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第4章 王都にて
108.【謁見5 モテる理由】
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固まっている俺の肩をモーリス王子が叩く。
「やはり、そちもハーレムを目指してはどうだ? 余がいうのもアレだがシャルは美人だろ?」
「…………愛のない結婚は遠慮したいのですが、いざという時は覚悟を決めます」
「は? 愛? え? あ、そういう……」
なぜかモーリス王子がうろたえている。以前、ニーニャさんに行った時も驚かれたが、元日本人のモーリス王子にも驚かれるとは思わなかった。
「なるほど。そちはロマンチストだったのか」
「……私としては普通のつもりなのですが」
「普通の者は複数の美女を娶れるとなったら喜ぶものだ」
そういうものだろうか……。俺が悩んでいると王妃様が俺達に話しかけてきた。
「モーリス。話はついたの?」
「ええ。アレンに協力してもらえることになりました」
「そう。それは良かったわね。それで、アレンさん? シャルの事はどうなの?」
「どう……とは?」
「話は聞いていたのでしょう? 貴方の側室にどうか、という意味よ」
「……お言葉ですが、王妃様。王女を商人の側室にするなど、聞いたことないのですが」
「あら、そんなに珍しい事じゃないわ」
「……え?」
「商人に嫁いだ王女は多いわよ。それが国益になると判断されれば側室としてだろうが、関係なく……ね。それくらい、この国での女性の地位は低いのよ」
俺にとって驚愕の事実であったが、父さんや母さんは平然としている。
「驚いているようね」
「そう……ですね。正直、驚きました」
「ふふふ。だからこそ、なのよ」
「え?」
「この国では権力者や成功者であればある程、女性を軽んじる傾向にあるわ。そんな中、成功しているにも関わらず女性を大事にしている貴方だからこそ、皆、惹かれるし、大事な娘を預けたいと思うのよ」
特別女性を大事にしているつもりは無かったのだが、クリスやシャル様は王妃様の発言に頷いている。
「まぁ、その分簡単には娘を受け取ってもらえないというのはジレンマだけどね」
「えっと……すみません」
「謝る必要はないわ。ブリスタ子爵令嬢から『いざという時は覚悟を決める事』は聞いているし、そうなった時、『ちゃんと向き合う』ことも聞いているわ。だから、シャルがそうなった時もちゃんと向き合ってね?」
「は、はい!」
有無を言わせぬ圧力を感じて思わずうなずいてしまったが、シャル様がそうなることはないだろうから、大丈夫だろう。
「結構。それと、シャルが後ろ盾になっている『整形』だけど、私の知り合いにも傷で悩んでいる者がいるの。彼女達を治してもらえるかしら?」
「もちろんです。ですが、傷によっては、マリーナさん……フィリス工房長の力を借りる必要があります。なので今すぐできるかは傷を見てみないと……」
「なるほど……ならば、傷の具合をまとめて貴方に連絡します。そのうえで、日程を決めましょう」
「かしこまりました」
「よろしい。私からは以上です。モーリス、貴方は?」
「大丈夫です」
「そう。それでは私達はこれで失礼するわ。イリスもまたね」
「ええ。リアも元気で」
防音の魔道具が効いているからか、母さんは王妃様を『リア』と呼んだ。
(本当に愛称で呼ぶ仲だったんだ……)
王妃様が魔道具を解除してから立ち上がった。モーリス王子とシャル様はそれに続き、俺達は頭を下げて見送る。
部屋の隅に控えていた男性が扉を開けて3人が出て行った後に扉を閉めた。
「モーリス王子がご退出されました。頭を上げて頂いて結構です」
男性に言われて俺達は頭を上げる。
(そっか。王妃様はここに来てないんだった)
「お疲れさまでした。これにて謁見は終了です。この部屋は後1時間程ご利用可能ですので、ゆっくりお休みください。下城される際は、私にお声がけ頂ければ、王宮の外までご案内いたします」
「ご丁寧にありがとうございます。皆、どうする?」
「私は少し休みたい……」
「僕も休みたい……です」
父さんの質問にユリとバミューダ君が答えた。王妃様とは楽しく会話しているように見えたがやはり緊張していたようだ。
「そうだな。ではすみません。少し休んでから下城させて下さい」
「かしこまりました。ちなみに防音の魔道具は誰でも利用可能です。私はここを離れませんので、内密な話をされる場合はご利用ください」
あの男性は『案内人』であると同時に『監視者』でもあるのだろう。平民を王宮内に放置するわけにはいかないので、監視者がいるのは当然の事だ。
「それでは、遠慮なく……さてと。アレン、モーリス王子とは何を話したんだ?」
父さんが防音の魔道具を起動してから聞いてくる。
「モーリス王子が『国王になること』に協力して欲しいって。具体的にはモーリス王子と俺が親密なことを西側にアピールしたいって」
「やはりか……まぁ悪い話じゃない。モーリス王子の後ろ盾を得たんだからな。いずれはモーリス王子から『ロイヤルワラント』を頂けるかもしれないぞ」
「あなた? それはさすがに夢見過ぎよ。アレンが変な期待しちゃ――」
「――あ、うん。くれるって言ってたよ」
「「……………………は?」」
父さんと、父さんを窘めようとした母さんが固まった。
「く、くれるって……何を!?」
「ま、まさか……まさかよね!?」
2人とも目を見開き、激しく動揺している。いつも冷静な2人のこんな様は初めて見た。
「正確には半年後だけど……モーリス王子が『ロイヤルワラント』を与えれくれるって。審査のために1か月以内に商品を送って欲しいって言われたよ」
俺の言葉を聞いた2人は言葉を発することが出来ず、口をパクパクしている。
「凄いですね。さすがアレンです」
クリスも驚いてはいたが、2人ほどは動揺しておらず、賞賛の言葉をくれた。ユリとバミューダ君はよくわかっていないのか、動揺している2人を見て困惑している。
「「あふぅ……」」
「「「あっ!!」」」
どうやら、動揺が許容量を超えてしまったようだ。2人共、変な声を出したと思ったらそのまま気を失ってしまった。
「やはり、そちもハーレムを目指してはどうだ? 余がいうのもアレだがシャルは美人だろ?」
「…………愛のない結婚は遠慮したいのですが、いざという時は覚悟を決めます」
「は? 愛? え? あ、そういう……」
なぜかモーリス王子がうろたえている。以前、ニーニャさんに行った時も驚かれたが、元日本人のモーリス王子にも驚かれるとは思わなかった。
「なるほど。そちはロマンチストだったのか」
「……私としては普通のつもりなのですが」
「普通の者は複数の美女を娶れるとなったら喜ぶものだ」
そういうものだろうか……。俺が悩んでいると王妃様が俺達に話しかけてきた。
「モーリス。話はついたの?」
「ええ。アレンに協力してもらえることになりました」
「そう。それは良かったわね。それで、アレンさん? シャルの事はどうなの?」
「どう……とは?」
「話は聞いていたのでしょう? 貴方の側室にどうか、という意味よ」
「……お言葉ですが、王妃様。王女を商人の側室にするなど、聞いたことないのですが」
「あら、そんなに珍しい事じゃないわ」
「……え?」
「商人に嫁いだ王女は多いわよ。それが国益になると判断されれば側室としてだろうが、関係なく……ね。それくらい、この国での女性の地位は低いのよ」
俺にとって驚愕の事実であったが、父さんや母さんは平然としている。
「驚いているようね」
「そう……ですね。正直、驚きました」
「ふふふ。だからこそ、なのよ」
「え?」
「この国では権力者や成功者であればある程、女性を軽んじる傾向にあるわ。そんな中、成功しているにも関わらず女性を大事にしている貴方だからこそ、皆、惹かれるし、大事な娘を預けたいと思うのよ」
特別女性を大事にしているつもりは無かったのだが、クリスやシャル様は王妃様の発言に頷いている。
「まぁ、その分簡単には娘を受け取ってもらえないというのはジレンマだけどね」
「えっと……すみません」
「謝る必要はないわ。ブリスタ子爵令嬢から『いざという時は覚悟を決める事』は聞いているし、そうなった時、『ちゃんと向き合う』ことも聞いているわ。だから、シャルがそうなった時もちゃんと向き合ってね?」
「は、はい!」
有無を言わせぬ圧力を感じて思わずうなずいてしまったが、シャル様がそうなることはないだろうから、大丈夫だろう。
「結構。それと、シャルが後ろ盾になっている『整形』だけど、私の知り合いにも傷で悩んでいる者がいるの。彼女達を治してもらえるかしら?」
「もちろんです。ですが、傷によっては、マリーナさん……フィリス工房長の力を借りる必要があります。なので今すぐできるかは傷を見てみないと……」
「なるほど……ならば、傷の具合をまとめて貴方に連絡します。そのうえで、日程を決めましょう」
「かしこまりました」
「よろしい。私からは以上です。モーリス、貴方は?」
「大丈夫です」
「そう。それでは私達はこれで失礼するわ。イリスもまたね」
「ええ。リアも元気で」
防音の魔道具が効いているからか、母さんは王妃様を『リア』と呼んだ。
(本当に愛称で呼ぶ仲だったんだ……)
王妃様が魔道具を解除してから立ち上がった。モーリス王子とシャル様はそれに続き、俺達は頭を下げて見送る。
部屋の隅に控えていた男性が扉を開けて3人が出て行った後に扉を閉めた。
「モーリス王子がご退出されました。頭を上げて頂いて結構です」
男性に言われて俺達は頭を上げる。
(そっか。王妃様はここに来てないんだった)
「お疲れさまでした。これにて謁見は終了です。この部屋は後1時間程ご利用可能ですので、ゆっくりお休みください。下城される際は、私にお声がけ頂ければ、王宮の外までご案内いたします」
「ご丁寧にありがとうございます。皆、どうする?」
「私は少し休みたい……」
「僕も休みたい……です」
父さんの質問にユリとバミューダ君が答えた。王妃様とは楽しく会話しているように見えたがやはり緊張していたようだ。
「そうだな。ではすみません。少し休んでから下城させて下さい」
「かしこまりました。ちなみに防音の魔道具は誰でも利用可能です。私はここを離れませんので、内密な話をされる場合はご利用ください」
あの男性は『案内人』であると同時に『監視者』でもあるのだろう。平民を王宮内に放置するわけにはいかないので、監視者がいるのは当然の事だ。
「それでは、遠慮なく……さてと。アレン、モーリス王子とは何を話したんだ?」
父さんが防音の魔道具を起動してから聞いてくる。
「モーリス王子が『国王になること』に協力して欲しいって。具体的にはモーリス王子と俺が親密なことを西側にアピールしたいって」
「やはりか……まぁ悪い話じゃない。モーリス王子の後ろ盾を得たんだからな。いずれはモーリス王子から『ロイヤルワラント』を頂けるかもしれないぞ」
「あなた? それはさすがに夢見過ぎよ。アレンが変な期待しちゃ――」
「――あ、うん。くれるって言ってたよ」
「「……………………は?」」
父さんと、父さんを窘めようとした母さんが固まった。
「く、くれるって……何を!?」
「ま、まさか……まさかよね!?」
2人とも目を見開き、激しく動揺している。いつも冷静な2人のこんな様は初めて見た。
「正確には半年後だけど……モーリス王子が『ロイヤルワラント』を与えれくれるって。審査のために1か月以内に商品を送って欲しいって言われたよ」
俺の言葉を聞いた2人は言葉を発することが出来ず、口をパクパクしている。
「凄いですね。さすがアレンです」
クリスも驚いてはいたが、2人ほどは動揺しておらず、賞賛の言葉をくれた。ユリとバミューダ君はよくわかっていないのか、動揺している2人を見て困惑している。
「「あふぅ……」」
「「「あっ!!」」」
どうやら、動揺が許容量を超えてしまったようだ。2人共、変な声を出したと思ったらそのまま気を失ってしまった。
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