Machine& Mercenary

タクティカルおじさん

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最近また忙しくなってきやした(-_-;)
投稿が前話も含めて遅くなりつつありますが出来る限り頑張っていく所存でありやす。
少し短めですが続きそどうぞ。

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購入したヒートナイフを先に装備したナイフと入れ替える。
他にも幾つかラザニア製装備を購入した。
ヒートナイフの替え刃も含めて消耗品なのでこれから何度もお世話になる事だろう。
彼の作る装備は新型なのもあるがとにかく品質が良い。
店の様子が完全に年季の入った駄菓子屋なのに、売り物は精密で緻密。
彼の精神性が繊細なんだろう。
オマケに凝り性と見た。
加工跡が処理されておらず、微妙に接着面が浮いている店売りのEMPグレネードと比べてそういった雑な仕事が見当たらない。
こうした違いも性能評価に加算されるんだろうね。
MTTを当てて支払いを済ませる。

「毎度あり」
「これからも世話になるわ」
「こちらこそ」

ニマッと笑みを浮かべる。
見た目は厳ついけど、私でも接し易い柔らかい対応は素直に凄い。
キャラクター感があってちょっと頬が緩みそうになる。

「そうだ、出来ればでいいから受けてくれると嬉しいんだけど」
「何を?」
「もし何か装備品に関するレシピを見付けたらアタシに譲って貰えないかしら?レシピがあればその装備を生産できるようになるし、受けて貰えるならその分だけ報酬を渡すしなんならアナタだけ特別に値引きしてあげてもいいわ。勿論、断ったからといってアナタに不利になる様な事はしないと約束させてもらうわ」

取引・・・・・・というよりはお願いと言った方が良さそう。
会ったばかりでそこまで信用は出来ないが、提示されている条件は悪くない。
寧ろこっちに有利過ぎて怪しい。

「そちらにメリットは?」
「もしアタシが最新技術を独占できれば技術開拓ポイントで自身の能力を強化できるのよぉ!今までは自分で探してたんだけど店を持って腰が重くなっちゃって探しに行けないのよねぇ。今のスキル構成じゃ危険な現場に出るのはリスクが高いのよ」
「貴方が契約を蹴る可能性だってある」
「しないわよぉ!寧ろアナタに断られたくないから必死なの!」

え?なんでそんなに私を引き留める必要があるの?
フレ登録したとはいえまだポッと出の他人に過ぎないのに。
すると続け様に驚く事を言い出した。

「アナタよね?アラーニャの情報を解放したの」
「ッ!?」

思わず脇の拳銃に手が伸びる。

「待って待って!本当は聞く気は無かったの!アナタが受付に報告してる場面に出会しただけなの!」

伸ばした手をそっと戻す。
そういえばシーラ、結構興奮した感じで声が大きかった。
周囲にプレイヤーがいれば聞いていてもおかしくはない。
そもそも何処にも情報を流してないのだから知られるとしたらあの受付嬢からだ。

「他にプレイヤーはいなかったし、もし契約できれば優位に立てるかもって思ったのよ。だから完全な善意ってわけじゃないの」
「なるほど、納得した」
「それにさっきの動きで確信したわ。銃器を使用した戦闘だけじゃなくて格闘戦も出来るわね?視線がアタシの目を見てなかったわ。目を向けてはいるけどね。それに利き腕が常にアタシより遠い位置にあったのも、アタシがナイフで襲ってきた時に左腕を犠牲にして抜ける為よね?」

なるほど。
元々は腕利きの傭兵だった感じか。
私の動きだけでよくもまぁそこまで分かる物だ。
現実では格闘技の顧問か何かなんだろうか。

「なるべく自然に接していたつもりだったんだけど」
「普通の人は分からないわよ。アタシ、リアルはPMCトレーナーだもの」

とんでもない大物じゃん。
なんで傭兵やめたのか不思議でならない。
でも聞く必要はない。
理由なんて人それぞれだし、迷惑掛けないならやりたいようにやればいい。
それが娯楽という奴だ。
私だってそのつもりだしね。
ゲームは楽しくやらないと。

「それじゃそろそろ行くね」
「あら、もう言っちゃうの?」
「初日からミッションだったからまだ街をあんまり見れてないの。だから散策しとこうって」
「あら~分かるわそれ。折角凄い作り込みなんだから目一杯楽しんできなさいな」
「そうするよ」

後ろ手にぷらぷらと手を振りながら店を出る。
店の外観で気になって入ったけど、友達も出来たし大収穫だ。
それに対策を考えようと思っていたけど、ラザニアがその対策に使えそうな装備を作成してくれていた。
店売りには無かった装備で性能が未知数な物もあるが、有難い事に装備にはステータスが設定されている。
それと見比べながら考えるとしよう。

店を出た私は装身具を中心とした商業区を抜けて更に歩き回る。
色んな店が立ち並ぶ中を歩いて今度は行政区へと向かう。
何故かというとこの世界における法律を知らないからだ。
銃器の所持が認められているとはいえ、どのレベルまで持ち歩いて良いのかは分からない。
もし持ち歩いて良いのなら私としてもプライマリがあった方が不足の事態に対する対応力も増す。
またトラブルや銃撃戦に遭遇した場合、相手を射殺したらどうなるのか。
もし巻き込まれて負傷した場合、治療費やアイテム代は出るのか。
対応部隊の代わりに鎮圧した場合報奨金は出るのかとかまぁ言い出したらキリがない。
ドッグオーダーズで調べようとも思ったが、それなら本来の法律を知ってその上でドッグオーダーズの特例等を調べた方が良いかもと思ったからだ。
この街に根付いた組織のようだから何かしら特別な権利を得ていても可笑しくはない。
それと行政区は街の中心だから構造を知っておきたい。
任務対象になる可能性あるから、最低限建造物の構造くらいは把握しておきたい。
データとかって貰えるのかな。
貰えるなら戦術が立て易いのだけど・・・・・・

あれこれ考えてる内に行政区に到着。
ここには大型企業の重鎮が勤務するオフィスや、この街の司法を取り仕切る裁判所なんかもあったりする。
他にも特殊な電力施設や警備隊の本拠があったり色々詰め込まれてるが、とりあえず麻痺したら拙い場所という認識でいいだろう。
だから警備隊の本拠があるんだろうけど。
そう考えながら歩いてると検問があった。

「すまない、行政区に入る前にボディーチェックを受けてもらいたいんだが・・・・・・」
「ん」
「・・・・・・あー、ドッグオーダーズの登録か。なら通ってくれ、一応目的を聞かせてもらえるか?」
「行政区の視察と構造把握、あと建造物の構造も分かればと」

私の正直な告白に不審がるガード。
 
「テロでも起こす気かい?」
「寧ろ逆、居合わせた時に対処できませんじゃカッコ付かないでしょ?」

実際の特殊部隊や正規軍は直前のブリーフィングで開示された情報を頭に叩き込むらしい。
でもこのゲームでそんな気の利いた事があるとは思えない。
実際初任務の時はそんな情報渡されなかったし。
成功したのは敵がいる方に進んだだけだから、構造を理解していたわけではない。
RPGみたいな物だと思って違和感を持ってすらいなかったが、良く考えればミリゲーに近いのにブリーフィングが無くて情報提供も無いのは変だ。
シーラにも聞いたけど、そういう情報提供はされていないとか。
どう考えても変だよね。
行政区に行こうと思ったのはそういう気付きもあってである。

とりあえず検閲はパスできた。
後は行政区で建造物の構造データを提供してもらうだけ。
もし貰えるなら今度から自分で周辺構造物の情報くらいは集めてきた方がいいかも。

行政区は先先程通った検問みたいなのがグルリと囲う様に八箇所存在しており、身分が証明できる人間しか入る事が出来ない。
つまりこの先はこの街にとって重要な人物しかいないという事だ。
一人でも減ったら行政区の機能が少し落ちるんだろうね。
そんな重要な区画だからこそ、非戦闘員が生存し易い様に工夫されている。
そもそもこの区画だけ巨大な外壁で覆われていて、通常の手段で侵入する事は出来ない。
検問にだってガードがいるし、その内側にはアラーニャには劣るが対装甲兵器の備えだってある。
ちなみに私が通れたのはドッグオーダーズの重鎮がこの先にオフィスを持っているからだ。
こうしてみるとドッグオーダーズがかなりこの街の重要組織として食い込んでいる様に思える。
実情は荒事専門の何でも屋に近いんだけど、この世界だとPMCの在り方が違うのかも。
それはそれとして入って暫く歩いてみたけど一般区画と全然違うね。
全ての建造物が平べったく高さも統一されている。
様相が違って見えるのはここからでも目立つガードの本拠ぐらいか。
ドッグオーダーズより小さいが同じ構造の敷地になっている。
しかし物々しさはなく、どこかスッキリした印象だ。
恐らくだけどここに勤める民間人に対する配慮だと思われる。
四六時中武装した兵士に監視されるのはストレスになるだろうしね。

確か情報を貰うには中央の一番高い建物、行政塔なる場所に向かえばいいらしい。
間違いなく入口からでも見える巨大なタワーの事だろう。
今はそれに向かって真っ直ぐ歩いている。

一日目は情報を貰ってそれで終わりにしよう。
帰ったらラザニアさんから購入した装備との入れ替えを検討しよう。
しかし一日目の最後はとんでもない結末を迎える。

轟音。
続いて何かが崩れる様な音。
おまけに僅かだが地響きも感じ取れた。
そして遠目に銃声のようなものも聞こえ始めた。
つまりこれの指す物事と言えばーー

(襲撃!?)

まさかの市街地戦である。
せめて情報を得た後に起こって欲しかった。
でも現状の装備品はハンドガンのみ。
戦闘になるならせめてラザニアさんの装備品を装備していたかったが仕方ない。
そう思ってMTTを起動して装備を呼び出そうとするがーー

「えっ、呼び出し出来ない?」

装備プリセットが入力を受け付けない。
それだけでなく持ち物単品として呼び出す事もできなくなっている。
それでも一抹の希望を持ってプリセットをタッチすると、最近聞いていなかった軽い音が鳴る。

『行政区内での再武装は出来ません。これはNPCを含めた全ての市民に対する仕様になります』
『その代わりに予め装備された武器は検問を通過できれば装備可能になります』

つまり、現状の装備で対応しろって事?
ハンドガンだけでどうしろってのよ。

仕方ないので走って逃げる。
歩兵くらいならなんとかなるけど、装甲兵器が来たらどうしようもない。
隠れながら先程の検問まで急ぐ。

そこで嫌な予感を感じて建造物の間に飛び込んだ。
直後に破砕音。
それも爆発とかの音ではなく、重量物が落下してコンクリートを砕いた音だ。
起き上がって姿勢を低くしながら壁に張り付いてその正体を睨み付ける。

(二脚逆関節型の支援兵器!)

名前は分からないが、5mを悠に超える巨体がそこにあった。
鳥の足みたいな脚部に直接旋回砲塔が付いてるようなデザインだ。
主砲は二門付いてるように見える。
見付かったら間違いなくやられる。
どうかそのまま通り過ぎてくれ。
そう願っていたら続け様に一機降ってきて少し前進。
主砲を行政塔に向けて発射した。
私は慌てて退避。
何故かって?
薬莢が降ってきたからだよ!

薬莢が丁度建造物で止められて潰されずに済んだ。
だが薬莢でさっきまでいた場所は塞がれ、来た道は戻れなくなってしまった。

(仕方ない、別ルートを取ろう)

ハンドガンを抜いてセーフティを解除。
そのまま走って路地を抜ける。
角で待機。
チラッと顔だけ覗かせる。
各建造物の裏口やゴミ捨て場が見える。
注意深く確認しながら通路を通り過ぎる、
今度は大通り。
ここが一番ヤバいのよねぇ。
しかも発砲音が聞こえる。
歩兵も参戦してるのか、それともガードが応戦してるのか。
どちらにせよ敵がいるのは間違いない。
無差別ではないようだけど・・・・・・

「誰かいるの、ヤダなぁ・・・・・・」

愚痴っても仕方ない。
銃口を大通り側に向けてゆっくり移動。
足音は極力消す。
そして丁度端に到達した時、同時に見覚えの無い装備を身に付けた兵士みたいなのが横切り私を見た。

「クソッ!」
「喋るな」

サプレッサーは装備していない。
だからこいつの体を使う。
銃口を向けられる前に懐に潜り込み、離れられない様に首を掴んで引き寄せ銃口を直接腹に当てて一発。
瞬時に心臓辺りにも押し当てて一発。
所謂“肉サプレッサー”である。
こうすると肉体で高音域が相殺されてサプレッサー装備時と同様の効果を得られる。
銃に良くないので余りやるもんじゃないが、緊急時だから仕方ない。
力の抜けた死体を一気に路地に引き込んで体を壁に張り付けて索敵。
近くにはいないので先程殺した兵士からARを奪い取る。
まるでAKみたいな形状だが使い方は問題ない。
マガジンを抜いて残弾確認。
ボルトをゆっくりと引いて装填確認。
一発装填済み。
マガジンを再装填して予備のマガジンを一本頂戴する。
パーカーのポケットに入らないので一本で我慢。
これ以上は服が垂れて邪魔になる。
さぁ出発しよう。
そう思った所で私は死神に見られている事にやっと気付いた。

「あははは・・・・・・やっば」

覗いていたのは先程の奴と違い四脚型の装甲兵器。
砲塔には大型の機関銃が付いている歩兵支援目的、もしくは対空監視を目的とした機体に見える。
どちらにせよこの状況は詰みである。
敵は発砲秒読み。
せめてもの抵抗と地面に伏せて銃口を狙う。

ーーだが視界に映ったのはリスポーンの文字ではなく、その敵が爆散する光景だった。

「・・・・・・へっ?」

訳が分からなかった。
爆発四散してるのは私のアバターだったはずなのにどうしてあっちが?

その疑問を払拭したのは、直後に現れた巨人だった。
滑り込むように上空から滑走し、兵器の残骸を高速で通り過ぎていく流線的なラインの蒼い人型兵器。
間違いなくMDだ。
それも私が集めたスタンダードの形状情報とどれも一致しない。
そもそも現状入手可能なスタンダードであれ程の機動力は実現できない。
つまりあれは・・・・・・

「あれが、ハイエンド・・・・・・」

限られたプレイヤーしか入手出来ないとされているフルカスタムメイドのMD。
私はこの日、初めてハイエンドMDを見た。

もしやと思いハイエンドが来た方向へ向かったらあっさり脱出できた。
間違いなくあのハイエンドが掃除していったであろう残骸や負傷者が横たわっていた。
ちなみに事態はあのハイエンドが解決したらしい。
武装テロリストによる襲撃は、たった一機のMDによって全滅させられたというわけだ。
私は結局、建造物含む構造情報を手に入れる事は出来なかったが、ハイエンドの戦闘能力を垣間見る事が出来たのだった
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