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第5章 転換期

134【魔道具開発4 失敗作の改良作業】

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 朝起きた俺はいつも以上に気持ちの良い目覚めに驚いていた。

(ふぁーあ……良く寝た。それにしても、めちゃくちゃすっきり目覚められたな。視界良好、頭すっきり! なんか、いい感じかも!)

 これなら今日は問題なく『創作』出来るだろう。テンションが高くなった俺はわくわく気分で自室を後にする。

「あれ? お兄ちゃん、早いね」

 リビングに向かうと、ユリが朝食の準備をしてくれていた。

「おはよう。なんかすっきり目覚めちゃって」
「あ、それ分かる! 私も今日はいつも以上にすっきり目覚めたんだよね。お互い今日は良い日になりそうだね!」

 どことなく、ユリのテンションも高めだ。これも昨日、限界まで頭を駆使した影響だろうか。

「さ、早くご飯食べよう!」
「そうだな! 頂きます!」

 言葉にはしないが、早く魔導書貸出店に行きたくて仕方ない事はお互い理解していた。急いで朝食を済ませ、さらに急いで身支度を整えてから、魔導書貸出店に向かう。最後は競い合うように走りながら、俺達は魔導書貸出店に飛び込んだ。

「「マークさん! おはようございます!」」
「おはようございます。お二人とも本当に早いですね」
「あ、すみません。早く『創作』をしてみたくて……」 
「私も早く魔導書の続きを読みたくて……」
「ふふふ。お二人とも勉強熱心で素晴らしいですね。ですが、昨日も言った通り、無理はいけません。私が無理していると判断したら休憩して頂きます。良いですね?」
「「分かりました!」」
「結構です。それではアレンさんは実験室へどうぞ。ユリさんは魔導書の続きを読みましょう」
「「はい!」」

 俺は実験室の扉へと向かったのだが、1つ疑問を覚えた。

「マークさん、1つ聞いても良いでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
「私が私の実験室に入った状態でマークさんが実験室の扉を開いたらどうなるんですか?」

 実験室の扉は開ける者の魔力を感知して行先を指定する。俺が実験室に入った状態で、マークさんが実験室の扉を開けたら、俺の実験室と魔導書貸出店とのつながりが切れてしまい、戻ってこられなくなるのではと考えたのだ。

「あ、説明していませんでしたね。ご心配なく。実験室の中に誰かがいる状態で他の者が実験室の扉を扉を開いても扉の先が変わることはありません。実験室に取り残されて、戻ってこられなくなるような事にはなりませんので、ご安心ください」

 俺の不安を読み取ってくれたのか、マークさんは的確な答えを返してくれた。

「そうなんですね! 安心しました。では、行ってきます!」
「はい、いってらっしゃい。頑張ってくださいね」 

 安心した俺は意気揚々と実験室に入って行く。



(これは……やっちゃったかな?)

 実験室に入ると、昨日転送した大量の魔道具の山が目に入った。1つ1つ転送していた時には気付けなかったのだが、こうして全てを見るとその量に圧倒される。

(さっそく部屋が散らかる予感……いやいや! ちゃんと整理すれば大丈夫! それよりも……)

 昨日『鑑定』した中で、改良案が思い浮かんだ物を探していく。

「――あった!」

 昨日最初に『鑑定』した、『高温になる』魔道具を見つけた。

(まずはこれを『部屋を暖める』魔道具に改良しよう! えっと、今は『属性』魔法を『創作』で付与して、魔力が流れたら高温になるようにしてるのか……それなら!)

 俺は魔道具に『創作』魔法をかける。

(本当は『属性』魔法使いの協力が必要だけど下地があればできるはず……『900度の高温になる』を『25度の温風を発生させる』に修正! 周囲の空気の原子を振動させて温度を上げるイメージで……っ! 出来た!)

 感覚的に出来るような気はしていたが、実際に出来ると感慨深いものがある。さっそく俺は魔道具を起動してみた。

「――ふわぁ……あったかい……」

 魔道具から心地よい温風が流れ出してくる。これなら、十分に部屋を暖めることが出来るだろう。

「ふぅ。まず一つ完成っと……よし、次だ!」

 その後も片っ端からマークさんの失敗作を改良していく。

(洗濯物を乾かすためには、水分を取ればいいんだから……『温度を上げる』じゃなくて『周囲の水を気化させる』に修正して……よし! 出来たはず! 次は……音声を送受信の魔道具か。これは、音声を届ける前に魔道具が起動していればいいんだから……バイブ機能でも付けるか! あ、でもバイブ機能を付けようと思ったら『属性』魔法使いの協力が必要だな……これはクリスに協力してもらうか。ユリが『属性』を修めてから頼んでもいいしな!)

 作業をしながら、改良できたもの、改良方法は分かったがまだ修正出来てない物を分けて棚に閉まっていく。こうして整理していけば、マークさんの実験室のように散らかる事もない……はずだ。

 魔道具の山から、1割ほどの魔道具を棚に並べ終えたところで、実験室の扉が開いてマークさんが入ってきた。

「アレンさん、調子はいかがですか?」
「いくつかの魔道具は修正出来ました! 見てください!」

 俺はさっそく『部屋を暖める』魔道具をマークさんの前に置いて起動する。

「――!? これは……暖かいですね」

 そう言ってマークさんは『部屋を暖める』魔道具を触った。

「特別高温になっているわけでもない。しかし、これなら十分に部屋を暖められる。……いやはや、まさかこんな短時間で改良されるとは。流石ですね」
「マークさんが良い素材を提供してくださったおかげです。おかげで、私一人で改良出来ました」
「ふふふ。『創作』の欠点を知ってもらうつもりだったのですが、まさかこうなるとは……。こちらの棚にある物が改良済みの物ですか?」
「そうです。こっちの棚にある物が、改良方法は分かったけれど、『属性』魔法使いの協力が無いと付与できそうにない物です。…………あの、『創作』の欠点って何でしょうか?」
「おや? お気づきではないんですか? ……そうですね。その話はお昼ご飯を頂きながら話しましょうか。実は、丁度お昼の準備が出来たので、呼びに来た所だったのです。とりあえず、お店に戻りましょうか。ユリさんが待ってます」
「あ、そうだったんですね! 分かりました! 戻りましょう!」

 魔道具の改良が楽しすぎて時間を忘れていたが、もうお昼らしい。言われてみれば、空腹も感じる。

(熱中しすぎた……ユリの方はどんな感じかな?)

 確証はないが、恐らくユリも俺と同じ感じだと思う。今頃はお昼ご飯を前に空腹を感じているはずだ。

(早く戻ってあげないと可哀そうかな? 急ごう!)

 俺はマークさんと一緒に魔導書貸出店に戻った。
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