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第二十五話 「初対面!ウルフ一郎さんと、ネルさん」

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「う、う~ん。」
 
あっ、ウルフ一郎さんが、目覚めた!
よかったぁ。
 
「真莉亜ちゃんが看病してくれたのーん?」
 
「ちげーよ。」
 
「じゃあ、誰だよ。」
 
ウルフ一郎さんが、怒りながら、身のり出した。
 
「あたしだ。」
 
ネルさんが堂々と前に出た。
 
「お前か。」
 
「それよりお前、なにか足りないものがあるぞ。」
 
足りないもの?
 
「バカ言え。な―んにもないぞ。」
 
「顔をさわれ。」
 
「・・・・・・。」
 
あれ?ネルさんが、ウルフ一郎さんの顔を見て、顔を赤く染めている。
ウルフ一郎さんは、ジュンブライトに言われたとおり、両手で顔をさわり始めた。
 
「ん、ん!?」
 
ウルフ一郎さんの両手が止まった。
 
「ん!?」
 
「ん!?じゃわからねぇ―よ!」
 
「・・・・・・。」
 
「お前、照れてないで、なんか言え。」
 
「・・・・・・無言です。」
 
「無言かいっ!」
 
「あ―!」
 
ウルフ一郎さん、どうしたんですか?
 
「!」
 
ウルフ一郎さん、速すぎますぅ~!
 
「お前、カメみてぇにおせぇな。」
 
やっかましいわ、この、方向オンチ剣士―っ!
 
「どこ行ってんだよ、ネル!」
 
ジュンブライト!ネルさんの手をひっぱらないで!
あー、また、やきもちやいちゃったよぉ。
私達三人は、ウルフ一郎さんを追いかけて、トイレへ。
ウルフ一郎さんは、鏡にうつっている自分の顔を見て、口をポカーンと開けている。
どれどれ?私達が鏡をのぞきこむと・・・・・・。
黄色くて、これぞ野生のオオカミの夜行性の目!と思われるくらい、とても輝いていて、かっこよくて、とんがった目。
ウルフ一郎さん、サングラスはずすと、イケメンなんだ~。
って、そのサングラスは?
 
「それが、ないんだよ~!」
 
え~!?
 
「あれがないと、俺様、生きて行けねぇんだよ!」
 
「そんなに大切なもんなのか?」
 
あたり前でしょ!早く探しに行こう!
 
「アイアイサー♡」
 
イケメンのウルフ一郎さんのイメージが、こわれた・・・・・・。
 
 

 
 
私達四人は、ウルフ一郎さんのサングラスを、探すことにした。
 
「投げ飛ばされたとたん、下に落っこちたにちがいねぇ・・・・・・。」
 
ウルフ一郎さんは、ぶつぶつ言いながら、コンクリートの中をのぞきこむ。
 
「お~い、見つけたぞぉ~!」
 
うそ!
 
「ほんとか!?」
 
ウルフ一郎さん、うれしそうにしている。
そりゃそうだよ。大事なものが、見つかったんだから。
 
「はい。」
 
ジュンブライトが笑顔で、ウルフ一郎さんにサングラスを渡した。
ん?これ、どー見ても、サングラスじゃないような・・・・・・。
 
「ゴーグルじゃないか―い!」
 
テキトーに探すなっ。
 
「んじゃあ、これ。」
 
「昔のメガネじゃないか―い!」
 
「これは?」
 
「なんだ、これ。」
 
「だてメガネってやつだ。」
 
「だてメガネちゃうわ!真面目にやれっ。」
 
「やってるじゃねぇか!」
 
「やってなーい!」
 
「やってる!」
 
「やってない!」
 
「やってる!」
 
「やってない!」
 
「やってる!」
 
「やって・・・・・・。」
 
あ―もう、わかったから。ジュンブライト、ちゃんとやってね。
 
「な・・・・・・・なんで、あのオオカミヤローの味方についちゃったんだよぉ!」
 
いや、そーゆー意味じゃないから。
 
「あいつ、どこに行ったんだろ。」
 
あいつって?
 
「ネルだ。」
 
気になるんですか?
 
「あぁ。」
 
ウルフ一郎さんが、こくりとうなずいた。
 
「ネルは方向オンチだから、道に迷ってるだろ。」
 
「あ、そ。」
 
ウルフ一郎さんは、再びサングラスを探し始めた。
空はもう、夕日で染まっている。
 
「お母さ―ん、お父さ―ん、ウルフ一郎―っ!」
 
その声は・・・・・・。
 
「道華!」
 
「ここにいたんだぁ。」
 
「投げ飛ばして、悪かったね。」
 
「テレサさん!」
 
「王子、無事でなによりです。」
 
「ルクトさん!」
 
「心配していましたよ。」
 
「マドレーヌちゃん!」
 
「けがはない?」
 
「リリアさん!」
 
「ウルフ一郎、サングラスをはずすと、かっこいいわねぇ~。」
 
「紅葉!」
 
「男前だねっ。」
 
「クリスさん!」
 
「バカ女、生きていたのね。ショックだわ。」
 
「アキちゃん!」
 
「アキちゃん!そんなこと、言わないの!」
 
「ソラちゃん!」
 
「そうだよ。人を傷つけることは、言ったらだめだよ。」
 
「ギロさん!みんな!」
 
「おい!春間真莉亜!このあたしを、忘れるんじゃねぇ!」
 
あ・・・・・・。
 
「ネルさん!」
 
「生きてたのか。」
 
「お前、あたしと一緒にいたくせに、よくもそんなことが言えたなぁ!桜吹雪のネル様は、いつでも無傷なんだよぉ!」
 
と、ネルさんが、怒りながら、ウルフ一郎さんの前に出したのは・・・・・・。
 
「俺様のサングラスだぁ!」
 
ウルフ一郎さんは、大はしゃぎで、サングラスを取って、うれしそうにかけた。
 
「どこにあったんだ!?」
 
「そこらへんの道端。」
 
「もう少しくわしく話せよっ。」
 
「どぅわぁれが、くわしく教えるか、ぶあか!」
 
「なんだとぉ!?」
 
せっかくのいい雰囲気が、もったいない・・・・・・。
 
「・・・・・・とよ。」
 
「ん!?」
 
「ありがとよ。見つけてくれて。」
 
ウルフ一郎さんがお礼を言うと、ネルさんは、後ろを振り向いて、夕日に目を向けた。
 
「・・・・・・礼はいらん。」
 
と、いつものセリフを言い捨てて、夕日に向かって、消えて行っちゃった。
 
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