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星獣と元聖女
閑話 ある修道女の日記
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世界暦1532年1月4日 天気:晴れ
今日、アリシア様ではない聖女様がやってきて二日目。
突然、新聖女様は私の料理がマズいと言って料理当番を交代するようにと言ってきた。
私が一番下だから、私が作らないといけないと言ったら、そんなの知らないと言われた。そして、あんなにマズい料理を食べ続けさせられたらかなわないと言われた。
確かに私はダメダメな料理人だし、結局、他の人に手伝ってもらってばかりで、腕がいいとはいえないけど、それでも不味い、はないわよ!?
自分で作ってくださいと、思わず言ってしまったら「そうする」って言われた。
悔しいけれど、完敗だった。
料理スキルも物凄い手慣れていて、野菜の皮むきから味付けの仕方、盛り付けや皿洗いまで、どこから来たか知らないけれど、おかしいな。
本で読んだ異世界転移者は我がまま放題で戦闘能力こそ高いけど、何一つ自分でできない、王様気取りの暴君だって書かれていたのに。
我儘なのは本の通りだけど、なんでできるの?
ただ、魔法はまだ使えないみたい。それなのに、呪文も使えないくせに、一人きりなのを確認して
「ええい、乾け! ……って、ダメか」
って念を送るような仕草をやっている間抜けなところも面白かったけど。
粗探しするみたいで自分が嫌になる。けど、面白くないから仕方がない。
アリシア様だった頃はみんながニコニコと笑っていた。
美人だっただけじゃなく、努力家で自分が苦しいはずの時もにっこりと笑って手を差し伸べてくれるような、とても素敵な人だったから。
聖女を現人神のようにたたえ、始祖龍の使徒のように扱う聖女派も、教皇を教会の中で最高位とたたえ、聖女を単なる広告塔としか考えていない(という人が多い)教皇派も、始祖龍に祈ることしか考えていない祈祷派も、不思議とアリシア様がいれば笑顔になった。
アリシア様に会いたいです。ううっ、私の癒しの天使様…。
それにしても、アリシア様が教会を去ってから派閥争いは激化している気がする。
教皇様はアリシア様と元々仲が良かったし、というか、娘みたいに可愛がっていたから、聖女派の暴挙によって異世界召喚がなされて代わりの聖女が降臨。アリシア様が教会を去ることになった後、すっかり落ち込んでしまった。
でも、王とは違って死ぬまで辞めることを許されない立場だから表舞台に立つ回数がすっかり減ってしまった。
教皇様のいらっしゃる教皇庁に行ってみたいけど、国境を超えないといけないから困ったものだ。
でも、アリシア様がいると、我が子のように可愛がっていたから仕事をしなくなってしまう教皇様のために、仕方がなく聖女のおわす御所と教皇庁の場所を離したのだから仕方がないか。
よし、明日からも頑張る。
始祖龍の加護のあらんことを。
今日、アリシア様ではない聖女様がやってきて二日目。
突然、新聖女様は私の料理がマズいと言って料理当番を交代するようにと言ってきた。
私が一番下だから、私が作らないといけないと言ったら、そんなの知らないと言われた。そして、あんなにマズい料理を食べ続けさせられたらかなわないと言われた。
確かに私はダメダメな料理人だし、結局、他の人に手伝ってもらってばかりで、腕がいいとはいえないけど、それでも不味い、はないわよ!?
自分で作ってくださいと、思わず言ってしまったら「そうする」って言われた。
悔しいけれど、完敗だった。
料理スキルも物凄い手慣れていて、野菜の皮むきから味付けの仕方、盛り付けや皿洗いまで、どこから来たか知らないけれど、おかしいな。
本で読んだ異世界転移者は我がまま放題で戦闘能力こそ高いけど、何一つ自分でできない、王様気取りの暴君だって書かれていたのに。
我儘なのは本の通りだけど、なんでできるの?
ただ、魔法はまだ使えないみたい。それなのに、呪文も使えないくせに、一人きりなのを確認して
「ええい、乾け! ……って、ダメか」
って念を送るような仕草をやっている間抜けなところも面白かったけど。
粗探しするみたいで自分が嫌になる。けど、面白くないから仕方がない。
アリシア様だった頃はみんながニコニコと笑っていた。
美人だっただけじゃなく、努力家で自分が苦しいはずの時もにっこりと笑って手を差し伸べてくれるような、とても素敵な人だったから。
聖女を現人神のようにたたえ、始祖龍の使徒のように扱う聖女派も、教皇を教会の中で最高位とたたえ、聖女を単なる広告塔としか考えていない(という人が多い)教皇派も、始祖龍に祈ることしか考えていない祈祷派も、不思議とアリシア様がいれば笑顔になった。
アリシア様に会いたいです。ううっ、私の癒しの天使様…。
それにしても、アリシア様が教会を去ってから派閥争いは激化している気がする。
教皇様はアリシア様と元々仲が良かったし、というか、娘みたいに可愛がっていたから、聖女派の暴挙によって異世界召喚がなされて代わりの聖女が降臨。アリシア様が教会を去ることになった後、すっかり落ち込んでしまった。
でも、王とは違って死ぬまで辞めることを許されない立場だから表舞台に立つ回数がすっかり減ってしまった。
教皇様のいらっしゃる教皇庁に行ってみたいけど、国境を超えないといけないから困ったものだ。
でも、アリシア様がいると、我が子のように可愛がっていたから仕事をしなくなってしまう教皇様のために、仕方がなく聖女のおわす御所と教皇庁の場所を離したのだから仕方がないか。
よし、明日からも頑張る。
始祖龍の加護のあらんことを。
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