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第九話 「ジュンブライトのデート大作戦!」

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私は、ジュンブライトの部屋で、ジュンブライトと一緒にいた。
ねぇジュンブライト。

「なんだ?」

「私のこと、好き?」

「あたり前だろ?それがどうしたんだ。」

ジュンブライトが、私の肩を組みながら言った。
つきあって1カ月経つから、テストしてみようと思って。

「じゃあ、俺のこと、好きか?」

もっちろん、大好きだよ。

「そう言うと思ったぜ。」

チュ・・・・・・。
ジュンブライトが、私のほっぺにキスをした。
すると、部屋の向こうから、足音と声が聞こえた。

「リリア!今日こそお前の首を取る!」

ネルさんの声、一週間ぶりに聞くなぁ。

「・・・・・・ったく、いいところだったのによぉ!」

「ひぃぃぃぃぃ!リ、リ、リリア様の首を取るなんて、100年、いや、1000年早いですよ!」

ルクトさんの声が聞こえる。

「うっさい!じじい!100年とか、1000年とか、どーでもいーんだよっ!」

「あ!ジュンブライト!あそこに真莉亜の下着があるわ!」

リリアさん!変なこと、言わないでくださいっ!
私のとなりにいる人が、反応するじゃありませんか・・・・・・。

「なにぃ!?」

反応した―っ!

「どこにあるんだ?真莉亜の下着!」

ジュンブライトがふすまを開けると、そこには、ジュンブライトを見てかたまっている、ネルさんがいた。

「よっ、桜吹雪のネル。また会ったな。」

「ギャャャャャャア!イケメン、こわ~い!」

ネルさんは、ヴァンパイアキャットになって、部屋を飛び出した。

「よーし!追い出したわ!ありがとう、ジュンブライト。」

「俺を使うな。ところで、真莉亜の下着、どこにあるんだ?花柄だといいな、アハハハハ。」

この、変態がっ!
私はジュンブライトに飛びけりをした。

「うそに決まってるじゃない!」

「なんだとぉ!?俺、本当にあると思ったぜ・・・・・・。」

うそを信じるな!うそを!

「ジュンブライトお兄様は相変わらず、変態ですねぇ。」

「変態じゃねぇ!」

うそつけ。

「ところで、みんな、集まってくれ。」

ジュンブライトが、みんなを呼んで、みんなは輪になってすわった。

「なんだい。」

「ネルのことだが・・・・・・。」

ネルさんのこと?

「もしあいつが一生、イケメン恐怖症だったら、どうなると思う?」

彼氏ができなくなると思う。

「あたしもそう思う。」

「あたしも。」

「あたしも。」

「私も。」

「私もです。」

「あたしも。」

「わたくしもそう思います。」

みんな、同じ意見だねっ。

「姉であるリリアは、どう思うの?」

紅葉が、リリアさんの方を振り向くと、リリアさんがうなずいた。

「私も。そう思うわ。」

それがどうしたの?ジュンブライト。

「今度の日曜日に、ネルをデートにさそおうかな~?と思って。」

今、私の心が、グサッとハートの矢にさされました!

「なに言ってるの!あんた、私がいることを、忘れてないでしょーね!?」

「忘れてない。俺が決めたことだ。」

きぃ―!なんてむかつくやつなのぉ~!彼女がいるのに、ネルさんをデートにさそおうなんて、ゆるさ~ん!
彼女である私が、絶対にゆるさーん!

「お母さん、やきもちやいてるの?」

や、やきもちなんか、やいてないよ!

「顔、赤くなってるし。」

紅葉はだまってて!

「とにかく、反対だからねっ!ぜっっっったい、ネルさんとデートなんかに、行かせないから!」

「あたしも反対ですっ!」

「あたしも!」

「私も!もし私が真莉亜お姉ちゃんだったら、私は引き止めますっ!」

反対する人、増えた―!

「私は賛成だわ。」

リリアさん!

「なんで賛成するのよ!」

「ジュンブライトとデートして、コミュニケーションをとったら、あの子の恐怖症が、きっと、なくなるわ。」

「私も賛成ですっ!」

マドレーヌちゃん!賛成しないでよぉ。

「やきもち、やいているんですか?ジュンブライトお兄様に。」

やいてませんっ。

「赤くなってるねぇ、顔が。」

テレサさんは、反対ですよね!?

「賛成だよ。」

そ、そんなぁ~。味方だと思ってたのに・・・・・・。
んじゃあ、紅葉は!?反対だよね!?友達だから!

「賛成よ。いい意見じゃない。」

ガーン。

「わたくしも、王子の意見に賛成です。」

そこは反対すべきだよぉ。

「王子の意見に、さからえません。」

道華は反対だよね!?お母さんの言うこと、なんでも聞いてくれるよね!?

「賛成だよ。」

「道華ぁ~!」

「私達を裏切るなんて、ゆるさないっ!」

アキちゃんとソラちゃんが怒ってる。

「じゃあ、決定だな。」

二カッと笑わないでよぉ~!まだ反対している人間がいるよぉ~!

「そうですよ!ジュンブライト様っ。」

「もう少し、考えた方がいいですよ!」

「私もそう思いますっ。」

クリスさん、アキちゃん、ソラちゃん!味方になってくれて、ありがとう!

「うるさい。あたしはあんたとは、敵だから。」

そんなに厳しく言わないでよぉ。

「ふん!」

アキちゃんはほっぺをふくらませて、横を向いちゃった。

「私は、真莉亜お姉ちゃんの味方だよ!」

ソラちゃん、ありがとー。

「ソラ!あんた、あたしを裏切ったわね!」

「お前ら、うっさい。」

私は反対だからね、こーゆーの!

「もう、決まったことだから、いーじゃねぇか。おいリリア、ネルにメールしとけ。「今度の日曜日、菜の花広場の噴水前でまて」って。」

リリアさん、スマホ持たないでぇ~。

「『LINE』でいいかしら。その方がいいし。」

「いいぜ。『LINE』の方が、便利だし。」

でも、ネルさんがいつ来るか、わからないよ。

「大丈夫。場所も『LINE』で送ったから、きっと、迷わないでしょう。」

そうですよねぇ。
私、今も反対しているからね!デートのことを!





日曜日。運命のデートが、やってきた。
噴水前には、ネルさんがいた。
なにか、ぶつぶつ言っているけど。

「くっそう!リリアのやつめ!どこにいるんだ?決闘しにやって来たって言うのに!」

デートのこと、決闘とかんちがいしてるね。

「おまけに、『LINE』で送られたあと、すぐに菜の花広場に向かったけど、また迷子になってしまったんじゃねぇか!」

どんだけ、方向オンチなんでしょうか。

「ジュンブライト、今よ!」

「おう!」

ジュンブライトは、草むらから飛び出して、ネルさんの方に走って向かった。

「よっ、ネル。」

「おそい・・・・・・え?」

ネルさんが、ジュンブライトを見てかたまった。

「あ・・・・・・あ・・・・・・。」

「俺はジュンブライト。ヴァンパイア界の王子だ。よろしくな。お前の姉貴には、お世話になっている。」

「い~やぁぁぁぁぁ!」

逃げようとするネルさんのうでを、ジュンブライトがつかんだ。

「は、離せ!」

ネルさんが、うでをぶるんぶるん振っても、ジュンブライトは、離さなかった。

「ゆ、ゆうかいされるよぉ~!」

「俺はゆうかいなんかしねぇ!」

「こ、こわい・・・・・・。」

ネルさんの顔が、涙でぐしゃぐしゃになってる。

「ネル。」

リリアさんが、ネルさんのところにやって来た。

「リリア!てめぇ、どういうつもりだ!」

ネルさんが、リリアさんの胸ぐらをつかんだ。

「ジュンブライトと、デートするのよ。」

「はぁ~?デートだとぉ!?」

ネルさんは、リリアさんの胸ぐらをつかむのをやめて、ジュンブライトの顔を見た。

「て、てめぇ!あたしがイケメン恐怖症と知りながら、このイケメンとデートしろって言うのか!」

リリアさんが、2回うなずいた。

「そうよ。」

「ぶー。」

私とクリスさんとアキちゃんとソラちゃんは、ほっぺをふくらませた。

「・・・・・・ところで、一つ、質問していいか?」

「あぁ、いいぜ。俺はいくつかって?三十二歳だ。」

「そんな質問、していない。」

ネルさんは、びしっと、私達の方を指さした。

「なんでこいつら、機嫌悪そうにしてんだ?」

「ぶー。」

「お前ら、なにやってんだ?」

「ぶー。」

「ぶーじゃわからねぇよっ!」

もう!絶対にゆるさないっ!

「全員、やきもちやいているのさ。」

やいていませんっ!

「顔、赤くなってるし。」

うるさいっ!

「とりあえず、ネル、行くぞ。」

ネルさんの手をにぎったぁ~!

「いやぁぁぁぁぁぁ!は、離せ!そうしないと、お前の首、きるぞ!」

「そんなにグロいこと言わないで。さ、どこに行く?」

ネルさんの顔は、また、涙でぐしゃぐしゃになった。

「誰かぁ~、助けてぇ~。」

ネルさんは、後ろを振り向いた。
もう、鼻水も出ている。

「大丈夫よぉ。私達がついてるから。」

「で、でもぉ・・・・・・。」

「安心しな。ジュンブライトは、なにもしないから。」

「い・・・・・・いやだよぉぉぉぉぉ!」

ネルさんの泣き声が、大空まで響いた。


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