上 下
7 / 185

第三話 「道華!学校は遊ぶところじゃありません!」

しおりを挟む
はぁ、はぁ、はぁ。走るの、きついなぁ~。

「キャハハハハ~。」

「こら君!やめなさいっ!」

2年1組の方から聞こえる!

「行ってみよう!」

私達は、2年1組へ向かった。
私が、教室のドアを開けると、道華がいたずらをしていた。
黒板にらくがきをしたり、教卓にらくがきしたり、先生の顔にらくがきをしたりした。
もう!がまんできない!

「道華!」

私が大きな声で怒鳴ると、道華は私の方を振り向いた。

「お母さん!」

「お母さん!?」

「「春間、まさか・・・・・・。」

そうです。私の娘です。な―んて、言わず。

「道華!学校は遊ぶところじゃありません!勉強するところです!」

「知ってるよ、そのくらい!あたり前のこと、言わないでよ!」

あたり前じゃありません!みんなの顔、見てごらん!
めいわくそうな顔をしてるよ!
あんた、みんなの勉強のじゃまをしてるんだよ、じゃまを!

「真莉亜、もう少し優しく接して・・・・・・。」

「お母さんは、なんであたしをそうしかるの!?」

え・・・・・・そ、それは・・・・・・。

「あたしのこと、大嫌いなんだ!あたしなんか、いなくなればいいんだ!」

ちがう!そうじゃなくて・・・・・・。

「もうあたし、死ぬ!」

そのとたん、みんなが騒ぎ始めた。
バカなこと、言わないでよ!道華!
もう、道華は窓から飛び下りようとしている。

「さようなら、お母さん。」

道華が飛び下りたとたん、女子が、「キャー!」と、絶叫した。
どうしよう・・・・・・。本当に道華が死ぬ・・・・・・。

「道華!」

ジュンブライトが、窓から飛び下りて、黒い翼を広げて、道華をだきしめた。
そして、見事着陸した。
下に降りよっと!
私は急いで、教室を出た。

「キャハハハハ~。お父さん、もう一回してぇ~。」

「しねぇーよ。」

ジュンブライトぉ~、道華ぁ~。

「お、真莉亜。」

二人とも、無事でよかったぁ。

「・・・・・・。」

道華。
私は道華を優しくだきしめた。

「ごめんね、しかりすぎちゃって。私ね、優しく接しようと思って、がまんしてたけど、できなかった。私、道華のことが大好きだから、怒るんだよ。だから、死ぬなんて、言わないで・・・・・・。」

私の目から涙がこぼれた。

「ご・・・・・・ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・!」

道華が「わぁ!」と、泣きだした。

「これで、一件落着だな。」

と、ジュンブライトがほっとした、その時。

「潤様♡」

わ!なんなの!?この女子の大群!

「お久しぶりですぅ~♡」

小春ちゃんまでいる・・・・・・。

「ところで、潤様にお話ししたいことがありますの。」

「話したいこと?なんだそりゃ。」

ジュンブライトが、首をかしげた。

「女の子が飛び下りたとたん、黒い翼を広げてましたよね?」

「あ・・・・・・あぁ。それがどうしたんだ。」

「あれはまさしく、本物でしたわ。潤様って、まさか・・・・・・。」

比奈多さんが、するどい目で、ジュンブライトを見つめた。
まずい!ジュンブライトがヴァンパイアだってことが、バレる!

「俺の生きる希望がねぇ~。」

ジュンブライトが落ちこんでる!

「ヒーローなんですかぁ?」

???は?

「わたくし、潤様の姿を見て、あれはまさしく、ヒーローと思いましたわ。あぁ、なんてあんなに、正義感があるのでしょー♡」

ふぅ~。よかったぁ~。ヴァンパイアだってこと、バレなくて。

「ところで潤様、なんで学校に来ないんですか?」

小春ちゃんが、たずねてきた。

「俺、本当の歳、三十二歳だから。」

・・・・・・本当のこと、言っちゃった。

「えぇ~!?」

女子軍団はびっくりしている。

「でも、かっこいい~♡『35歳の高校生』ならぬ、『32歳の中学生』ですわ~♡」

「真莉亜様!こんなに歳が離れた彼氏とつきあってるなんて、うらやましいですぅ~♡」

「まさに、歳の差カップル、ですわ♡」

あ、ありがとうございますぅ~。アハハハハ~。





よかったね、道華。先生にゆるしてもらって。

「うん!」

もう、二度としないでね。先生、「もし、またこんなことを起こしたら、反省文を20枚以上、書かせる。」って、言ってたよ。
はぁ~。反省文の刑になるとは、思ってもいませんでしたぁ。

「お姉ちゃん、道華、なに話してるの?」

琉理がお菓子を食べながら、やって来た。

「なんでもないよ。」

「ただいまぁ~。」

あっ、お父さん。お帰り。

「あれ?あなた、その荷物、なんなの?」

お母さんが、お父さんがもっている、大きなふくろを指さすと、お父さんはニッと笑った。

「道華ちゃん、ちょっと来なさい。」

「え?あたし?」

一体、なにがあるんだろ。

「そのふくろの中身を開けてみろ。」

道華がふくろの中身を開けると、ふくろの中身はなんと、ふでばこ、えんぴつ6本と、けしごむと、赤えんぴつが一本入っていた。
お父さん、これって・・・・・・。

「今日、途中で仕事を早退して、花田小学校に行って、道華ちゃんのことを話したんだ。道華ちゃん、明日から学校に通って来い。」

そのとたん、道華は満面な笑みになって、

「やったぁ~!」

とても喜んで、ジャンプした。

「でもあなた、つくえとランドセルは、どうすんのよ。」

あ。確かに。

「つくえは休みの日に見に行って買おう。で、ランドセルは・・・・・・。」

お父さんが、私の方を見た。

「真莉亜のランドセルがあるだろ?」

あ―、私のランドセルがあるんだった!

「はい、真莉亜ちゃん。」

お母さんが赤色のランドセルを、道華に渡した。
道華がランドセルを背負うと、ジュンブライトみたいに二カッと笑った。

「ありがとう、おじさん。」

「どういたしまして。」

「あたし、友達、いっぱいつくる!」

道華、明日から楽しみにしていた、学校に通えるよ。
私の思い出がつまったランドセルで、元気に学校に通っておいで。
そして、友達100人ぐらいはいけそうにないと思うけど、たくさん、つくっておいで。
それが、私の願いだよ。
しおりを挟む

処理中です...