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第三十五話 「ステキな誕生日♡」

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今日は9月9日。誕生日まで、あと5日。
 
「お母さん、何歳になるの?」
 
14歳だよ。
はぁ。14日まで、まちきれないよ~。
胸がドキドキする。
 
「お母さん、誕生日プレゼント、なにが欲しいの?」
 
えっ?
 
「あたしが買ってあげる!」
 
ありがとう、道華。でも、気持ちだけで、充分だよ。
 
「ふーん。」
 
 

 
9月14日・・・・・・そういやあ、真莉亜の誕生日だったなぁ。
 
「じいや、じいや!」
 
「は、は~い、ただいまぁ。」
 
じいやが、俺のところに、やって来た。
 
「なんでしょうか。」
 
「9月14日が何の日か、知ってるか?」
 
「9月14日・・・・・・さぁ、知りません。」
 
真莉亜の誕生日だよ、真莉亜の。
 
「あ―、そうでした。わたくしとしたことが、すっかり忘れてしまって・・・・・・で、それがどーしたんですか?」
 
「真莉亜の誕生日パーティーを、開こうと思うんだ。」
 
俺がそう言うと、じいやは顔をきょとんとした。
 
「ここでですか?」
 
あったりめぇだぁ!
 
「俺、真莉亜を楽しませてーんだ!」
 
俺がにっこり笑うと、じいやもにっこり笑った。
 
「それは王子らしい提案ですねぇ。では・・・・・・。」
 
あー、真莉亜に言うなよ。サプライズでやるから。
 
「みなさんを、お呼びしましょうか?」
 
あぁ、呼んでくれ。
 
 

 
 
「真莉亜お姉様の誕生日会・・・・・・それ、いいですね!」
 
マドレーヌが、笑顔で言った。
 
「だろ?真莉亜には、ナイショだぞ。」
 
「はい!」
 
「私、真莉亜のプレゼント、作るわ。クリスもどう?」
 
「さんせ―、さんせーい!」
 
じゃあ、よろしくな。
 
「あたしは反対よ。」
 
アキ!
 
「バカ女のバースデーなんか、祝いたくないもん!」
 
「あら。おいしいおいしいケーキも買うけど?」
 
「しっ、仕方ないわね!やっぱ、祝うわよ!」
 
顔、赤くなりやがって。
 
「ジュンブライト様!からかわないでくださいっ!」
 
ごめん。
 
「ソラ。お前はどーするんだ?」
 
「私?私は、真莉亜お姉ちゃんに、好きな物を聞いてこようと思うんです。」
 
でも、ソラだけじゃなぁ。
ガチャッ。
 
「ただいまぁ。」
 
その声は・・・・・・。
 
「オオカミヤロー!」
 
「どうしたんだよ。みんな集まって。」
 
9月14日、なんの日かわかるか?
 
「つ・・・・・・月見の日だろ?」
 
それはまだ先だよ。
 
「真莉亜の誕生日なんだ!」
 
「えっ、え―っ!?真莉亜ちゃんの、誕生日~!?」
 
サングラス、ずれてっぞ。
 
「・・・・・・で、それがどーした。」
 
「真莉亜の好きなものを聞いてくれ。」
 
「はぁ?そんなもん、おめぇが聞きに行けば、いいだろ?」
 
俺じゃあ、聞きにくいんだ。
たのむ!聞きに行ってくれ!
俺は、両手を前にパンッとたたいて、お願いした。
 
「わかったよ。聞きに行けばいいんだろ、聞きに行けば。」
 
ありがとう、ウルフ一郎!
 
「今回は特別だ。」
 
そう言いながら、ウルフ一郎は、たばこを吸った。
 
「私、聞きに行きたかった。」
 
「ソラ、一緒にかざりつけをしましょう!」
 
「ケーキも買いに行こっ。」
 
「うん!」
 
「かざりつけの準備、よろしくたのむぞ。」
 
「みんな、なに話してるの?」
 
道華。
 
「真莉亜の誕生日パーティーをやろうとしてるんだよ。」
 
「お母さんの誕生日パーティー・・・・・・いいね、それ!あたしも手伝う!」
 
けど、お母さんには、ナイショだぞ。
 
「うん!」
 
さあてと、みんな!必ずパーティーを、成功すんぞ―!
 
「オー!」
 
 

 
塾、やっと終わったぁ。
しかも宿題の量、多すぎるよ。
もう少し、減らして~。
 
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
 
ん?後ろから、男の人の声が、聞こえるぞ。
振り返ると・・・・・・。
 
「ウルフ一郎さん!」
 
ウルフ一郎さんが、目をハートにして、足を竜巻のように速く動かして、こっちへ走って来るのが、見える。
 
「どうしたんですか?」
 
「実はぁ、話があってぇ。」
 
話?
 
「そう!真莉亜ちゃん。好きなものは、なに?」
 
好きなもの・・・・・・そうだねぇ。
『ОNEPICE』もあるし、本もあるし。
 
「いろいろですよ。」
 
「いろいろ?」
 
ウルフ一郎さんは、首をかしげた。
 
「私、なんでも好きです。けど、気持ちだけで、充分です。」
 
「ふーん。」
 
なにか書いてる。
なんだろ。
 
「あ―!見ないでぇ!」
 

 
「あっ、急な用事を思い出して・・・・・・じゃあね、真莉亜ちゃんっ。」
 
ウルフ一郎さんは、手を振りながら、走って行っちゃった。
今日のウルフ一郎さん、おかしかったなぁ。
 
 

 
 
気持ちだけで充分だとぉ?
 
「そうだ。」
 
あいつ、変わってるな。
 
「先輩。俺、出し物がしたいッス。」
 
おぉ!いいじゃねぇか。で、なにをやるんだ?
 
「弾き語りをやりますっ。」
 
自信満々じゃねぇか。
お前、ギターが得意だったな。
 
「病院の同僚達と、バンドを組んでます。」
 
「すげーな。」
 
ギロはジャンっと、ギターを弾いた。
 
「♪Happy Birthday to you 今日はステキなSpecial day 贈る言葉はILove you 僕のプレゼント受け取ってMyLove Song♪」
 
パチパチパチ。
 
「ギロ!お前、歌がうめぇじゃねぇか!」
 
「えへへへへ。」
 
「作詞もよかった。けど・・・・・・。」
 
「けど?」
 
俺の彼女だから、『I Love you』とか、『My Love Song』とか、そーゆー言葉、使わないで欲しいんだ。
せめて、『おめでとう』とか、『永遠に』の方が、いいんじゃねぇの?
 
「ほうほう。いいアドバイス、ありがとうございますっ。」
 
出し物、がんばれよ。
 
「はいっ。」
 
「かざりつけの材料、買って来たよぉ。」
 
サンキュー、テレサ。
 
「お―い、ガキども。作業を始めろ~。」
 
「は―い!」
 
子供達は、テレサが買って来たおり紙や画用紙で、早速作業に取り組んだ。
 
「で、真莉亜のプレゼント、なんにするの?」
 
まだ、はっきりしてないんだ。
 
「私達は、マスコットをつくるわよ。」
 
マスコット・・・・・・いいねぇ、それ。
そうだ!俺もなにか、つくればいいんだ!
 
「でもあんた、さいほうするの、初めてじゃないのかい?」
 
初めてでも、やってみなきゃ、わかんないだろ?
これも、真莉亜を喜ばすためだ。
 
「人のことを想う王子の姿、初めて見ました。」
 
じいや、感動しないでくれ。
 
「心配だねぇ。」
 
クリス。さいほう道具を持って来い。
 
「はいは―い。」
 
クリスは、猫のキャラクターがのってあるさいほう道具を持って来た。
 
「これでいいんですか?」
 
あぁ。ありがとな。
 
「どういたしまして。」
 
さあてと、始めるか。
 
 

 
できたぁ!
 
「どれどれ?」
 
みんながのぞきこんだ。
 
「・・・・・・。」
 
なんだよ。そんなにまずい顔をして。
 
「なんだ、これ。」
 
「犬ですか?」
 
ぶったおすぞ、てめぇ!
 
「うさぎだ。」
 
「いや、どー見ても、犬にしか見えん・・・・・・。」
 
「ジュンブライト、あなた、さいほうもできないのね。」
 
あ―も―!さいほう、あきた。物をつくるの、めんどくせー。
 
「感謝の手紙を書けば?」
 
手紙・・・・・・いいなぁ、それ!
 
「よーし!手紙を書くぞぉ!じいや!えんぴつと便せんを持って来い!」
 
「はいはい、ただいまぁ。」
 
じいやは、寝室に走って行った。
 
 

 
 
私の誕生日まで、あと4日。
今日の昼休み、紅葉とクリスさんと一緒に、図書館に行こっかな?
 
「紅葉ぁ、クリスさ―ん。」
 
「わ!」
 
なんでびっくりするのよ。
 
「い、いや、なんでもないわ!」
 
「そ、そうよ!」
 
なにか、隠してるね。
 
「・・・・・・!」
 
ほ―ら、汗が出てる。
 
「今から図書室に行こう。」
 
「ご、ごめんね~。」
 
「あたし達、勉強しているから、一人で行って。」
 
え―っ?
・・・・・・しょうがないなぁ。
私達は教室を出た。
あの二人、最近私のこと、避けるようになったもんね。
 
 
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