無詠唱魔法が強いなんて誰が決めた! ~詠唱魔法を極めた俺は、無自覚に勘違い王子を追い詰める~

ノ木瀬 優

文字の大きさ
5 / 11

4.完璧な作戦?【馬鹿に作戦を考えさせると大変な事になる】

しおりを挟む
【side クロ】

 俺達は王子様の後に続いて『指定区域』を奥へと進んでいた。

(どこまで行く気だ?)

 ここまで一度も魔獣と遭遇していない。普通これだけ『魔獣の森』を進めば、どんなに適当に進んだとしても、1回くらいは魔獣と遭遇するのだが、王子は神がかり的な回避率で魔獣を避けて進んで行た。

(わざと……じゃないよな? 演習の内容は分かっているはずだし、あえて魔獣を避ける意味は無いはず……もしかして、この王子様、とんでもなく運が悪いのか?)

 そんなことを考えている間にも、王子様はどんどん進んで行く。

(おいおい、魔獣用の結界が見えてきちゃたぞ……)

 魔獣用の結界は円形に張られている。前方に魔獣用の結界が見えてきたという事は、ここは『指定区域』の最奥という事だ。魔獣用の結界が前方に見えた事に気付いた取り巻き達が、王子様に進言する。

「あの……フィリップ王子。これ以上は……」
「ふむ、この辺でよいか。では、ここで索敵を行う。各位、散会して魔獣を探せ!」
「………………(はぁ!?)」

 俺は変な声が出そうになるのを、必死で抑えた。隣で、色々我慢していたマリアが負の感情を隠し切れずに、王子様に聞く。

「あのー、王子様。なんでこんなところで索敵を? こんなところに出る魔獣は、もう先生方に狩りつくされてますよ?」

 マリアの言っている事は正しい。ここが『指定区域』の中とは言え、もともとは、危険な魔獣が住んでいた場所なのだ。いくら、危険な魔獣を先生方が狩ってくれたといっても、そんな短期間で低ランクの魔獣が住み着くわけがない。

 そんなマリアの正論に王子様は馬鹿にしたように答える。

「はぁ……マリアよ。お前は仮にも俺に次ぐ実力者なのだ。そんなお前が、そのようなつまらない事を言わないで欲しいものだな。やはり、ゴミと一緒にいると頭が悪くなってしまうのか?」
「――っ!!」
「(マリア、落ち着け!)」

 俺は、怒って反論しようとしたマリアの口を瞬時に塞いて耳元で囁いた。

「もがっ! うーうぅー!!(だってー!!)」
「(気持ちは分かるが、落ち着け」」
 
 怒りが収まらないのか、なおも暴れようとするマリアを必死に抑えた。そんな俺達を王子が憎らし気に、にらみつけてくる。

「ちっ! 仕方ない、説明してやろう。いいか、マリアよ。この班には俺とお前、そして取り巻き達と、優秀な魔法使いが揃っている、まぁ、足手まといの雑魚も混じっているがな!」
「――! クロちゃんは――」
「――ええ、その通りですね!」

 マリアが何か言いかけたので、俺はそれを制して、王子様に同意した。

(『偉い人の言葉にはとりあえず同意しておけ』って言われたしな)

「ならば、いくら足手まといがいるとはいえ、我々は簡単な狩場を他の者に譲り、最奥まで来るべきでだ。違うか?」
「最奥までくる必要は――」
「――ええ、全く、その通りです!」

 またしてもマリアが何か言いかけるのをギリギリのところで防ぐ。

「(何言ってるの!)」
「(いいから! とりあえず、『その通りです』って言っとけ! あの王子様に正論なんて通じないよ! 最悪、演習は、帰りに適当な魔獣を狩ればどうとでもなるから!)」
「(えぇ!? …………うぅ。わかったよぉ)……そのとーりです」

 マリアが渋々といった様子で返事をした。

「よし! 良い返事だ。では、マリアは左、お前は右を探索しろ。我々が中央を探索する」
「分かりました」
「……そのとーりです」

 ……完全にへそをまげてしまったマリアの為に、な魔獣を狩る事も忘れないでおこう。


【side王子】


(よし! これで、マリアとあいつを引き離したぞ。後は……ふふふ)

 俺の指示で、マリアとあいつは別々の方向に探索に向かった。これで何か問題が起きても、マリアがあいつを助けに行く事は出来ない。

「フィリップ王子。我らも索敵を開始しますか?」
「ん? あー、そうだな。よし、お前ら。ここから森の外側を探索しろ!」
「「「はっ!」」」

 これから俺がやる事を見られたくないので、俺は取り巻き達に、魔獣用の結界と反対側を探索するように指示を出した。取り巻き達は、一斉に散っていく。

(これでよし……と。さて、始めるか)

 俺は魔獣用の結界に近づき、ポケットから魔道具を取り出した。

(くくく。王家に伝わる【結界破りの鈴】。これで鈴の音が聞こえる範囲にある結界は、全て無効化される。ふふ、皆、パニックになるぞ。そんな中、冷静に対処する俺! マリアが惚れないわけが無いな!)

 もうすぐ来る未来を想像して、俺は笑みを浮かべる。

(取り巻き達もパニックになっていたら、俺が助けてやろう。しかし、そうなると、あいつまで守り切るのは難しいだろうなぁ。まぁ、仕方あるまい。いくら優秀な俺でも、守れる人数には限りがあるのだから……くくく。あっはははは)

 俺は、【結界破りの鈴】を力いっぱい振り回した。

 チリンチリンチリーーン

 シューーーーーー

 鈴の音に反応して、今まで見えていた魔獣用の結界が溶けるように消えていく。

(くく。さぁ、これで不幸な事故がおきるぞ。そしてそこから生還する王子。ふふ、奇跡の物語のスタートだ!)

 俺は、結界が消えたことを確認してから、ゆっくりと取り巻き達の方に歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...