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第四十三話 「イケメントリオ、旅行に行く」

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今日は満月荘に、おじゃまします。
 
「お父さんに早く会いたいなぁ。」
 
そうだねぇ。
私達は、満月荘に着いた。
ピンポーン。
インターホンを押すと、ガチャッとドアが開いた。
 
「真莉亜、いらっしゃーい。」
 
おじゃまするね、紅葉。
 
「ねぇ紅葉、お父さんは?」
 
「あ・・・・・・。」
 
ん?紅葉、どうしたの?急にマズイ顔になって。
 
「いや、なんでもないっ。さぁ、上がって上がって!」
 

私達は、お部屋に上がった。
 
「おじゃましまーす。」
 
「真莉亜、こんにちは。」
 
こんにちは、テレサさん。
って、あれ?なんか今日、三人減ってるような・・・・・・。
 
「お父さんは?」
 
「あぁ、ジュンブライトね。ジュンブライトは、ギロとウルフ一郎と一緒に、旅行に行ったよ。」
 
旅行!?
いいなぁ~、どこに行ったんですか?
 
「秋田に行ったんだよ。」
 
秋田って、東北じゃん!
 
「真莉亜お姉様に、い―っぱい、おみやげを買って来るって、言ってましたよ。」
 
うわぁ~。楽しみだなぁ。
 
「ところで、お父さん達、いつ帰って来るの?」
 
「えっとぉ、確かぁ、一泊二日って、言ってましたよ。」
 
「へぇー。」
 
ルクトさんが、道華の背に合わせて、しゃがみこんだ。
 
「道華様にも、ステキなおみやげを買って来るって、言ってましたよ。」
 
「やったぁ~!」
 
道華は喜びながら、ピョンピョン飛びはねた。
ジュンブライト達、今、なにしてるんだろ。
 
「さあね。」
 
「きっと、新幹線の中じゃない?」
 
そうですねぇ~。
 
「ギロとウルフ一郎は、新幹線に乗るの、初めてだから、はしゃいでるんじゃない?」
 
そうだったね!
ま、ギロさんの天然パワーが、発揮しなければいいけど。
 
「早くジュンブライト様に帰って来て欲しいわぁ。」
 
「あたしも。」
 
「私も。」
 
ジュンブライト大好き三姉妹が、窓辺でジュンブライトの帰りをいのっている。
ジュンブライト、私もあなたの帰りをまってるよ。
 
 

 
 
う~ん。あ、これだ!
ちっ、またババかよぉ。
 
「アハハハハ。先輩、ババ抜き、弱いっスね~。」
 
悪かったな、ババ抜きが弱くて。
あーあ。楽しくね。トランプは、やめだ、やめだぁ!
 
「えーっ?先輩がやろうって、言ったんじゃないですかぁ。」
 
俺はそーゆー、カードゲームとか、苦手なの。
すると、さっきねていた、ウルフ一郎が、自分の顔にのせた、秋田の観光雑誌を取って、起きた。
 
「おい、お前ら。ここは満月荘じゃないんだぞ。新幹線なんだから、もう少し、静かにしてくれないか?」
 
「よーし!ギロ、なぞなぞやろー!」
 
「はいっ!」
 
「聞いてないしっ!」
 
「問題、パンはパンでも、食べられないパンは、なーんだ?」
 
「はい!フライパンです!」
 
せいかーい。
 
「やったぁ~!じゃあ次、俺が出しますからねっ。パパが嫌いな食べ物は、なーんだ?」
 
パパイヤ!
 
「せいかーい!」
 
「おっしゃー!」
 
「・・・・・・おい、お前ら。そのなぞなぞ、簡単すぎるぞ。」
 
ウルフ一郎も、本なんか読んでないで、楽しもうぜっ!
 
「え―っ?」
 
「ほら、トランプでもしよっ。」
 
ギロが笑顔で、ウルフ一郎にトランプが入ったケースを渡した。
 
「ちっ、わかったよ。やればいーだろ、やれば。」
 
ウルフ一郎は、トランプをたぐり始めた。
 
「俺様、こー見えて、トランプが得意なんだぜっ。」
 
うそつけ。
 
「ほんとだってばぁ!」
 
じゃあ、しよっか。
俺達は、トランプを配り、ババ抜きをし始めた。
 
「いいか?ババ抜きってのは、トランプをじっと見つめて、頭の中でどれが同じトランプかって考えてから、取るのがコツなんだぜっ!」
 
へぇー。
 
「よしっ、行くぜ!」
 
ウルフ一郎は、じっとトランプを見つめた。
 
「よし、これだぁ!」
 
ウルフ一郎は、すばやくトランプを、ぱっと取った。
 
「うお!やったぁ~!9が出たぞぉ~!」
 
つ、つえー。
 
「ウルフ一郎、ゲームが得意なんだな。」
 
「さぁ、どんどん行こーう!」
 
こいつ、燃えている・・・・・・。
 
「よっしゃあ!いっちょ上がり!」
 
お前、こーゆーの、得意んだな。
すると、突然、アナウンスが鳴った。
 
「『まもなくー、秋田駅でございます。お降りの際は、お忘れ物のないよう、ご注意ください。』」
 
「あっ、もう、行こうぜ!」
 
「はい!」
 
「って、お前、どんだけ荷物、もってんだよ・・・・・・。」
 
 

 
 
ふぅ、秋田に到ちゃ―く!
 
「先輩、早く行きましょう!」
 
「おう!」
 
「おい、お前ら。勝手に行動、すんじゃねぇぞ・・・・・・って、あれ?いない!」
 
おばちゃーん、だんご、二つちょうだ~い!
 
「俺も~!」
 
「はいよ。」
 
「って、おい!」
 
なんだよぉ。
 
「早速食いもんを買おうとするなっ!おみやげ買う金が、もったいねぇじゃねぇか。」
 
「・・・・・・別に。」
 
「お前、今さっき、沢尻エリカのまね、したな!?」
 
なぁ、早く行こうぜぇ~。
 
「はーい!」
 
「はぁ・・・・・・三日間、俺様、こいつらのツッコミ担当・・・・・・か。」
 
 

 
 
俺達は、そば屋で、今後の計画を立てていた。
 
「まず、それぞれ行きたいところに行くだろ?で、お土産を買って行くだろ?そのあと、旅館でゆっくりすごす。」
 
「ズー、ズー。」
 
「って、聞いてんのかおいっ!」
 
ん?そば、食ってたから、聞いてなかった。
 
「ったく、もう、いいよ。そういう計画にするよ。」
 
真莉亜におみやげ、買うもんね―っ!
 
「俺も~!リッちゃんにおみやげ、買う~!」
 
「お、俺様だって、真莉亜ちゃんにおみやげ・・・・・・。」
 
「『ウルフ一郎。』」
 
「は!」
 
ウルフ一郎、どうしたんだ。そんなに目を大きく見開いて。
 
「あっ、なんでもないっ。とーにかく、俺様も、真莉亜ちゃんにおみやげ、買うもんね―っ!」
 
「なんだとぉ!?俺が先に、真莉亜におみやげ、買うんだっ!」
 
「あんだとぉ!?」
 
「やんのかオラァ!」
 
「二人とも、やめてください!」
 
ギロが、けんかを止めた。
 
「せっかく楽しい旅行なんだから、けんかしないでください。台無しになるんじゃないですかぁ。」
 
「はい、すみません・・・・・・。」
 
 

 
 
「ギロ、見てみろ!ゴジラ岩だ!」
 
「うわぁ~。本当だぁ~!」
 
ギロがカシャカシャと、ゴジラ岩を撮ってゆく。
ゴジラの形をした岩。俺、ずっと、行きたかったんだよなぁ~。
 
「どら、俺様にカメラをかせ。撮ってやるから。」
 
「本当!?じゃあ、お願い!」
 
ギロは、ウルフ一郎の手に、カメラを置いた。
 
「おう!」
 
ギロは、俺の方に向かって走って、俺のとなりに立った。
 
「いいか?」
 
「おう!」
 
「じゃあ、行くぞぉ~。はい、チーズッ。」
 
カシャッ。
 
「ありがと、オオカミヤロー。」
 
「どういたしまして。」
 
って、なんで俺、こいつにお礼、言ってんだ?
 
「はい、撮った写真。」
 
ウルフ一郎が、撮った写真を、俺達に渡した。
うわぁ~。よく撮れてんじゃねぇか。
 
「ねぇ、次は三人で撮ろーよ!」
 
ギロが、俺とウルフ一郎のうでを、がっしりつかんだ。
わ、わかったから、離せよぉ!
 
 

 
 
次に俺達がたずねたのは、たつこ像。
田沢湖半潟尻にある銅像。
美しさを永遠に保とうと、百日百夜の願いをかけ、満顔の夜に「北に湧く泉の水を飲め」というお告げ通りに泉も水を飲み続け、たつこは龍になったんだぜ。
 
「へぇー。先輩、よく知ってますねぇ。」
 
ギロが写真を撮りながら、感心している。
本に書いてあったんだ。
 
「へぇー。」
 
さぁ、次に行くか。
 
「おう!」
 
 

 
 
次に俺達が行ったのは、秋田市立赤れんが郷土館。
外観はルネッサンス様式を基調したレンガ造りで、内部はバロック様式を取り入れた造りで、建物全体が重要文化財されている。
 
「うわぁ、すごーい!」
 
「ほんとだなぁ。」
 
「おい、お前ら、これを見ろ!」
 
「ん?」
 
早くこっちに来いよぉ~!
 
「どれどれ?」
 
二人は俺のところにやって来た。
 
「ほらっ。」
 
俺は、版画を指さした。
 
「うわぁ~。すっごーい!」
 
「誰が描いたんだ?」
 
「俺―。」
 
「うそつけ。」
 
勝平得之だよ。
 
「勝平得之?」
 
二人は首をかしげた。
秋田出身の版画家だよ。
 
「へぇー。」
 
「この作品は、「かつひらとくし」っていうんだぜっ。」
 
「お前、よく知ってんなぁ。」
 
出発する前、本で何回か読んで、覚えた。
 
「言うと思った。」
 
 

 
俺達は、おみやげを買い、今日から泊まる旅館に行き、部屋でゆっくりしていた。
 
「はぁ、つかれた―。」
 
「けど、楽しかったねっ。」
 
「明日も楽しもーう!」
 
「おーう!」
 
「ところでお前ら、おみやげ、なにを買ったんだ?」
 
ん?俺は、秋田犬のぬいぐるみと、きりたんぽと、あきたこまちだぜっ。
 
「俺は、木地山系こけしと、十文字ラーメンと、先輩と同じく、きりたんぽッス!明日は朝早く起きて、あんごま餅を買うッス!」
 
そーゆーお前も、なに買ったんだ?
 
「俺様?俺様は、栖岡焼きに、はたはたパイ。稲庭うどんに、お前らと同じく、きりたんぽだ。それと・・・・・・秋田犬のぬいぐるみは、真莉亜ちゅわんに♡」
 
あ―!それ、俺とかぶってんじゃねぇか!
真莉亜におみやげをやるのは、この俺だぁ!
 
「あんだとぉ!?」
 
「やんのかオラァ!」
 
「二人とも!けんかはやめてくださいっ!」
 
ギロが大きな声で、けんかを止めた。
 
「・・・・・・ちっ、あと・・・・・・これも。」
 
ウルフ一郎が、2本のお酒を出した。
これ、誰にやるおみやげなんだ?
 
「・・・・・・ネルにだ。」
 
ネルぅ!?
 
「あぁ。あいつ、よく酒飲むから、買ってやろうと思って。」
 
秀よしと、秋田物語・・・・・・か。
 
「お前、思いやりの心、もってるんだな。」
 
「あ、あぁ。」
 
あやしい。
 
「・・・・・・今度、あいつが来たら、一緒に飲もう。」
 
と、ウルフ一郎は、ぼそっと言った。
 
「あと少し経ったら、温泉に入ろう。」
 
「やったぁ~!」
 
俺とギロは、ピョンピョンはね上がった。
 
「こら!下に他の客もいるんだから、あんまり音を立てるなっ。」
 
す、すみません・・・・・・。
 
「ところでギロ、お前が撮った写真を、見せてくれ。」
 
「あぁ。いいよ。」
 
ウルフ一郎は、ギロのバックから、カメラを取り出し、今までの写真を見た。
 
「な、なんだこれ・・・・・・。同じ写真ばっかじゃねぇか。一体、いつ、ジュンブライトと俺様と一緒に撮った写真になるのかよ・・・・・・。」
 
あらら。ウルフ一郎、とても困ってる・・・・・・。
 
 
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