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第三十三話 「ジュンブライトとマドレーヌちゃんが、けんかした!?」

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トゥゥゥゥル。
 
「はい、春間です。はい、はい。少々おまちください。真莉亜ぁ~、ルクさんからお電話よぉ。」
 
一体、なんだろ。
 
「もしもし、ルクトさん?」
 
「『真莉亜様、昨日はヤバかったですね。』」
 
そうですよぉ。マドレーヌちゃん、自分の力で、ウルフ一郎さんと、アキちゃんと、ソラちゃんと、リリアさんと、テレサさんと、紅葉と、クリスさんと、ギロさんを追い出したんですよ。
一体、どこまで強いのやら。
 
「『ギロ様なんか、ひどすぎましたよ。大ケガして帰ってきて。』」
 
あれは、私の家の窓から飛び降りたんです。
ジュンブライトは?
 
「『王子なら、入浴中ですけど。』」
 
ふーん。
 
「『王女様、これからどーするんでしょうか。』」
 
一生、私んちにいそうろうすると思います。
 
「『それはいけませんねぇ。王女様に、かわってください。』」
 
まっててくださいね。
 
「マド・・・・・・円花ちゃ―ん、ルクさんから、電話~。」
 
マドレーヌちゃんは、ドタバタと、足音を立てながら、走って来た。
あれ?マドレーヌちゃん、電話を取ったよ。いやがらずに。
 
「もしもし。」
 
「『王女様!ご無事でしたか?』」
 
「はい。」
 
「『王子と仲直りしてください。あの方は、王女様に会いたがっています。』」
 
マドレーヌちゃんは、口を動かした。
 
「・・・・・・一つ、言ってもいいですか?」
 
「『はい?』」
 
「彼に言っといてくださいね・・・・・・。」
 
 

 
 
ガラッ。
 
「ふぅ~、気持ちよかったぁ。」
 
「王子。」
 
「なんだ、じいや。」
 
「王女様のことでして・・・・・・。」
 
「なんだ、あいつ、謝る気になったのか。」
 
「えぇ。ただ、一つ、条件がありまして・・・・・・。」
 
「条件?早く言え。」
 
「それが・・・・・・『アイカツ!データカードダスグミリミデッド』という、お菓子を買って来いと・・・・・・。」
 
プシュッ。
 
「んく、んく、んく、んく・・・・・・『アイカツ!』?愛情のこもった、トンカツ味のグミなど、誰が買うか。」
 
「いいえ、ちがいます。女の子向けのアニメのことでして、カード付きのようです。」
 
「それを買ったら、謝るってのか。」
 
「はい。」
 
「・・・・・・あ―!よし!明日、コンビニに行って、買って来る!じいや!明日の夕方、マドレーヌを呼んで来い!」
 
「かしこまりました。」
 
 

 
 
次の日。
私達は、満月荘にいた。
いよいよだね、マドレーヌちゃん。
 
「はい。」
 
マドレーヌちゃんは、ゆっくりドアを開けた。
 
「おじゃましまーす。」
 
「あ!マドレーヌが、帰って来た!」
 
「バカ女も、道華もいる!」
 
バカじゃありません!
ジュンブライトは?
 
「リビングにいるよ。」
 
ジュンブライトぉ、あんたのいとこが、お戻りになったよぉ。
 
「真莉亜ちゅわーん♡二日ぶりだねっ。」
 
「・・・・・・。」
 
ジュンブライトは、立ち上がって、マドレーヌちゃんの方に歩き始めた。
前に立つと、ポケットの中から、なにかを取り出した。
なんだろ。
 
「うわ―い!『アイカツ!』です~!」
 
『アイカツ!』?なにそれ。
 
「知らないの?お母さん。最近ハヤッてる、アニメだよ。あたし、観たことあるもん。」
 
わ・・・・・・わからん。
やっぱ、ついていけん。
マドレーヌちゃん、お菓子の袋についてある銀の袋は、なに?
 
「カードですよ、カード!」
 
カード?
にこにこしながら、マドレーヌちゃんは、銀の袋を取って、開けた。
 
「うわぁ~。北大路さくらお姉様のカードですぅ!ブルーミングスカート、これ、ず~っと、欲しかったやつです!早速、ファイルに閉じましょう!」
 
マドレーヌちゃん、すごいね。いっぱいあるよ。
私世代は、『ラブアンドベリー』っていうのが、あったなぁ。
私、よく集めていたよ。『おてんばタイユール』とか、『ふんわりセミロング』とか。
『アイカツ!』と『ラブアンドベリー』って、似ているんだなぁ。
 
「マドレーヌ、これで、謝る気になったか?」
 
「・・・・・・・。」
 
マドレーヌちゃん、だまってないで、なんか言ってよ。
 
「マドレーヌ、ごめん。俺、調子に乗って、マズイホットケーキを食べさせて・・・・・・けど、お前のために、つくりたかったんだ。俺、不器用だから。料理もできねぇ、さいほうもできねぇ、絵が描けねぇこのお兄様を、ゆるしてくれ。」
 
「ゔ・・・・・・・ゔぅ、うわ~ん!」
 
マドレーヌちゃんは泣きながら、ジュンブライトにだきついた。
 
「ごめんなさい、ごめんなさい!ず~っと、死んでいれば、よかったって言って・・・・・・。」
 
「いいんだ。俺も悪かった。お前はもう、俺のいとこじゃねぇって言って・・・・・・。」
 
よかったね。ちゃんと仲直り、できたね。
 
「マドレーヌちゃんが帰って来たところで、焼き肉食べに行こっか!」
 
テレサさん、そんな言葉を出したら、反応する人が・・・・・・。
 
「肉ぅ~!?俺様、ロース食いてぇ!」
 
「お前、おごれよな。」
 
「真莉亜も、どう?」
 
「一緒に食べよう!」
 
で、でも・・・・・・親がなんて言うか・・・・・・。
 
「お母さん、あたし、お肉食べたーい!アキとソラとマドレーヌおばちゃんと、食べたーい!」
 
・・・・・・仕方ない。お母さんに、『LINE』しよっ。
潤達と、焼き肉食べに行くから、晩ご飯はいらないっと。
 
「やったぁ~!」
 
「いちごパフェも食べよっ!」
 
「チョコバナナパフェも!」
 
「私、ホットケーキがいいです!」
 
子供達は、大喜び。
 
「俺、オムライスが食べたいなっ。」
 
「ギロ、焼肉屋には、オムライスなんて、ないわよ。」
 
「え―っ!?そうなのぉ!?」
 
「リアクション、すごっ。」
 
「にぎやかになりましたねぇ。」
 
うふふふふ。
ピロピロピロピロ。
あっ、お母さんからだ。
私は、スマホを見た。
いいよって。よかった。
 
「真莉亜!行くぞ!」
 
ジュンブライトが、私の手をにぎった。
 
「こら!ヴァンパイア界の王子!厳禁だぞ!」
 
ウルフ一郎さんが、あとを追いかける。
 
「真莉亜!その手、離しなさいよ!」
 
「あんた、ズルイ女ね!」
 
続いて、クリスさんとアキちゃんが、追いかける。
これから、どんな毎日を送るんだろ。
楽しみだな。
 
 

 
ー15年後の東京ー
 
トン、トン、トン、トン、トン、トン、ト・・・・・・。
 
「道華・・・・・・どこにいるの?」
 
 
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