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第三十五話 「ステキな誕生日♡」

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『まりあへ じゆうよんさい、おめでとー。
これからもずつと、おれのそばにいてくれよな。あと、おれをあいしてくれて、ありがとー。
じゆんぶらいとより』
 
「字きたなっ!」
 
ウルフ一郎が、俺の書いた手紙をたたきつけた。
 
「なにすんだよぉ!」
 
「先輩、カタカナと漢字を使ってください。」
 
「小っちゃい『ゆ』も、『つ』も。」
 
うっせぇー!手紙など、書きと―なくなって来たじゃねぇか!
 
「出た。親父さんに負けない、頑固パワー。」
 
「なんだかさわがしいなぁ。」
 
その声は・・・・・・。
 
「ネル!」
 
ちょうどいいところに来た!
 
「?」
 
俺はネルに、真莉亜の誕生日パーティーのことを、話した。
 
「なるほどぉ。で、あたしはなにをするんですか?」
 
「う―ん・・・・・・そうだ!鼻を買って来てくれ!真莉亜が喜ぶ花を!」
 
ネルは、目をハートにした。
 
「ジュンブライト様のためなら、なんでもやりまーす♡」
 
「ちょっとまったぁ!」
 
ウルフ一郎が、部屋を出て行こうとするネルを止めた。
 
「なんだよ。」
 
ネルの目、ぎろりとなってる・・・・・・。
 
「俺様も行く。」
 
「はぁ!?あたし一人で、充分だよ!」
 
「お前じゃ迷子になるから、一緒に買いに行こう。」
 
「・・・・・・わかったよ。」
 
ネルがそう言うと、ウルフ一郎が、ネルの手をにぎった。
そのとたん、ネルの顔が、真っ赤になった。
 
「ちょっ、離せよ!子供じゃあるまいし。」
 
「こーしてにぎっていれば、迷子にならないんだよ。」
 
「・・・・・・。」
 
いってらっしゃ―い。
 
(ちっくしょ―!ジュンブライト様と、買いに行きたかったぁ!よりによって、この、サングラスオオカミとなんか・・・・・・。)
 
ガチャン。
さあてと、パーティーの準備をすっか。
 
 

 
今日の夜ご飯は、えびフライ・・・・・・か。
お母さんにたのまれて、『ラビットスーパー』まで、買いに行ったんだ。
早くしないと、夕方になってしまう・・・・・・ん?
あのオオカミさんと、刀をもっている、女の人は・・・・・・。
ネルさんと、ウルフ一郎さんだ。
しかも二人とも、手をつないでるし!
ん?ウルフ一郎さんが、手にしているのは・・・・・・真っ赤なバラの花束だ!
 
「ネルさ―ん、ウルフ一郎さ―ん!」
 
私は、二人のところまで走った。
 
「春間真莉亜!」
 
ぐ―然ですねっ。
 
「今日、会えないかと思ったよ―ん♡」
 
うふふふふ。
 
「ところでウルフ一郎さん、そのバラの花束、どーしたんですか?」
 
「ぎくぅ!」
 
ぎくぅ?
 
「お前に教える筋合いはない。」
 
・・・・・・?
 
「俺様、こいつと結婚するんだよ。」
 
「!?」
 
ネルさんが、ウルフ一郎さんの方を、くるりと振り向いた。
えっ?
ウルフ一郎さん、私のこと、好きじゃなかったんですか?
 
「好きだったけど・・・・・・俺様の頭ん中が変わってさ、今日、こいつにプロポーズしたんだよ。」
 
えぇ―っ!?
私は大きな声で驚いた。
 
(うそだ、うそだぁ!)
 
おめでとうございますっ。ネルさん、本命の人が見つかって、よかったですねっ。
 
(あたしの本命の人は、ジュンブライト様だ!)
 
「子供は何人つくる?」
 
(こいつ、なにがしたいんだ?)
 
「じゅっ、11人ぐらい、つくりたいなぁ。」
 

 
「アハハハハハ。できれば、お前にそっくりな女の子が欲しいなっ。」
 
あ、あやしい・・・・・。
 
「じゃあ真莉亜ちゃん、バイバーイ!」
 
ウルフ一郎さんは手を振りながら、ネルさんのてをひいて、去った。
あの二人、おかしかったなぁ。
 
「ふぅ、なんとか助かった。」
 
「助かったじゃね―よ!春間真莉亜に向かって、よくもあんなうそが、つけたなぁ!」
 
「いいか!真莉亜ちゃんにはナイショにしてるんだ!」
 
「なにを?」
 
「パーティーだっ!」
 
「それを最初から言えや!」
 
「てか、俺様はお前のことが、大大大大大大大っ嫌いだっ!」
 
「あたしも!お前のことが、大大大大大大大っ嫌いだっ!」
 
 

 
 
誕生日まで、あと一日になった。
私は、家の手伝いをしていた、
 
「潤くんのところに、行かなくていいの?」
 
お母さんが、野菜を切りながら、聞いてきた。
 
「ちょっと、よってこよっかな?」
 
 

 
 
今週、ジュンブライトに会ってないもん。
久しぶりに、満月荘に行くことにしたけど・・・・・・。
ん?あのイケメンで、天然パーマは・・・・・。
 
「ジュンブライト!」
 
「!」
 
ちょっとまって!なんで逃げるのよ!」
 
「ひぃぃぃぃぃ!」
 
ねぇってばぁ!
はぁ、はぁ、はぁ。走るたび、息切れするよぉ。
少し、休憩しよっ。
ジュンブライトは、私の前に立った。
 
「真莉亜。」
 
ジュンブライト、一つ、質問していい?
 
「あぁ。」
 
私は、ジュンブライトの顔を見上げた。
 
「私のこと、嫌いなの?」
 
「はぁ?嫌いなわけ、ねぇ―だろ?」
 
本当のこと、言ってよ!
 
「つーか、なんでそんな話になるんだよぉ。」
 
あんた、私が声をかけた時、とっさに逃げたじゃない!
 
「・・・・・・!」
 
ほーら、マズイ顔になってるじゃない!
 
「お、俺は・・・・・・あやしいやつかと思って、逃げただけだ。後ろを振り向いたら、お前だったんだ・・・・・・。」
 
「うそつき!」
 
私は大きな声でさけんだ。
 
「最近、変だよ!私が近づこうとしたら、みーんな、避けて!あんたも、ルクトさんも、マドレーヌちゃんも、リリアさんも、道華も、テレサさんも、紅葉も、クリスさんも、アキちゃんも、ソラちゃんも、ネルさんも、ギロさんも、ウルフ一郎さんも、み―んな!私、なにか悪いことでもした?」
 
「あ・・・・・・あ―・・・・・・。」
 
ジュンブライトは、とまどっている。
 
「してないでしょ?私、みんなが嫌がること、一つもしてないのに・・・・・・もう、明日の誕生日、祝ってあげなくてもいい!最悪な誕生日を迎えるよ!もう、あんたなんか、大っ嫌い!」
 
私は、ぱっと走り出して、ジュンブライトの横を通りすぎた。
 
「真莉亜・・・・・・。」
 
 

 
 
私は部屋のすみっこで、体操座りをしていた。
今日は9月14日・・・・・・最悪な誕生日です。
もう、あの人達とは、関わりたくない。
 
「『真莉亜!』」
 
私の頭の中で、ジュンブライトの声が響く。
私、あんなこと、言っちゃった・・・・・・。
 
「お母さん!」
 
道華が入ってきた。
 
「どうしたの?」
 
「満月荘に行こっ。」
 
は?なに言ってるの?
 
「い―から行くの!」
 
道華が私の両手をにぎって、私を立ち上がらせた。
 
「あ―!」
 
今度はなに?
 
「外に出たら、目、つぶってて!」
 
はぁ?なんで目をつぶらなきゃならないのよぉ!
 
「あたしがいいよって言うまでねっ!」
 
と、道華がウインクをした。
・・・・・・わかったよ。
目をつぶればいいんでしょ、目をつぶればぁ!
 
「やったぁ!」
 
道華が大喜びして、ピョンピョンっと、跳ね上がった。
 
 
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