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第一章:朝、目が覚めたらお姫様一行の保護者になっていた俺。

第2話「俺、お礼に飯をおごる」

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「いやぁ、助かったぜお前ら!
 俺としたことが、すっかり人間に戻ったと勘違いしちまってた!」

「……ぬいぐるみは、人間にはなれない。
 それに、戻るだなんて元々人間だったようにいってるけど、そんなことは高位の魔法師……いえ、伝説の魔王にだって不可能。
 そもそも無機物と有機物では、この世界における存在の在り方そのものが――」

「あらあら、食べながらお喋りするのは駄目よ、コレット?
 ほら、可愛いお口からポロポロこぼれてるじゃない」

「いえいえ、王ぞ……ぼ、冒険者として、人助け……いえ、ぬいぐるみさん助けをして当然でふから!
 はむっ、もむもむ……んっ」

 ほぉ、こいつらは冒険者だったのか。

 言われてみれば、随分体を鍛えているな。

 ……特に、腰回りから尻にかけてのラインは、若い女特有の魅力がぎっしりと詰まっていて、大変けっこうなことだ。

「……なんか、このドッグル、私たちを見る目がいやらしいです」

「あらあら、この殿方はリトルベアーちゃんでしょ?
 ほら、お耳の形がこんもりしてて……ふー」

 うわっ、い、いきなり、耳に息を吹きかけるな!

 つうか、こいつ、いつの間に俺に近づきやがったんだ?

「あらあら、ずいぶんと敏感なのね?
 とっても経験豊富そうに見えるのに……私の勘違いだったかしら?

 おぉぉ……この女、若い癖に「ツボ」を熟知してやがる!

 くそっ、こんな小娘にいいようにされるわけには……っ!

「そんなことひょり、はあむっ、んっ、ネコッタさんは……はぷっ、んふ……んぐんぐ、お空でいったい何をしへふぁんですか?」

 俺が目の前の女に、今にもとっておきの技を繰り出そうと身構えていると、さっき俺を受け止めてくれた女が質問してきた。

「地上にはないものを探していたのさ。
 そして……君を見つけた」

 俺は軽やかなステップで女の目の前にたどり着くと同時に、決め顔で甘い言葉をささやく。

「ひゃんっ!?
 そ、そんふぁこと……もむもむ……言われたら……こまりまひゅ!
 えっと……んっ、はむっ…………ま、まずはお友達からなら……」

 ふっ、もちろんさ……へぷんっ!!!!

「お痛しちゃだーめ。
 レイラは純情なの。
 火遊びがしたいのなら、私としちゃう?」

 ここ、こいつっ、マジでなにもんだ?

 さっきはともかく、今はこの女の動きをちゃんと警戒していたのに、全く反応できなかったぞ。

 こんなのが冒険者だと?

 このレベルなら国でだって通用するだろ……それこそ、女でこの腕前なら、王女専属近衛騎士団、「ヴァルキリー」にだって入れるんじゃねえか?

 しかも、一瞬だがこの女、明らかな「殺気」を放っていた。

 ふむ。

 ……これ以上、関わらないほうがよさそうだな。

「まあ、固いこと言うなよ。
 飯代は全部俺が払ってやるから。
 硬いのは男だけで十分。
 女は柔らかくいかねえとな……へ?」

 俺は適当なことを言いながら、なんとかこの場を離れようと、俺の右手を万力のような力で掴む女の手を左手で振りほどこうとしたら……俺の左手がなかった。

 そうか、俺って左手無かったんだな。

 へー。

 ……

 …………

 んなわけねぇよ!

「……レイラだけではない、純情なのはみんな一緒。
 フローリア、あなたには親の仕事に影響されすぎないように言ったはず。
 そこのドッグル、今度わたし達の体に触ろうとしたら、次は腕一本では済まさないから」

 ひぃっ!!!

 おいおいおい、なんなんだよこいつら!?

 あの女、さっきから自分の魔力を見せ付けるように思いっきり垂れ流してるけど……やべぇ。

 あれだけの量の魔力を放出し続けているのに、平然としてやがる。

 うそだろ……大人の男でも、数秒で気絶してもおかしくない程の量のはずだぞ?

 あの状態を維持して、なおかつ魔法の制御までこなして「正確」に俺の腕を消し飛ばしたっていうならA級。

 いや、違う。

 魔法のエキスパートであるこの俺に、魔法を放ったことにすら気づかせなかったんだ。

 間違いなくあいつも国家レベル。

「ヴァルキリーか……」

 俺は、呆然としながらぽつりとこぼした。

 別にこいつらがヴァルキリーと決まったわけじゃないが、思わず口から出た。

 ただ、それだけの事。

 だが、そう言った途端さっきまでの殺気が消え失せて、なんだか連中が慌てだしたような気がする。

「あっ、あらあら!
 違いますよ?
 私たちはただの……そう、娼婦です!
 ね、ポポ?」

「……そうですね。
 これから今夜の客を探しに行かないといけないのでした。
 それでは失礼します」

 へ、帰るの?

 てっきりガチで殺しに来ると思ったけど……俺の勘違いか?

 もしかして、本当にこいつらは「あの」ヴァルキリーで、俺に正体が気づかれたと思って逃げようとしてるのか?

 ……いいや、違うな。

 ヴァルキリーは国に仕える超エリートだ。

 正体を隠す必要はない。

 ていうことは……やっぱりこいつらはヴァルキリーじゃないってことになる。

 それもそうか。

 あの「ヴァルキリー」様が、こんなさびれた店でがっつくほど、金に困るわけなんてねえもんな。

 俺も年か?

 やだやだ、こんな年端も行かなそうな女共を「ヴァルキリー」と間違えるだなんて。

 ぬいぐるみになったせいだと思いたいぜ、いや、きっとそうに違いない。

 うはは。

 なんだなんだ、俺としたことが。

 うっかり、こいつらが俺の敵だと勘違いするところだった。

 ……

 ……俺の敵?

 なんでだ?

 別に俺は国にケンカを売るような真似はしてないはず——

「ひがいまふっ……んむんむ、よ?
 わらひひゃちは、はぷっ、クーデターから逃げてきたんでふ……んむっ、シャリシャリシャリ」

 へ、クーデター?

「あらあらっ。
 ほらほら、訳の分からないことを言ってないで、そろそろ行きましょうか?
 今夜の客を取れなければ、私たちは路頭に迷って——」

 おっと、急に手を離すなよ。

 それにまだその子食べてるんだから、終わるまで待ってや……

「おい、聞いたか?
 王都でクーデターがあったらしいぞ」

 ん?

「ああ、なんでも勇者が反乱を起こしたってきいたぜ!
 しかも、姫様やヴァルキリーの連中は、骨も残さず消されちまったって話だ」

 ほぉ。

「――し、しまいますから。
 ……では、いきましょうか……くっ!」

「まあ、待てよ?」

 俺は両手をあげて、連中の前に立ち塞がった。

 まだよく分かってねえけど、なんか面白くなってきたぜ。

 ちょうど夜まで退屈してたんだ、絶対に逃がさねえ!
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