上 下
169 / 185

第六十一話 「道華の思い出PART2」

しおりを挟む
はぁ。お母さんに会いたい。
あと、過去のお父さんにも会いたい。
 
「ニャ―!」
 
わ!なにか飛んできた!
な、なに?
 
「ニャ―!」
 
「ニャ―!」
 
あ!アキとソラ!
二人とも、助けに来てくれたんだねっ!
 
「ニャッ!」
 
あ、お父さんに聞こえているかどうか、確かめているんだね。
大丈夫だよ。お父さん、もう向こうへ行っちゃったから。
 
「ニャ~。」
 
うふふふふ。
あたしは、二人の背中をさわりながら、口を動かした。
 
「あのころは、楽しかったなぁ。」
 
「ニャ?」
 
二人は首をかしげた。
 
「・・・・・・二人が仲良くしてたころ。」
 
ポタポタポタポタポタ。
あたしの目から、涙が出て来た。
 
「ニャ?」
 
「・・・・・・もう、あのころには戻れないんだね。なにをしようとしても、二人は仲良くしてくれない。もう、いっそのこと、このまま、お姫様になろっかな?」
 
「ニャ、ニャ、ニャッ!」
 
えっ?
 
「ニャッ、ニャッ、ニャッ、ニャ!」
 
「ニャニャニャ!ニャニャニャニャニャ!」
 
もしかして、あきらめるなって、言ってるの?
 
「ニャ!」
 
二人はうんっとうなずいた。
ありがとー。はげましてくれて!
あたしは、笑顔で二人にほおずりをした。
 
「ところでさ、あたしの思い出話、また聞きたい?」
 
「ニャ~?」
 
「ニャニャニャニャニャニャニャ、ニャ―ニャ―ニャー。」
 
この前とは別の話っ。
はぁ。忘れないなぁ、あのころ。
あたしは、窓の外を見つめながら、話した。
 
 

 
 
―5年前―
 
 
今日はいい天気だなぁ。
よし、洗濯も干し終わったし、ゆっくりと過ごす時間は・・・・・・。
 
「ねぇ、お母さん。」
 
ありませんでした。
 
「なに?道華。」
 
「知恵ちゃんち、赤ちゃんが生まれたんだって!」
 
へ―。そうなんだぁ。
知恵ちゃんは、道華の幼稚園のお友達。
初めてできた友達なんだ!
それがどうしたの?道華。
 
「あたしも、赤ちゃん欲し~い!妹か弟が欲し~い!」
 
え~?
 
「ねぇ!赤ちゃん、産んでよぉ~!」
 
道華。欲しいのはわかるけど、いるじゃない。
 
「えっ?赤ちゃんが?」
 
ちがう。ルーちゃんが。
 
「あれは人形!本物の赤ちゃんが欲しい!」
 
もう、わがまま言わないでよぉ。
 
「わがままじゃないもん!」
 
道華が口をとんがらせた。
わがままじゃん。
無理なものはだめ。わかった?
 
「お母さんのいじわる!ぶぅ!」
 
道華がほっぺをふくらました。
いじわるで悪かったね、いじわるで!
 
「もう、知らない!」
 
道華は怒りながら、子供部屋に行っちゃった。
はぁ。
 

 
 
「なに?道華が赤ちゃんを欲しがっているぅ?」
 
うん。
あの子、きっとさびしいんだよ。一人っ子だから。
 
「だよな。俺も、一人っ子だったもん。」
 
そっか。ジュンブライト、きょうだいがいなかったね。
 
「いろんな意味でだ。」
 
そうか・・・・・・。レオン様、ジュンブライトが生まれてすぐ、亡くなったもんね。
 
「あぁ。」
 
どーする?
 
「なにが?」
 
二人目のことよぉ。
 
「一応、考えとくか。」
 
うん。
私はうなずいた。
 
 
しおりを挟む

処理中です...