上 下
138 / 185

第五十一話 「ウルフ一郎さんとサングラスの秘密」

しおりを挟む
「兄貴、パス!」
 
「おう!」
 
俺様は、ウルフ一郎にパスをした。
 
「そのままシュートだぁ~!」
 
「えいっ!」
 
ウルフ次郎がゴールに向かってシュートをしたが、強すぎて、家の塀を越えて・・・・・・。
ガッシャーン!
や、やべ!近所の家の窓が割れたんじゃねぇか!
 
「コラァ~!誰だ!うちの窓を割ったのはぁ!」
 
・・・・・・どうする?
 
「そりゃあ、正直に謝るしかないですよぉ。」
 
・・・・・・だろーな。
 
「おい、お前ら。謝りに行くぞ。」
 
「・・・・・・はい。」
 
俺様達が暗い表情で、謝りに行くと・・・・・・。
 
「すんません。うちの子が、あなたの家の窓のガラスを割って。」
 
「ウルフ太郎!お前の教育が間違っとる!ちゃんとしているのか?」
 
「は、はい。」
 
「うそつけ!」
 
と、父ちゃんが代わりに、謝ってる!
 
「一体、どういうことだ!?」
 
「しっかし、ハデにやられっちまったから、今すぐ、弁償しろ!」
 
「はいはい。ちゃんと持って来ますから、その代わり、あそこにいる、うちの子達に、お菓子をください。」
 
えっ!?
 
「・・・・・・ちっ、わかった。もし、またしたら、承知しないからなっ!」
 
近所のおっさんが、バン!と、引き戸を閉めた。
 
「ふぅ。」
 
父ちゃんは、俺様達のところへ行って、しゃがんで、ニッと笑った。
 
「もう、大丈夫だ。安心しろ!」
 
「父ちゃん、ありがとー!」
 
俺様達は、父ちゃんにだきついた。
 
「アハハハハ。どういたしまして。」
 
やっぱり父ちゃんは、世界一の父ちゃんだぁ!
 
 

 
 
「こーんなお菓子をもらって、あんた、なに考えてんだい!」
 
「だ、だってぇ。」
 
「だってもクソもないっ!あんた、子供達に甘やかしすぎるんだよ!」
 
「別にいいじゃねぇか。人間だもの。」
 
「人間じゃないだろ!」
 
「あーあ。母ちゃん、父ちゃんを叱ってるよぉ。」
 
「ていうか、なんで父ちゃん、俺様達に優しくしてるんだろ。」
 
「さぁ~。」
 
きっと、なにか理由があるかもな。
 
「あぁ。」
 
「こら、あんた達。そろそろ夕飯の支度をするよ。ウルフ一郎、手伝ってくれるかい?」
 
「おう!」
 
俺様と母ちゃんは、台所へ行った。
 
 

 
 
俺様は、ハンバーグの生地をこねていた。
 
「そうそう。上手だねぇ、ウルフ一郎。」
 
えへへへへ。このくらい、簡単にできるよ。
 
「ふっ、ウルフ一郎は、手先が器用だね。」
 
えへへへへ。
 
「・・・・・・ところで、父ちゃんがお前に優しくしている理由、教えてあげようか?」
 
「えっ・・・・・・。」
 
俺様は、生地をこねる手を止めた。
 
「お前達が父ちゃんにとって、初めての子供だからだよ。」
 
父ちゃんにとって、初めての子供?
 
「あぁ。父ちゃん、母ちゃんと結婚する前、ものすごい不良でねぇ、街の人からはおびえられていたよ。けど、子供はものすごく好きだった。そこら辺で悲しんでいる子供になんか、すぐ優しく接していたんだよ。そして、母ちゃんと出逢って、出逢ってすぐ、ウルフ一郎ができたんだ。まだ結婚してないのに。」
 
結婚していないのに、妊娠しちまったのか!?
 
「そうだよ。結婚のあいさつに行った時、お互いの親に反対された。けど父ちゃんは、「お前とお腹の子を必ずしあわせにする!」って言って、何回も、お互いの親に許しが得るまで、お互いの親のところに行ったんだ。そして数日後、許しを得て、あたし達は結婚した。そしてその三カ月後、お前が産まれた。父ちゃん、母ちゃんがお前を産む間、そわそわしてたんだよ。待ちきれずにしていられなくて、分晩室の前をうろうろしてたんだよ。」
 
アハハハハ。父ちゃんらしいな、それ。
 
「そうだろ?父ちゃんはね、お前が産まれたあと、すっごく喜んで、泣いてたよ。そしたらね、育児はぜ~んぶ、父ちゃんがしてくれたんだよ。おむつ替えも、ミルクも、お風呂も。ぜ~んぶ、父ちゃんがやってくれたんだよ。父ちゃんはこう言ってた。「子供達は、俺の宝物だ。だから、ふつーの親父みたいに、怒鳴ったり、なぐったりはしない。」って。」
 
それも、父ちゃんらしいな、それ。
 
「だろ?さぁ、続きをやるよ。」
 
おう!
俺様と母ちゃんは、ハンバーグを再び作り始めた。 


                                    ☆
 
 
しおりを挟む

処理中です...