乙女ゲームの世界に転生しましたが、平和が何より一番です!

かもめ みい

文字の大きさ
3 / 9

しおりを挟む
しかし二人とも、遠野さんに対してかなりキツイと思うんですけど。
それに付け足すと、久我先輩。あなたも攻略対象の一人なんですよ?

 物腰が柔らかく、シルバーフレームのメガネがより一層知的さを醸し出していて、サラ艶な射干玉の髪がほんの少し色白の肌によく映えています。
 アーモンドブラウンの瞳に少し垂れ気味な目尻が、全体的の雰囲気を更にほんわかと優しくしていて、巷では癒し系と噂されている程。
顔は言うまでもなく、イケメンさんです。
 遠野さんの周囲に侍っている四人組みと比べても劣る事のないイケメンです。
だから、本来ならあちらに加わってキャッキャウフフな世界の要員になっている筈なのに、どうして私達の方にいるのか……。
 愛瑠ちゃんとは逆に、私は久我先輩の方が不思議です。

「きっと彼らのトラウマか何かを克服できる言葉をかけてあげたりとか、彼らの気に入る言動でもして気を惹いたんだと思うよ」
「あんな心の篭ってない、棒読みの言動でもグラッとくる?」
「彼らも若いし、その辺りの見極めはまだ出来ないんじゃないかな?」
「えー。そんな人達が『学園のプリンス』なんてもてはやされているのって正直幻滅なんだけど。
 この学園のイメージが下がるだけじゃない。これからは『学園のプリンス(笑)』に変えてほしいわね」
「うーん……。もてはやしている子達も若いから仕方ないと思うよ?
 それに外見はカッコいいからね。外見だけでも充分なんじゃないのかな? この世代は」

 えっと、二人の会話にとてもじゃないけど加われません。
あちらさんがピンクの世界ならこちらはブルーの世界とでも言えばいいのでしょうか。
 少なくとも私達は同じ高校生だと思うのですが、久我先輩の言動が同じ高校生だとは思えません。
遠野さんに対して辛辣だと思えば、その範囲が彼ら四人にまで及んでいるこの状況。そしてこういう時だけ息の合う愛瑠ちゃんと久我先輩。
 話しに加われない以上、私は黙々とお弁当を消化していく事にします。
変に加わると、面倒な事に巻き込まれる気もしてくるし……。
そうして一人黙々とお弁当を食べる。

「って、あーっ!!」

 行き成り叫びだした愛瑠ちゃんに、どうしたのかと視線を向けると何故か不機嫌な表情で私を見ていた。
……何で? 心当たりは勿論ない。
だって、一人で黙々とお弁当を食べていただけだし。愛瑠ちゃんの機嫌を損ねる要素なんかどう考えてもない筈。

「ちょっと鈴亜! 玉子焼きは残しておいてって言ったでしょっ!」
「えっ? 玉子焼き……?」

 今まさに、食べようとお箸で挟んだのが最後の一つ。でも……。

「そんな話、してた?」

 少なくとも今日、そんな会話は一言もしていなかった筈。
 んー?と唸りながら記憶を掘り起こしたけども、やっぱり思い当たらなかった。

「したしっ! 初めて一緒にお昼を食べた時に玉子焼きくれたでしょ」

 あー……。
 そう言えばなんか玉子焼きから全く目を逸らそうとしてなかったから、欲しいかと思ってあげた記憶が確かにある。うん。

「その時、この玉子焼きは私の理想だって言ったよね」
「うーん……。そうだったかな?」

 その辺りはあんまり覚えてないなぁ。
何せその時は、自分の記憶というか置かれた状況に思わず頭痛を覚えていたし。
もっとインパクトのある事だったら覚えていたと思うけど、それぐらいの日常会話は流石に思い出せない、かな……。

「そうなのっ! それで、私が鈴亜の玉子焼きを絶賛してたら、はにかみながらお礼を言われて『えっと、そんなに気に入ってくれてありがとう。良かったらまた何時でも言ってね?』って言ってくれたんだからね!」

 あー、うん……。なんかそんな会話したのがなんとなく思い出せてきたかも。
こっちが引くぐらい玉子焼き絶賛してくれてたね、確か。
あまりの勢いにそんな事を言った様な気がする。でも……。

「今日は、玉子焼きが欲しいって聞いてないよ?」

 うん。それは間違いない。聞いていたら一つは残していたし。

「えっ! うそっ!? そんな事……。あっ! アンタが来たから言い損ねたのよっ!」

 キッ!と、久我先輩を睨む愛瑠ちゃん。
当の先輩は、ほぼ言いがかりな言葉に怒るでもなく、んー。と何かを思案している様子。
愛瑠ちゃんはそんな先輩の様子で更にヒートアップしている。
 えーっと、私どうすれば……?
早くしないと昼休み終わっちゃうし、あとこの玉子焼きで完食出来るんだけど食べちゃ駄目、だよねぇ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

処理中です...