上 下
99 / 185

第三十九話 「ネルさん、ウルフ一郎さんと、二人っきりになる」

しおりを挟む
「はぁ!?竹下通りに出かけるだとぉ!?」
 
「あぁ。気分転換に、出かけようと思ってな。」
 
ふざけるな!あたしは、洋服とか、興味ねぇーし、人が多いところは、苦手だぁ!
 
「迷子になるからか。」
 
図星・・・・・・。
 
「図星かいっ!まぁ、俺様が手をつないでやるから、安心しろ。」
 
お前、昨日から頭、おかしいぞ。
あたしのこと、心配して。なにかあったのか?
 
「いや、なんでもないっ。」
 
・・・・・・あやしい。
 
 

 
というわけで、あたし達は、竹下通りに行った。
あたしの言う通り、人は多いわ、ギュウギュウづめに押されるわ、大変・・・・・・。
 
「おい。ちゃんと手、つないでいるか?」
 
ウルフ一郎が、あたしの方を振り向きながら、言った。
つないでるよ!
 
「あっ、洋服屋さんがある。おい、ちょっと、よってみないか?」
 
はぁ!?
だからあたしは、洋服には興味ねぇ―っつーの!
 
 

 
 
洋服屋さんに入ったウルフ一郎は、早速、服を選んだ。
 
「ん―、これもいいなぁ。あっ、これも似合うけどぉ、これはどうかなぁ?」
 
お前は女子高校生かっ。
 
「あっ、これもかわいいなぁ。」
 
こいつ、回りの女子高校生の目線、気にしろよ。
ん?この洋服、かわいい・・・・・・あ・・・・・・。
 
「どうした?」
 
い、いや、なんでもないっ。
 
「その服、買いたいのか?」
 
バレた―っ!
 
「あ・・・・・・あぁ、そうだ。」
 
「一回、試着してみたら?」
 
はぁ!?めんどくせ―。
だから、洋服は苦手なんだよぉ。
・・・・・・仕方ない。試着してみるか。
 
「おい、刀、持て。」
 
あたしはウルフ一郎に、刀を渡した。
 
「あぁ。」
 
-15分後ー
 
 
シャッ。
 
「おぉ!かわいいじゃねぇか!」
 
「そ・・・・・・そうか。」
 
チェック柄のリボンがついた、制服。おまけに、スカートもチェック柄だ。
こ―んなかわいい制服着たの、初めてだぜ。
ま、あたしは中高とも、授業に出ず、ず~っと、休んでたからな。
 
「それ、気に入ったか?」
 
「うん・・・・・・。」
 
あたしは、顔を赤くしながら、うなずいた。
 
「じゃあ、その服、買ってあげるよ。」
 
えっ?いいのか?
 
「あたり前だろ?今回は、特別さ。」
 
うわぁ、ありがとう!
あたしは思わず、キャッ、キャッ、と、跳びはねた。
 
「ぷっ。」
 
なんだよ。
 
「お前、乙女なところも、あるんだな。」
 
ち、ちげ―よ!お前、人をからかうなっ!
 
「アハハハハハ!」
 
笑うなっ。
 
「あの人達、カップルみたいねっ。」
 
「いいなぁ。あんなに仲良くしちゃって。」
 
あたしのダーリンは、ジュンブライト様だって、言ってんだろっ!
 
 

 
 
夜、あたしは帰るしたくをしていた。
ずっと、いたかったけど、ここで寝泊まりする、必要はねぇ。
 
「ガーゴー、ガーゴー。」
 
ふっ、いびき、かいでる。
あたしは、気持ちよさそうにねているウルフ一郎を、ほほ笑みながら、見つめた。
さ―てと、行くか。
あたしが、玄関に行こうとした、その時。 
ガサッ。
うわぁ!なにか、足に当たった!
なんだろう?ん?あ、これ、今日買った、制服じゃねぇか!
・・・・・・もらって行こっかな?
あたしは、制服が入った袋を持って、寝室を出て、玄関に行った。
 
「・・・・・・世話んなったな。」
 
あたしは、そうつぶやいて、満月荘を出た。
 
 
しおりを挟む

処理中です...