上 下
50 / 185

第二十二話 「ソアンさんの告白大作戦!」

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、はぁ。もう、追って来ないだろ。」
 
「そうね。」
 
ブーン!
 
「!?」
 
「ひゃ―っはっはっはっはっは!見つけたぞぉ、ソアンくん。」
 
「逃げろ!」
 
「おじいちゃん!もう、やめて!」
 
「やーだよーだ。」
 
「こうら!ハゲ頭じじい!」
 
「もう、そこまでよ!」
 
「観念しなさいっ!」
 
クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんが、マシンに追いつこうとしている。
マシンと三人の距離感は、だんだん、縮んでく。
 
「ニャ―ッ!」
 
ペタッ。
三人の胸に、アンクさんが、なにかをはった。
 
「な、なにこれ!」
 
猫の足跡のシールだ。
 
「ニャンか、はられた!」
 
アキちゃん、猫語になってなかった!?
 
「バカ言わニャイでよ・・・・・・ん!?」
 
アキちゃんは、口を両手でおさえた。
 
「自然と猫語になってしまうニャ―!」
 
うそ!
 
「本ニャイニャラ、魚で反応する時、猫顔になる時に、ニャルのに・・・・・・。」
 
ソラちゃんまで!
 
「このシールのせいだニャ!」
 
クリスさんが、怒りながら、シールを指さした。
 
「テッテッテーン!猫語シールぅ~。」
 
猫語シール?
 
「そのシールをはられると、あら大変!どんな人でも、猫語になってしまうのだ~!たとえ、猫族の者でもね。」
 
まーた、逃げられたよぉ。
 
「そうだな。」
 
って、ジュンブライト!?あんた、いつの間に、戻って来たのよぉ!
 
「さっき。」
 
「王子、無事でなによりです。」
 
「ジュンブライト様ぁ~♡大丈夫でしたかニャ―?」
 
「三人とも、なんだ、そのしゃべり方は。」
 
「そんなことは、あとで話しましょう!アンクおじい様を、追いかけましょう!」
 
 

 
 
「まてぇ~!小ぞうどもぉ~!」
 
「ひぃぃぃぃぃ!」
 
「もう、いやだぁ~!」
 
「おじいちゃん、もうやめろ!」
 
「ジャン!」
 
「ジャン!祖父に向かって、よくもそんな態度がとれたなぁ~!」
 
ジャンさん!がんばってくださいっ!
 
「これも、リナンのためだ~!」
 
ジャンさんは、必死で、マシンに追いつこうとしている。
 
「うんしょっと!」
 
ギロさん!そんなでっかい注射器を持ち上げて、なにをするんですか!
 
「半分頭がハゲているおじいさんに向かって、刺すのさ。」
 
「だから、アンクさんだってば!」
 
「ゔ~ん。」
 
ギロさんは、でっかい注射器を、両手で持ち上げながら、バランスを、整えようとしている。
 
「ゔ~ん。」
 
ギロさんは、でっかい注射器を、両手で持ち上げながら、走り出した。
 
「ギロエンジェクト!麻疹予防接種!」
 
ツルッ。
ギロさんは、バランスを崩し、でっかい注射器の下敷きになっちゃった。
 
「お・・・・・・重たいよぉ。」
 
「お前がそんなにでっかい注射器を持つからだろ!」
 
「ひゃ―っはっはっはっはっは!」
 
逃げ足が速いですっ!
 
「真莉亜!作戦を考えましょう!」
 
作戦?
 
「あのね、ごにょごにょごにょごにょ・・・・・・。」
 
紅葉が、耳打ちをした。
 
「わかった。」
 
私と紅葉は、一緒に走り出した。
 
「そこのおじいさーん。」
 
「そのマシン、かっこいいわねぇ。」
 
操作をしているアンクさんに、私達は、話しかけた。
 
「そ、そうかなぁ~?」
 
アンクさんは、操作をしながら、顔を真っ赤にそめた。
 
「ねぇ、私達にもさせて~。」
 
「お・ね・が・い♡」
 
「わかった、わかった。特別に、してやろう。」
 
「そりゃあどーも、ありがとねぇ。」
 
マシンに乗りこんだ私達は、アンクさんを、マシンの外につまみ出し、そのまま操作をした。
 
「ああ!この、おじょうちゃん達め~!わしをだましたなぁ~!」
 
ごめんなさい、ごめんなさ~い!
春間真莉亜、初めて人を、だましました。
 
「二人とも、あったまいいじゃねぇか!」
 
うわぁ!ちょっ、みんな、いっせいに乗らないでよぉ。
 
「お母さん。次、交代して!」
 
これは遊びでやってるんじゃないの。
 
「真莉亜!前!」
 
テレサさんが、指をさしている方を見ると・・・・・・。
プ―ッ!
キャ―ッ!ぶつかるぅ!
 
「カーブして!」
 
どうやってするのぉ~?
 
「こーするんだよっ!」
 
ジュンブライトが、ハンドルを、右に回すと、マシンは右に曲がった。
ふぅ、死ぬかと思ったよぉ。
 
「もう、ハラハラさせんなよぉ。免許、取ってないくせに、運転するなんて、根性あるなぁ。」
 
そーゆーあんたも、免許取ってないくせに、よくハンドルを回せたねぇ。
 
「誰でも回せるわ。」
 
「わしのマシーンを、返せぇ~!」
 
「うっさい!じじい!お前の首を、取るぞ!」
 
わわわ!ネルさん!身乗り出さないでください!
 
「僕とリナンのおじいちゃんを、殺そうとするなっ。」
 
「ネル!危ない!」
 
「ん?」
 
ネルさんが、後ろを振り向くと、トラックが、ネルさんの距離を縮んでいた。
 
「わあぁぁぁぁ!」
 
ボン!
ネルさんは、ヴァンパイアキャットになって、道華にだきついた。
 
「まてぇ~!」
 
「アンクさん!マシンを返して欲しけりゃ、ソアンをリナンとつきあわせてやれ!」
 
「あいつは、リナンのことが、好きなんだ!」
 
「やっだね~。孫娘は、誰にも渡さん!」
 
アンクさん・・・・・・。
 
「アンクさん、リナンさんをそんなに愛している気持ちは、わかります。けれど、人は、恋をしないと、生きていけない生き物なんです。リナンさんに、恋という経験を、させてください。」
 
私が、アンクさんに向かって言うと、アンクさんは、その場で立ち止まった。
私は、アンクさんが追いかけて来ないことに気づき、マシンを止めようとした。
 
「ねぇ、どうやって止めるの?」
 
ジュンブライトの方を、振り返る。
 
「そんなことも知らねぇなら、最初っからすんなよ。」
 
「そーゆーあんたも、知らないでしょ?」
 
「・・・・・・。」
 
ジュンブライトは、顔を真っ赤にして、そのままだまりこんだ。
 
「わたくしがやりましょう。」
 
ルクトさん、お願いします。
 
「はい。」
 
ルクトさんは、運転席にすわると、早速、マシンを道端に駐車した。
 
「こんなものです。」
 
「うわぁ~。ルクトじいや様、すごいですぅ~!」
 
「ルクトさんにたのめばよかったぁ。」
 
「んじゃあ、最初っからたのめよ。」
 
私達は、マシンから降りて、アンクさんの方に、向かった。
 
「これでわかっただろ?アンクさん。」
 
アンクさんは、下を向いている。
 
「ああ。ソアンくんにいたずらをした、わしが悪かった。」
 
アンクさん、反省しているみたい。
そして、アンクさんは、ジュンブライトの方に、目を向けた。
 
「ジュンブライトくん、ソアンくんに伝えてくれ。「うちの孫娘を、たのむ。」ってな。」
 
「ああ。ちゃんと、伝えるぜっ。」
 
ジュンブライトは、二カッと笑った。
 
 

 
 
アンクさんとジャンさんは、ヴァンパイア界に帰った。
ジュンブライトは、アンクさんが言ったことを、全部話した。
 
「そうかぁ。」
 
「想いを伝えるのは、今だよ。」
 
「がんばって!」
 
「リナさんに、本当の気持ちを、伝えるんだ!」
 
「お前、何回、人の名前をまちがってんだよ。」
 
ソアンさんは、リナンさんの方へ、近づいてゆく。
ソアンさん、ファイトぉ~。
 
「・・・・・・リナン。」
 
リナンさんは、ソアンさんの方を、振り向いた。
 
「なに?ソアンくん。」
 
「実は、大切な話があるんだ。」
 
「大切な話?」
 
「ああ。」
 
ソアンさんはうなずくと、深呼吸をして、真剣な顔で、リナンさんを見つめた。
 
「実は俺、子供のころから、お前のことが、好きだった。」
 
「!?」
 
リナンさんは、びっくりして、口を両手でおさえた。
 
「びっくりさせて、ごめん。俺、ずっとこの28年間、お前のことだけを想い続けていた。28年経った今、ここでお前に告白するなんて、夢みたいだよ。リナン、俺と、つきあってくれないか?たのむ!答えは、どーでもいいんだ!」
 
ソアンさんは、必死に土下座した。
 
「・・・・・・顔を上げて。」
 
ソアンさんは、顔を上げて、立ち上がった。
 
「ソアンくんの気持ちは、よくわかったよ。」
 
って、ことは?って、ことは?
 
「これからよろしくね、ソアンくん。」
 
おめでとうございます、ソアンさん!
 
「よかったなぁ、ソアン!」
 
「ゔぅ、ゔぅ・・・・・・。」
 
ソアンさん、うれしくて泣いている。
 
「ちゃ―んと、大切にするのよっ。」
 
クリスさんが、元のしゃべり方に戻って、よかったです。
 
「浮気はしないでねっ。」
 
「もし、私が、真莉亜お姉ちゃんだったら・・・・・・。」
 
ソラちゃん、妄想するのは、おやめ。
 
「とにかく、仲良くやってねっ。」
 
道華は二人に向かって、にこっと笑った。
 
「あぁ。ジュンブライトも、真莉亜ちゃんと、仲良くやるんだぞ!」
 
「おう!」
 
「うふふふふ。」
 
こうして、ソアンさんと、リナンさんは、つきあうことに、なりました。
 
しおりを挟む

処理中です...