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うーん、困った。
未だにお箸で挟まれたままの玉子焼きを眺める。
無意識に食べちゃった事にしちゃおうかな。
正直、私の玉子焼きの事でここまで愛瑠ちゃんが大騒ぎするのも不思議なんだよね。
普通に考えると、久我先輩とお話ししたいからただのきっかけとして利用したって考えるのが自然なんだろうけど……。
チラリと愛瑠ちゃんを見る。
でも、本気でこの玉子焼きに執着してるみたいなんだよね。素人が作った平凡な玉子焼きなのに、何が彼女の琴線に触れたのやら。本当に不思議。
そんな事をつらつらと考えていた私の右手に何かが触れた。
触れた?違う握られた、だ。
私の右手は誰かに握られていて、誘導されるままに移動していく。──玉子焼きを挟んだまま。
視線も右手を追うように移動していき、玉子焼きが誰かの口に入るさまをまるで画面越しのように見ていた。
モグモグと動かされる口に、嚥下によって動く喉。最後は名残を惜しむかのようにペロリと唇を舐める紅い舌。
ただ食べているだけなのに、この匂い立つような色気は何なのだろうか。
「うん。美味しかった。ご馳走様」
満面の笑みとでも言えそうな程素敵な表情で感想を言ってくれたのは、久我先輩。
シルバーフレームの奥の瞳には、呆けた顔の私が映っている。自分の表情が相手の瞳から確認出来るとは、思った以上に至近距離にいるらしい。
──って。え?
「えっ? ええっ!?」
ちょっ! 今、え? えっ!?
今何がっ!? いや、うん、分かる。分かるよ?
久我先輩が玉子焼きを食べたんだよね?
それで感想を言ってくれたんだよね?
「やっぱり、この味大好きだな。出来れば毎日食べたいね」
何か耳元で囁かれたようですが、脳が言葉を認識するのを嫌がってただの音として通り抜けていきます。
私はただ茫然と、もう何も挟んでいないお箸を見る。
「ちょっ! アンタッ!!」
ヒュンッ!と風が私の横を通り過ぎ、それと共にジャリッと力強く土を踏みしめる音が聞こえた。
一体何が……。と、視線を音の方向へと向けると、そこには愛瑠ちゃんの後ろ姿が。
「春宮さんが困ってたし、それに緑川さんが絶賛する玉子焼きを食べてみたくてつい、ね」
「アンタに食べさす玉子焼きは未来永劫ないわよっ!」
いつの間にか距離をとって相対していた愛瑠ちゃんと久我先輩。
叫び終わると同時に久我先輩へと向かって駆け出し、距離をつめると同時に攻撃を与えようとした愛瑠ちゃんの蹴りを、相変わらずの笑顔のままで受け流す久我先輩。
「チッ!」という舌打ちと共に受け流された蹴りの力を利用して強引に身体を半回転させると、一呼吸もしない間に走り出し拳を揮う愛瑠ちゃん。
対して、久我先輩は相変わらず避けるのみで、反撃は一切していない。
それも余裕を感じさせる動きで。
「女の子なのにって言葉はあんまり使いたくないんだけどね?
でも、下着が見えちゃうから忠告はしたいかな」
「人の下着見るなっ! この、変態っ!」
「僕は緑川さんの下着には全く興味ないんだけど。
逆に見せられている僕としては、被害届けを出したいぐらいだよ?」
普通に二人共会話をしているけど、見てるこちらとしてはそんな攻防しておきながらよく会話できるなぁって心境。
なんか凄すぎて言葉も出ないというか、二人の攻防をまじまじと見てしまったよ。
でもね? 私の記憶ではここ。
──普通の乙女ゲームの世界だと思ってたんだけど、間違いだったのかな?
未だにお箸で挟まれたままの玉子焼きを眺める。
無意識に食べちゃった事にしちゃおうかな。
正直、私の玉子焼きの事でここまで愛瑠ちゃんが大騒ぎするのも不思議なんだよね。
普通に考えると、久我先輩とお話ししたいからただのきっかけとして利用したって考えるのが自然なんだろうけど……。
チラリと愛瑠ちゃんを見る。
でも、本気でこの玉子焼きに執着してるみたいなんだよね。素人が作った平凡な玉子焼きなのに、何が彼女の琴線に触れたのやら。本当に不思議。
そんな事をつらつらと考えていた私の右手に何かが触れた。
触れた?違う握られた、だ。
私の右手は誰かに握られていて、誘導されるままに移動していく。──玉子焼きを挟んだまま。
視線も右手を追うように移動していき、玉子焼きが誰かの口に入るさまをまるで画面越しのように見ていた。
モグモグと動かされる口に、嚥下によって動く喉。最後は名残を惜しむかのようにペロリと唇を舐める紅い舌。
ただ食べているだけなのに、この匂い立つような色気は何なのだろうか。
「うん。美味しかった。ご馳走様」
満面の笑みとでも言えそうな程素敵な表情で感想を言ってくれたのは、久我先輩。
シルバーフレームの奥の瞳には、呆けた顔の私が映っている。自分の表情が相手の瞳から確認出来るとは、思った以上に至近距離にいるらしい。
──って。え?
「えっ? ええっ!?」
ちょっ! 今、え? えっ!?
今何がっ!? いや、うん、分かる。分かるよ?
久我先輩が玉子焼きを食べたんだよね?
それで感想を言ってくれたんだよね?
「やっぱり、この味大好きだな。出来れば毎日食べたいね」
何か耳元で囁かれたようですが、脳が言葉を認識するのを嫌がってただの音として通り抜けていきます。
私はただ茫然と、もう何も挟んでいないお箸を見る。
「ちょっ! アンタッ!!」
ヒュンッ!と風が私の横を通り過ぎ、それと共にジャリッと力強く土を踏みしめる音が聞こえた。
一体何が……。と、視線を音の方向へと向けると、そこには愛瑠ちゃんの後ろ姿が。
「春宮さんが困ってたし、それに緑川さんが絶賛する玉子焼きを食べてみたくてつい、ね」
「アンタに食べさす玉子焼きは未来永劫ないわよっ!」
いつの間にか距離をとって相対していた愛瑠ちゃんと久我先輩。
叫び終わると同時に久我先輩へと向かって駆け出し、距離をつめると同時に攻撃を与えようとした愛瑠ちゃんの蹴りを、相変わらずの笑顔のままで受け流す久我先輩。
「チッ!」という舌打ちと共に受け流された蹴りの力を利用して強引に身体を半回転させると、一呼吸もしない間に走り出し拳を揮う愛瑠ちゃん。
対して、久我先輩は相変わらず避けるのみで、反撃は一切していない。
それも余裕を感じさせる動きで。
「女の子なのにって言葉はあんまり使いたくないんだけどね?
でも、下着が見えちゃうから忠告はしたいかな」
「人の下着見るなっ! この、変態っ!」
「僕は緑川さんの下着には全く興味ないんだけど。
逆に見せられている僕としては、被害届けを出したいぐらいだよ?」
普通に二人共会話をしているけど、見てるこちらとしてはそんな攻防しておきながらよく会話できるなぁって心境。
なんか凄すぎて言葉も出ないというか、二人の攻防をまじまじと見てしまったよ。
でもね? 私の記憶ではここ。
──普通の乙女ゲームの世界だと思ってたんだけど、間違いだったのかな?
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