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時間はお昼休み。
学園の中庭には仲良くご飯を食べているグループが何組かいる。
そして、その中で特に異彩を放っているグループが一組。
暖かな光が降り注ぐ中庭に、一人の女の子を中心として四人の男の子が囲う様に座っていた。
其々が楽しそうな笑みを浮かべていて、きっとみんな仲が良いグループなのだろうと、容易く思えそうな雰囲気を醸し出している。
だが、内心は違うのだと離れた場所から見ている私達には分かる。
──周囲にいる男の子達の表情、いや雰囲気で。
中心にいる女の子は本当に楽しそうだ。
離れているここからでも『キャッキャウフフ』なんていう声が聞こえてきそうな程に。
男の子も女の子──遠野さんと話している時や目が合った時は本当に楽しそうで嬉しそうな表情をしているが、彼女の視界から一ミリでも外れた時ときたら……。
遠野さんと話している相手を睨んだり、無表情だったりと、まぁとにかくガラリと態度が変わっている。
離れて見ている私達だから分かるのか、それとも遠野さんは分かっていて知らないふりをしているのか。
多分、後者ではないかなと私は思っているけれど、出来れば前者であってほしい。希望的観測だけど。
相当、いやかなり劇的に鈍感ではない限り気付くレベルだと思うんだよね。あれは。
彼女に分からないように彼らがやっているという事はまずないと思う。それなら私達が容易く気付く筈もないのだから。
勿論、私達が場の雰囲気を読むに長けているとか人の機微に敏感だという事ではない。
私達も遠野さんや彼等と同じく普通の、本当にごく普通、平凡一辺倒の高校生だからだ。
「リアル乙女ゲー」
ぼそりと呟かれた言葉に声の方へと顔を向ける。
サンドウィッチを咀嚼しながら醒めた視線で遠野さん達を見ている愛瑠ちゃん。
愛瑠ちゃん、その表情怖いですよ。と、思わず声に出そうになったが寸前でなんとか留めた。
──愛瑠ちゃんは高校に入って出来た友達。
茶色に染めた背中までまっすぐの髪に、目がほんの少し吊り上がったキツメ顔の美人さんです。
外見に対して内面はそれ程キツイわけではないんだけど、この外面なので威力が否応なしに上がってしまうという少々損をしてしまっている女の子。
本人もそれを自覚しているので、言葉には気を付けているみたいなんだけど、あまり上手くはいってない様子。
なので、そんな彼女にさっきのような事を言ってしまうのは傷つけるだけ。
勿論、場の雰囲気ではありな時もあるけど、今は駄目な時なのです。
もぐもぐとウィンナーを食べきる。
「確かにねー。傍から見るとそう見えるよね」
「そう見えるっていうか、今のままじゃ遠野さんやばいよ」
そう言うと、ふぅとため息を一つ吐いてストローでズズーッと行儀悪くイチゴオレのパックを一気に飲み干す愛瑠ちゃん。
折角の美人さんなのに、なんて飲み方をっ!まぁ、何時もの事なんですけどね。
しかし……。
「やばいって何?」
「えっ? まさか鈴亜知らないとか? そんな事ないよね? 知らないなんてそんな事……。いや、でも……」
何故か驚いた後に一人ぶつぶつと呟きだした。
自分の思考に耽っているのだろうけど、放置された私はどうすれば?
とりあえず、お弁当の完食でもしておこうかな。
学園の中庭には仲良くご飯を食べているグループが何組かいる。
そして、その中で特に異彩を放っているグループが一組。
暖かな光が降り注ぐ中庭に、一人の女の子を中心として四人の男の子が囲う様に座っていた。
其々が楽しそうな笑みを浮かべていて、きっとみんな仲が良いグループなのだろうと、容易く思えそうな雰囲気を醸し出している。
だが、内心は違うのだと離れた場所から見ている私達には分かる。
──周囲にいる男の子達の表情、いや雰囲気で。
中心にいる女の子は本当に楽しそうだ。
離れているここからでも『キャッキャウフフ』なんていう声が聞こえてきそうな程に。
男の子も女の子──遠野さんと話している時や目が合った時は本当に楽しそうで嬉しそうな表情をしているが、彼女の視界から一ミリでも外れた時ときたら……。
遠野さんと話している相手を睨んだり、無表情だったりと、まぁとにかくガラリと態度が変わっている。
離れて見ている私達だから分かるのか、それとも遠野さんは分かっていて知らないふりをしているのか。
多分、後者ではないかなと私は思っているけれど、出来れば前者であってほしい。希望的観測だけど。
相当、いやかなり劇的に鈍感ではない限り気付くレベルだと思うんだよね。あれは。
彼女に分からないように彼らがやっているという事はまずないと思う。それなら私達が容易く気付く筈もないのだから。
勿論、私達が場の雰囲気を読むに長けているとか人の機微に敏感だという事ではない。
私達も遠野さんや彼等と同じく普通の、本当にごく普通、平凡一辺倒の高校生だからだ。
「リアル乙女ゲー」
ぼそりと呟かれた言葉に声の方へと顔を向ける。
サンドウィッチを咀嚼しながら醒めた視線で遠野さん達を見ている愛瑠ちゃん。
愛瑠ちゃん、その表情怖いですよ。と、思わず声に出そうになったが寸前でなんとか留めた。
──愛瑠ちゃんは高校に入って出来た友達。
茶色に染めた背中までまっすぐの髪に、目がほんの少し吊り上がったキツメ顔の美人さんです。
外見に対して内面はそれ程キツイわけではないんだけど、この外面なので威力が否応なしに上がってしまうという少々損をしてしまっている女の子。
本人もそれを自覚しているので、言葉には気を付けているみたいなんだけど、あまり上手くはいってない様子。
なので、そんな彼女にさっきのような事を言ってしまうのは傷つけるだけ。
勿論、場の雰囲気ではありな時もあるけど、今は駄目な時なのです。
もぐもぐとウィンナーを食べきる。
「確かにねー。傍から見るとそう見えるよね」
「そう見えるっていうか、今のままじゃ遠野さんやばいよ」
そう言うと、ふぅとため息を一つ吐いてストローでズズーッと行儀悪くイチゴオレのパックを一気に飲み干す愛瑠ちゃん。
折角の美人さんなのに、なんて飲み方をっ!まぁ、何時もの事なんですけどね。
しかし……。
「やばいって何?」
「えっ? まさか鈴亜知らないとか? そんな事ないよね? 知らないなんてそんな事……。いや、でも……」
何故か驚いた後に一人ぶつぶつと呟きだした。
自分の思考に耽っているのだろうけど、放置された私はどうすれば?
とりあえず、お弁当の完食でもしておこうかな。
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