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第十一話 「アキちゃんとソラちゃんのお姫様ごっこ?」
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紅葉が、アキちゃんとソラちゃんに、読み聞かせをしていた。
「おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川でせんたくをしていました。」
アキちゃんとソラちゃんは、読み聞かせをしてもらったばっかりなのに、あきれた顔になっている。
二人の表情を見て、紅葉は読み聞かせをやめた。
「どうしたの?」
「もう、あきた。」
「私も。おままごとした―い。」
「え―?」
紅葉は、とてもこまった顔になった。
「ちょっと、あんた達!せっかく本を読ませてもらってるのに、すぐあきちゃって!紅葉がこまってるよ!」
クリスさんが、二人をしかった。
「道華、遊ぼ。」
「うん。」
「お人形で遊びましょう。」
「いいね~。」
二人は完全に無視です。
「シカトするな~!」
「どうしたんだ?」
そこへジュンブライトがやって来た。
「ジュンブライト様♡」
クリスさんはキャラを変えて、ジュンブライトのところにやって来た。
「あのね、アキとソラが、「絵本読んで。」ってたのんできたから、読ませてやったら、すぐ、あきちゃって・・・・・・。」
「どれどれ?」
ジュンブライトは、『ももたろう』の本を拾って、あぐらをかいた。
「おーい。アキ、ソラ。俺が本を読んでやるから、俺のひざにすわれ。」
「!?」
二人はそれに反応して、もうダッシュで、ジュンブライトのひざにすわった。
いいなぁ、ジュンブライトのひざにすわって。
「ジュンブライト様のおひざ、あったか~い。」
私もジュンブライトのひざにすわりたい!
私が、ジュンブライトのひざにすわろうとすると、アキちゃんが、ムッとした顔になった。
「おい、バカ女。ケツ、でかい。」
ケ・・・・・ケツがでかいですとぉ~!?失礼なっ!年上に向かって、よくそんなことが、言えますねっ!
「アハハハハ~!真莉亜、聞いたか。お前のケツ、でかいってよ。」
笑わないでくださいっ!
「それに、お前、体重が重いから、無理だよ。」
キィ―!春間真莉亜様に向かって、体重が重いって、言うなぁぁぁぁぁぁ!
私はこう見えて、体重は50キロですっ!
「デブじゃねぇか。」
てめぇの首、しめてやるぞ。
「す、すみませ~ん!」
よし、ゆるしてやろう。
「ゆるすの、早っ!」
「じゃあ、読むぞ。むかーし、むかし、あるところに・・・・・・。」
「アキとソラとジュンブライト様がいました。」
「・・・・・・!?」
「ある日、アキとソラは、ジュンブライト様から、おつかいをたのまれました。」
「お、おい。今、『ももたろう』を読んでるんだけど・・・・・・。」
「二人はおつかいに行って、家に帰りました。」
「ちょ、ちょっと・・・・・・。」
「家に帰って来たら、ジュンブライト様がまっていました。」
「話、聞いてくれる?」
「ジュンブライト様が、「お前ら、えらいなぁ。さっすが、俺のかわいいかわいい天使ちゃんだぜ。」と言って、二人のほっぺにキスしましたとさ。めでたしめでたし。」
バタン。
ジュンブライトが本を閉じると、アキちゃんとソラちゃんが、目を点にして、ジュンブライトの顔を見上げた。
「ジュンブライト様!なんで絵本を閉じるんですか1?」
「お前らが、ややこしい話をするからだ。」
ジュンブライトがつっこんだ、その時。
「すみませーん。」
窓の方から、男の人の声が聞こえた。
外を見ると、黒いスーツを着て、顔があの、トライさん似で、とんがった耳をしていて、黒い翼が生えていて、空中に浮いている男の人がいた。
ヴァンパイアなのかな?
手には超~でっかいバックを持ってるし。
「今、開けますよ~。」
ルクトさんが窓を開けると、男の人は中に入った。
しかも、土足で。
「あの!くつ、ぬいでくれる?」
「す、すみません・・・・・・。」
リリアさんに言われ、男の人は、あわててくつをぬいだ。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。では・・・・・・。」
男の人は、ルクトさんからもらった紅茶を、おいしく飲んだ。
って、飲んでる場合じゃないでしょ。
「あんた、誰なんだい。」
テレサさんから聞かれると、男の人は、紅茶が入ったティーカップを、コトンとテーブルに置いた。
「自己紹介が遅れました。わたっ、わたっ、私は、ヴァ・・・・・・ヴァ・・・・・・ヴァンパイア・・・・・・。」
「自己紹介、言えてないよ。」
「す、すみません・・・・・・わたっ、わたっ、私は・・・・・・。」
また、かみましたよ。
「かつぜつ悪いの?」
リリアさんに言われると、男の人は、にこっと笑った。
「はい。私はこー見えて、か・・・・・・かつぜつが、悪いんです。」
「自分から言った―!」
「で、では、自己・・・・・・自己紹介を・・・・・・私は、ヴァン・・・・・・ヴァンパイア・・・・・・。」
「おい。名刺を出したらどうなんだ。」
「あっ!それ・・・・・・それはいい考えですねっ!」
「今ごろ気づいたんかい!」
男の人は、スーツの中から、一枚名刺を出して、ジュンブライトに名刺を渡した。
「私は、こ・・・・・・こういう者で・・・・・・。」
ジュンブライト、なんて書いてあるの?
「ヴァンパイアテレビショッピングの社長さんだって。」
え!?こんなにかつぜつの悪い人が、テレビショッピングの社長さん!?
「はいっ。」
男の人は、メガネをきりっと直した。
じぶんはかつぜつが悪いって、認めてるんだね。
「ねぇお母さん。テレビショッピングって、なに?」
テレビショッピングってのはね、テレビで物を売るのを、テレビショッピングって言うんだよ。
「へぇー。」
「で、そのテレビショッピングの社長さんが、なんの用なの?」
「実は、ルクトさんという人がたのまれた、ヴァンパイア界が中世時代に使われていた、ティーカップをお届けしに来たんです。」
「あ―!」
ルクトさんが、声を上げた。
「3日前、ティーカップをたのんでいたのを、すっかり忘れてしまいました―!」
ルクトさんは急いで、さいふを持ってきた。
「い・・・・・・一万三千九百円です。」
一万もするの!?このティーカップ!
中世時代に使われていたからねぇ。
「かつぜつ、悪いですね。」
ルクトさん!にこっと笑って、お金を出しながら、そんなこと、言わないでください!
今度こそ、本気で怒りそう・・・・・・。
「アハハハハ。小さいころからのくせでして・・・・・・。じ、実、実は僕は・・・・・・俳・・・・・・俳優になりたいと思って、げ・・・・・・劇・・・・・・劇団・・・・・・劇団のオーディションにさ・・・・・・参加したんですが、「かつぜつが悪い。」と言われ、ふ・・・・・・ふご・・・・・・不合格になって、夢をあきらめました。」
「だろーな。」
「てか、話をするのに、何分かかっていると思ってるんだい。」
「で、その後、山・・・・・・山寺・・・・・・山寺宏一さんみたいなせ・・・・・・せ・・・・・・声優になろうと、せ・・・・・・せ・・・・・・声優の養成所のオ・・・・・・オ・・・・・・オ・・・・・・オーディションに参加したんですが、これもまた、「かつぜつが悪い。」と言われ、ふご・・・・・・ふご・・・・・・不合格になって、あきらめました。」
そんなにかつぜつが悪いなら、山寺宏一さんみたいな声優さんに、なれませんよ。
「まだ芸能界の道を、あきらめてなかったのかい!」
「今はもう、あきらめてますけど。」
「ねぇおじさん。このドレス、かわいいねぇ。女装するのが、趣味なの?」
アキちゃん、ソラちゃん!人のバック、勝手に開けたら、だめだよ!
「早くそのドレス、直しなさい!」
「もう、着ちゃった。」
早っ!
しかもそのドレス、かわいいねぇ。アキちゃんは、ピンク色のドレスで、ソラちゃんは、水色のドレスを着ている。
「あ―!それは、かわいいかわいい娘のために、開発した、リアルお姫様ごっこのドレスです!」
「リアルお姫様ごっこ?」
「あ―!」
紅葉、どうしたの?
「外を見て!」
外?え、え、え~!?
「どうなっているんですか、ここ!」
私達が目にした光景は、なんと、いつもの町ががらっと変わっているんです!
「みなさん!満月荘が、お城に!」
満月荘が、お城に?
う、うわぁ~!マドレーヌちゃんの言う通り、満月荘が、大きなお城に変わってる!
中もほら!ジュンブライトのお城の中みたいになってる!
「リ・・・・・・リアル・・・・・・リアルお姫様ごっことは・・・・・・そ・・・・・・そのドレ・・・・・・そのドレスを着ると・・・・・・。」
えー、かつぜつが悪い社長さんの代わりに、私がご説明します。
リアルお姫様ごっことは、今、アキちゃんとソラちゃんが着ているドレスを着ると、あら不思議。町が誰もいないお花畑に変わって、家がお城に変わるんです!
つまり、超~リアルなお姫様ごっこが、できるんです!
「あら?かつぜつが悪い社長さんは?」
そういえば、いないねぇ。帰ったのかな?
「そうだ!」
アキちゃん、なにを考えたの?
「今からお姫様ごっこ、やろー!」
「それ、いいねぇ。」
「じゃあ、ジュンブライト様は、王子様役ねっ!」
おぉ!ジュンブライト、ぴったりじゃない!
「そ、そうかなぁ?」
「で、道華とマドレーヌが、家来役。」
「え~?私、お姫様、やりたかったですぅ~!」
「しょうがないよ。お姫様は、アキちゃんとソラちゃんだから。」
「で、ルクトがしつじ役。」
ルクトさん、ぴったりじゃん!
「で、紅葉とリリアとテレサが、召し使い役。」
あの~、さっきから気づいていたけど、私は?
「あたしも!あたしは、女王様がいいなぁ。」
まだ役が決まってないのは、私とクリスさんだけ。
「あるよ。」
え!?ほんとに!?ソラちゃん、早く教えて!
「真莉亜お姉ちゃんと、お姉ちゃんは・・・・・・。」
「ソラ!なに勝手に言ってるのよ!あ、真莉亜とお姉ちゃんには、と―っても、スペシャルな役を、用意しておいたから。」
と―っても、スペシャルな役!?
「ひょっとして、女王様!?」
私とクリスさんが、わくわくしながら言うと、アキちゃんの笑顔が、急に消えた。
「役は・・・・・・一般人よ。」
「一般人~!?」
そんなバナナ!
「ということで、このお城は、関係者以外立ち入り禁止だから、お二人には出て行ってもらいま~す!」
「アキちゃん!そんなの、でたらめだよ!」
ソラちゃんの言う通りです!
「うるさいわね!お姫様にさからう者は、死刑にする。」
『死刑』という意味がわからないソラちゃんは、首をかしげて、テレサさんのところに行った。
「ねぇ、死刑って、なに?」
「死刑っていうのはね、悪い人を殺すことだよ。」
テレサさんが、こわーい顔で話すと、ソラちゃんは、つばをごくんと飲んだ。
「つまり、私は・・・・・・。」
「そう。殺されるよ。」
「ゔ・・・・・・。」
ソラちゃんの目に、涙があふれてきた。
「うわ~ん!死にたくないよぉ~!アキちゃ~ん!私を殺さないでぇぇぇぇぇぇ!」
ソラちゃんは、大きな声で泣いた。
「たとえばの話をしたのよ、たとえばの話を。」
「あんた、おどしすぎじゃない?」
「おどしてない!マドレーヌ!あの二人を、放り出して!」
マドレーヌちゃん!やめてぇ~!
「え・・・・・・?」
「放り出して!」
「でも・・・・・・。」
「いいから放り出して!さもないと、死刑にするわよ!」
「は、は~い!」
死刑されるのがいやなのか、マドレーヌちゃんは、私とクリスさんを持ちあげた。
「ごめんなさい。真莉亜お姉様、クリスお姉様!こーするしかありません!ゆるしてください!」
わわわわ!ちょっ、マドレーヌちゃん!私達を外に向かって・・・・・・。
ポーン1
投げないでぇぇぇぇぇぇ!
「キャャャャャャア!」
悲鳴を上げながら、私達はお城から遠く離れたところへ投げ飛ばされた。
ドスン!
いたたたた・・・・・・しりもちついたぁ。
「真莉亜!」
なんですか?
「なんですか?じゃないわよ!城にのりこむわよ!」
え~!?
「え~!?じゃないの!アキはね、あたし達をジュンブライト様に近づけさせないよう、こんなことをしたのよ!ほら、早く立って!」
クリスさんは、私の両手をにぎって、私を立ち上がらせた。
「ソラはとってもいい子だけど、アキはソラと正反対で、とっても、悪い子なの!早く行きましょう!」
はいっ!
☆
「おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川でせんたくをしていました。」
アキちゃんとソラちゃんは、読み聞かせをしてもらったばっかりなのに、あきれた顔になっている。
二人の表情を見て、紅葉は読み聞かせをやめた。
「どうしたの?」
「もう、あきた。」
「私も。おままごとした―い。」
「え―?」
紅葉は、とてもこまった顔になった。
「ちょっと、あんた達!せっかく本を読ませてもらってるのに、すぐあきちゃって!紅葉がこまってるよ!」
クリスさんが、二人をしかった。
「道華、遊ぼ。」
「うん。」
「お人形で遊びましょう。」
「いいね~。」
二人は完全に無視です。
「シカトするな~!」
「どうしたんだ?」
そこへジュンブライトがやって来た。
「ジュンブライト様♡」
クリスさんはキャラを変えて、ジュンブライトのところにやって来た。
「あのね、アキとソラが、「絵本読んで。」ってたのんできたから、読ませてやったら、すぐ、あきちゃって・・・・・・。」
「どれどれ?」
ジュンブライトは、『ももたろう』の本を拾って、あぐらをかいた。
「おーい。アキ、ソラ。俺が本を読んでやるから、俺のひざにすわれ。」
「!?」
二人はそれに反応して、もうダッシュで、ジュンブライトのひざにすわった。
いいなぁ、ジュンブライトのひざにすわって。
「ジュンブライト様のおひざ、あったか~い。」
私もジュンブライトのひざにすわりたい!
私が、ジュンブライトのひざにすわろうとすると、アキちゃんが、ムッとした顔になった。
「おい、バカ女。ケツ、でかい。」
ケ・・・・・ケツがでかいですとぉ~!?失礼なっ!年上に向かって、よくそんなことが、言えますねっ!
「アハハハハ~!真莉亜、聞いたか。お前のケツ、でかいってよ。」
笑わないでくださいっ!
「それに、お前、体重が重いから、無理だよ。」
キィ―!春間真莉亜様に向かって、体重が重いって、言うなぁぁぁぁぁぁ!
私はこう見えて、体重は50キロですっ!
「デブじゃねぇか。」
てめぇの首、しめてやるぞ。
「す、すみませ~ん!」
よし、ゆるしてやろう。
「ゆるすの、早っ!」
「じゃあ、読むぞ。むかーし、むかし、あるところに・・・・・・。」
「アキとソラとジュンブライト様がいました。」
「・・・・・・!?」
「ある日、アキとソラは、ジュンブライト様から、おつかいをたのまれました。」
「お、おい。今、『ももたろう』を読んでるんだけど・・・・・・。」
「二人はおつかいに行って、家に帰りました。」
「ちょ、ちょっと・・・・・・。」
「家に帰って来たら、ジュンブライト様がまっていました。」
「話、聞いてくれる?」
「ジュンブライト様が、「お前ら、えらいなぁ。さっすが、俺のかわいいかわいい天使ちゃんだぜ。」と言って、二人のほっぺにキスしましたとさ。めでたしめでたし。」
バタン。
ジュンブライトが本を閉じると、アキちゃんとソラちゃんが、目を点にして、ジュンブライトの顔を見上げた。
「ジュンブライト様!なんで絵本を閉じるんですか1?」
「お前らが、ややこしい話をするからだ。」
ジュンブライトがつっこんだ、その時。
「すみませーん。」
窓の方から、男の人の声が聞こえた。
外を見ると、黒いスーツを着て、顔があの、トライさん似で、とんがった耳をしていて、黒い翼が生えていて、空中に浮いている男の人がいた。
ヴァンパイアなのかな?
手には超~でっかいバックを持ってるし。
「今、開けますよ~。」
ルクトさんが窓を開けると、男の人は中に入った。
しかも、土足で。
「あの!くつ、ぬいでくれる?」
「す、すみません・・・・・・。」
リリアさんに言われ、男の人は、あわててくつをぬいだ。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。では・・・・・・。」
男の人は、ルクトさんからもらった紅茶を、おいしく飲んだ。
って、飲んでる場合じゃないでしょ。
「あんた、誰なんだい。」
テレサさんから聞かれると、男の人は、紅茶が入ったティーカップを、コトンとテーブルに置いた。
「自己紹介が遅れました。わたっ、わたっ、私は、ヴァ・・・・・・ヴァ・・・・・・ヴァンパイア・・・・・・。」
「自己紹介、言えてないよ。」
「す、すみません・・・・・・わたっ、わたっ、私は・・・・・・。」
また、かみましたよ。
「かつぜつ悪いの?」
リリアさんに言われると、男の人は、にこっと笑った。
「はい。私はこー見えて、か・・・・・・かつぜつが、悪いんです。」
「自分から言った―!」
「で、では、自己・・・・・・自己紹介を・・・・・・私は、ヴァン・・・・・・ヴァンパイア・・・・・・。」
「おい。名刺を出したらどうなんだ。」
「あっ!それ・・・・・・それはいい考えですねっ!」
「今ごろ気づいたんかい!」
男の人は、スーツの中から、一枚名刺を出して、ジュンブライトに名刺を渡した。
「私は、こ・・・・・・こういう者で・・・・・・。」
ジュンブライト、なんて書いてあるの?
「ヴァンパイアテレビショッピングの社長さんだって。」
え!?こんなにかつぜつの悪い人が、テレビショッピングの社長さん!?
「はいっ。」
男の人は、メガネをきりっと直した。
じぶんはかつぜつが悪いって、認めてるんだね。
「ねぇお母さん。テレビショッピングって、なに?」
テレビショッピングってのはね、テレビで物を売るのを、テレビショッピングって言うんだよ。
「へぇー。」
「で、そのテレビショッピングの社長さんが、なんの用なの?」
「実は、ルクトさんという人がたのまれた、ヴァンパイア界が中世時代に使われていた、ティーカップをお届けしに来たんです。」
「あ―!」
ルクトさんが、声を上げた。
「3日前、ティーカップをたのんでいたのを、すっかり忘れてしまいました―!」
ルクトさんは急いで、さいふを持ってきた。
「い・・・・・・一万三千九百円です。」
一万もするの!?このティーカップ!
中世時代に使われていたからねぇ。
「かつぜつ、悪いですね。」
ルクトさん!にこっと笑って、お金を出しながら、そんなこと、言わないでください!
今度こそ、本気で怒りそう・・・・・・。
「アハハハハ。小さいころからのくせでして・・・・・・。じ、実、実は僕は・・・・・・俳・・・・・・俳優になりたいと思って、げ・・・・・・劇・・・・・・劇団・・・・・・劇団のオーディションにさ・・・・・・参加したんですが、「かつぜつが悪い。」と言われ、ふ・・・・・・ふご・・・・・・不合格になって、夢をあきらめました。」
「だろーな。」
「てか、話をするのに、何分かかっていると思ってるんだい。」
「で、その後、山・・・・・・山寺・・・・・・山寺宏一さんみたいなせ・・・・・・せ・・・・・・声優になろうと、せ・・・・・・せ・・・・・・声優の養成所のオ・・・・・・オ・・・・・・オ・・・・・・オーディションに参加したんですが、これもまた、「かつぜつが悪い。」と言われ、ふご・・・・・・ふご・・・・・・不合格になって、あきらめました。」
そんなにかつぜつが悪いなら、山寺宏一さんみたいな声優さんに、なれませんよ。
「まだ芸能界の道を、あきらめてなかったのかい!」
「今はもう、あきらめてますけど。」
「ねぇおじさん。このドレス、かわいいねぇ。女装するのが、趣味なの?」
アキちゃん、ソラちゃん!人のバック、勝手に開けたら、だめだよ!
「早くそのドレス、直しなさい!」
「もう、着ちゃった。」
早っ!
しかもそのドレス、かわいいねぇ。アキちゃんは、ピンク色のドレスで、ソラちゃんは、水色のドレスを着ている。
「あ―!それは、かわいいかわいい娘のために、開発した、リアルお姫様ごっこのドレスです!」
「リアルお姫様ごっこ?」
「あ―!」
紅葉、どうしたの?
「外を見て!」
外?え、え、え~!?
「どうなっているんですか、ここ!」
私達が目にした光景は、なんと、いつもの町ががらっと変わっているんです!
「みなさん!満月荘が、お城に!」
満月荘が、お城に?
う、うわぁ~!マドレーヌちゃんの言う通り、満月荘が、大きなお城に変わってる!
中もほら!ジュンブライトのお城の中みたいになってる!
「リ・・・・・・リアル・・・・・・リアルお姫様ごっことは・・・・・・そ・・・・・・そのドレ・・・・・・そのドレスを着ると・・・・・・。」
えー、かつぜつが悪い社長さんの代わりに、私がご説明します。
リアルお姫様ごっことは、今、アキちゃんとソラちゃんが着ているドレスを着ると、あら不思議。町が誰もいないお花畑に変わって、家がお城に変わるんです!
つまり、超~リアルなお姫様ごっこが、できるんです!
「あら?かつぜつが悪い社長さんは?」
そういえば、いないねぇ。帰ったのかな?
「そうだ!」
アキちゃん、なにを考えたの?
「今からお姫様ごっこ、やろー!」
「それ、いいねぇ。」
「じゃあ、ジュンブライト様は、王子様役ねっ!」
おぉ!ジュンブライト、ぴったりじゃない!
「そ、そうかなぁ?」
「で、道華とマドレーヌが、家来役。」
「え~?私、お姫様、やりたかったですぅ~!」
「しょうがないよ。お姫様は、アキちゃんとソラちゃんだから。」
「で、ルクトがしつじ役。」
ルクトさん、ぴったりじゃん!
「で、紅葉とリリアとテレサが、召し使い役。」
あの~、さっきから気づいていたけど、私は?
「あたしも!あたしは、女王様がいいなぁ。」
まだ役が決まってないのは、私とクリスさんだけ。
「あるよ。」
え!?ほんとに!?ソラちゃん、早く教えて!
「真莉亜お姉ちゃんと、お姉ちゃんは・・・・・・。」
「ソラ!なに勝手に言ってるのよ!あ、真莉亜とお姉ちゃんには、と―っても、スペシャルな役を、用意しておいたから。」
と―っても、スペシャルな役!?
「ひょっとして、女王様!?」
私とクリスさんが、わくわくしながら言うと、アキちゃんの笑顔が、急に消えた。
「役は・・・・・・一般人よ。」
「一般人~!?」
そんなバナナ!
「ということで、このお城は、関係者以外立ち入り禁止だから、お二人には出て行ってもらいま~す!」
「アキちゃん!そんなの、でたらめだよ!」
ソラちゃんの言う通りです!
「うるさいわね!お姫様にさからう者は、死刑にする。」
『死刑』という意味がわからないソラちゃんは、首をかしげて、テレサさんのところに行った。
「ねぇ、死刑って、なに?」
「死刑っていうのはね、悪い人を殺すことだよ。」
テレサさんが、こわーい顔で話すと、ソラちゃんは、つばをごくんと飲んだ。
「つまり、私は・・・・・・。」
「そう。殺されるよ。」
「ゔ・・・・・・。」
ソラちゃんの目に、涙があふれてきた。
「うわ~ん!死にたくないよぉ~!アキちゃ~ん!私を殺さないでぇぇぇぇぇぇ!」
ソラちゃんは、大きな声で泣いた。
「たとえばの話をしたのよ、たとえばの話を。」
「あんた、おどしすぎじゃない?」
「おどしてない!マドレーヌ!あの二人を、放り出して!」
マドレーヌちゃん!やめてぇ~!
「え・・・・・・?」
「放り出して!」
「でも・・・・・・。」
「いいから放り出して!さもないと、死刑にするわよ!」
「は、は~い!」
死刑されるのがいやなのか、マドレーヌちゃんは、私とクリスさんを持ちあげた。
「ごめんなさい。真莉亜お姉様、クリスお姉様!こーするしかありません!ゆるしてください!」
わわわわ!ちょっ、マドレーヌちゃん!私達を外に向かって・・・・・・。
ポーン1
投げないでぇぇぇぇぇぇ!
「キャャャャャャア!」
悲鳴を上げながら、私達はお城から遠く離れたところへ投げ飛ばされた。
ドスン!
いたたたた・・・・・・しりもちついたぁ。
「真莉亜!」
なんですか?
「なんですか?じゃないわよ!城にのりこむわよ!」
え~!?
「え~!?じゃないの!アキはね、あたし達をジュンブライト様に近づけさせないよう、こんなことをしたのよ!ほら、早く立って!」
クリスさんは、私の両手をにぎって、私を立ち上がらせた。
「ソラはとってもいい子だけど、アキはソラと正反対で、とっても、悪い子なの!早く行きましょう!」
はいっ!
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