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Mission2-1
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急に忙しくなって思う様に書けない日が続くこの頃。
でも少しずつ進めていますのでどうか気長にお待ち下さい。
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任務を受領した私は真っ直ぐ正面入口からーー
ーー入る事はなく、路地の確認後その隣の建造物へ侵入する。
何故かというと先程目の前の建造物の見取り図を確認した際に面白い物を見付けたからだ。
どうやらこの建築物には緊急避難用の非常通路が用意されているらしく、それが左右と後方に一つずつ見られた。
それで左右の路地にマンホールやハッチのようなものは見当たらず、それなら何処に、となった訳だ。
そうなったら考えられるのは一つじゃない?
左右の建造物に繋がってるんじゃないかってね。
飽くまで見取り図を見た上での推測に過ぎないから、今全力で階段をおりているんだけど・・・・・・
「っ!あった!」
MTTから同じ見取り図を呼び出し、現在の位置情報と照らし合わせる。
結果は見事的中。
私の運が勝った。
現在は区全体で非常事態対応になっているはずだからここのロックは容易に外せるはず。
水密扉みたいなハンドルを90度回す。
かなり固い。
これって筋力要求値ギリギリなんじゃ・・・・・・
一苦労しながらもなるべく音を立てない様にゆっくりと開く。
人一人通れるくらいに空いた所でその範囲で先ず索敵。
ハンドガンを抜いて裏側までしっかり確認してから半身でするりと滑り込む。
一応周囲を警戒するが、左右をだだっ広い廊下が広がるだけで何も無い。
非常通路を配置する為だけに作ったみたいな廊下だ。
しかも物置になっているのか周囲にはダンボールや記録媒体を格納したケースが散見している。
こんなに散らかってたら避難するにも苦労するだろうに。
ハンドガンをホルスターに収めてARを構え直しセイフティを外す。
敵が何人潜んでいるのか分からない。
慎重に行かないと。
変な物踏んで音を出さない様に注意しながら移動。
L字路の曲がり角で一度止まりコンパクトを取り出して通路が見える様に位置を調整して確認。
念の為銃口と一緒に上半身だけ半身で覗いて再確認。
誰もいない事を確認して移動する。
恐らく人質がいるのはここより下層のはず。
ここは地下三階。
地下九階建てのここではまだ浅い階層になる。
警備も下に行く度に厚くなると予想できる。
両開きの大扉を確認したから止まって聞き耳を立てる。
中から話し声がする。
ここに何人か敵が集まっているようだ。
スルーできるのに越した事はない。
バレない様に忍足で通り過ぎる。
コの字構造らしく中央は大きな講堂でワンフロアのようだ。
コの字の反対側に非常階段を見付けた。
当然だがここから侵入する。
非常階段に着いた所で身を乗り出して上下を確認。
巡回歩哨はいない様だ。
ゆっくりと上に昇って同じ扉の近くを確認する。
歩哨一名・・・・・・いや、二名か?
扉の前でタバコを吸っているのか副流煙が見える。
どうやらこの階にいなかったのは警備をサボって休憩していたからのようだ。
ゲーム上のロジックでこうなってるのか、それとも運が良かったからなのかは知らないがチャンス。
一名を少しだけ顔を出して頭部を射撃。
続けてもう一名も動体に一発撃ち込んで動きを止め、二発目で頭部を射撃して即死させる。
これで二階層分クリア。
先程の階層に戻って下に降りていく。
道すがらに射殺しながら降りていくともう最下層だ。
マガジンにも余裕がある。
残弾は装填済みに十九発、マガジン二本。
最下層は出来る限りクリアしないと人質の安全を保証出来ない。
弾が足りるかなぁ。
暗殺は必至。
バレたら人質を殺されかねない。
要求を飲んでもらえないと分かった犯人は意趣返しで人質を射殺する可能性が高い。
深呼吸。
心を落ち着かせて脳内で覚えた内部構造を反復しながら覚悟を決める。
静かに扉を開けて目の前に出てきた歩哨を射殺。
前身して死体より前へ。
倒れる音を感知して寄ってきた奴を角待ちから飛び出して至近距離で射撃して仕留める
死体を引き摺って通路の向こうに隠してから移動。
迅速な行動が必要になる。
この階層ですぐに突入できない位置にある部屋は一箇所のみ。
社長室、この会社のトップが腰を据える為のVIPルームだ。
ここなら電子ロックの強固なドアに守られ、且つエレベーターから遠い位置にあるから防御陣地を立て易い。
人質がいる可能性は大いにある。
電子ロックをどう解除するかが問題になるが、それは以前にラザニアさんのお店で解決した。
社長室前の指紋認証パネルの前で止まり、大きなスマホバッテリーみたいな端末を取り出す。
これはラザニアさん謹製の使い捨てハッキング装置。
こいつを電子ロックの上から両面テープで貼り付けるだけで勝手にレベルに応じたロックを解除してくれる優れモノ。
私のハッキングレベルだと時間が掛かってしまうからこれがあるだけで助かる。
ラザニアさん曰く「まだ大きくて重くてスマートじゃないわ!」との事だが使い捨てるので問題なし。
(お願いだから上手く言ってよ・・・・・・!)
小さな読み込み音が複数回鳴って最後に気の抜けるような音が鳴ったら、ロック状態の電子パネルが解除状態になった。
ハッキングが成功した。
ラザニアさんから購入した特製閃光手榴弾を二つ取り出してピンを抜き指で抑える。
呼吸を整え、自動ドアを反応させて少しだけ時間差を付けて二発とも投擲。
炸裂音を聞き届けて瞬時に突入した。
「ぐあぁぁ!」
「め、目が・・・・・・!」
目が眩んで怯んでいる敵を瞬時にポイントして射撃。
頭部を狙える相手は狙い、狙えない敵は胸部に二発射撃して確実に仕留める。
最後に人質らしき金髪のお嬢さん近辺にいた男を胸部と頭部に一発ずつ撃ち込んで倒す。
念の為首振りと腰の捻りだけで索敵して安全を確認。
人質の元へと急ぐ。
「大丈夫?助けに来たよ」
両手両足を縛られ口にガムテープを貼られて転がされている人質の枷を解く。
けどガムテープは剥がさない。
パニックになっていきなり大声で叫び出す可能性があるからだ。
拘束を解いた後彼女が口枷を外す前に肩に手を置いて優しく言い含める。
「状況は分かるね?静かに付いてきて、救助に来た警備隊が壊滅したから全員倒した訳じゃ無いんだ」
少女は頷くとゆっくり口枷を剥がし始めた。
手枷足枷に使っていたワイヤーはこっそり回収。
ポケットに入れておく。
先に前へと出て出入り口の左右確認。
良し、誰もいない。
少女の足音が私の近くで止まったのを確認して小声で指示する。
「離れないで」
「は、はい」
なるべく少女の歩幅に合わせて・・・・・・いや、歩調に合わせて先程侵入した場所へ戻る。
歩幅はあっちの方が広いからね。
カッティングパイの要領で分かれ道を索敵。
左右を同じ要領で行いーー
いきなり殴り掛かられた。
「クソアマ!」
「ッ!?」
間一髪でスウェーで避けて銃口で顎を殴り、距離を取って胴に二発撃ち込んで仕留める。
倒れ込み動かなくなったのを確認して男が出てきた先を見る。
あちゃー、待ち伏せか。
二人くらいかな。
この様子だと他にもバレてる可能性が高いね。
先に仕留めたどれかの死体が見付かったんだろう。
私は壁を背にしながら少女を安心させる為にウインクしながら言う。
「少しだけ派手になるかも」
左手に持ち替えて待ち伏せしている二人の男に射撃。
一人がクリーンヒットしてダウン。
慌てて隠れたのを見届けてその方向を見ながら言う。
「奥の階段まで走って」
頷いて走り始める少女。
その足音に気付いたのかまた男が顔を出すが、私がすぐに発砲して引っ込ませる。
行ったのを確認して後方警戒しながら私も走る。
顔を出したタイミングで立膝射撃。
引っ込んだのを確認して最後まで走り切る。
非常階段への扉を閉めて本来拘束に使っていたワイヤーの一部と、非常階段にある骨組みの一部を使ってドアノブを固定。
簡易的に施錠して男が追ってこれない様にしておく。
一度下の階で待機させ、自身だけで上に昇る。
安全が確認できた所で手招きして少女を呼ぶ。
もう一度同じ要領で待機させ、私が索敵に行くと今度は何も知らない風の武装した男が歩いてきた。
頭部を射撃して処理。
少女を呼び出して上へとそのまま移動。
目的の階へと辿り着いたので少女を扉傍に退避させ扉を開ける。
連続した発砲音で身を隠す。
幾つもの弾丸が通過して壁を穿った。
その様子に人質ちゃんは腰を抜かすような勢いで階段側に尻餅をついた。
私はライフルのグリップとマガジンを抱きしめる様に固定、僅かに銃口を出して半身撃ち。
ただ即応では当たらなかったのか反撃が来たので少し大袈裟に隠れ、弾の切れたマガジンをリロードする。
スタンドポジションで反撃し引っ込み、即座に体勢を低くしてもう一度射撃。
二度目の射撃で顔を出していた一人を倒し、相手が逃げる様に引っ込んだのを見て中腰で前進する。
掃除道具入れのロッカーがある所まで前進・・・・・・する前に顔を出したので一気にプローンして狙い撃ち。
何とか一発で仕留めたので起き上がって移動、ロッカーのある窪んだ所で一度身を隠す。
索敵の為に少し顔を出したら撃たれたので体勢ガン無視で壁にぶつかる勢いで回避。
なんとかデスを防ぐ。
「あんまり使いたくないんだけど・・・・・・っ!」
一個しか無いグレネードを出してピンを抜く。
レバーを離して一秒弱待機、その後敵のいる角に反射する様に勢いを付けて投げた。
カツン、という音が聞こえて僅かに間を置いて爆発。
同時に前進して先程まで敵のいた場所にカバーリング。
側に敵がいないのをちらりと見てから人質ちゃんを呼んだ。
「来て!」
慌てた様子でこっちまで走ってきた。
流石に私に合わせるのは大変か。
ARを左手に持ち替えて半身撃ち。
今度は一回目で一人仕留めた、けど数が多いのかすぐに火線の数が元通りに。
それどころか引っ込んだタイミングで前に出てきた!
急いで前に出てきた奴を仕留めて後衛に威嚇射撃。
少しは兵士っぽい動きするじゃない。
このAIの動きには感心するわホントに。
隠れて警戒。
敵は機を窺っているのか散発的な攻撃以外はしてきていない。
時折撃ち返しながら此方も機を窺う。
馬鹿正直に前に出ても蜂の巣になるだけ。
遮蔽物の無い一本道を直進なんて怖くて出来やしない。
だけどこっちもちゃんと準備したフル装備じゃないから残弾が心許ない。
遂に最後のマガジンになってしまった。
更に交換の瞬間に足音。
交換だけして人質ちゃんにライフルを手渡し、敵が顔を出した瞬間にヒートナイフを取り出して懐に飛び込む。
「なっ!?」
赤熱化した刀身が敵の防弾プレートを貫く。
更にそのまま左手で敵のホルスターからハンドガンを抜いて敵を押し出しながら前進。
逆さに握って小指で速射。
防弾プレートに殆ど弾かれたが幾つかの弾が敵の腹や太腿に食い込んで行動不能にしてくれた。
弾の切れたハンドガンを捨て、敵の至近距離まで肉盾で接近。
丁度良い距離になった所で敵の射線を塞ぐ様に投げ捨て、射撃体勢を整える前にハンドガンを抜いて腰の位置で射撃して一人を無力化。
倒れる前に敵の手を掴んで引き寄せ背中に回り込み中腰で次の対象に二連射。
即座にタックルして肉盾を退け、更にもう一人に速射して仕留め最初に射撃した奴にトドメを刺す。
「死ねっ!」
ライフルで殴り掛かってきた男を足払い。
勢いを使って一回転し、素早く構えてヘッドショット。
更に部屋から一人部屋から出てきたので転がってプローンで両足に一発ずつ撃って体勢を崩し、敵が立ち直る前に膝立ちで頭部を射撃して仕留めた。
カーシステムに倣って顔の近くに銃を寄せてタクティカルリロード。
立ち上がり胸前で構えたままS字を描く様に索敵。
敵がいないのを確信したので少しだけ深呼吸して心臓の高鳴りを治める。
ーー連続した戦闘で緊張したけどなんとかなって良かった。
念の為部屋の中まで軽く索敵してケアしておく。
ここまで来て潜伏していた敵兵に人質ちゃんを殺されたら、今までの努力が水の泡だからね。
人質ちゃんの所まで引き返し、彼女の生存を確認。
後方警戒後に人質ちゃんを抱える様に早足で移動する。
若干足が縺れたりしていたけど、そこは私が巧く支えてどうにか駆け抜ける。
念の為私が非常用ハッチから先に出て周囲を索敵。
その後に人質ちゃんを呼んで扉を閉める。
これで後続が来てたとしても多少は時間が稼げる。
そのまま人質ちゃんからライフルを返してもらい、上まで一気に駆け上がった。
入ってきた正面玄関から飛び出すと、丁度立ち上がる直前の警備隊長の姿があった。
どうやら目を覚ましたらしい。
「代表!御無事でしたか」
「えぇ、こちらの傭兵に助けて頂きました」
話を振られたのに気付いて周囲警戒をしながら耳を傾ける。
「有難う、まさか傭兵に救われる日が来るとはな」
「わたくしからも有難う御座います。護衛の者達は残念でしたが、お陰で生き残る事が出来ましたわ。後日改めて御礼させて頂きます」
二人に頭を下げられて若干狼狽えた。
感謝されたのってツムちゃんに関わった時以来だから聞き慣れてないんだ。
それに気付いてないのか、警備隊長はPTTスイッチを握って言った。
「人質が解放されたなら奴らに後ろ盾は無い。気兼ねなく敵兵器の排除を要請できる」
スイッチを押して支援要請を送る隊長。
その最中、人質ちゃんが再び頭を下げる。
「本当に有難う御座いました。もし遅ければわたくしの身は穢されていたでしょう・・・・・・貴女のお陰で女としての尊厳を守る事ができましたわ」
「そうだったんだ、間に合って良かったよ」
あー、良くある感じになってたのね。
相手が手を出せないからって死ななきゃ何しても良いだろうって、人質取ってる奴等の傲慢で起こるトラブル。
男なら死なない程度にサンドバッグにされるとかね。
全然無事じゃないやんってなる奴。
本当に間に合って良かったよ。
このゲーム変にリアルだから、もし間に合わなかったらとんでもない光景目の当たりにする所だった。
そうなったら流石にトラウマになってそう。
ホントに良かった。
「警備部隊の機械化連隊が壊滅状態だそうだ、だからドッグオーダーズに殲滅を依頼する事になるだろう」
「企業には依頼しないんだ」
「企業は金のむしり方がエゲツないからな」
傭兵に依頼した方がマシってどんな毟り方するんだろう。
まぁでも、それならもうそろそろ一番乗りが来る頃かな。
こういう変化を待ってた人、結構多そうだし。
そう思ってたら案の定、奇抜なカラーリングのスタンダードが入ってきて交戦を始めた。
他にも続々とスタンダードや、アラーニャと思われる四脚型が入場してくる。
これはそろそろ引き上げ時かな。
「周囲に流れ弾が落ちてこない内にどこかに避難するのをお薦めするよ」
「そうだな・・・・・・俺は代表を連れて警備部隊の生き残りに合流するとしよう。改めて助かったよ、有難う」
「それじゃ生きてたらまたね」
立ち去ろうと行政区の出口へ向かおうとした時だった。
「待って下さい!せめて最後にお名前だけお聞かせ下さいませ!」
人質ちゃんに呼び止められた。
何か変わるわけでも無いだろうし、一応名乗っておこう。
あと流れ弾で死にたくないからさっさと行きたい。
「私はユキだよ。じゃあね、人質ちゃん」
最後にウインクして手を振りつつ足速に立ち去る。
「わたくしは“人質ちゃん”じゃありません!リリーラ・ラヴィアンですわー!」という叫び声を背にして。
後日、シーラに呼び出されて報酬を貰った。
その時にまたシーラが興奮気味に大声で話し出したので止めるのに苦労したのは別の話。
でも少しずつ進めていますのでどうか気長にお待ち下さい。
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任務を受領した私は真っ直ぐ正面入口からーー
ーー入る事はなく、路地の確認後その隣の建造物へ侵入する。
何故かというと先程目の前の建造物の見取り図を確認した際に面白い物を見付けたからだ。
どうやらこの建築物には緊急避難用の非常通路が用意されているらしく、それが左右と後方に一つずつ見られた。
それで左右の路地にマンホールやハッチのようなものは見当たらず、それなら何処に、となった訳だ。
そうなったら考えられるのは一つじゃない?
左右の建造物に繋がってるんじゃないかってね。
飽くまで見取り図を見た上での推測に過ぎないから、今全力で階段をおりているんだけど・・・・・・
「っ!あった!」
MTTから同じ見取り図を呼び出し、現在の位置情報と照らし合わせる。
結果は見事的中。
私の運が勝った。
現在は区全体で非常事態対応になっているはずだからここのロックは容易に外せるはず。
水密扉みたいなハンドルを90度回す。
かなり固い。
これって筋力要求値ギリギリなんじゃ・・・・・・
一苦労しながらもなるべく音を立てない様にゆっくりと開く。
人一人通れるくらいに空いた所でその範囲で先ず索敵。
ハンドガンを抜いて裏側までしっかり確認してから半身でするりと滑り込む。
一応周囲を警戒するが、左右をだだっ広い廊下が広がるだけで何も無い。
非常通路を配置する為だけに作ったみたいな廊下だ。
しかも物置になっているのか周囲にはダンボールや記録媒体を格納したケースが散見している。
こんなに散らかってたら避難するにも苦労するだろうに。
ハンドガンをホルスターに収めてARを構え直しセイフティを外す。
敵が何人潜んでいるのか分からない。
慎重に行かないと。
変な物踏んで音を出さない様に注意しながら移動。
L字路の曲がり角で一度止まりコンパクトを取り出して通路が見える様に位置を調整して確認。
念の為銃口と一緒に上半身だけ半身で覗いて再確認。
誰もいない事を確認して移動する。
恐らく人質がいるのはここより下層のはず。
ここは地下三階。
地下九階建てのここではまだ浅い階層になる。
警備も下に行く度に厚くなると予想できる。
両開きの大扉を確認したから止まって聞き耳を立てる。
中から話し声がする。
ここに何人か敵が集まっているようだ。
スルーできるのに越した事はない。
バレない様に忍足で通り過ぎる。
コの字構造らしく中央は大きな講堂でワンフロアのようだ。
コの字の反対側に非常階段を見付けた。
当然だがここから侵入する。
非常階段に着いた所で身を乗り出して上下を確認。
巡回歩哨はいない様だ。
ゆっくりと上に昇って同じ扉の近くを確認する。
歩哨一名・・・・・・いや、二名か?
扉の前でタバコを吸っているのか副流煙が見える。
どうやらこの階にいなかったのは警備をサボって休憩していたからのようだ。
ゲーム上のロジックでこうなってるのか、それとも運が良かったからなのかは知らないがチャンス。
一名を少しだけ顔を出して頭部を射撃。
続けてもう一名も動体に一発撃ち込んで動きを止め、二発目で頭部を射撃して即死させる。
これで二階層分クリア。
先程の階層に戻って下に降りていく。
道すがらに射殺しながら降りていくともう最下層だ。
マガジンにも余裕がある。
残弾は装填済みに十九発、マガジン二本。
最下層は出来る限りクリアしないと人質の安全を保証出来ない。
弾が足りるかなぁ。
暗殺は必至。
バレたら人質を殺されかねない。
要求を飲んでもらえないと分かった犯人は意趣返しで人質を射殺する可能性が高い。
深呼吸。
心を落ち着かせて脳内で覚えた内部構造を反復しながら覚悟を決める。
静かに扉を開けて目の前に出てきた歩哨を射殺。
前身して死体より前へ。
倒れる音を感知して寄ってきた奴を角待ちから飛び出して至近距離で射撃して仕留める
死体を引き摺って通路の向こうに隠してから移動。
迅速な行動が必要になる。
この階層ですぐに突入できない位置にある部屋は一箇所のみ。
社長室、この会社のトップが腰を据える為のVIPルームだ。
ここなら電子ロックの強固なドアに守られ、且つエレベーターから遠い位置にあるから防御陣地を立て易い。
人質がいる可能性は大いにある。
電子ロックをどう解除するかが問題になるが、それは以前にラザニアさんのお店で解決した。
社長室前の指紋認証パネルの前で止まり、大きなスマホバッテリーみたいな端末を取り出す。
これはラザニアさん謹製の使い捨てハッキング装置。
こいつを電子ロックの上から両面テープで貼り付けるだけで勝手にレベルに応じたロックを解除してくれる優れモノ。
私のハッキングレベルだと時間が掛かってしまうからこれがあるだけで助かる。
ラザニアさん曰く「まだ大きくて重くてスマートじゃないわ!」との事だが使い捨てるので問題なし。
(お願いだから上手く言ってよ・・・・・・!)
小さな読み込み音が複数回鳴って最後に気の抜けるような音が鳴ったら、ロック状態の電子パネルが解除状態になった。
ハッキングが成功した。
ラザニアさんから購入した特製閃光手榴弾を二つ取り出してピンを抜き指で抑える。
呼吸を整え、自動ドアを反応させて少しだけ時間差を付けて二発とも投擲。
炸裂音を聞き届けて瞬時に突入した。
「ぐあぁぁ!」
「め、目が・・・・・・!」
目が眩んで怯んでいる敵を瞬時にポイントして射撃。
頭部を狙える相手は狙い、狙えない敵は胸部に二発射撃して確実に仕留める。
最後に人質らしき金髪のお嬢さん近辺にいた男を胸部と頭部に一発ずつ撃ち込んで倒す。
念の為首振りと腰の捻りだけで索敵して安全を確認。
人質の元へと急ぐ。
「大丈夫?助けに来たよ」
両手両足を縛られ口にガムテープを貼られて転がされている人質の枷を解く。
けどガムテープは剥がさない。
パニックになっていきなり大声で叫び出す可能性があるからだ。
拘束を解いた後彼女が口枷を外す前に肩に手を置いて優しく言い含める。
「状況は分かるね?静かに付いてきて、救助に来た警備隊が壊滅したから全員倒した訳じゃ無いんだ」
少女は頷くとゆっくり口枷を剥がし始めた。
手枷足枷に使っていたワイヤーはこっそり回収。
ポケットに入れておく。
先に前へと出て出入り口の左右確認。
良し、誰もいない。
少女の足音が私の近くで止まったのを確認して小声で指示する。
「離れないで」
「は、はい」
なるべく少女の歩幅に合わせて・・・・・・いや、歩調に合わせて先程侵入した場所へ戻る。
歩幅はあっちの方が広いからね。
カッティングパイの要領で分かれ道を索敵。
左右を同じ要領で行いーー
いきなり殴り掛かられた。
「クソアマ!」
「ッ!?」
間一髪でスウェーで避けて銃口で顎を殴り、距離を取って胴に二発撃ち込んで仕留める。
倒れ込み動かなくなったのを確認して男が出てきた先を見る。
あちゃー、待ち伏せか。
二人くらいかな。
この様子だと他にもバレてる可能性が高いね。
先に仕留めたどれかの死体が見付かったんだろう。
私は壁を背にしながら少女を安心させる為にウインクしながら言う。
「少しだけ派手になるかも」
左手に持ち替えて待ち伏せしている二人の男に射撃。
一人がクリーンヒットしてダウン。
慌てて隠れたのを見届けてその方向を見ながら言う。
「奥の階段まで走って」
頷いて走り始める少女。
その足音に気付いたのかまた男が顔を出すが、私がすぐに発砲して引っ込ませる。
行ったのを確認して後方警戒しながら私も走る。
顔を出したタイミングで立膝射撃。
引っ込んだのを確認して最後まで走り切る。
非常階段への扉を閉めて本来拘束に使っていたワイヤーの一部と、非常階段にある骨組みの一部を使ってドアノブを固定。
簡易的に施錠して男が追ってこれない様にしておく。
一度下の階で待機させ、自身だけで上に昇る。
安全が確認できた所で手招きして少女を呼ぶ。
もう一度同じ要領で待機させ、私が索敵に行くと今度は何も知らない風の武装した男が歩いてきた。
頭部を射撃して処理。
少女を呼び出して上へとそのまま移動。
目的の階へと辿り着いたので少女を扉傍に退避させ扉を開ける。
連続した発砲音で身を隠す。
幾つもの弾丸が通過して壁を穿った。
その様子に人質ちゃんは腰を抜かすような勢いで階段側に尻餅をついた。
私はライフルのグリップとマガジンを抱きしめる様に固定、僅かに銃口を出して半身撃ち。
ただ即応では当たらなかったのか反撃が来たので少し大袈裟に隠れ、弾の切れたマガジンをリロードする。
スタンドポジションで反撃し引っ込み、即座に体勢を低くしてもう一度射撃。
二度目の射撃で顔を出していた一人を倒し、相手が逃げる様に引っ込んだのを見て中腰で前進する。
掃除道具入れのロッカーがある所まで前進・・・・・・する前に顔を出したので一気にプローンして狙い撃ち。
何とか一発で仕留めたので起き上がって移動、ロッカーのある窪んだ所で一度身を隠す。
索敵の為に少し顔を出したら撃たれたので体勢ガン無視で壁にぶつかる勢いで回避。
なんとかデスを防ぐ。
「あんまり使いたくないんだけど・・・・・・っ!」
一個しか無いグレネードを出してピンを抜く。
レバーを離して一秒弱待機、その後敵のいる角に反射する様に勢いを付けて投げた。
カツン、という音が聞こえて僅かに間を置いて爆発。
同時に前進して先程まで敵のいた場所にカバーリング。
側に敵がいないのをちらりと見てから人質ちゃんを呼んだ。
「来て!」
慌てた様子でこっちまで走ってきた。
流石に私に合わせるのは大変か。
ARを左手に持ち替えて半身撃ち。
今度は一回目で一人仕留めた、けど数が多いのかすぐに火線の数が元通りに。
それどころか引っ込んだタイミングで前に出てきた!
急いで前に出てきた奴を仕留めて後衛に威嚇射撃。
少しは兵士っぽい動きするじゃない。
このAIの動きには感心するわホントに。
隠れて警戒。
敵は機を窺っているのか散発的な攻撃以外はしてきていない。
時折撃ち返しながら此方も機を窺う。
馬鹿正直に前に出ても蜂の巣になるだけ。
遮蔽物の無い一本道を直進なんて怖くて出来やしない。
だけどこっちもちゃんと準備したフル装備じゃないから残弾が心許ない。
遂に最後のマガジンになってしまった。
更に交換の瞬間に足音。
交換だけして人質ちゃんにライフルを手渡し、敵が顔を出した瞬間にヒートナイフを取り出して懐に飛び込む。
「なっ!?」
赤熱化した刀身が敵の防弾プレートを貫く。
更にそのまま左手で敵のホルスターからハンドガンを抜いて敵を押し出しながら前進。
逆さに握って小指で速射。
防弾プレートに殆ど弾かれたが幾つかの弾が敵の腹や太腿に食い込んで行動不能にしてくれた。
弾の切れたハンドガンを捨て、敵の至近距離まで肉盾で接近。
丁度良い距離になった所で敵の射線を塞ぐ様に投げ捨て、射撃体勢を整える前にハンドガンを抜いて腰の位置で射撃して一人を無力化。
倒れる前に敵の手を掴んで引き寄せ背中に回り込み中腰で次の対象に二連射。
即座にタックルして肉盾を退け、更にもう一人に速射して仕留め最初に射撃した奴にトドメを刺す。
「死ねっ!」
ライフルで殴り掛かってきた男を足払い。
勢いを使って一回転し、素早く構えてヘッドショット。
更に部屋から一人部屋から出てきたので転がってプローンで両足に一発ずつ撃って体勢を崩し、敵が立ち直る前に膝立ちで頭部を射撃して仕留めた。
カーシステムに倣って顔の近くに銃を寄せてタクティカルリロード。
立ち上がり胸前で構えたままS字を描く様に索敵。
敵がいないのを確信したので少しだけ深呼吸して心臓の高鳴りを治める。
ーー連続した戦闘で緊張したけどなんとかなって良かった。
念の為部屋の中まで軽く索敵してケアしておく。
ここまで来て潜伏していた敵兵に人質ちゃんを殺されたら、今までの努力が水の泡だからね。
人質ちゃんの所まで引き返し、彼女の生存を確認。
後方警戒後に人質ちゃんを抱える様に早足で移動する。
若干足が縺れたりしていたけど、そこは私が巧く支えてどうにか駆け抜ける。
念の為私が非常用ハッチから先に出て周囲を索敵。
その後に人質ちゃんを呼んで扉を閉める。
これで後続が来てたとしても多少は時間が稼げる。
そのまま人質ちゃんからライフルを返してもらい、上まで一気に駆け上がった。
入ってきた正面玄関から飛び出すと、丁度立ち上がる直前の警備隊長の姿があった。
どうやら目を覚ましたらしい。
「代表!御無事でしたか」
「えぇ、こちらの傭兵に助けて頂きました」
話を振られたのに気付いて周囲警戒をしながら耳を傾ける。
「有難う、まさか傭兵に救われる日が来るとはな」
「わたくしからも有難う御座います。護衛の者達は残念でしたが、お陰で生き残る事が出来ましたわ。後日改めて御礼させて頂きます」
二人に頭を下げられて若干狼狽えた。
感謝されたのってツムちゃんに関わった時以来だから聞き慣れてないんだ。
それに気付いてないのか、警備隊長はPTTスイッチを握って言った。
「人質が解放されたなら奴らに後ろ盾は無い。気兼ねなく敵兵器の排除を要請できる」
スイッチを押して支援要請を送る隊長。
その最中、人質ちゃんが再び頭を下げる。
「本当に有難う御座いました。もし遅ければわたくしの身は穢されていたでしょう・・・・・・貴女のお陰で女としての尊厳を守る事ができましたわ」
「そうだったんだ、間に合って良かったよ」
あー、良くある感じになってたのね。
相手が手を出せないからって死ななきゃ何しても良いだろうって、人質取ってる奴等の傲慢で起こるトラブル。
男なら死なない程度にサンドバッグにされるとかね。
全然無事じゃないやんってなる奴。
本当に間に合って良かったよ。
このゲーム変にリアルだから、もし間に合わなかったらとんでもない光景目の当たりにする所だった。
そうなったら流石にトラウマになってそう。
ホントに良かった。
「警備部隊の機械化連隊が壊滅状態だそうだ、だからドッグオーダーズに殲滅を依頼する事になるだろう」
「企業には依頼しないんだ」
「企業は金のむしり方がエゲツないからな」
傭兵に依頼した方がマシってどんな毟り方するんだろう。
まぁでも、それならもうそろそろ一番乗りが来る頃かな。
こういう変化を待ってた人、結構多そうだし。
そう思ってたら案の定、奇抜なカラーリングのスタンダードが入ってきて交戦を始めた。
他にも続々とスタンダードや、アラーニャと思われる四脚型が入場してくる。
これはそろそろ引き上げ時かな。
「周囲に流れ弾が落ちてこない内にどこかに避難するのをお薦めするよ」
「そうだな・・・・・・俺は代表を連れて警備部隊の生き残りに合流するとしよう。改めて助かったよ、有難う」
「それじゃ生きてたらまたね」
立ち去ろうと行政区の出口へ向かおうとした時だった。
「待って下さい!せめて最後にお名前だけお聞かせ下さいませ!」
人質ちゃんに呼び止められた。
何か変わるわけでも無いだろうし、一応名乗っておこう。
あと流れ弾で死にたくないからさっさと行きたい。
「私はユキだよ。じゃあね、人質ちゃん」
最後にウインクして手を振りつつ足速に立ち去る。
「わたくしは“人質ちゃん”じゃありません!リリーラ・ラヴィアンですわー!」という叫び声を背にして。
後日、シーラに呼び出されて報酬を貰った。
その時にまたシーラが興奮気味に大声で話し出したので止めるのに苦労したのは別の話。
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