乙女ゲームの世界に転生しましたが、平和が何より一番です!

かもめ みい

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──それはいつもと変わらない朝を迎えて登校し、授業を受けた後のお昼休みの時の事。

 何時もの様に愛瑠ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べていた。
変わった事と言えば、場所が屋上だったという事。
 普段は中庭を利用する事が多いのだけれど、たまに愛瑠ちゃんの気分次第で場所を変える事がある。
私は別段、食べる場所にこだわりはない。楽しく食べられればそれでいいから。
だから彼女が場所を変えたいと言えばそれに素直に頷き、その場所に行くんだけれど今回は場所を言ってくれなかったので彼女の後を着いて行ったら、まさかの屋上だった事にちょとビックリした。

──実はこの学校、屋上は基本的に開放されていない。
 フェンスがあるとはいえ、何か事故があれば大変だという事で。
まぁ、学校側の事情も分かるし、それ対して私は不満を持ってはいない。
一部の生徒は違うみたいだけれどね。
そんな基本的に開放されていない屋上に連れられて来たら、驚くのは当たり前だよね?

「ふふっ。ビックリしたでしょ」

 言葉が出ない為コクコクと頷くだけの私に、悪戯が成功したと言わんばかりの笑みを浮かべながら、愛瑠ちゃんは迷いもなく進む。
 初めて此処へ来たけれど、開放されていないはずの屋上は思った以上に綺麗だった。
それは定期的に人の手が入っているという事。

「はーい。此処に座るわよ」

 そのまま思考に没頭しそうになるのを、愛瑠ちゃんの声で中断する。
 開放されていない場所なので勿論ベンチ等がある筈もなく、地べたにそのまま座るしかない。
思った以上に綺麗だからと言って野ざらしな場所だ。流石にそのまま座ると制服が汚れてしまうのは間違いない。
とりあえずハンカチでも敷いておくしかないかな。
そう思っていたんだけれど、どこから持ってきたのか、気が付くと愛瑠ちゃんがレジャーシートを敷いていた。
 いやほんと、愛瑠ちゃん、どこからそのシートを持ってきたの?
教室からは、お弁当の袋しか持ってきてなかったよね?
しかもおまけにクッションまで用意されているのですが。

「ほらほら! 何を呆けているの。さっさと座るわよ!」

 私の追及を避ける為なのか、強引にクッションへと座らせる。

「やっぱりさ、下がコンクリートだと冷えちゃうじゃない? クッションがあって正解だよね」

 私の追及を避けたのではなく、たまたま?

「時間もあまりないし、早く食べよう!」
「ねぇ、そのクッションどこから……」
「早く食べないと、食べる時間がなくなるよ!」
「ああ、うん……」

 結局追及はさせてもらえないみたい。
上手くはぐらかされたというわけではなく、単純にお腹が減っただけ?
 なんとなく釈然としないけれど、時間は有限だもんね。
食べ終わった後の移動時間も考慮しないといけないから、確かに早くご飯を食べないといけない。

「あっ! 玉子焼き頂戴ね!」
「うん。いいよ」

 そんな会話をしながら何時もと同じようにお弁当を食べてお昼を過ごしていた筈なのに、いきなり愛瑠ちゃんから爆弾を投下された。

「もう気が付いてるかもしれないけれど、私、ここの理事長の姪なのよ」

 ああ、そういえばゲームで玖芝愛瑠はこの学校の理事長の姪という設定あったなぁ……って!?
思わず最後まで咀嚼できていないコロッケをそのまま飲み込んでしまった。
他の物なら間違いなく喉を詰まらせるところだったよっ!
 じゃなくて、なぜこのタイミングでカミングアウト!?
本当の本当にいきなりすぎない!!
 知っていたと言えば知っていたけどそれは乙女ゲームの設定で知っていただけで、しかも主人公との友情エンドにて初めて分かる事だよ!?
 それをどうして私にカミングアウト!?
しかも気付いているって……。
 普段その事をひた隠しにしているのに、どうして私が気付く事が出来ると思うの!?
少なくとも私は、知っているなんて素振りをした事はない筈。
それに、ゲームの設定がそのままこの世界で反映されているわけじゃないという事を知っているから。
だからどうして愛瑠ちゃんがその様に思ったのかが分からない。

「あれ? 知らなかった?」

 だからどうして不思議そうに首を傾げるの!?

「んー……。まぁいっか。
 私が理事長の姪だから、今回屋上の鍵を借りる事が出来たんだけど……」

 いや、そんなカミングアウトいらないからね!
私は当たり障りなく生活できて、この学校を卒業出来れば十分なので、ほんと乙女ゲームのシナリオに巻き込まれるのとか望んでないの!
 私はあまりの衝撃で、話し続ける愛瑠ちゃんをただ見つめるだけしか出来なかった。
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