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しおりを挟むおニューの銃の整備に一日を費やして迎えた五日目。
複雑な構造ながら整備が必要なポイントはブロック化されていて案外分かり易い銃だった。
機関部の一部は全く分解できないみたいだけど、そこを整備しなくても武器の耐久値はちゃんと回復した。
メインで使ってるXM302は耐久が減らない特別な武器だけど、貰ったベスパはそうじゃないから正直不安だったんだよね。
初期装備のハンドガンはセミオートハンドガンの基本みたいな構造だったし。
今日やる事は長距離移動用のビークルを手に入れる事。
その為にもう一度ラザニアさんに連絡を取ってもらった。
歓迎するって話なのでこれから出掛ける所なんだけど・・・・・・
「久し振りにスキル所得しようかな」
そう、ステータスだ。
流石の私も乗り物の搭乗経験なんて自転車くらいしかない。
その為に任務で稼いだポイントを使おうと思ったわけ。
既存の能力のアップグレードもしておきたい。
人質救出の時に少し思ったけど、打撃力が足りない。
鍛えた人間を一発でノックアウト出来るようにとは言わないから、銃を撃つまでの猶予を作れるようにしたい。
前回は咄嗟に顎を打ったからダメージが入ったけど、アーマーを着込んでたらビクともしないのが現状だと思う。
・ユキ
性別:♀
所持スキル一覧
腕力強化Lv3 脚力強化Lv3 積載量強化Lv2 ハッキングLv2 スタミナ消費減少Lv1 機械操作Lv1
現在のステータスがこれ。
筋力レベル3で成人男性くらいの筋力だと思われる。
すっぴんのプレイヤーは普通程度の筋力すら無いというわけだ。
筋力強化は戦闘する上では必須なんじゃないかと思う。
それに新しく手に入れたライフルを携行するにしても筋力はいるしね。
現在のSPは32。
内訳は最初の任務達成固定ポイントで6、リーダー討伐とパワーローダー破壊で10、情報回収の報酬で2、緊急達成で8、代表の無事で6と。
二回しか任務らしい事してないけど、一つ一つが濃過ぎてこうなったみたい。
内容が濃密・・・・・・というより難易度が上昇する度に追加でSPが入るのかもしれない。
お陰でスカスカだったのに潤沢、それどころか以前よりも増えている。
そこで考えたアップデートがこれ。
・ユキ
性別:♀
所持スキル一覧
腕力強化Lv4 脚力強化Lv4 積載量強化Lv3 ハッキングLv2 スタミナ消費減少Lv2 機械操作Lv1 運転技術Lv3
新たに所得したスキルは運転技術。
これは技能系パッシブで、MD操縦以外の全てに適応される汎用スキルだ。
スキルの効果は乗り物系スキルの効果増幅。
レベル1だと効果も微々たる物で余り意味は無いが、レベルを上げて行けば大きなシナジーを得られるだろうと思った。
これを所得しておけば専門には及ばないにしても操作は出来るようになるし損は無いはず。
専門技術と重複するらしいので先に所得し、後で入手したビークルに応じて専門技術の習得をして効果増幅を狙おうと判断したわけだ。
これで残りポイントは14。
専門技術をある程度までレベル上げ可能だ。
これで準備完了。
後は目的地に行くだけ。
ラザニアさんからのメールに添付されていた地図の通りに行けば問題はない。
先ずはバスに乗らないとね。
私はいつも通りライフルバッグを担いで寮舎を後にした。
▽
バスに揺られて十五分。
商業区のラザニアさんの店舗がある場所より少し先にあるバス停で降車。
そのまま中心街から外れて裏路地に入っていく。
地図の通りに路地や小道を通り抜け、更に十分程歩いた所で到着した。
金網に囲まれた廃工場のような見た目ながら小綺麗にされており、電飾で看板が彩られている。
見た目はロスの違法車取引工場のようなイメージなのに、看板の文字は極一文という和名。
アンバランスで少し面白いかもしれない。
入口らしきゲートは開放された状態で待機状態になってるから開店してるのは間違いない。
工場のシャッターとは別にある大扉を開ける。
向かって正面に人相の悪そうなおじさんがカウンターに座ってるのが見えたので向かう。
するといきなり横合いから右肩を掴まれた。
「っ!?」
「えっ、ちょ」
反射的に掴んできた手を肩を回して関節に肘を入れるように肩の力を緩め、溝尾に一発拳を入れて右手で押し出して瞬時に拳銃を抜いた。
「まっ、待て、撃つな!」
ハイポジションで構えて両手を上げる男に銃口を向けて警戒。
意図は分からないが突然拘束しようとしてきた相手だ、油断はできない。
男は筋肉質でタンクトップ、刺青が目立つショートモヒカンの男だ。
・・・・・・少しお腹が出てるけど、それはそれで風格がある。
警戒して男を睨み付けていると、奥から声が掛かった。
カウンターの男だ。
紫基調のアロハシャツに丸眼鏡だが目付きが鋭く只者じゃ無い風格がある。
「待ちな、こっち来い。銃はしまえ、ここじゃ揉め事は御法度だ」
ある程度距離を取るまで銃口を向け続け、距離が取れた所で銃をホルスターに納めた。
「お前さんカタギじゃねぇな・・・・・・だがここのルールは守って貰う」
「悪いね。仕事柄暴力には反応しちゃうんだ」
そう言うとニヤリと笑う。
何か面白かったのかな。
「招待状、もしくは紹介状を出しな」
紹介状・・・・・・ラザニアさんのメールで良いのかな。
私は端末を操作してラザニアさんから貰ったメールを表示する。
「アンタ、あのアンタッチャブルの紹介かよ。どうりでヤベェ雰囲気なわけだ」
「アンタッチャブル?」
「ラザニアの事だ。喋ったら殺されるから聞くな・・・・・・奥でボスが待ってる、さっさと行きな」
「・・・・・・あいよ」
ラザニアさん、なんかやったんだろうか。
男の指示の通り奥へと向かう。
後ろから「よっしゃイメージ通り行けたぞ!」って声が聞こえたのは言わないようにしよう。
ニヤリと笑ったのはそういう事だったのね。
奥の扉を開けると、視線が一斉に向いた。
争い事厳禁のようだから襲われる事はないでしょう。
なので視線を気にせず奥に向かう。
ボスって誰だろ。
近くの人に訊いてみよ。
「ねぇ、ボスが待ってるって言われたんだけどボスって誰?」
「あぁん?なんだガキじゃねぇか。丁重にお帰り下さいコラァ」
「客なら先にあるオフィスだが、ガキはお呼びじゃねぇ、帰んな」
つまり先にある部屋、あの工場の角に設置された小さな小屋がオフィスね。
そこでボスが待ってるわけね。
それにしてもガイドはしてくれるんだね。
ちゃんと教えてくれたし。
「ありがと、それじゃまた」
軽く手を振ってそのままオフィスに向かう。
小じんまりとした豆腐ハウスだが、作りは確りしてるのか中から音は聞こえない。
アルミ製の扉を開けて中に入ると、奥には黒い和服を着込んだ厳つい顔のおじさんが自分用と思わしき席に座っている。
目の前の机に肘を乗せて此方をぎらりと睨んだ。
「誰だ」
低く重い声が私に降り掛かる。
なんだか校長先生と話してる気分だ。
そんな貫禄を、目の前のおじさんから感じる。
「ラザニアさんの紹介で来たんだけど、聞いてなかった?」
「ラザニア・・・・・・アイツの言ってたヤベェガキってのはお前さんか」
ヤベェヤベェってさっきから聞いてるんだけど何がヤバいのさ。
というかラザニアさん、どんな伝え方したの。
「お前さんの話は聞いてる。足が欲しいんだってな」
「そう、何か良いの無い?なるべく速いのがいいんだけど」
移動時間短縮はこのゲームにおいて命題。
私はこの何日分かをプレイしていて切実に思った事だ。
リアルだと自転車でもあれば大体の場所に行けるし、そんなに長距離移動するような事もなかった。
けどこのゲームにおいて私は傭兵。
仕事柄あっちこっち移動する必要があるから移動の手間も結構掛かる。
商業区と行政区を行き来するだけでも時間が掛かる現状、これ以上移動距離が伸びると本格的に不味い。
だからスピードの出る、それなりに長距離移動できる物が欲しいと思った。
「それなら幾つか心当たりがある。着いてきな」
首肯で返してオヤジさんに着いて行く。
名前聞いてないけど、なんか雰囲気でオヤジさんと呼ぶ事にしよう。
オフィスから抜けて隣の倉庫に移動。
先には何台かの車両が並べてあった。
種類も豊富で、見た事ある形もあれば知らない形の車両も見受けられる。
オヤジさんは広い倉庫の電気をつけると名乗った。
「オレはここでボスをやってるダイモン。大体の車両はオレが用意出来る、用がありゃ何時でも言いな。よっぽどじゃなけりゃ対応してやる」
「よろしく、ユキだよ」
お互いに握手を交わすとダイモンさんが歩き出す。
私はそれに着いて行き、ダイモンさんの話を聞く。
「先ずはこいつだな。不整地は苦手だが、街中なら良い速度が出る」
最初に紹介されたのは流線形が特徴的な黄色いスポーツカー。
フォーミュラーの様な丸みを帯びた鋭いデザイン、二人乗りでドアが上にスライドしている。
これ、現実だったら数百万しそうな代物だ。
カッコいいが私が求める性能ではない。
というか勿体なさ過ぎて仕事に乗っていけない。
買ったとしても私用だよこれ。
私の反応を見てダイモン・・・・・・やっぱオヤジさんのがしっくり来るわ。
オヤジさんが次の所まで歩いていく。
「なら次はこれだな。見た目は鈍重で小回りは利かねぇが直線なら中々のモンだ」
今度のは中型のバギータイプだ。
角張ったピアノ型でフロントが広めに取られている。
しかし4ドアで搭乗スペースも広め、車載部も中々広いから荷物運びには良さそうだ。
オプションで天板にも車載スペースを確保できるし有りと言えば有りだ。
将来的には良さそうだが、問題は駐車場の確保だね。
保留。
「これがダメなら後は二輪か三輪かねぇ」
オヤジさんが呟きながら歩いていくので付いて歩く。
更に先にはバイクやトライクといった超小型車両が並んでいた。
「コイツならどうだ?大型のモンスターバイクだ。じゃじゃ馬だが、乗りこなせれば逞しい相棒になるぜ」
最後に紹介されたのは大きなバイクだ。
フロントカーフより前に車輪が出ていて排気筒も左右に一つずつ大きな物が付いている。
デザイン的にお父さんが乗ってたトライアンフに似ている気がする。
思わずジッと見詰める。
何時もお父さんはこれに似た大型バイクで仕事に行って中々帰ってこない。
けど一度だけ、後ろに乗せて貰った事がある。
その時の私はまだ小さくて、こんなにでっかいの動かせるお父さん凄いなー程度にしか考えてなかった。
今も私はお父さんと走る事は出来ないけど、ゲームの中くらいなら大丈夫かな。
するとオヤジさんが声を掛けてきた。
「どうやら決まったみたいだな」
「うん、これにする」
自然と頷いていた。
まだ見てない物もあるのに、私の中に迷いが無かった。
自分でもビックリだ。
「しかしこれにするたぁな。じゃじゃ馬だが使えるか?」
「ちょっと待って・・・・・・」
バイクにMTTを向けるとステータスが表示される。
・トライグリッド
耐久力:3000
持久力:2214
力:1500
速度:2313
旋回:540
搭乗条件:運転操作(二輪)Lv4 腕力強化Lv3 脚力強化Lv2
「プレイヤーのステとUIが違う・・・・・・?」
私が初めて見る表示に戸惑ってると、オヤジさんが横からガラス板の様な物を差し出してきた。
「これに参考程度のステータスが載ってる、比較してみな」
「おぉ、ありがと」
オヤジさんの厚意に甘えて比較する。
・サイクルスクーター
耐久力:1200
持久力:998
力:309
速度:701
旋回:600
搭乗条件:運転操作(二輪)Lv1 or 運転技術Lv1
旋回以外のステータス全てが上回っているというか耐久力は三倍差。
力に至っては五倍もの開きがある。
スクーターならその辺で走ってるのを見掛けるので速度比較もし易い。
しかしおよそ二倍の数値ってどの程度の速度になるのか分からない。
これに関しては乗ってみる他無いか。
「速度ステータスってどういう計算なの?」
「数字の最後を四捨五入して十分の一にした数値が実速度になってる」
つまり、この世界のスクーターは70キロは出るって事かな。
それをトライグリッドに当て嵌めると最高速は231キロ?
これはこの世界的に見たら速いのかな。
スクーターなんかよりずっと速いのは分かるけど。
まぁ、他より遅くてもこれを使うって決めたから良いけどね。
先にステを割り振って運転操作(二輪)をレベル4まで上げておく。
これで条件を満たしたから乗る分には問題無いはず。
別ゲーでバイクには散々乗ったし、操作に関しても問題は無い。
後はこの子特有の癖になれるだけ。
「オヤジさん、勘定」
「一万bisだ」
「ありゃ、案外安いね」
「言っておくが、bisってのは単純に数字通りの金額じゃねぇぞ。実際の値段は円換算で一千万だ」
「たっか」
任務二回で稼いだ分そんなもんかと思ってたのに衝撃の事実。
私って高給取なんだ・・・・・・
取引申請を受けてアイテム化して回収、これでこのバイクは私の相棒だ。
当然支払いは一括。
流石にそろそろ底が見えてきたし、いい加減何かお仕事しないとね。
トライグリッドは一度練習しておきたいのでそのまま持って帰った。
*************************************************************
一応bis以下の単位もあるけどまだ描写する予定無し。
購入した装備品の高価なことよ。
後で設定に苦しめられそうな予感が((
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