彼女の大事な落とし物

恋綿-こわた-

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#2

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「えーっと…これと、これと…あっ!これも忘れるとこだった!!」

せっせとカバンに詰め込んでいく手際の良さを横目に私は

まだ完全に動かしきれていない頭で状況整理をしている



[サラはゆっくり休んでな?まだ病み上がりなんだから♪]

そんな優しい言葉をかけてもらい病室の椅子に座っている私は、医者から言われた言葉を思い出していた

[記憶喪失]

それも基本的な教養部分は正常なのだが今までの人間関係や自分の事に関しての記憶がすっぽりと無い状態、しかも傷も完全に癒えている訳ではなく頭には未だに取れていない包帯が巻かれている割と重傷だったようだ、

そして、私が[記憶喪失]と診断されてから彼は一度驚いた顔を見せたがすぐに優しい顔に戻り少しだけ[サラ]の事について話してくれた、どうやら[サラ]もとい私は一人暮らしらしい

そして、男の名前は[ノア]

「ノアさん」と言ったら

[お前のさん付けってなんか変な感じだな(笑)]と言われてしまったが

今の自分にとってはノアは知らない人も同然なのでしばらくはさん付けという事になった

(本当に…私はなんで病院なんかにいるんだろう…ノアさんはその理由を知っているのかな…?)



意識を取り戻してから看護師さんやお医者様、そしてノアから入院している間の話をざっと聞かされていた

(保険証とか着替えとか、全部ノアさんが手配してくれたんだよね…)

そう、サラが入院してまだ意識が戻っていない間、入院手続きや着替えなど全てノアがやってくれていたのだ、そのせいもあってか看護師さんからは[ほんと、素敵な彼氏さんですねぇ♪]なんて事も言われたくらい

でも、不思議なことにサラとノアは付き合っている訳ではなくただの[幼馴染]なんだとか

小さいころから家が隣同士で家族での付き合いも長いらしい



そして、まだ疑問は残る。

[私の両親はどこにいるのか?]

入院中意識を取り戻してから一度ノアにサラの両親の不在を聞いたことがある

ノアは[遠い所で暮らしてるから中々連絡もできないし会いにこれないんだ]と教えてくれた

スマホも、事故があった時に壊れたらしく"近々リハビリも兼ねて買い物とか行くときにスマホも買いなおそう"という話で落ち着いた



まだ沢山考えるべきことはあるがまだ体調が万全ではないのか、それとも頭がそれを拒否しているのか

記憶を思い出そうとするとクラクラとして頭痛が酷くなるためお医者様からは"無理は禁物"と念を押されてしまった


「はぁ…」


溜息がこぼれる、(一体私の身に何があったんだろう…?記憶はちゃんと戻るのかな…?)

(両親は何で私に会いに来ないんだろう…?)

不安な事と考えるべき事が多すぎて処理が追い付かない



「サラ…?大丈夫?」

余計な事を考えようとした瞬間にノアに声を掛けられてハッとする

入院中もずっとこうだ、サラが深く考えそうになった瞬間に声を掛けて深い水の底から引っ張ってくれるような感覚

(幼馴染と言っていたし、だからなんでもお見通しなのかな?)

不思議となって次はノアの顔をじっと見つめていると少しだけ彼の顔が赤くなったように見えた

「あまりじっと見るなよ…流石になんか、恥ずかしくなってくる…と、とりあえず退院の準備は終わったからそろそろ行こうと思うんだけど、お前は大丈夫そう?体調悪いとか、ない?」

と荷物に視線を向けて尋ねられる

(えっ、もう終わったの…?というか、またノアさんに全部させちゃっていたのね…)

多分感覚として私の年齢は20歳以上でもう成人済だとこの入院中に察している

だからこそこれくらい自分でやらなければいけないのに…

と少し凹むとそれに気づいたノアがすかさずフォローに入る

「面倒見たくて見ているのだから気にしなくていい」と「ここ最近はお前とはあんまり連絡取れてなかったから兄貴みたいな立場の自分としては嬉しい」と

なんとも温かい言葉を掛けてくれるサラは申し訳ないのとまだ上手く話せないのとでコクっと
頷いて見せる


(そういえばノアさんは彼女とかいないのだろうか?)

ふと彼に対しての疑問もよぎる

(いや、まずは私自身の事よね…)

だがまだその時ではないと自分にストップがかかる

まだそれを聞くには自分は何も知らなさすぎる、自分の事に関しては特に。

「私は、もう大丈夫です。」と小さく頷いて

"記憶を取り戻さないと"と自分の心に言いつけて帰路につく



帰りのタクシーの中、横にはノアが座っている

「あの、私の家ってどこでしょうか?」

そういえば何よりも先に重要な事を忘れていた。

一人暮らしだと聞いていたが住んでる場所を私は覚えていない

するとノアはさぞ当然のように

「あぁ、お前の家ね、ちょっと色々あって入院中に解約したんだよ、だから当分は俺と住んでね、あっ、俺も一人暮らしだし今はベッド一つしかないけど近々買いに行こうか―――」


想像以上の情報量とともに私の脳の処理は一度停止した。
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