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第四十八話 「ウルフ一郎さん、人間になる」

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「第三回戦はこちら!」
 
ルクトさんがプログラムをばさっとめくった。
 
「第三回戦は、セクシー対決!」
 
セクシー対決ぅ~!?
 
「ルールを説明するよ。一人ずつ、真莉亜の前で、キュン♡とくるセリフを言う。真莉亜をメロメロにした方が勝ち。」
 
「へぇ―。」
 
「俺様、甘いセリフを言うの、得意だぜ!」
 
二人とも、自信満々。
 
「それでは対決、スタート!」
 
カ―ン!
リリアさんがコングを鳴らすと、ウルフ一郎さんが早速、私の前に出た。
 
「うっしゃあ!真莉亜ちゃん、俺様の甘いセリフで、メロメロになってね♡」
 
はいはい。
すると、ウルフ一郎さんが、私の右手をぎゅっとにぎった。
!?
 
「君の手は、こんなに美しいんだね。俺様、君のような美しい手の子、大好きだよ。」
 
!?
なんという、輝かしいイケメン顔!
私、思わずホレてしまいました。
 
「てめぇの今みたいなセリフじゃ、真莉亜はキュン♡としねぇよ。」
 
今度はジュンブライトが、私の前に出た。
 
「な、なんだとぉ!?」
 
「よし、いくぜ!真莉亜・・・・・・。」
 
ジュンブライトが、顔を近づけた。
 
「お前の瞳、星みたいにキラキラ輝いてるなぁ。そんな瞳に、俺、ずっと見つめられてぇ。」
 
!?
は・・・・・・はう♡
さっきのセリフ、リプレイして、聞きたい♡
 
「負けてらんねぇ!真莉亜ちゃん、好きだよ。」
 
!?
このセリフも、リプレイして、聞きたい♡
 
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!真莉亜、愛してるよ。」
 
はう♡
 
「真莉亜ちゃん、他の男と一緒にいたら、どうなるか、わかってるよね?」
 
「真莉亜!俺が絶っっっっっ対、お前を守ってやる!」
 
「真莉亜ちゃん、キス、甘いのと熱いの、どっちがいい?」
 
「まて。こっから先は、行かせねぇぜ?」
 
「キスがしたいなら、二人っきりになれるところでしようよぉ♡」
 
「ったく、お前は甘えん坊だから。」
 
「おまたせしました。マイプリンセス。」
 
「遅れてごめん、お姫様。」
 
もう、この二人のセリフが、キュンキュン♡すぎて、私、春間真莉亜は、もう、もう・・・・・・。
 
「ブ―!」
 
しあわせでぇ~す♡
私は鼻血を出したあと、それから後ろからばたりとたおれた。
カンカンカンカンカ―ン!
 
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!真莉亜ちゃんが、大量の鼻血を出したぁ~!今すぐ手当てをしないと!」
 
ギロさんがあわてて、救急箱を持って、私のところに走って行った。
 
「こ、これは・・・・・・。」
 
「同点ってわけね。」
 
「俺達、いいすぎたかなぁ?」
 
「そうかもね。」
 
第四回戦は、私が大好きな、ナポリタン対決。
ジュンブライトったら、相変わらず不器用で、マズイナポリタンを作っちゃった。
ま、私は結局、食べたけど。結果、ウルフ一郎さんが勝って、試合は3対2という結果になった。
そして、第五回戦。
 
「最終対決は、こちら!」
 
ルクトさんがプログラムをばさっとめくった。
 
「最終対決は、かけっこ対決!」
 
すると、ウルフ一郎さんが、ジュンブライトの方を、まずい目で見た。
 
(こいつ、俺様より運動神経がバツグンだったよな!?気をつけねぇと・・・・・・。)
 
「ルールを説明するよ。二人には、菜の花広場の中を一周、走ってもらう。あの黄色い旗を取った方が、勝ちだよ。」
 
いよいよ、最終決戦が始まるよ!
 
「お父さん、がんばってね!」
 
「おう!」
 
「勝って必ず、お前を「お父さん。」って、呼ばせてやるぅ!」
 
「・・・・・・。」
 
「それではお二人とも、よろしいですか?」
 
「おう!」
 
「では、位置について。」
 
二人は、フライチングスタートをした。
 
「よ―い!」
 
ピ―!
ホイッスルが鳴ったあと、二人はぱっと、走り出した。
 
「がんばれ―、ジュンブライト様ぁ!」
 
「ウルフ一郎、ファイトぉ。」
 
アキちゃんとソラちゃんが、二人を応援している。
 
「へへ―ん。俺様が一番だぜ!」
 
「それはどうかな?」
 
ジュンブライトが、全力疾走で、ウルフ一郎さんのとなりに走って来た。
 
「て、てめぇ!」
 
「運動能力は、お前より100倍あるんだよ!」
 
ジュンブライトが、ニッと笑った。
 
「貴様ぁ、調子に乗りやがって!」
 
あ!二人がこっちに来る!
 
「果たして、黄色い旗を取るのは、誰なんでしょうか!」
 
「真相は、CМのあとで!」
 
「飛ばさないわよっ。」
 
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
 
二人とも、すっごい勢いで走ってる・・・・・・。
 
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 
二人がゴールに足を踏み入れようとした、その時!
 
「ふんぎゃあ!」
 
あぁ!ウルフ一郎さんが、転んじゃった!
そして、ジュンブライトは、そのまんま走って来て、黄色い旗を取った。
ピッ、ピッ、ピ―!
 
「勝者、ジュンブライト!」
 
「イェーイ!」
 
「よってこの勝負、ジュンブライトの勝ち!」
 
やったぁ!ジュンブライトが勝ったよぉ!
 
「よかったわね、真莉亜!」
 
「うん!」
 
私は笑顔でうなずいた。
 
「ちっくしょ~!」
 
 

 
 
あ―あ。すっかり暗くなっちゃって。
もう、冬だねぇ。
 
「見て、お母さん!きれいな満月が見えるよ!」
 
道華が満月の方を指さした。
ほんとだねぇ。
 
「きれいな満月。」
 
「あぁ。」
 
「満月・・・・・・!?」
 
ウルフ一郎さんが、まずい顔になって、スッと顔を上げた。
 
「どうしたんだ?オオカミヤロー。」
 
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・。」
 
ボン!
うわ!ウルフ一郎さんの頭に黒い耳が!
 
「ちょっとま・・・・・・。」
 
うわ!ウルフ一郎さんの顔に、黒い毛がどんどん生えてくる!
 
「これは一体・・・・・・。」
 
「な・・・・・・。」
 
ウルフ一郎さんのうでからも、どんどん黒い毛が生えてくる。
手の甲からも、両手からも、足からも、体からもずっと、生えてくる。
ボン!
おしりから、黒いしっぽが生えてきた。
 
「ゔ・・・・・・。」
 
鼻が黒い鼻へと変わってゆく。
 
「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁ!」
 
そして、ウルフ一郎さんは、元のオオカミの姿に戻った。
ウルフ一郎さんは、自分の顔をぺたぺたとさわり始めて、小さい鏡を取り出し、自分の顔を見た。
 
「あぁ・・・・・・。せっかく、俺様のカッチョイイ顔が・・・・・・。」
 
「もしかしてそのクリーム、今日の満月の夜に、元に戻ってしまうのかい!?」
 
「あぁ。」
 
だから今日、勝負をしたんですね。
 
「ウルフ一郎さん。」
 
私が呼びかけると、ウルフ一郎さんは、私の方を振り返った。
 
「真莉亜ちゃん・・・・・・。」
 
「私は、オオカミ姿のウルフ一郎さんも、人間姿のウルフ一郎さんも、どっちも好きですよ。」
 
私がにこっと笑うと、ウルフ一郎さんは、顔を真っ赤にした。
 
「そ、そうか?」
 
「はい。」
 
「じゃ、じゃあ俺様は、ありのままの姿でいいんだな!?」
 
はい。
 
「これが俺様のありのままの姿・・・・・・。よ―し、決めた!俺様、人間になるのは、やーめたっ♪これからは、ありのままの姿で、生きていくぞぉ!」
 
うふふふふ。
ウルフ一郎さんって、本当にかわいいところもあるんだね。
 
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