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第十七話 「リリアさんの幼なじみ」

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一億円を持って来たギロさんは、真っ先に工場へ走って向かった。
そのあとを、私達が追いかける。
 
「あれ?ネルは?」
 
ジュンブライトが走りながら、たずねた。
 
「そういえば、いないね。」
 
「ったく、あの子、また道に迷ったみたいだねぇ。」
 
テレサさんが、あきれた顔になった。
 
「あ!あそこ!」
 
ギロさん、速すぎます。
 
「お母さん、遅れてるよ。」
 
わかってるって!
ふぅ~。やっとみんなに追いついたぁ~。
ひ・・・・・・ひぃぃぃぃぃ!め、目の前に、サングラスをかけた、こわ~い男の人の軍団が、こっちを見てるぅ~!
ここはひとまず、逃ーげよっ。
 
「逃げるな。」
 
わわわわ!ちょっとぉ!人の服のそでを、ひっぱらないでよぉ!
いやぁぁぁぁぁ!体型が太っている、中年ぐらいのサングラスをかけた男の人が、こっちに向かって来るよぉ~。
男の人は、顔をニヤニヤさせながら、私達の前まで歩いた。
 
「一億円は?」
 
「持って来た!」
 
ギロさんは、カバンをドスンと置いた。
 
「リッちゃんはどこだ!」
 
「あの女かぁ・・・・・・あの女なら・・・・・・。」
 
男の人は、後ろを振り向いた。
そこには、ロープでしばかれている、リリアさんがいた。
 
「ギロ・・・・・・みんな!」
 
「助けに来たぜ、リリア!」
 
「リリア~!今、助けますよぉ~!」
 
「リッちゃんを返せーっ!」
 
ギロさんが真っ先にサングラスをかけた男の人軍団の方へ走った。
 
「やれ。」
 
「はっ。」
 
部下達は、ギロさんのところまで走って来て、ギロさんをなぐったり、蹴ったりした。
 
「ギロ!」
 
リリアさんがさけんだ。
ギロさんは、血だらけになってる・・・・・・。
ギロさんは、流れている自分の血を、ぺろっとなめた。
 
「・・・・・・自分の血ぃなめてもおいしくないなぁ。」
 
「は?」
 
「なに言ってんだ?こいつ。」
 
「さっさとやっつけようぜ。」
 
ドッ!
一人の部下が、ギロさんをなぐると、ギロさんは、ヴァンパイアキャットに戻って、ばたりとたおれた。
 
「あれぇ?ぬいぐるみになっちゃったぁ。」
 
「マジックか?ハハ、お遊びの時間じゃねぇよ・・・・・・。」
 
ドッ!
 
「ゔ!」
 
一人の部下が、誰かになぐられ、そのままたおれた。
 
「おい!大丈夫か!」
 
部下たちは、たおれている部下のところにかけよった。
一人の部下は気絶している。
部下達が振り返ると、そこにはジュンブライトが立っていた。
 
「せ・・・・・・先輩・・・・・・。」
 
傷を負っているギロさんを、ジュンブライトがだっこした。
 
「て・・・・・・てめぇ!」
 
「俺達の仲間になにをした!」
 
部下達が怒ると、ジュンブライトが、部下達の方をにらんだ。
 
「てめぇら、よくも俺の後輩を、ハデにいじめてくれたなぁ。道華!ギロをよろしくたのむ!」
 
ジュンブライトが、道華の方に向かって、ギロさんを投げた。
 
「わかった!」
 
「真莉亜、道華、紅葉、じいや!危ないから下がってろ!テレサ、クリス、マドレーヌ、アキ、ソラ!行くぞ!」
 
「おう!」 「はい!」 「は~い♡ジュンブライト様っ。」
 
6人は、サングラスの男軍団の方へ、走って行った。
ジュンブライトが、部下達を蹴ったり、なぐったりしている。
 
「ジュンブライトぉ~。今日のジュンブライト、かっこいい~。」
 
私が大きな声でさけぶと、ジュンブライトが、顔をニヤニヤさせた。
 
「デヒヒヒヒ♡かわいいかわいい真莉亜から、かっこいいって言われたぜ~。ウヒョヒョヒョヒョ♡」
 
あ、言わなきゃよかった。
 
「今だ!」
 
一人の部下が、ジュンブライトを鉄の棒でなぐろうとしている。
ジュンブライト!後ろ!
 
「へ?」
 
ジュンブライトが、後ろを振り返ると、部下が鉄の棒を振りかざしていた。
 
「やべ!」
 
やべ!じゃないでしょ!にげて!
ドッ!
 
「・・・・・・ゔ!」
 
誰かが、部下を蹴って、蹴った瞬間、部下はばたりとたおれた。
 
「ったく、世話がやけるやつだねぇ。」
 
「テレサ!ありがとな。」
 
ジュンブライトがテレサさんに向かって、二カッと笑うと、テレサさんがにこっと笑った。
 
「どういたしまして。」
 
「オラオラァ~!」
 
うわぁ!マドレーヌちゃん、次々部下をたおしていくよぉ!
 
「アキ、ソラ!いっせーのーで、行くわよ!」
 
「うん!」
 
アキちゃんとソラちゃんが、大きくうなずいた。
 
「いっせーの―。」
 
「で!」
 
三人は、猫顔になった。
 
「ひぃぃぃぃぃぃ!」
 
部下達は、悲鳴をあげながら、ドドドドドっとにげてゆく。
 
「まて―っ!」
 
クリスさんとアキちゃんとソラちゃんが、部下達を追いかける。
 
「キャッ!」
 
後ろを振り向くと、紅葉が銃を向けられていた。
 
「紅葉!」 「紅葉様!」
 
私と道華とルクトさんが、助けに行こうとした時、3人の部下に銃を向けられた。
 
「じっとしてろ。」
 
「い―やー!」
 
私は思わずさけんだ。
 
「真莉亜!」
 
ジュンブライト!ヘルプミ―!
 
「真莉亜様!ここは冷静に!」
 
できないよぉ~。
 
「紅葉、こわ~い!」
 
道華が大きな声で泣いている。
 
「大丈夫よ。ルクトの言う通り、ここは、冷静に。」
 
し、死ぬよぉ~!
 
「おい!お前ら!俺の彼女と娘に手ェ出すなぁ!」
 
ジュンブライトが、私達を助けに行こうとした、その時。
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!
 
「!?」
 
「なんてこった!」
 
「銃が・・・・・・まっぷたつに!」
 
「一体、どこのどいつが・・・・・・。」
 
4人の部下達が、半分にきられた銃を見て、とても驚いている。
 
「あたしだよ。」
 
その声は・・・・・・。
 
「ネルさん!」
 
「ずいぶんまたせてしまったな。」
 
「またせすぎだろ。」
 
「もう!あんたはどんだけ、方向オンチなの!?」
 
テレサさんとクリスさんが、闘いながらつっこんだ。
 
「てめぇら、闘いに集中しろ!ところで、お前らに質問する。」
 
「ひ・・・・・・ひぃ!」
 
部下達が、おそるおそる、後ろに下がった。
 
「あたしの姉貴は、どこだ?」
 
ネルさんが、ニヤニヤしながら聞くと、一人の部下が、ひとさし指をぶるぶるふるわせながら、人質になっているリリアさんを指さした。
 
「案内、ごくろうさんっ。」
 
ドッ!
ネルさんが、笑顔で部下達をなぐると、部下達は、ばたりとたおれた。
 
「リリア!今、助けてやるからなっ!」
 
ネルさん、もしかして、本当は、リリアさんのことが・・・・・・。
 
「バ・・・・・・バカ!誰があの、超~ウザイ姉貴のことが大好きなんだよ!」
 
顔、赤くなってますよぉ~。
 
「こ、この女!人をからかいすぎだろ!」
 
「ネル!」
 
ネルさんが振り返ると、そこにはジュンブライトがいた。
 
「真莉亜達を助けてくれて、ありがとなっ。お前、そんなにリリアのこと、大好きなら、助けに行ってくれないか?こっちはもう、片づけたから。」
 
うわぁ~。部下達全員、やっつけたよぉ~。
残っているのは、ボスだけ。
 
「は、は~い♡承知しましたぁ~♡」
 
キャラ、変わったぁ~。
 
(よーし!ジュンブライト様に、ほめてもらうぞ!)
 
バサッ!
ネルさんは、黒い翼を広げて、リリアさんのところへ向かった。
 
「ひぃぃぃぃぃ!」
 
ボスが、空を飛ぶネルさんを見て、おびえている。
 
「おびえてもムダだ。クソウザイ姉貴を、よくも人質にしやがって!ゆるさん!」
 
シュッ。
 
「下を見ろ。」
 
バサッ。
ボスのズボンがさがって、ボスは、パンツいっちょになった。
 
「す、すみませんでした~!」
 
ボスは、部下達を置いて行って、外に出た。
 
「大丈夫か?リリア。」
 
「えぇ、大丈夫よ。」
 
ネルさんが、ロープを刀できった。
これで、一件落着だねっ。
 
「ジュンブライト様、こいつら、どうします?」
 
ネルさんが、気絶している部下達を指さした。
 
「あぁ。警察に通報すっか。それより、ギロを手当てしないと・・・・・・。」
 
ジュンブライトが、傷を負って、道華にだっこされているギロさんを見つめた。
 
 

 
 
満月荘に戻って、リリアさんは、ギロさんを手当てした。
 
「いたたたた・・・・・・リッちゃん、いいよ。手当しなくて。俺、医者だから、自分でするよ。」
 
「バカなこと、言わないで!それと、心配させないでよ!」
 
「・・・・・・。」
 
リリアさんにしかられたギロさんは、だまりこんだ。
 
「それと、助けてくれて、ありがとう。」
 
リリアさんが恥ずかしそうな顔をしながら、お礼を言った。
 
「どういたしまして。」
 
「ご飯、持ってきましたよぉ。」
 
うわぁ。おいしそうなオムライスだぁ。
 
「じいや、俺の分は?」
 
「王子の分も、ありますよ。」
 
「やったぁ~!」
 
「オム・・・・・ライス?」
 
ギロさん、人間界の料理を見るの、初めてでしたね。
 
「人間界の料理はとてもおいしいから、食べて。」
 
「え―っ?」
 
「ギロ、なんで「え―っ?」って、言うの?」
 
「人間界の料理、まずそー。ほかにないの?かたつむりのソテーとか、アゲハちょうチップスとか。」
 
そんなグロイ料理は、ありません。
 
「わがまま言わないで。おいしいから、食べて。」
 
リリアさんが、ギロさんの前にオムライスを出すと、ギロさんは仕方なく、オムライスを食べた。
どう?どう?
 
「・・・・・・ん!うま~い!真莉亜ちゃん、これ、おいしいね。ルクトさん、おかわりくださいっ。」
 
「はい、ただいまぁ~。」
 
ルクトさんは、台所へ向かった。
 
「マドレーヌもありがとね。助けてくれて。」
 
リリアさんが、マドレーヌちゃんの頭をなでなですると、ネルさんの方を見た。
 
「あなたをありがとね。今日のあなた、すっごくかっこよかったわね。」
 
リリアさんがにこっと笑うと、ネルさんの顔が、急に赤くなった。
 
「れ・・・・・・礼はいらん!」
 
ははーん、ネルさん、やっぱり、リリアさんのことが・・・・・・。
 
「だまれ!この、バカ女!」
 
バカ女じゃないですっ。春間真莉亜ですっ。
 
「感情を隠せないタイプだねぇ。」
 
「ネル、私と真莉亜と道華とルクトを助けてくれて、ありがとう。」
 
「ネルが来なかったら、あたし達、うたれて死んでいたかも。」
 
「本当に、ありがとうございました。」
 
私と道華と紅葉は、ネルさんにお礼を言った。
 
「・・・・・・礼はいらん。」
 
「リッちゃん。」
 
「どうしたの?ギロ。」
 
ギロさんの顔、赤くなってる。どうしたんだろ。
 
「じ、実は、伝えたいことがあるんだ。」
 
「伝えたいこと?」
 
「う、うん。」
 
ギロさんは、つばをごくんと飲んで、真剣な顔になって、リリアさんの顔を見つめた。
 
「こ・・・・・・子供のころから、リッちゃんのことが、ずっと、好きでした!」
 
「!?」
 
「え~!?」
 
ガッシャーン!
私達が驚いたと同時に、ルクトさんがオムライスを落とした。
 
「リリア!これは、断ったら、だめですよ!」
 
「そうだよ!」
 
マドレーヌちゃん、ソラちゃん、だまってて。
 
「覚えてる?子供のころ、俺がリッちゃんに言ったこと。」
 
「・・・・・・覚えてないわ。」
 
「俺、リッちゃんを守れる男になるって。」
 
「ギロ!お前、そんなことを言ってたのか!?」
 
ジュンブライトが、目をまるくしている。
 
「俺が暴力団に入った理由は、そのためだ。悪い意味で入ったんじゃない。リッちゃん!俺と、つきあってくれ!」
 
リリアさんの返事は・・・・・・。
 
「いいわ。つきあって。これからよろしくね、ギロ。」
 
カップル成立!
 
「よかったなぁ、ギロ。」
 
「は、はい・・・・・・。」
 
ギロさん、嬉しそうに、泣いているよ。
それからギロさんは、人間界に住むことになって、リリアさんとつきあうことになりました。
 
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