ロボットな私は不滅の魔法の夢を見る

彩条あきら

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01 アナとメイ

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 とある晴れた、冬の日の出来事だった。
 北国に位置する、鉄道の終着駅にも程近い地方都市の一角。
 主人に任された要件を終え、私が大通りを駅の方にまっすぐ歩いていると、童話に出てくる赤ずきんの様な少女が道端で手を振っているのが見えた。

「メイ、こっちなのです!」

 嬉しそうに私の名を呼ぶ。彼女はその日、珍しく買い出しに行く私に同行を申し出た。町に出ること自体久々で、ふたりで出かけるのに至っては初めてですらあったのだが、結局は来て早々に別行動をする羽目になっていた。何がしたかったのか、私には分からない。

 彼女の名はアナスタシア――他ならぬ、この私の主人である。

「アナ、あまり走ると危ないですよ」
「メイが中々戻ってこないのがいけないのです! ちゃんとお使い出来たのです?」
「メモして頂いた内容は滞りなく」

 私がその日行っていたのは、町の片隅の小さな雑貨屋だった。鉱石等を中心に幅広い品物を取り扱う店で、アナの研究に必要なもの一式を調達するのが目的だった。
「それじゃ、ご褒美にこれをあげるのです!」
 アナが私に差し出したのは、小さな花飾りのついた髪留めの一種だった。見るからに新品のそれは、どうやら私と別れて行動している間に購入したものの様である。

「……これは、契約更新の対価ですか?」
「そんなんじゃないのです。偶には主人として使い魔を労ってあげるのも大事な努めなのです……つまり、普通にプレゼントなのです!」
「アナ……」
「なんです?」
「……いえ、ありがとうございます」

 屈み込んだ私の頭に買ったばかりの髪留めを着け、アナは得意げに笑って胸を張る。アナはこのところ、私にお洒落をさせて楽しんでいるような節があった。

 私はガラスに映った自分の姿を、食い入るように見つめる。北方の民族衣装を身にまとって髪飾りをした女。これは本当に私なのだろうか。この二か月間で大分慣れたとはいえ、今でも時々そんな疑問が浮かんでくることがある。
 私は徐々に自分が、私ではない何かに変わっていくような気がしていた。

 そして私は、そのことに正直戸惑いを覚えている。
「メイ、電車が来ちゃうのです!」

 アナが慌てた様子で私の腕を引っ張る。
 私たちは横断歩道を渡って、通りの真ん中にある停留所へと向かった。ここでいう電車とは町の南北を繋ぐ、観光名物のひとつでもある市電のことだ。

 やがて金属の軋み合う音を立て、真っ赤な色合いに少し錆の混じる、レトロ調の箱形車体が入線してくる。今や見慣れたその風景を目に焼きつけながら、私はアナと初めて会った契約の夜のことを思い出していた――。
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