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お箸で玉子焼きを挟み、角度を変えながら出来栄えを確認する。
ちょっと所々焦げているけども砂糖を入れてるから、仕方ないんだよね。まぁそれで味が落ちるわけでもないし。
巻き方は、まぁ、ボチボチって感じ。
だし巻き玉子も好きだけど、玉子焼きと言えばちょっと甘い砂糖入りのものが一番美味しいと思う。──家族には不評だけど。
そんな事を何とはなしに考えながら玉子焼きを食べる。
うん、今日もいい甘さになってる。美味しい。
「あっ此処にいた!」
聞き覚えのある声が近くで聞こえたので、誰だろうと視線を向けると此方に歩いてきている久我先輩の姿があった。
「また来たアイツ……」
いつの間にか思考の海から戻ってきた愛瑠ちゃんが心底嫌そうな顔で言う。
「良かった見つかって。春宮さんを探してたんだ」
「近寄るな腹黒っ!!」
ガルルゥッ!という唸り声が聞こえてきそうな愛瑠ちゃんの剣幕に久我先輩は慣れたものと、苦笑を浮かべるのみだった。
「僕が腹黒って言うの緑川さんだけなんだよね。何でかな?」
「みんなアンタの外面に騙されてるだけなのよっ!」
「はーい、愛瑠ちゃん。落ち着いて、ね? アンタとか言っちゃダメでしょ? 先輩だよ」
ほんと、なんでここまで毛嫌いしているんだろう。
──愛瑠ちゃんは遠野さんと久我先輩を巡ってのライバルのはずなのに。
「分かっているけど、真っ黒狼から子羊を守る使命を全うしようと思うとね、仕方ない事なのよ。馴れ合っちゃいけないの!」
こちらがよく分からないまま自分の世界へと入って宣言する愛瑠ちゃんに代わって、久我先輩へと謝罪する。
「本当にすみません」
「大丈夫、気にしてないから。……それに本当の事だしね」
「え?」
最後の方がよく聞き取れず聞き返したけれど、大した事じゃないからと言われてしまった。
そう言われてしまうとこれ以上聞くわけにもいかず、逸れてしまっていた話を元に戻す事にする。
「そう言えば、先輩。私に何かご用が?」
「そうそう、そうなんだよね。実は……」
「やっだーっ! 惣くんってばっ!」
うふふっ。なんて甲高い声が響き渡り久我先輩の声をかき消す。
遠野さん、さっきまでこんなに大きな声出してなかったよね?
チヤホヤ逆ハーレムピンクの世界は、自分が巻き込まれないから傍観できるのであって、自分まで被害が及ぶのは勘弁してほしいのですよ。
「遠野さん、久我先輩に必死にアピールしているわ」
いつの間にか自分の世界から帰ってきた愛瑠ちゃんが、声に頭痛でも引き起こされたのか眉間に皺を寄せていた。
「あんな声でアピールしてるつもりなら、一回幼稚園児からやり直してくればいいと思うね」
「ははっ! 辛辣ー。でも、不本意ながらに同意するわ。
まぁ、私は遠野さんの毒牙に久我先輩がかかってくれたら、万々歳なんだけどね」
「僕があんな空っぽの女に引っかかるとでも?」
「やっぱり無理? ほんと不思議なのよね。どうして彼らがあんな空っぽの言葉に引っかかって靡くのか」
そう言って愛瑠ちゃんは不思議そうに遠野さんの方を見る。
それはここが乙女ゲーの世界だからですよ、と言いたい。そんな事を口に出せば頭の心配をされると分かっているから言わないけどね。
ちょっと所々焦げているけども砂糖を入れてるから、仕方ないんだよね。まぁそれで味が落ちるわけでもないし。
巻き方は、まぁ、ボチボチって感じ。
だし巻き玉子も好きだけど、玉子焼きと言えばちょっと甘い砂糖入りのものが一番美味しいと思う。──家族には不評だけど。
そんな事を何とはなしに考えながら玉子焼きを食べる。
うん、今日もいい甘さになってる。美味しい。
「あっ此処にいた!」
聞き覚えのある声が近くで聞こえたので、誰だろうと視線を向けると此方に歩いてきている久我先輩の姿があった。
「また来たアイツ……」
いつの間にか思考の海から戻ってきた愛瑠ちゃんが心底嫌そうな顔で言う。
「良かった見つかって。春宮さんを探してたんだ」
「近寄るな腹黒っ!!」
ガルルゥッ!という唸り声が聞こえてきそうな愛瑠ちゃんの剣幕に久我先輩は慣れたものと、苦笑を浮かべるのみだった。
「僕が腹黒って言うの緑川さんだけなんだよね。何でかな?」
「みんなアンタの外面に騙されてるだけなのよっ!」
「はーい、愛瑠ちゃん。落ち着いて、ね? アンタとか言っちゃダメでしょ? 先輩だよ」
ほんと、なんでここまで毛嫌いしているんだろう。
──愛瑠ちゃんは遠野さんと久我先輩を巡ってのライバルのはずなのに。
「分かっているけど、真っ黒狼から子羊を守る使命を全うしようと思うとね、仕方ない事なのよ。馴れ合っちゃいけないの!」
こちらがよく分からないまま自分の世界へと入って宣言する愛瑠ちゃんに代わって、久我先輩へと謝罪する。
「本当にすみません」
「大丈夫、気にしてないから。……それに本当の事だしね」
「え?」
最後の方がよく聞き取れず聞き返したけれど、大した事じゃないからと言われてしまった。
そう言われてしまうとこれ以上聞くわけにもいかず、逸れてしまっていた話を元に戻す事にする。
「そう言えば、先輩。私に何かご用が?」
「そうそう、そうなんだよね。実は……」
「やっだーっ! 惣くんってばっ!」
うふふっ。なんて甲高い声が響き渡り久我先輩の声をかき消す。
遠野さん、さっきまでこんなに大きな声出してなかったよね?
チヤホヤ逆ハーレムピンクの世界は、自分が巻き込まれないから傍観できるのであって、自分まで被害が及ぶのは勘弁してほしいのですよ。
「遠野さん、久我先輩に必死にアピールしているわ」
いつの間にか自分の世界から帰ってきた愛瑠ちゃんが、声に頭痛でも引き起こされたのか眉間に皺を寄せていた。
「あんな声でアピールしてるつもりなら、一回幼稚園児からやり直してくればいいと思うね」
「ははっ! 辛辣ー。でも、不本意ながらに同意するわ。
まぁ、私は遠野さんの毒牙に久我先輩がかかってくれたら、万々歳なんだけどね」
「僕があんな空っぽの女に引っかかるとでも?」
「やっぱり無理? ほんと不思議なのよね。どうして彼らがあんな空っぽの言葉に引っかかって靡くのか」
そう言って愛瑠ちゃんは不思議そうに遠野さんの方を見る。
それはここが乙女ゲーの世界だからですよ、と言いたい。そんな事を口に出せば頭の心配をされると分かっているから言わないけどね。
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