

「ったくもう!いじわるなお父しゃんでちゅねー。」

「う、う~!」


                                 ☆


タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
ガラッ。

「おい!母ちゃん!戻ってきたぞ!」

「ウルフ一郎!よかった、来てくれて!」
 
ウルフ一郎さん、おじゃましてます。

「真莉亜ちゃん!それに、ロンゲヤローに、マドレーヌに、ルクトに、ギロまで!一体、なにしに来たんだ!」

「実はぁ、お母様から、ウルフ三郎さんのことを聞いて、急いで駆けつけたんです。」

「そっか。ありがとう、わざわざ来てくれて。ところで、ウルフ三郎は?」

「全く起きやしないよ。なんか、顔がニヤけてるし、気持ち悪い……。」

「おそらく、夢病ですね。」

「えっ?」

ギロさん、それって、どんな病気ですか?

「夢病とは、夢の中にずっといたいという気持ちから、かかる病気なんだ。このままにしておくと、ウルフ三郎は、二度と目覚めない。」

「なにぃ!?ウルフ三郎、目覚めてくれーっ!」

お母さん、落ち着いて。

「おや。なにかこまってるようだねぇ。」

その声は……。

「アンクさん!」

超~お久しぶりですっ!

「ひゃーっはっはっはっはっは!みんな、元気そうで、なによりじゃのう。」

「アンクさん!ちょっと、話があるんだが……。」

「ん?なんじゃ?」

ジュンブライトが、ウルフ三郎さんのことを、アンクさんに話した。

「なるほどぉ。そういうわけか。」

「アンクさん、なんとかできねぇかなぁ?」

「このままじゃ、ウルフ三郎お兄様が、夢の中で過ごすことになってしまいますっ!」

「あるよ、夢の中に行く道具が。」

えっ!?うそ!

「早く出してくれ!」

「わかったわかった。」

アンクさんが、懐から、ジャムの瓶みたいなのを取り出した。

「デッデデーン。『夢薬』ぃ~。」

夢薬ぃ?

「夢薬とは、飲むと相手の夢の中に入ってしまう薬じゃよ!ほら、1錠ずつ、飲んでみて!」

じゃ、じゃあ、遠慮なく……。
私と、ジュンブライトとマドレーヌちゃんとルクトさんとギロさんとウルフ一郎さんは、薬を一気に飲んだ。
ん……なんか、眠気がする……。
私達は、その場でばたりとたおれて、スースーと寝始めた。

「さーて、この夢雲で、あいつらの様子を見るとするかのう。」

「お、おう。」


                                  ☆


「真莉亜、真莉亜、起きろ!」

わ!ここはどこ?
ピンクの空に、ピンクのくも。ていうか、道もピンクだし。

「ウルフ三郎の夢の中だ。」

「ったくぅ、あいつ、一体どんな夢を見ているんだか……。」

「とりあえず、先に進みましょう。」

はいっ。
私達は、歩き始めた。

「あ!」

わ!マドレーヌちゃん、途中で止まらないでよぉ!

「あそこに、街が見えますよ!」

ん?街?
マドレーヌちゃんが、指をさした方を見ると……。
あ、ビルが建っているのが見える!

「さっすが俺のいとこ!頭がいいなぁ~。」

「えへへへへ。」

「よーし、街で食いもん、探すぞぉ~!」

あ、ジュンブライト!まず、食べ物じゃなくて、ウルフ三郎さんを探さなくちゃ!
私達が、ジュンブライトを追いかけると、そこには、かたまっているジュンブライトがいた。
ジュンブライトぉ、どうしたのぉ~?かたまっちゃって~。

「あ……あれを見ろ。」

あれぇ?
ジュンブライトが、指を指した方を見ると……。
え~!?なにこれーっ!
ビルにネルさんの拡大ポスターが貼ってあって、ビルのモニターには、天気予報士のネルさんがうつっていて、スクランブル交差点には、いろんなネルさんが歩いていて、街はぜ~んぶ、ネルさんだらけ!

「こ、これが……。」

「ウ、ウルフ三郎の……。」

「ゆ、夢の中……。」

「うおぉぉぉぉぉぉ!ウルフ三郎のやつ、うらやましいぜ!毎日こんな夢が見られるなんて!」

そこかいっ。

「とりあえず、街の中を散策しましょう。」

は、はい。
それにしても、街はネルさんばっかだねぇ。

「えへ、えへ、えへへへへ……♡」

「おい、鼻の下、伸びてっぞ。」

「あ、ごめん。」

あ。

「ん?どーした、真莉亜。」

銭湯屋さんがある。

「ひょっ、ひょっとして、ここにもネルちゃんが……。」

「まっさかぁ~。」

「失礼します!」

って、開けてるしー!

「あ……。」

「あ……。」

「キャ~!エッチ~!」

うわ!洗面器をいっぱい投げてきたし!
ガシャン!

「いた。」

「てめぇ、鼻血出てるぞ!」

「じゃあ、あそこはどうですか?」

ん?メイドカフェ?

「行く行くぅ~!」

テンション高すぎ。
カランカラン。

「いらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様♡」

わ!メイドのネルさん!

「かっわい~♡」

だからテンション高すぎ。

「わ!メイドもネルちゃんばっか!」

「うっひょ~♡ここは、俺様の天国だ~♡」

……。
私達は、メイドのネルさんに、席を案内されましたぁ。

「う~ん、なんにしよっかなぁ~?」

ジュンブライトが、メニューを見ている。
ていうか、ウルフ三郎さんはどーするの?

「なんか、こいつが一番楽しんでるよーだから、いっときかんこーう。」

え~!?
すると、ウルフ一郎さんが、ベルを鳴らした。

「おいネルぅ~。オムライスくれぇ~。」

「ああん?あたしはお前の嫁かっ。」

「ひぃぃぃぃぃぃ!」

ネルさん、こわいですっ!

「あ、ごめんっ。ネルちゅわ~ん♡オムライス、ちょうだ~い♡」

すると、ネルさんはにこっと笑って。

「かしこまりました~。少々お待ちくださ~い。」

「……ふぅ。家でいる時みたいに、言ったらだめかぁ。」

「おまたせしました、ご主人様♡オムライスですね♡」

「おお!まってましたぁ!」

ネルさんは、「うふふ」と笑って、ケチャップで、オムライスの上に、なにかを書き始めた。

「はいっ、できました♪あたしの愛情こもったオムライス、召し上がれ♪」


おぉ!オムライスの上に、『LOVE♡』って書かれてるぅ!

「うお~!今まで、『バーカ』って書かれてたのに、『LOVE♡』って書かれたのは初めてだ~♡ネルちゅわ~ん♡ラ~ブ♡」

「うふふ。冷める前に、食べてくださいね♡」

「は~い♡では早速、いただきま~……。」

「俺が食べるぅ!」

「こら!勝手に取んなっ!」

「んー、このオムライス、おいひ~♡」

「まだまだたくさん、ありますよ♡」

「うっひょ~!ラッキ~!」

「ちくしょ~、俺様の……俺様のオムライスが……。」

ウルフ一郎さん、まだありますから、落ち込まないでください。

「俺、オレンジジュースに、ホットケーキ~。」

「かしこまりました~。」


                                  ☆


「う、う~!」

「ったくぅ、お父しゃんは、今頃、なにをしてるんだろうねぇ。」


                                   ☆
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