無詠唱魔法が強いなんて誰が決めた! ~詠唱魔法を極めた俺は、無自覚に勘違い王子を追い詰める~

ノ木瀬 優

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7.大漁? 【馬鹿は目の前で起こったころですら、都合のいい解釈をする】

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【side クロ】

 オークロードを狩った俺は、マリアと合流してから『指定区域』に戻って来た。

「さてと、王子様達と合流しなきゃだけど……どこにいるんだろ?」
「んー………………ん? ねぇ、あっちなんか燃えてない?」
「え?」

 マリアが指さした方を見ると、確かに火の手が上がっているのが見える。

(まさか……森の中で火魔法を使ったのか!?)

 まさかとは思ったが、あの王子様ならやりかねない。

「…………行こう」
「うん!」

 俺はマリアと一緒に、火の手が上がっている方に急いだ。



「「「ぶぅぉぉおおおんんんん!!」」」

 しばらくすると、オーク特有の鳴き声が聞こえてくる。

「近いね」
「だな……いた! あそこだ! 行くぞ!」
「うん!」

 俺達が到着した時、オーク達は今にも王子様達に襲い掛かろうとしていた。

「(見て! あそこ!)」
「(え? うわ、ひどい)」

 マリアが指さした先には、黒焦げになったオークが転がっていた。

「(可哀そうに……)」
「(うん。あんなのオークを冒涜してるよ!)」

 俺もマリアも黒焦げになったオークに同情してしまう。

「(弱い火魔法を連発したのかな? そのせいで、あんな事に……)」
「(火事を起こすし、オークを黒焦げにするし……ほんと、最低王子様)」
「(……今回ばかりは否定できない……でも、助けないわけにはいかないし……)」
「(むー……これもまた『むー』だけど、仕方ないね。オークは任せていい?)」
「(もちろん。火事の対処できる?)」
「(んー、燃え広がらないようにするのが精一杯、かも……)」
「(分かった。オークを狩ったら手伝うよ)」
「(ありがとう! じゃ、後でね)」

 そう言ってマリアは迂回して火事の反対側に向かった。

(さて、やりますか)

 俺はオーク達を狩るために風魔法を唱える。

「【風の精霊、シルフよ。我の願いに応じて全ての敵を射殺せ。風弓ウィンドアロー!】」

 風の精霊たるシルフの名前を呼んで『お願い』した俺の風弓ウィンドアローは、その場にいた30体のオークと4体のオークジェネラル。そして1体のオークキングの額を順番に貫き、その命を奪った。

 俺は絶命したオーク達を腕に付けた収納用の魔道具の中に収納していく。黒焦げになったオークを除いて。

「…………え? あ……え?」

 王子様やその取り巻き達が放心した様子でこちらを見ているが、その対応は後回しだ。遠くでマリアが消火しようとしているのが見えたが、マリアが消化するスピードより、森が燃え広がるスピードの方が速い。俺は急いで水魔法を唱える。

「【水の精霊、アクエリアよ。我の願いに応じて雨を降らせたまえ。豪雨スコール!】」

 水の精霊たるアクエリアの名前を呼んで『お願い』した俺の豪雨スコールは、瞬く間に火事を消していった。



(こんなもんかな?)

 火事を完全に消してから、マリアと合流する。

「さすがクロちゃん! 私じゃ時間稼ぎしか出来なかったよ」
「十分だよ。おかげで慌てずに対処出来た。…………さて、と」

 俺達は放心しきった様子で、座り込んでいる王子様達に向き直った。

「立てますか?」
「……え? あ、ああ」

 俺の言葉を聞いて、王子様達が立ち上がる。皆、多少の火傷はしているものの、歩くのには問題なさそうだ。

「ライス先生達の所に戻りましょう。俺達が先行します。いいですよね?」
「わ、分かった」

 死にかけたからか、王子様は素直に返事をしてくれる。

 その後、『指定区域』の入口へと向かった俺達は、途中で王子様を探しに来たというライス先生と合流し、入口へと戻った。入口には、教師の他に国軍まで待機しており、俺達は取り調べを受けさせられる。

(まぁ、今まで問題なかった結界が、急に消えたんだもんな。色々調べるのは当然か……)

 そう思った俺は、結界が消える直前、鈴の音が聞こえた事も含めて、国軍の人に包み隠さず話した。ただ、いくら大事な話とはいえ、同じことを何度も聞かれるのは勘弁してほしい。かわるがわる色々な人に同じ話をしたため、午後の早い時間には取り調べを始めたはずなのに、俺達が自室に戻る頃には深夜になっていた。



 自室に戻った俺は、さっそく湯船にお湯を張り、風呂に入る。

「あー、疲れたー」

 俺は湯船に浸かりながら手足を伸ばす。いくら遅くなったとしても、これだけはやらないわけにはいかない。

「くぁー……ねむい……」

 俺の隣でマリアがウトウトしている。

「おーい、風呂の中で寝るよ?」
「んー……うんー………………くー……」
「――って、言ってるそばから寝るなー!」
「ふぁ!? 寝てない! 寝てな……い…………くー……」
「……だめだこりゃ」

(ま、しょうがないか)

 流石にマリアも疲れたのだろう。お腹一杯という事もあり、風呂という極楽の中で意識を保つことが出来ないようだ。

 俺はマリアがおぼれないように注意しながら自分とマリアの身体を洗い、バスローブを着させてから、マリアを寝室まで運ぶ。

「ふふふ。おやすみ、マリア」
「んー……おやすみー……くー……」

 まだ湿った髪の感触を腕に感じながら、俺は眠りについた。



【sideフィリップ王子】

(何だったのだ……あれは)

 火傷を治療してもらった俺は自室で、今日起きた出来事について思いをはせていた。

(俺は……俺の魔法が……オークに全く効かなかった……)

 本当であれば、俺が深部の魔獣を狩ってマリアに惚れられていたはずだった。もしかしたら、今晩マリアと夜を共にできたかもしれない。それなのに……。

(俺の魔法が通用しなかったのにあいつの魔法は……いや、そんなわけない! あいつは学年で最弱の男だぞ!? そんな事、あるわけがない!!)

 目の前で次々と倒れていくオークの群れ。中にはオークジェネラルやオークキングもいた気がする。だが、『そんなの関係ない』と言わんばかりに、あいつの魔法はオークの群れを蹂躙していた。

(違う! 違う違う違う! あいつの魔法の訳が無い! そんなわけ……そうさ! きっとあれはマリアの魔法だ! マリアが俺達を助けてくれたんだ!)

 そうであるなら納得できる。なにせマリアは、勇者の血を色濃く受け継いだ女だ。あれくらい出来てもおかしくない。

(そうだ……そうに違いない! ふふ。ならば、なおさら、マリアを俺の女にしないとな……明日のパーティーには父上やクラリス王女も出席する。マリアには俺の色をあしらったドレスを贈ったし…………よし!)

 俺はある決心を固めてから、眠りについた。



【side ライス先生】

「………………結局何だったんだ?」
「分かりません……『未知の魔法によって、結界が一部消滅した』としか……」
「そんな説明が通用するわけないだろ!」

 今日の演習中に起きた『対魔獣用の結界が演習中に消滅する』という前代未聞の事故は、数名のけが人は出したものの、奇跡的に死者は出ずに収束させることが出来た。とはいえ、『死者はいなかったのだからもういいだろう』とはならない。仮にもこの国の王子様の命を危険にさらしたのだ。原因を究明し、ちゃんと報告する必要がある。

「明日のパーティーには国王陛下も来られるのだぞ! なんとしてもそれまでに原因を究明するのだ!」
「は、はい!」

 俺は結界の観測係に喝を入れ、自分も再度、結界が消滅した場所に向かう。

(明日はパーティーだっていうのに……くそがぁ)

 明日のパーティーには、フィリップ王子のパートナーとして、隣国からクラリス王女が来られるそうだ。当然、クラリス王女付きの侍女も一緒に来られるし、パーティー中は、会場の控室で待機する事になる。そして、その侍女をもてなすのは、俺達教師陣であり、独身の俺にとって、またとない出会いのチャンスだったのだ。だが、このまま原因が究明しなければ、俺はパーティーに行く事は出来ないだろう。

(ただでさえ、職場の出会いは少ないんだ……明日は何としても!!)

 結界が消滅した場所に着いた俺は、全身全霊をかけて、結界が消滅した原因を調査する。



 しかし、結局その日、結界が消滅した原因を究明する事は叶わず、翌朝、俺は涙を流す事になるのだった。
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