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Mission1-2
しおりを挟む一応注意としてゲーム系定番の掲示板ネタあり。
ここで離れる人もいそうだけど敢えておじさんは入れるぜ!
余りやった事ないから合ってるか分からんけど、とりあえず本編へどぞー
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巨大な鉄の威容。
MDではない。
だが歩兵に対してはオーバーキルとも言える兵器が今、私の目の前に鎮座し殺意を向けてきている。
補強として付けたであろう全身の装甲は本来剥き出しであったであろう場所も覆い隠し、各所に装着された銃火器は此方を容易に吹き飛ばせるだけの火力が予想できる。
その明確な理不尽がその牙を剥いた。
「っぐ!?」
左手に丸ごと移植された榴弾砲が此方に照準したのを認識した私は咄嗟に飛び退いた。
耳を引き千切りたくなるような轟音、力強く誰かに押されたような浮遊感。
それが爆風で吹き飛ばされたのだと辛うじて気付いた私は本能的に受け身を取った。
爆風による運動エネルギーと落下時の衝撃を逃す為に体を丸め、転がるように着地する。
すぐに私が先程までいた場所を見ればそこには小さなクレーターと周辺被害によって焼け焦げたコンクリートがあった。
(当たったら拙い!)
直感で理解した私はすぐさま走り出し、隠れられそうなポイントを探した。
走る私をコックピット付近に備えられた無人機銃がポイントする。
(ヤバいヤバイヤバイ!)
強力な機銃が大地を抉る音が私の背後に迫る。
しかしすんでの所で擱座したアラーニャが目に入り、そこに飛び込む様に避難した。
元々軍事兵器の試作品だっただけあってその装甲は私に迫る銃弾を全て防いでくれた。
でも絶対に長持ちしない。
あのパワーローダーには榴弾砲も装備されているのだ。
幾ら軍用機と言ってもいつまでも保つとは思えない。
巨大な殺戮マシーンを攻略する為に必死に頭を巡らせる。
強力で強固なあれをどうにかする方法。
大型の兵器を相手にする際の定石を思い出せ。
「先ずは関節部」
半身出して三発ずつ敵榴弾砲接続部、脚部関節をARで攻撃する。
しかしカンカンと虚しい音を立てて無力化されたので素早く身を隠す。
次に反対側まで走ってコックピット部を射撃。
しかし想像以上に分厚く、傾斜まで付けられたその装甲にまるで歯が立たない。
やっぱり対歩兵火器じゃ抜けないかぁ・・・・・・
後は至近距離まで寄って射撃・・・・・・現実的じゃない。
そもそもどうやってあの弾幕を抜けるのさ。
榴弾砲の爆音が響き、擱座したアラーニャが一瞬宙に浮いて私を押し出した。
その衝撃で思わず顔から突っ込みそうになったので腕で防ぐ。
「好き勝手やってくれるよホント・・・・・・!?」
体を起こす時にARがガチャリと音を立てる。
その際にぶつかった物を見たら万が一にと買っておいた二つの装備だった。
「EMPグレネードにライフルグレネード・・・・・・」
咄嗟に自身が持ってきた装備をステータスで確認する。
幾つかの装備に目を通し、作戦を立てていく。
穴はありそうだけど、ここを切り抜けるには多少の無茶は仕方ない。
諦めたら終わりだ。
危険を冒す者が勝利する。
今がその時だ。
ライフルグレネードを先端に取り付け、二種のグレネードを手に握る。
やるなら奴が榴弾砲を準備し始めた瞬間だ。
火器管制が上手く調整できていないのか、榴弾砲を撃つ時には機銃射撃が停止している。
機銃は避けられない。
だが榴弾砲ならもしかしたらなんとかなるかもしれない。
賭けに近い行いだが、細い勝ち筋を通すにはこれくらいの覚悟しなきゃ駄目だ。
それにこれはゲームだ。
どれだけ現実に近付けてもこれは現実じゃない。
ならゲームでくらい、その命をチップとして差し出すのも悪くない。
深呼吸。
心を落ち着けて機会を待つ。
変な所で失敗なんてしたくない。
やるからには勝ちたい。
負けて終わるなんて御免だ!
ーー機銃掃射が止んだ。
「今ッ!」
パワーローダーのいる方向に向けて最初にEMPグレネードを全力投擲。
続け様にフラッシュを投擲。
それを合図にする様に走り出した。
[なんだ!?機体がっ!?]
EMPが炸裂、機体の自由を奪うと同時に時間差で飛んできたフラッシュグレネードがパワーローダーの目を潰した。
[目眩しとは小癪な!]
オートサイティングシステムが作動してないのかあらぬ方向に機銃を乱射するパワーローダー。
怖気付いたらダメだ。
走り抜ける!
機銃弾を二発貰う。
止まりそうな足を奮い立たせ、全力で相手の懐を目指して走る。
(よし、射程範囲!)
[邪魔だぁ!]
視界が戻ったのか、機銃の届かない位置にいた私に榴弾砲がその首を向ける。
だがここまで来たら手遅れなんだよね!
ライフルグレネードの装着されたARをパワーローダーの榴弾砲基部に照準。
トリガーを引く。
パシュン!という甲高い音と共に推進剤に火が入ったグレネードが高速で飛び出した。
真っ直ぐ榴弾砲の根元に命中したグレネード弾はその先端が潰れたと同時に爆音を響かせる。
中の榴弾に誘爆したのか弾薬庫が吹き飛び、基部どころかそのまま肩ごと千切れ落ちた。
[おのれぇ!]
巨大な鉄塊が振るわれるが間一髪で回避に成功。
そのまま巨腕を勢いに任せて素早く登る。
敵は腕を振り回して私を落とそうと足掻くが先に動体部背面に到着した私は、通信用と思われるロッドアンテナに足を絡ませて体を固定。
動体部回転による遠心力に耐えながら二発目のライフルグレネードを装着する。
[諦めろ!]
「アンタが、ねぇ!」
遠心力に負けて引き剥がされる寸前。
その一瞬で敵機背面動力部ーー燃料タンクと思わしき物ーーに発砲した。
グレネードの炸裂音。
続いて引火したタンクから凄まじい爆発。
私は吹っ飛ばされ、熱風に煽られながらも受け身を取り転がりながらも衝撃を逃して被害を抑える。
軽く壁に背中を打ち付けたが、勢いは殺し切れたのか衝撃は小さい。
続く爆発。
銃弾にも引火したのだろう。
時折花火の様に何かが弾ける音が耳に入ってきた。
私は背中を打った壁に寄り掛かり座り込む。
「あぁもう、初任務でやる事じゃないよこれ・・・・・・」
体の各部に違和感。
視界に移るだけでも火傷や切創が目立つ。
ボディアーマーを身に付けてない私の体からは、血・・・・・・の様な赤いプログラムの欠片が零れ落ちている。
腹部銃創による出血、それだけじゃないね。
多分だけど、打ち身や罅もあるんじゃないかな?
それに脳震盪の影響で視界が悪い。
グニャグニャしてる。
気持ち悪さを堪えて装備を解除、医療キットを取り出した。
こういう時のために一つは携行しておいたんだ。
まさか初任務で使う羽目になるとは思わなかったけどね。
モデルは最新のメディカルキットなのか、中にあったのはテープバンテージと治療用ナノマシンの入ったジェッターだ。
先ずは傷のある部分を露出させる為に服を捲り顎で抑え、ジェッターのセイフティを解除し一番酷い二発の銃創付近に打ち込む。
ジェッターの中身をリロードしながらしっかり二つの傷に打ち込んで、ジェッターを廃棄。
傷の無い位置からテープバンテージをしっかりと巻いていく。
痛みによる反応の再現か身体が何回か跳ねるが、なんとか抑え込んで止血する。
応急処置が済んだ私は一先ず座り込んでナノマシンが身体を再生するのを待つ。
失った血は戻らないが、これ以上の悪化は防げた。
生存できただけ上出来でしょ。
少し力が戻った私は、装備を付け直して壁を支えにしてゆっくりと立ち上がる。
管制室から元の区画に戻るべく階段へと向かう。
ーーその最中だった。
鉄の塊が落下する音。
私は音のした方へと反射的に首を動かした。
「お前、おまえぇぇぇ・・・・・・!」
「・・・・・・嘘でしょ」
中から出てきたのは体を燃やしながら這い出してきた長身で軍人体型の男性と思われるヒト。
全身火達磨でシルエットしか分からない。
だが男はゆっくりと歩いてくる。
「あガァ、お前さえ・・・・・・お前さえ来なければぁ・・・・・・!」
男は恨み言を叫びながら手をモゾモゾと動かし始めた。
その動きで察した私は直ぐにARを構えて射撃。
思わずフルオートで射撃してしまう。
減っていたとはいえ十数発の銃弾を受けた男は、その体を被弾の衝撃で踊らせてそのまま顔から倒れ込んだ。
「あぁ、ぐぅ・・・・・・」
「はぁ、ハァ・・・・・・」
仕留め損ねたのは私だ。
正直アレで即死したと思い込んでいた。
実際はそうではなかったんだ。
あの男は炎でその身を包まれ、痛みと苦しみに踠きながらハッチをこじ開けて出てきた。
最後まで苦しみながら、恨みの対象である私に引導を渡す為に。
フルダイブVRゲーム。
どんどんリアルに、現実の感覚に近付いていくゲームが多いのは知ってる。
自身でゲームの世界を体験して、その世界特有のファンタジーを愉しみたいと思うからこそ引き込まれる。
私もそうしてVRゲームに引き込まれたんだ。
でもーー
「これは、後味悪過ぎるっしょ・・・・・・」
私はパチパチと音を立てて燃える遺体を見詰めながらそう呟いた。
▽
「これで任務完了となります、お疲れ様でした」
任務完了報告が既に届いていたのか、受付に着いたと同時にそう告げられた。
MTTが自動で立ち上がり、完了収支を立体スクリーンで表示した。
弾薬費や怪我の治療費等々で細かく引かれているが、それを大きく上回るプラス収支が付いていた。
「ユキさんは長らく捕捉出来なかった彼等のリーダーを発見、及び排除に成功し、あまつさえ秘密建造していた兵器を破壊しましたし、何より現在判明している同型兵器よりも更に高性能な機動兵器の設計データと構造データを入手してくれました。なのでその追加報酬として加算したのが現在の報酬金額になります。これ、本当に凄い事なんですよ?」
「そ、そうなんだ」
「そうなんです!」
熱弁する受付嬢の熱意にちょっと引く。
確かに凄い結果なんだと思う。
でもね、あの最後の光景でもう台無しよ。
達成感より罪悪感とかそういうのが上回っている。
実際はデータ上の出来事で、私が道中で撃ち殺した敵MOBと一緒なんだ。
でもあの一瞬、あの一瞬だけ本物の戦場に引き摺り出されたかのような感覚を覚えた。
(“人間”は死なない。でも“このゲームの住民”は?)
考えるだけ無駄なんだと思う。
でも最後の光景を思い浮かべるとそうした考えが頭を過ぎる。
それを考えて、考えてそしてーー
「あぁ、そっか」
「どうかしました?」
「んや、なんでもないよ」
一つの結論に至った。
「そだ、名前教えてよ」
「突然どうしたんです?」
「いいじゃん、そっちだけ名前知ってるってのもアレだし、受付って毎回呼ぶのもメンドイし」
「はぁ・・・・・・?えっと、シーラです、シーラ・エレス」
「そんじゃ改めて宜しくねシーラ」
「いきなりファーストネームですか!?」
その結論。
それはこのゲームの、この世界の創造主の創作染みたこの世界への想い。
(全力で生きるよ・・・・・・この世界をね)
私はこのゲームにおける一つの方針を決め、自室に戻ってログアウトを押すのだった。
【最新情報】M&M攻略掲示板【求む】
384:ラングドシャ
あ゛ぁーお金無いんー
385:ろくさん
死ぬ気で働け
386:ナーちゃん
>384
気持ちは分かる
でも楽に稼げる手段なんて無いんや
387:デモリッション
>384
気持ちは分かるがスレチな。
雑談掲示板かバイトでも行ってこい。
388:ろくさん
話戻すけど現在購入可能な兵器はどれも廉価版レベルの性能らしい
β組が持ってるレベルのMDやらの兵器レベルの性能となると現状では入手不可能
389:デモリッション
リアフレがβ組な俺が性能比較させて貰ったから間違いない。
今出回ってるMDパーツやスタンダードでβ組の持ってるMDに勝てる見込みはかなり薄い。
結論として出会ったら死を覚悟しろ、だな。
390:佐助
スタートダッシュの差とか絶対埋まらないんでやめてもらえませんかねぇ?
391:食べる人
流石に絶対は言い過ぎじゃね?
当分埋まらんだろうけど
392:テニス
傭兵ランク上げる事でパーツ増えるとかじゃ無いんですよね?
393:ナーちゃん
>392
せやで
現在傭兵ランクBやけどなんも変わらん
受付嬢の対応くらいやな
394:食べる人
>392
何かしら条件があるのではと睨んでる
だからフリーランス組の報告待ちなのが現状
だからここ、今は攻略掲示板というよりか初心者お悩み相談室みたいな状態なんだよ
俺たちも俺たちで探してはいるけどな
>393
早過ぎるわw
395:ナーちゃん
抽選組やからな!
でも丁寧に仕事すればD~Cくらいにはなれると思うで
396:デモリッション
現状分かってるのはランクに関係しない、ミッション消化率も無関係って事くらいだ。
後はゲーム内時間の経過で追加・・・というのが風説であるくらいか。
397:ティンク・ポロット
てぇへんだ!てぇへんだ!
398:ナーちゃん
大変なんはお前の名前や!
399:佐助
これ八兵衛、落ち着いて話しなさい
400:テニス
名前、八兵衛じゃないですけど
401:佐助
ネタにマジレスで返される悲しみよ・・・
402:ろくさん
>397
何が大変なんだ?
自室で焚火して全焼したか?
お前よくやるもんな!
403:ティンク・ポロット
>402
だからごめんて:;
それよりも聞いてくれ!
久々に装備拡充の為にショップ覗いたら新製品が追加されてたんだよ!
しかも四つ脚の機動戦車だ!
404:ナーちゃん
なんやて!?
405:デモリッション
>403
なんと!
406:食べる人
うわ!
マジで追加されてる!?
407:ナーちゃん
>403
詳細!
詳しい情報無いんか?
408:ティンク・ポロット
あんまり詳しい事は聞けなかったけど、最近登録したばっかりの傭兵がランクEのミッションをクリアしてきて
その時にめっちゃ貴重な情報を調達してきたらしい
409:佐助
ミッション中に?
410:ろくさん
>403
情報確認。
四脚機動戦車【アラーニャ】
53万6千biz
装備
120mm滑空砲
76mm連装副砲
対人自動機銃
陸戦対歩兵ドローン
パラメータは割愛するが、現状前線で稼働しているどの戦車よりも走破性も局地対応力も装甲も高い
武装も軒並み新型だが何より機体の各部がブロック構造で編成次第では様々な局面に対応できそう
マジで大変で正直怒ってスマンカッタ
411:ティンク・ポロット
>410
(下らん情報持ってくるのも事実だから)ええんやで
412:デモリッション
誰が、とかは聞けなかったか?
413:ティンク・ポロット
そこは守秘義務がなんたらで聞けんかった
スマンコ
414:食べる人
キチャナイ!
415:デモリッション
ここは攻略掲示板だから下ネタ嫌いな奴も観に来る。
発言には気を付けた方がいい。
416:ティンク・ポロット
おかのした!
417:ナーちゃん
名前が手遅れ感半端ないんやけど
418:テニス
それにしても一体誰なんでしょうね。
その傭兵って
暫くその傭兵に関して探る内容が続く・・・・・・
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