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第三十三話 「ジュンブライトとマドレーヌちゃんが、けんかした!?」

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「はぁ~。真莉亜お姉ちゃんのお母さんのチャーハン、サイコ―!」
 
マドレーヌちゃんは、ごくふつーの小学二年生のふりをして、満腹になったお腹を、おさえてる。
 
「うふふ。円花ちゃん、お家の人、心配してるんじゃない?」
 
お母さんは、マドレーヌちゃんが家出したことを、知っている。
マドレーヌちゃんは、不機嫌そうに、顔をそむけちゃって。
 
「全然、してないもん。」
 
「潤くんと、けんかしたとはねぇ。」
 
「私、潤兄と初めてけんかしたんだもん!」
 
それを聞いた、お母さんと琉理は、目をまんまるにした。
 
「そうなの!?」
 
「仲がいいいとこ、うらやましい・・・・・・。」
 
なんで、私の方を見るの。
 
「ごちそうさまぁ~。」
 
「円花ぁ、お部屋でトランプしよう。」
 
「うん!」
 
私達が、リビングを出ようとすると・・・・・・。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
 
「はーい。」
 
お母さんは、リビングを飛び出して、玄関のドアを開けると、テレサさんと、紅葉と、クリスさんと、リリアさんが立っていた。
 
「あ―、白田先生、いつもうちの娘が、お世話になっています。」
 
お母さんはテレサさんに向かって、おしぎをすると、テレサさんも、お母さんに向かって、「どうも。」っと、おしぎをした。
 
「今日は、なにしに来たんですか?あっ、娘がなにか悪いことでも、したとか?」
 
お母さん!私、春間真莉亜は、天国の神様が認める、スーパーいい子ですっ!
テレサさんは、「いいえ。」と、首を振った。
 
「実は、円花ちゃんに、お話があって・・・・・・。」
 
「・・・・・・!」
 
「マドレーヌ・・・・・・。」
 
リリアさんが遠くで、マドレーヌちゃんを悲しい目で見つめながら、つぶやいている。
 
「そ、そうですか。紅葉ちゃん、クリスちゃん、白田先生、莉亜さん、上がってください。あとで、お菓子をもってきますから。」
 
すると、クリスさんの目が、キラーンと光った。
 
「おやつ!?やったぁ!あたし、クッキーがいい!」
 
「クリス!そんなんで来たんじゃないのよ!」
 
紅葉に小声で注意されたクリスさんは、しょんぼりして、肩を落とした。
 
「は―い。」
 
 

 
 
「さぁさぁ、どうぞ、遠慮しないで食べてください。ジュースとコーヒーでも飲んで、ゆっくりしてください。」
 
「ありがとうございます。」
 
「じゃ、楽しんでぇ。」
 
お母さんはご機嫌そうに、テレサさんに手を振って、ガチャンと、私の部屋のドアを閉めた。
そのとたん、テレサさんの表情が変わった。
 
「マドレーヌちゃん、家でごっこは、もう、おしまいだよ。」
 
「ごっこじゃありませんっ!」
 
マドレーヌちゃんは、テレサさんの方に向かって、さけんだ。
 
「アキとソラ、たんこぶいっぱいつけて来て、聞いたら、マドレーヌにやられたって。」
 
アキちゃんとソラちゃん、おもちゃのハンマーで、めっちゃくちゃ、たたかれたんだもんね。
 
「それだけじゃないわ。ジュンブライトより、あなたを心配している人がいるのよ。」
 
「マドレーヌ。お願いだから、戻って来てちょうだい。戻って、ジュンブライトと仲直りして。彼、ものすごく、反省してるわ。」
 
そうなんだ・・・・・・。
 
「うそだ、うそだ、うそだぁ!あの人は、私がいない方が、いいと思っているはずなのに!」
 
「マドレーヌのことが、大好きだからよ。」
 
「・・・・・・!」
 
マドレーヌちゃん・・・・・・。
 
「マドレーヌおばちゃん、リリアのところに、行った方がいいよ。」
 
リリアさんは必死に、マドレーヌちゃんの方に向かって、深く土下座をした。
 
「お願い・・・・・・私のわがままだと思って・・・・・・。」
 
「・・・・・・。」
 
マドレーヌちゃんは、じっと、リリアさんを見つめた。
マドレーヌちゃんは、きりっと、表情を変えた。
 
「しつこいですっ!私は大人になっても、真莉亜お姉様と、一緒にいます!じゃま者め、こーしてやるぅ!」
 
またまた始まったよぉ。
今度はなに?消しゴム?
なにに使うんだろ・・・・・・。
うわっ!また宙に浮かしたよ!
しかも、4つ!
その4つの消しゴムを、四人の服の中に、スポッと、入れた。
 
「あ―っ!」
 
テレサさんが、暴れ出した。
 
「ひゃ―っはっはっはっは!くすぐったーい!」
 
クリスさんが、大きな声で、笑い出した。
 
「ウヒヒヒヒ!やめて~!」
 
紅葉は楽しそうに笑ってる。
 
「・・・・・・。」
 
リリアさん!がまんしなくても、いいですよー。
あの三人のように、笑ってもいいんですよー。
 
「キャハハハハ~!もっといけ~!」
 
マドレーヌちゃん、どんどんいたずらっ子モードに、なってない?
 
「マドレーヌおばちゃん!これ以上、自分の力を使ったら、だめだよ!」
 
「もっともっと~!」
 
マドレーヌちゃん、シカトしないで!
4つの消しゴムが、4人の服の中から出て来た。
 
「はぁ、もう、おもしろかったぁ。」
 
「今日のところは、引き返すわよ。」
 
「じゃあね、マドレーヌちゃんっ。」
 
「・・・・・・。」
 
ガチャッ・・・・・・。
って、連れ戻さないんかいっ!
 
「ハッハッハッハッハ!ざまあみろですぅ!」
 
マドレーヌちゃん、いいかげんにして。
 
 

 
 
さあてと、そろそろねるよぉ。
 
「真莉亜お姉様!これ、読んでください!」
 
どれどれ?『シンデレラ』か。
いいよ。読んであげるよ。
 
「やったぁ~!」
 
「お母さん、早く読んで!」
 
「はいはい。」
 
私は真ん中にねて、本を開いた。
 
「むかーしむかし、あるところに、シンデレラという、美少女がいました。」
 
「あ・・・・・・。」
 
「『シンデレラがしくしく泣いていると、優しい魔女が現れました。優しい魔女はこう言いました。なにか、悲しいことでもあったのかい?シンデレラがわけを話すと、魔女はにっこりと笑って、私の魔法で、舞踏会に行かせてあげる。そう言って、魔女は呪文を唱え始めました。すると、まぁ不思議!ボロボロの服が、きれいなドレスになりました。』」
 
「『うわぁ。かっわいいですぅ~。』」
 
「『お前もいつか、シンデレラみてぇなドレスを着るんだぞ。』」
 
「『私、みなさんを結婚式に、招待します!』」
 
「『アハハハハ。マドレーヌの花嫁姿を見たら、おじさんが泣くぜ。』」
 
「『そんなの、気にしませんよ。』」
 
「『マドレーヌが結婚したら、俺、何歳かな?』」
 
「『たぶん、ヒアンおじ様と、同じ歳ですよ。』」
 
「『もっと、年寄りじゃねぇか。てかお前、今の年と、37たせば、45だぞ。』」
 
「マドレーヌちゃん、マドレーヌちゃん!」
 
「はっ!」
 
「ボ―ッとしてるよ。」
 
「す、すみません・・・・・・。」
 
ピカ―ッ!
鏡が急に、光り出した。
光り終わると、一人の男の人が立っていた。
緑色の髪に、緑色の着物・・・・・・あ!
 
「ギロさん!」
 
「おひるねの途中、ごめんね。」
 
「なにしに来たの?」
 
「実は、病院に行く前、先輩から、帰りのついでにマドレーヌちゃんを連れ戻して来いっと言われて・・・・・・。」
 
来るの、おそいんじゃない?
だってもう、9時だよ。
ギロさんは、首を大きく振った。
 
「ううん、今日は、仕事が終わったと思ったら、急に救急車で運ばれた患者さんが入って来て・・・・・緊急手術をするのに、時間がかかったよぉ。」
 
ギロさん、よっぽど、つかれてますね。
 
「たまにはリッちゃんと、遊びたいよ。」
 
ギロさんが、大きなあくびをしながら、ベッドによりかかった。
 
「ギロ、大事なこと、忘れてない?」
 
「大事なこと・・・・・・あ―!マドレーヌちゃんを、連れ戻すんだった!」
 
声、でかっ!
 
「真莉亜~、誰かいるのぉ~?」
 
げっ、ヤバイ。
私は、ギロさんの口をふさいだ。
 
「いないよぉ。」
 
「そう。ならいいわ。」
 
ふぅ、大変なことになるところだったよぉ。
 
「ぶはっ!マドレーヌちゃん、帰ろう!」
 
ギロさんが、マドレーヌちゃんのうでを、がっしりつかんだ。
 
「やだ!離してくださいっ!」
 
マドレーヌちゃんは、うでをぶるんぶるん振っている。
マドレーヌちゃん・・・・・・。
 
「私のこと、ほっといてください!こーしてやるぅ!」
 
ギロさん、にげて!
 
「へ?」
 
今度は・・・・・・ん?ボール?
なにに使うんだろ。
 
「えい!」
 
チーン。
 
「あ・・・・・・。」
 
「あ―!」
 
野球ボールは、見事、ギロさんのあそこに、直撃した。
 
「アウチ、アウチ!」
 
ギロさんは、ピョンピョンはねている。
 
「ゔ・・・・・・。」
 
ギロさんは、大事なところをおさえながら、鏡の前でたおれた。
ボンッ!
 
「マドレーヌちゃん!俺、もう知らないからね~!」
 
ギロさん、窓から飛び降りちゃ・・・・・・。
 
「あ―!」
 
ドッシーン!
あらら。落下しちゃった。
 
「ア―ッハッハッハッハ!さぁ真莉亜お姉様、絵本の続きを読んでくださいっ!」
 
はいはい。
 
 

 
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