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しかし二人とも、遠野さんに対してかなりキツイと思うんですけど。
それに付け足すと、久我先輩。あなたも攻略対象の一人なんですよ?
物腰が柔らかく、シルバーフレームのメガネがより一層知的さを醸し出していて、サラ艶な射干玉の髪がほんの少し色白の肌によく映えています。
アーモンドブラウンの瞳に少し垂れ気味な目尻が、全体的の雰囲気を更にほんわかと優しくしていて、巷では癒し系と噂されている程。
顔は言うまでもなく、イケメンさんです。
遠野さんの周囲に侍っている四人組みと比べても劣る事のないイケメンです。
だから、本来ならあちらに加わってキャッキャウフフな世界の要員になっている筈なのに、どうして私達の方にいるのか……。
愛瑠ちゃんとは逆に、私は久我先輩の方が不思議です。
「きっと彼らのトラウマか何かを克服できる言葉をかけてあげたりとか、彼らの気に入る言動でもして気を惹いたんだと思うよ」
「あんな心の篭ってない、棒読みの言動でもグラッとくる?」
「彼らも若いし、その辺りの見極めはまだ出来ないんじゃないかな?」
「えー。そんな人達が『学園のプリンス』なんてもてはやされているのって正直幻滅なんだけど。
この学園のイメージが下がるだけじゃない。これからは『学園のプリンス(笑)』に変えてほしいわね」
「うーん……。もてはやしている子達も若いから仕方ないと思うよ?
それに外見はカッコいいからね。外見だけでも充分なんじゃないのかな? この世代は」
えっと、二人の会話にとてもじゃないけど加われません。
あちらさんがピンクの世界ならこちらはブルーの世界とでも言えばいいのでしょうか。
少なくとも私達は同じ高校生だと思うのですが、久我先輩の言動が同じ高校生だとは思えません。
遠野さんに対して辛辣だと思えば、その範囲が彼ら四人にまで及んでいるこの状況。そしてこういう時だけ息の合う愛瑠ちゃんと久我先輩。
話しに加われない以上、私は黙々とお弁当を消化していく事にします。
変に加わると、面倒な事に巻き込まれる気もしてくるし……。
そうして一人黙々とお弁当を食べる。
「って、あーっ!!」
行き成り叫びだした愛瑠ちゃんに、どうしたのかと視線を向けると何故か不機嫌な表情で私を見ていた。
……何で? 心当たりは勿論ない。
だって、一人で黙々とお弁当を食べていただけだし。愛瑠ちゃんの機嫌を損ねる要素なんかどう考えてもない筈。
「ちょっと鈴亜! 玉子焼きは残しておいてって言ったでしょっ!」
「えっ? 玉子焼き……?」
今まさに、食べようとお箸で挟んだのが最後の一つ。でも……。
「そんな話、してた?」
少なくとも今日、そんな会話は一言もしていなかった筈。
んー?と唸りながら記憶を掘り起こしたけども、やっぱり思い当たらなかった。
「したしっ! 初めて一緒にお昼を食べた時に玉子焼きくれたでしょ」
あー……。
そう言えばなんか玉子焼きから全く目を逸らそうとしてなかったから、欲しいかと思ってあげた記憶が確かにある。うん。
「その時、この玉子焼きは私の理想だって言ったよね」
「うーん……。そうだったかな?」
その辺りはあんまり覚えてないなぁ。
何せその時は、自分の記憶というか置かれた状況に思わず頭痛を覚えていたし。
もっとインパクトのある事だったら覚えていたと思うけど、それぐらいの日常会話は流石に思い出せない、かな……。
「そうなのっ! それで、私が鈴亜の玉子焼きを絶賛してたら、はにかみながらお礼を言われて『えっと、そんなに気に入ってくれてありがとう。良かったらまた何時でも言ってね?』って言ってくれたんだからね!」
あー、うん……。なんかそんな会話したのがなんとなく思い出せてきたかも。
こっちが引くぐらい玉子焼き絶賛してくれてたね、確か。
あまりの勢いにそんな事を言った様な気がする。でも……。
「今日は、玉子焼きが欲しいって聞いてないよ?」
うん。それは間違いない。聞いていたら一つは残していたし。
「えっ! うそっ!? そんな事……。あっ! アンタが来たから言い損ねたのよっ!」
キッ!と、久我先輩を睨む愛瑠ちゃん。
当の先輩は、ほぼ言いがかりな言葉に怒るでもなく、んー。と何かを思案している様子。
愛瑠ちゃんはそんな先輩の様子で更にヒートアップしている。
えーっと、私どうすれば……?
早くしないと昼休み終わっちゃうし、あとこの玉子焼きで完食出来るんだけど食べちゃ駄目、だよねぇ。
それに付け足すと、久我先輩。あなたも攻略対象の一人なんですよ?
物腰が柔らかく、シルバーフレームのメガネがより一層知的さを醸し出していて、サラ艶な射干玉の髪がほんの少し色白の肌によく映えています。
アーモンドブラウンの瞳に少し垂れ気味な目尻が、全体的の雰囲気を更にほんわかと優しくしていて、巷では癒し系と噂されている程。
顔は言うまでもなく、イケメンさんです。
遠野さんの周囲に侍っている四人組みと比べても劣る事のないイケメンです。
だから、本来ならあちらに加わってキャッキャウフフな世界の要員になっている筈なのに、どうして私達の方にいるのか……。
愛瑠ちゃんとは逆に、私は久我先輩の方が不思議です。
「きっと彼らのトラウマか何かを克服できる言葉をかけてあげたりとか、彼らの気に入る言動でもして気を惹いたんだと思うよ」
「あんな心の篭ってない、棒読みの言動でもグラッとくる?」
「彼らも若いし、その辺りの見極めはまだ出来ないんじゃないかな?」
「えー。そんな人達が『学園のプリンス』なんてもてはやされているのって正直幻滅なんだけど。
この学園のイメージが下がるだけじゃない。これからは『学園のプリンス(笑)』に変えてほしいわね」
「うーん……。もてはやしている子達も若いから仕方ないと思うよ?
それに外見はカッコいいからね。外見だけでも充分なんじゃないのかな? この世代は」
えっと、二人の会話にとてもじゃないけど加われません。
あちらさんがピンクの世界ならこちらはブルーの世界とでも言えばいいのでしょうか。
少なくとも私達は同じ高校生だと思うのですが、久我先輩の言動が同じ高校生だとは思えません。
遠野さんに対して辛辣だと思えば、その範囲が彼ら四人にまで及んでいるこの状況。そしてこういう時だけ息の合う愛瑠ちゃんと久我先輩。
話しに加われない以上、私は黙々とお弁当を消化していく事にします。
変に加わると、面倒な事に巻き込まれる気もしてくるし……。
そうして一人黙々とお弁当を食べる。
「って、あーっ!!」
行き成り叫びだした愛瑠ちゃんに、どうしたのかと視線を向けると何故か不機嫌な表情で私を見ていた。
……何で? 心当たりは勿論ない。
だって、一人で黙々とお弁当を食べていただけだし。愛瑠ちゃんの機嫌を損ねる要素なんかどう考えてもない筈。
「ちょっと鈴亜! 玉子焼きは残しておいてって言ったでしょっ!」
「えっ? 玉子焼き……?」
今まさに、食べようとお箸で挟んだのが最後の一つ。でも……。
「そんな話、してた?」
少なくとも今日、そんな会話は一言もしていなかった筈。
んー?と唸りながら記憶を掘り起こしたけども、やっぱり思い当たらなかった。
「したしっ! 初めて一緒にお昼を食べた時に玉子焼きくれたでしょ」
あー……。
そう言えばなんか玉子焼きから全く目を逸らそうとしてなかったから、欲しいかと思ってあげた記憶が確かにある。うん。
「その時、この玉子焼きは私の理想だって言ったよね」
「うーん……。そうだったかな?」
その辺りはあんまり覚えてないなぁ。
何せその時は、自分の記憶というか置かれた状況に思わず頭痛を覚えていたし。
もっとインパクトのある事だったら覚えていたと思うけど、それぐらいの日常会話は流石に思い出せない、かな……。
「そうなのっ! それで、私が鈴亜の玉子焼きを絶賛してたら、はにかみながらお礼を言われて『えっと、そんなに気に入ってくれてありがとう。良かったらまた何時でも言ってね?』って言ってくれたんだからね!」
あー、うん……。なんかそんな会話したのがなんとなく思い出せてきたかも。
こっちが引くぐらい玉子焼き絶賛してくれてたね、確か。
あまりの勢いにそんな事を言った様な気がする。でも……。
「今日は、玉子焼きが欲しいって聞いてないよ?」
うん。それは間違いない。聞いていたら一つは残していたし。
「えっ! うそっ!? そんな事……。あっ! アンタが来たから言い損ねたのよっ!」
キッ!と、久我先輩を睨む愛瑠ちゃん。
当の先輩は、ほぼ言いがかりな言葉に怒るでもなく、んー。と何かを思案している様子。
愛瑠ちゃんはそんな先輩の様子で更にヒートアップしている。
えーっと、私どうすれば……?
早くしないと昼休み終わっちゃうし、あとこの玉子焼きで完食出来るんだけど食べちゃ駄目、だよねぇ。
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